エデンの来訪者   作:火取閃光

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第51話

 休憩所であるオアシスに立ち寄り一晩を明かしたアレン達は半日掛からずにハディートの故郷である村へ辿り着いたのだった。

 

「っ!? こ、これは、ハディート様っ……!?」

 

「よくぞ、よくぞっ……! ご無事でっ……!!」

 

「心配を掛けてすまないな。俺はこの旅の者達に助けられて無事に帰れた」

 

「っ!? なんとっ……!」

 

「そう言う事でしたら、旅の方々もこの村に歓迎します」

 

「助かる。だが、俺達は急ぎ族長である父ザラシュトロに会わなければならない。女王フェデルの手掛かりを掴んだ」

 

 ハディートが無事に村へ帰った事を聞きつけた砂漠の民達はアレン達も含めて歓迎していた。

 

 しかし、それらを押し除けたハディートが行方不明の女王の手掛かりを掴んだと聞くと、彼等はアレン達に族長の家までの道を開けてハディート達の後を追ったのだった。

 

 砂漠の村長であり大地の精霊の祀る一族の族長ザラシュトロとその妻は、この危険な砂漠を無事に帰って来た息子ハディートと抱き合って再会を祝した。

 

 しかし、それも束の間でハディートはアレン達から託された女王の首飾りとそこに挟まれていた手紙を読んで情報を共有した。

 

 族長であるザラシュトロは自分達に向けた優しい心を持つ女王が精霊像もとい魔王像に囚われている事を知り嘆き悲しんだ。

 

 彼女は魔王像を建設させているモンスター達が毎年若い娘達を寄越せと言う横暴に対して、自身が身代わりとなりその横暴を抑制していたのだった。

 

 だけど、そんな事を伝える為だけにハディートは帰って来た訳ではなく、ここでアレン達の事を彼等に紹介したのだった。

 

 紹介されたアレン達聖戦士は自分達が未来から過去に来た目的を伝えながら、この異変の原因である精霊像へ行く為の手段であるティラノスについて話が聞きたいと伝えた。

 

 その際にアレンとアルスが風と水の精霊の紋章を持っている事を伝えながら、自身の腕と背中にある紋章を確認して貰った。

 

 族長達も初めはアレン達旅人を見て、こんな死の大地と化したこの土地から立ち去る様に伝えるつもりだった。

 

 高々、数人程度が異国から来たからと言っても魔王像に住まうモンスター達には勝てないと諦めていた。

 

 だが、未来から世界を救う為に過去へ来た文字通りの神の使いとも呼べる精霊の紋章を持つ聖人達。

 

 これは神が自分達を憐れんで授けた奇跡に違いないと思い、藁にもすがる気持ちでアレン達が知りたがっていた黄金の角を持つ聖竜ティラノスについて語ったのだった。

 

「時にハディートよ、ティラノスの捜索は上手く行ったかの……?」

 

「……いや、見つからなかった」

 

「何と……?」

 

「ティラノスは居なかったのだ……。もしかしたら、もう……」

 

「……そうか。いや、だから戻って来たのか……」

 

「あぁ、その通りだ。今のナイラだけではなく、この砂漠には植物や動物達がほとんどいない……。

 

 我等はまだ食糧の備蓄があるからギリギリ生きながらえているが、ティラノスはそうも行かんだろう……。

 

 俺もアレン達が来なければ手掛かりが無いまま半ば諦めていた。しかし、そんな中でコイツ等と出会ったからには何か意味があると信じたいと思ったんだ……」

 

 神様だの、精霊だの、それこそ奇跡だのと言うモノなんて信じた所でどうにもならないと現実的なハディートには珍しい反応に彼の両親は目を丸くした。

 

「なるほどのぅ……。時に旅のお客人よ、そなた達の未来にはティラノスの手掛かりは無かったかのう……?」

 

「黄金の角が2つあるドラゴン……?」

 

「うーん……。黄金の角、黄金の角……??」

 

「マリベルは聞いた事ある?」

 

「流石に無いわよ。それにそんな生き物がいたら、もっと騒動になっていても不思議じゃ無いわ……」

 

「だから、俺達の世界でもそんなドラゴンは……」

 

「そうか……。いや、無理を言ってすまなんだ……」

 

「うーん……。黄金の角……」

 

「ガボ、さっきからどうしたんだ?」

 

「あっ……! アレン、ユバール族の大陸にあった化石発掘場の展示物!! あれ、黄金の角を持つ骸骨じゃ無かったか!?」

 

「あっ……!?」

 

「アレかっ……!?」

 

 ガボの発言によってアレン達の脳裏には見せ物とされていた黄金の角を2つ持つ生き物の化石が頭に浮かんでいた。

 

 その時は確かに物珍しいとは思っていたけど、正直言ってそれだけで特に印象が無いからスッカリ忘れていた。

 

 しかし、狼から人になってまだ1年くらいしか経たないガボにとっては、それでもとても印象に残る不思議な出来事だったので覚えていたのだった。

 

「でも、流石に骸骨じゃね……。アタシ達が欲しいのは生きたティラノスであって、死んで骸骨になったティラノスじゃないからね……」

 

「そんなぁ〜〜」

 

 現実的な指摘をするマリベルに対して肩を落として落ち込むガボ。そんな様子を見ていたザラシュトロは考え込む様にして呟いた。

 

「ふむ……。いや、もしかしたら、もしかするかも知れませんぞ……」

 

「えっ……?」

 

「それは、どう言う……?」

 

 そして、族長ザラシュトロは大地の精霊が姿を形取る際のある特性について、一族に伝わる古い書物を基に説明をしたのだった。

 

 この砂漠の一族は神の復活を悲願とするユバール族と分たれた一族であり、元は大地の精霊を祀るシャーマンの一族だった。

 

 その祖先の文献によれば大地の精霊はこの砂漠にある一粒一粒全てに宿る特性があり、それ故に精霊は何処にでも存在しているとの事だった。

 

 大地の精霊を呼ぶには穢れなきこの砂の大地に精霊の似姿を描く事で呼ぶ事が可能となっている。

 

「最早、この死の大地となった砂漠に穢れない場所は無いが、ティラノスが生きていたナイラであれば、精霊様のお力を借りる事が可能かも知れん……」

 

「っ!? そうかっ……!? そこでアレンとアルスが持つ精霊の紋章かっ……!!」

 

「なるほど……。僕の水の精霊の力でナイラの水を清めて」

 

「俺の風の精霊の力で周囲一帯に結界を張って擬似的な聖域を発生させてから砂漠に眠った大地の精霊に祈りを捧げる」

 

「そこで大地の精霊が目覚めなくても、その力を借りる事が出来ればティラノスの頭蓋を通じて一時的な復活が願えるって訳ね? 流石に他力本願が過ぎないかしら……?」

 

「だけど、現状はこれを試す価値はある。アルス、お前の水の力でナイラを渡れるか?」

 

「……いや、難しいとは思う。アレンやグレンの様に完全な紋章が有れば行けたとは思う。

 

 でも、僕の紋章は不完全であり共振で一時的に完全になったとしても、その力はアレン達のそれと比べると劣ってしまうからね……。

 

 だから、例え共振状態で一時的に水の中でも呼吸が出来る様になったとしても、水の流れまでは完全には操作出来ないから流されるのがオチだと思う……」

 

「そう言う訳だ。それに俺の風は俺1人を自由自在に飛ばす事は出来ても、アルス達も一緒に自由自在に飛ばす事は無理だ。

 

 これは俺の技量の問題なのか、それとも風の限界なのかは定かじゃ無いけど一定方向に吹き飛ばす事は出来る……。

 

 いや、出来るんだけど……それはあくまでも攻撃目的としてだ。飛ばす対象が樽や木箱の様な軽い物であれば加減は出来るが……。

 

 流石に人体クラスの重量となればこの中で1番軽いマリベルでも吹き飛ばすには、相応のダメージを覚悟に吹き飛ばすしか無いからこれはやりたく無い……。

 

 だから、大地の精霊に力を貸して貰うのが無理なら未来と行き来して木材を調達し簡易的な船を作って、上流から俺の風とアルスの水で失敗覚悟で強引に行く……。

 

 それか、時間と労力は掛かるけど俺が1人1人を抱えて何度も往復するとかだな……。こっちは確実かもだけど、あの距離を人を1人抱えて往復したら流石に時間は掛かると思う……」

 

「……まぁ、そう言う事情なら少しでも安全で成功率が高そうなその案に乗るしか無さそうだわね」

 

 そうしてアレン達の次なる目的が定まった。族長であるザラシュトロはアレン達へ感謝の意を込めて砂漠のお守りと言う、一人前となった砂漠の民が成人と共に渡される地域伝統の証をくれたのだった。

 

 そして、族長の家の周りで話を聞いていた砂漠の民達からアレン達はささやかな歓迎を受けて一夜を過ごした。




ナイラ河の最大全幅は想定して200m前後くらいだと思っています。
上流がとても広くて、下流にあるナイラのほとりに近付くに連れて狭くなっている感じです。

恐らくナイラに生息していたであろうティラノスが結構大きな見た目なので、過去に複数体生息していると仮定するなら全幅も最低限そこそこ以上はあるとは思いました。

また、流石に地形から考えて人工の大河ではなく自然に出来たか、ファンタジー要素らしい魔法とかブレスとかで抉れたそんな感じです。
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