エデンの来訪者   作:火取閃光

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第53話

 砂漠の村の族長ザラシュトロが死んだ事を受けて砂漠の民達は悲しみに暮れたのだった。

 

 次の族長を託されたハディートも流石に堪えたらしく、族長の葬儀は次の日に持ち越された。

 

 一夜が明けて族長の葬儀の準備を行った。本来、この砂漠の村では土葬が基本ではあるが、族長を務めた者はその遺体をナイラの河に流して母ならナイラに還るのが掟だった。

 

 こんな緊急事態に生前のザラシュトロは諦めていた事だが、数日前にアレン達が周辺のモンスターを一掃した。

 

 死を悟っていた彼は、もしも自分が死んだら件のティラノスの頭蓋と共に流して欲しいと妻に遺言を残していたのだった。

 

 これにはアレン達も了承して、ティラノス復活の儀式は族長の葬儀が終わった後に改めて試してみる事になったのだった。

 

 そして、準備が整った。ハディートを先頭に砂漠の民達と共にアレン達もナイラ河の下流にあるほとりまでザラシュトロの骸を運んだのだった。

 

 砂漠の地に徘徊していたモンスターを粗方一掃したとは言え、襲ってくるモンスターはアレン達が掃討した。

 

 砂漠の村からナイラのほとりまでおよそ2日以上も掛かる長い道のりである。

 

 族長の妻達高齢者の事を考えればもっとゆっくり向かうべきだが、危険地帯である事は変わりないので村に居た若い衆が彼等を背負いながら向かったのだった。

 

 ナイラに辿り着いた時、ハディートを含む砂漠の民達はアレンとアルスに儀式では無いが折角なので風と水の精霊の力でこの場を清めて欲しいと懇願した。

 

 その懇願に対してアレン達は勿論断るつもりは無く、風の結界と水の浄化で辺り一面を清める事で濃い血の匂いや死臭を綺麗さっぱりにしたのだった。

 

「では、これより我が父であり族長ザラシュトロの葬儀を行う」

 

 本当は簡易的でも作った棺桶の中に族長を入れたかったがそれを行うだけの時間も材料も無く、ハディートはアルスが精霊の力で生み出した水で清めた父の遺体を地面に置いた。

 

「母なるナイラよ、今ここに正しき道を歩みし族長ザラシュトロが還る。誇り高き砂漠の民、その族長ザラシュトロはまこと正しき道を歩んだ。

 

 ならばナイラよ、その腕にザラシュトロの骸を抱き……。天の国へと導き給え。やがて来る、甦りのその時まで……!!」

 

「誇り高き砂漠の民、偉大なる族長であり我が父ザラシュトロ! その遺志をここに受け継がん事を誓う!!」

 

 目に涙を浮かべながら拳を握りしめるハディートは地面に置いたザラシュトロを再び腕の中へ抱き、ナイラの河へ父の亡骸をそっと河へ流したのだった。

 

 ナイラ河へ還ったザラシュトロを見送った後、彼に続く様にしてティラノスの頭蓋を持つアルスが水の中に入りそっと河へ流したのだった。

 

 河の中へと沈んでいく族長の遺体とティラノスの頭蓋をアレン達は心の底から祈りを捧げた。

 

「これで、父も……。きっと安らかな眠りに付けるだろう……。よし! みんな、村に帰るぞ!!」

 

 ハディートの掛け声に砂漠の民達は別れ惜しむ気持ちを堪えて、ナイラのほとりを出ようとしたその時だった。

 

「ん……?」

 

「この気配は……!」

 

「まさかっ……!?」

 

 精霊の紋章があるアレンとアルスだけでは無く、先程まで族長の見送りを行った砂漠の民の僧侶が精霊の気配を感じて一斉にナイラ河へ振り返った。

 

 突如、ブクブクと泡立つナイラ河と地響きにも似た振動が起こったかと思えば、緑色の体表に身に覚えがある2つの黄金の角を生やしたドラゴンが現れたのだった。

 

「こ、これはっ……!?」

 

「まさか、ティラノスだと言うのかっ……!?」

 

「おぉ、神よっ……! これは奇跡だっ……!!」

 

 一気に湧き上がる希望と共に砂漠の民から歓声が上がる。そんな中でハディートは復活したティラノスを見て、信じ難い気持ちでティラノスに語りかけた。

 

「お前が、ティラノス……? いや、だが、しかし……。お前は、いや貴方はまさか、我が父ザラシュトロ、か……?」

 

 ハディートの自身でさえも馬鹿げた直感的な問い掛けに湧き上がっていた民達から言葉が消えて目を丸くしたのだった。

 

 砂漠の村に生きていた先代族長ザラシュトロは幼少期の頃から大地の精霊の敬虔な信徒だった。

 

 それは、アレンやアルスなどの精霊の紋章を持った生まれながらの聖人とは違い、精霊を信じて日々を祈り敬い続けた結果として擬似的な聖人に近い状態だった。

 

 そんな彼が死ぬ間際も精霊に祈りを込めてその生涯に幕を閉じた。誰よりもこの地獄と化した砂漠の民達へ安寧を願って死んだのだ。

 

 大地の精霊はこの砂漠の何処にでもいる存在だ。そんな精霊が長い人生において祈り続けた聖人の想いに応えたいと言うのは間違いである筈がなかった。

 

 しかし、同時にこの地は魔王軍によって穢れてしまった土地である。自身の顕現どころか力を使う事も儘ならない状態だった。

 

 だけど、風の精霊と水の精霊の紋章を持つ聖人達が一時的にナイラを聖域として浄化された。

 

 そして、ナイラの河の中にティラノスの頭蓋骨と魂がまだ離れていない聖人の遺骸が流された事で、条件は揃い一時的に砂がティラノスの肉体を作りその中にザラシュトロの魂が入ったのだった。




ちょっと長くなりそうだったので切りました。
また、最初のストーリーテンポを上げていこうと言う話ですが……。

これでも結構、切っている筈なのに砂漠編で結構書いている……。
おかしい、と思いつつもドラクエ7がストーリー長めだから仕方ないと言えばそうなのですが……。

本当は3〜4話書いて終わる筈だった……。
本当におかしいな……。
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