エデンの来訪者   作:火取閃光

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第52話

 アレン達が砂漠の民から歓待を受けた次の日、現代に向かう前に改めて砂漠の状況について民達へ情報を聞いていた。

 

 聞いていた話については現状の暮らしについてである。何故、今そんな事を聞いているのかと言えば、昨夜の歓待での出来事がきっかけだった。

 

 ハディート達も言っていたが魔王像の建設に伴いモンスターが増加した事で動物や植物が取れ難くなっていた。

 

 元より、この砂漠地帯はそんなに豊富な植物や動物達がいた訳では無いけど、モンスター達の襲来によって更に取れ難い状況だった。

 

 幸いな事に頻度は落ちているがまだ雨は降るらしく、飲み水に関しては雨水とオアシスから何とかなっているが問題は食料だった。

 

 サボテンやソルガムの稲、ナツメヤシやバオバブの実などの自給自足に加えて、襲撃前に保存していた肉や魚で何とか食い繋いでいたがこう言う状況もあって不安が強かった。

 

 アレン達は過去世界の異変を解決したからと言って、必ず現代までにその街や村が残るとは限らない事をグリーンフレークで学んでいた。

 

 正直、アレン達が何かをしたから必ず残ると言う訳でも無いが、それでも出来る限りの事はしたいと思っていたのだった。

 

 ハディートがザラシュトロ達と一緒に祖先が残したとされる大地の精霊に関する文献を調べている間、アレン達は持っていた水と食料等をほとんど置いてから現代へ一時帰還したのだった。

 

 そして、バーンズ王に砂漠の異変について一時報告をした後、アレン達は2つのグループへ別れて行動した。

 

 1つは砂漠のお守りを持ったアルスとガボが化石発掘場にいるティラノスの頭蓋の所有者である学者の元へ交渉に行く事だ。

 

 その際にアルス達の身分を証明する為にバーンズ王から書状を書いて貰い向かった。

 

 過去の異変を解決する為に必要なんだと言うだけなら、流石に狂人の妄言にしか聞こえない事くらいは自覚している。

 

 だから、今ある大陸と交流を持ち始めたグランエスタード王国の身分証が有れば、最低限の話だけでも聞いて貰えると言う狙いだった。

 

 また、砂漠のお守りを持って行ったのはティラノスの頭蓋を持つ学者の興味を引く為である。

 

 これはグランエスタード城にいる学者達の助言であり彼等曰く、これで話に釣られなければ真の学者じゃ無いとの事だった。

 

 2つ目のマリベルとアレンは大臣とアミッドの協力の元で保存食や作物の種を馬車に詰めたのだった。

 

 前回の旅で譲渡した特注品の馬車とは比べてノーマル仕様だけど、袋にも上限があるのでその中に詰めれるだけ詰めたのだった。

 

 その中には実験として育てているビバ=グライプの苗や種の一部も持っていく事にした。

 

 流石は世界中を旅するユバール族長からほとんど何処の土地でも育って実を成すと言われているビバ=グライプである。

 

 10日の休息期間に加えて砂漠から帰ってきたおよそ1週間の合計20日前後で、苗はグングン成長して花が咲き種も発芽して良く成長していた。

 

 水や自然豊かな土地を有するエスタード島の特性もあるのだろうが、これなら苗や種を分けても大丈夫だろうと判断された。

 

 そう言う事もあり無事にティラノスの頭蓋諸共その所有者である学者を連れてきたアルス達と合流したアレン達は、学者が強い興味を示す砂漠の城へ連れて行った。

 

 学者は見た事も聞いた事もない砂漠の大陸に若干まだ疑念を抱いていたが、砂漠の城に到着するとようやく信じたのかとても感動していた。

 

 モンスターを一掃したとは言えまだ城の周囲にはモンスターが居ると言うのに、城に残って研究をすると言った時は羽交締めにして村に案内して落ち着かせた。

 

「ハディートさん、何とかティラノスと思われる頭蓋を手に入れましたが……。どうかなさったんですか……?」

 

「……父ザラシュトロが倒れて危篤状態になってしまった」

 

 ハディートが言うにはアレン達と出会うずっと前から既に予兆はあったらしい。それは彼の母ですら既に体調を悪くしていた事だ。

 

 こんな食料事情なんだ。満足に腹一杯に食べられる訳がない。それに加えて族長夫婦はかなりお年を召していた。

 

 幸いだったと言えば、アレン達が残してくれた水や食料だけではなく薬草を得られた事だ。アレが無ければもっと早く亡くなっていただろうと彼は言った。

 

 アレン達はハディートに連れられて2階で生死を彷徨う砂漠の族長ザラシュトロの元へと向かった。

 

 彼の側には長年連れ添った妻とお付きの者が浅い呼吸のザラシュトロに泣きながら手を握り締めていた。

 

「父よっ……! 偉大な族長、ザラシュトロよっ……! 彼等はティラノスの頭蓋を手に入れて来てくれたっ……!

 

 約束は果たしてくれたんだっ……! お願いだ、目を覚ましてくれっ……! まだ、貴方にはやるべき事が残っている筈だっ……!!」

 

 ハディートの必至の懇願にも既に反応が無い族長だったが、しばらくすると嘘の様に目を開いてアレン達を見て優しく微笑んだ。

 

「おぉ、おぉ……! その黄金に輝く角は……ティラノス……。約束を……果たして……くれて……感謝、しますぞ……。

 

 儂は……もう……お迎えの……ようです……。ハディートよ、誇り高き砂漠の戦士よ……! 後は、任せた、ぞ……」

 

「……っ!? 必ず、必ずやっ……! この砂漠の村は俺が必ず守ってみせるっ……!! だからっ……!!」

 

「……ハディートさん、族長はもうお亡くなりになられた様です」

 

 砂漠の村の族長ザラシュトロは愛する息子ハディートに後を託して安らかに眠ったのだった。

 

 長年、エスタード島の神官としても活動していたアレンを筆頭にザラシュトロへ祈りを捧げたのだった。

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