砂漠の女王ネフティス達の歓待で心と体をリフレッシュしたアレン達は、帰り際に彼女からバーンズ王宛ての書状を受け取った。
その内容はグランエスタード王国との友好の書状及びアレン達聖戦士を全面的に支援する為の同盟の提案だった。
女王ネフティスがグランエスタード王国と同盟を申し出たのは、彼女達が代々闇のルビーを封印して来た事も理由の1つだった。
魔王像の加護を得たセト達と対峙したハディート達は、自身達の子孫へ闇のルビーが如何に危険かについて事細かく記録を残して来た。
アレン達が持つ闇のルビーと砂漠の国が管理する闇のルビーが同じ時代に揃った時、何が起こっても不思議ではなく最も危険である事を示唆していた。
ただ、それはあくまでも可能性の域を出ない杞憂かもしれない。それでも、対策の1つとしてアレン達の所属するグランエスタード王国との親密な関係を築く事は悪くはないと伝えられて来た。
より簡潔に言えば何か問題が起こった時にアレン達へ即座に連絡が行く様に情報共有をする為であった。
アレン達が帰還した後、書状を読んだバーンズ王は直ぐに返事の書状を書いて、グランエスタード王国の使者団へ女王ネフティス宛ての書状を届ける様に命じた。
彼等としても今回の同盟は前々から考えていた内容だった。今は国家同士の繋がりを強固にする必要がある。
過去にそう言う思いで機械大国のフォロッド王国へ同盟を申し出たが、あまり良い返事を貰えなかったので友好関係に落ち着いていた。
ただ、それは仕方がない事でもあった。お互いからすれば復活後にポッと新たに出て来た知らない国同士である。
それに加えてフォロッド王国はグランエスタード王国の3〜4倍の国土と国民を有する大国と呼べる国家だ。
いきなり国家間の繋がりが必要だと説明を受けても素直に頷く事は出来ない事も無理はなかった。だから、女王ネフティスの提案はバーンズ王としても望むところだった。
そして、数日後にグランエスタード王国と砂漠の国の同盟が成された今回の一件によって、復活した大陸の調査で噂程度に囁かれていた聖戦士達の活躍が広く伝わる様になった。
あえてお互いの商人を使い喧伝する様に広めた事には理由があり、未だ何処にいるか不明なユバール族の情報を効率的に得る為だった。
グランエスタード王国でもユバール族の発見は最優先で行っているが、世界が広い上に彼等は放浪民族だったので単独では限界があり発見が困難だった。
だけど、その甲斐あって同盟が成立して僅か2週間程度でユバール族らしき旅の集団が、あの休息地で集落を作っていると言う情報を得たのだった。
バーンズ王から報告を受けたアレン達は次の異変の準備は一旦置いておいて、急ぎユバール族の休息地まで移動した。
本当はルーラを使い一瞬で彼等の元まで向かいたかったが、バーンズ王達の頼みもあって彼等をエスタード島へ保護する為に幾つかな船と共に向かった。
ドキドキと不安がアレン達の胸を締め付ける。キーファ達過去のユバール族と別れてまだ3ヶ月ちょっとだけど、本当に彼等の子孫なのかどうかを考えるだけで急ぎ足になっていた。
そして、ユバールの休息地に辿り着くとそこには懐かしさまで感じる大地の精霊の気配とトゥーラの音色が聞こえていた。
日が暮れている事もあり船の番を固める為に兵士達をおいてきたアレン達一向。恐る恐る近付いた彼等を見たユバール族は久しぶりの旅人達を歓迎していた。
しかし、族長達は丁度、今代の踊り手を決める儀式の真っ最中らしくまだ会えないと若き守り手達に止められた。
アレン達は周囲を見渡すと守り手達だけではなく、老若男女問わずに様々な人達が武技や魔法を習得していた事に気が付き、自分達のやった事が報われた気分になっていた。
「おや? もう儀式が終わったのかな? それにしては少し早過ぎる様な気がするが……」
守り手が呟くと同時に20歳を超えて大人びた美しくも何処か悲しさを背負った女性が、勢い良くテントを飛び出して休息地を出ていった。
「待ちなさい、アイラ! まだ、儀式は終わっていません!!」
「これこれ、そう大声を出すでない……。おや? そちらの方々は……?」
「あっ! 族長、久しぶりの旅人達ですよ」
「ほぉ! こんな辺鄙な場所まで良く来て下さいましたな」
旅人達の出会いに感謝しつつ歓迎に沸いた族長達を他所に、我慢が出来なかったアレンは改めて彼等の口からユバール族であるかを確かめたかった。
「話を割る様で申し訳ありませんが、貴方達は魔王に破れた神の復活を悲願とするユバール族で間違い無いですか……?」
「ふむ、如何にもその通りですな……。それがどうかしましたかの? そして、何故それをご存知なのか……」
「やっぱりっ……!! ヨシッ、ヨシッ……!!」
「やったね、
「
「ガウッ! ガウッ!!」
「フンッ。アタシは最初っから信じていたんだからね!」
アレンの質問に警戒心を強めた族長達であったが、目も前で涙を流しながらユバール族の生存を歓喜しているアレン達を見て、只事ではない事を察しながらも困惑を隠せない表情をしていた。
「アンタ等は一体……」
「どう言う事なのかしら……??」
「いや、待て……! 待つんじゃっ!? アレンに、アルスじゃとッ……!? それに、この特徴的な顔触れに加えて、祖先が残してくださった古文書に書いてある大恩人達と同じ名前っ……!?」
「族長っ……!?」
「それってまさかっ……!?」
ここに来て族長がハッとした様に呟いた言葉を聞いて、守り手達もユバール族に代々伝わるグランエスタード王国の聖戦士伝説を思い出した。
この物語は遥か昔のユバール族が風と水の精霊の紋章を持つ旅人達に命を救われて、歴代最強の守り手キーファがユバール族と生涯を共にする前日譚の様な物語だった。
守り手だけではなく一族のみんなは誰もが幼き日に寝物語として何度も読み聞かせられる程に好きな英雄譚であり、誰もが知っている内容だったのだ。
そして、古文書には物語には無いある一文が書かれており、いつの日か聖戦士達と出会う事があれば力を合わせて悲願を果たせ。それが神の復活の時となるだろうと残されていたのだった。