コスプレ系デュエリストのARC-V生活   作:ロボ戦極凌馬

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お久し振りです。遅くなってしまい申し訳ない。1年4ヶ月振りの投稿になります。
なんとか、今年中に投稿できました。

今回の話は、サブタイトル通りになります!


第2話 バイトと面接とコスプレ2

 

 

 ─月─日

 

 

 転生して4日目。

 

 昨日は動揺してたった一文で終わってしまった。どうか許して欲しい。優勝しておいてなんだが、未だに衝撃的過ぎる。

 

 無論、優勝を目指してはいた。

 だが、あくまで『出来たなら良いな』ぐらいの気持ちであり、コスプレしながら本物のソリッドビジョンでデュエルしたいという考えと、この世界のデュエリスト達の実力が知りたかったという理由の方が大きかった。

 この世界には、まだ『エクストラデッキ』という概念が存在していない。故に、使われる召喚方法は『儀式』と『アドバンス』の2種類だけ。なので、比率的にどちらが多く使われているのか、どういう戦法なのかを確かめたかった。

 参加して分かったのは、基本的にアドバンス召喚が主体で、儀式召喚してるデュエリストは殆どいない。あの大会に参加していたデュエリストの中で、儀式召喚を使っていたのは俺以外だと二人だけった。

 

 一人目が、まさかの『ゼラ』を使う大学生の青年。

 二人目は、ハンバーガー屋の店長さんが『ハングリーバーガー』を使っていた。

 

 どちらも懐かしいカードで、使っている所を生で見たときは本当に驚いた。ハングリーバーガーに関しては、OCGで新規が来たため驚きは少なかったけどね。ゼラも新規来ないかな……。

 

 その二人は、残念なことに二回戦で敗退してしまったが、同じ儀式召喚を使う数少ない人物だったので、勇気を出して二人に話し掛けてみた。二人とも良心的な人物だったので、すぐに打ち解ける事が出来た。俺が優勝した時は、まるで自分の事のように喜んでくれていたのが印象的だったな。

 やはり、遊戯王ワールドなだけあってデュエルで人との仲が繋がりやすい。この世界に転生して、初めて出来た友人だったのでとても嬉しかったよ。

 

 ちなみに、優勝した後にハンバーガー屋の店長さんが俺と青年を自身の店に招き入れてくれて、そこでハンバーガーをご馳走してくれた。とても美味しかったです。

 

 さて、話を戻そう。

 つまり、この世界の現状はアドバンス召喚がメインで、儀式使いは本当に少ないということだ。

 戦法としては、俺が戦ったデュエリスト達は皆、攻撃力の高い上級モンスターをアドバンス召喚して殴るか、装備魔法とかで攻撃力をアップさせて殴りかかる『ビートダウン』が殆どだった。エクストラデッキがない為、かつての04環境を彷彿とさせるデュエルスピードだったが、普通に楽しめた。

 

 ただ、やはりエクストラデッキが使用出来ないのが少し不満だ。現代遊戯王に慣れてしまっているので、どうしても物足りなさを感じてしまう。エクストラデッキが使用できれば、コスプレの範囲も広がるのだけれど。

 現状、主にエクストラデッキを多用しない遊戯王DMに登場したキャラと、他シリーズで同じくエクストラを使用しないキャラのコスプレしか出来ない。武藤遊戯とアテムは問題なく行けたが、海馬瀬人はちょっと難しい。出来ない訳ではないが、エクストラデッキが使えないのでアルティメットや合体したXYZ等を出せない。融合だけでも良いから、エクストラデッキの概念が登場して欲しい。

 

 それにしても、本当によくあのデッキで勝てたものだ。今回、大会で使用したのは『アテムデッキ』

 

 アニメ『遊戯王デュエルモンスターズ』において、闇遊戯ことアテムが使用したデッキを、可能な限り再現した物だ。武藤遊戯とアテムが使用したカードは、OCGではリメイクや派生したカードが多く存在しているが、今大会で使用したデッキはアニメ版に極力近付けた構築になっている。一部、劇場版の『光のピラミッド』『超融合~時空を越えた絆~』『THE DARK SIDE OF DIMENSIONS』で登場したカードも投入している。

 

 勿論、全てピン差しの『ハイランダーデッキ』使用になっている。

 

 ちなみに、今回のアテムデッキには『三幻神』は入れていない。カード自体は、転生特典でこの世界に持ち込んだ生前に所持していたOCG版三幻神と、万能アタッシュケースから取り出したアニメ版三幻神の二種類が存在する。

 

 このアニメ版三幻神についてだが……これに関してはちょっと長くなるので、別の機会に話すことにしようと思う。

 

 長くなったので、今日はここまでにしよう。

 

 お休みなさい。

 

 

 ─月─日

 

 

 転生して、5日目。

 

 今日は、俺の『コスプレ』について書き記していこうと思う。

 

 俺のコスプレに関しては、転生神から特典として貰った『万能アタッシュケース』のおかげだ。

 このアタッシュケースは、カードだけでなく、遊戯王シリーズに登場した人物の服装・装飾・アイテム・デュエルディスク等が取り出すことが出来る。これのおかげで、大会で千年パズルを装備した闇遊戯ことアテムのコスプレで出場することが出来た。

 ちなみに、千年アイテムだけでなく、『Dホイール』や『ブルーアイズジェット』と言った乗り物すら取り出すことが可能だ。

 

 だが、一番驚いたのは千年アイテムだ。付属されていた説明書によると、転生神が遊びで作った物らしく、邪悪な力は宿っていないが、機能は本物だと書いてあった。

 つまり、東映版遊戯王でやっていた罰ゲームだったり、闇のゲームを行う為の特殊な空間を作り出すことが出来るらしい。他にも、千年タウクなら未来予知、千年眼なら読心術等だ。千年眼に関しては、左目と一体化することが可能であり、ちゃんと着脱が出来る。ポケットに入れていても機能するらしい。

 さらには、劇場版に登場したアヌビスが持つ光のピラミッドや、藍神のキューブもあるので、『次元領域デュエル』も可能という訳だ! 

 

 まだ一度も試してはいないが、いずれは次元領域デュエルとかやってみたいと考えている。

 

 次に服装と外見についてだ。

 取り出せる服装、つまりコスチュームには、これまた特殊な能力が付与されている。コスチュームを着ると、それの元になった人物に変身出来るのだ。言葉通りの意味で、顔・身長・体型・髪型・声、そっくりそのまま外見が変化する。その結果、大会では全力でアテムロールプレイが出来て最高に楽しかった。

 

 以上が、コスプレに関する内容だ。もはや、コスプレという領域を越えているような気がしなくもないが……。

 まぁ、楽しくデュエルが出来たから問題はないだろう。これからも楽しみだ! 

 

 今日はここまでにしよう。お休みなさい。

 

 

 ─月─日

 

 

 転生して、6日目。

 

 今日は、前に少しだけ言及していたバイトについてだ。

 

 街へ散策した際、複数の求人雑誌を手に入れたが……流石は遊戯王ワールド、ここでも驚かされた。

 圧倒的にデュエルモンスターズ関連の求人が多いのだ。コンビニやスーパーと言った、元の世界と殆ど変わらないものもあるが、全体数で見れば少ない。

 

 デュエル関連としては、『デュエル塾』の講師又はサポーターから始まり、家庭教師のデュエル版だったり、カードショップの店員兼デュエル係、小規模から大規模のデュエルイベントのスタッフ等。どれもこれも、絶対にデュエルモンスターズが絡んでいる。

 特に、デュエル塾だ。街に足を運んだ時も、色んな所にデュエル塾の看板を掲げた建物が沢山あった。コンビニの数より多いって凄いよね。

 

 儀式召喚を教える『儀式塾』

 デッキ破壊を教える『デッキ破壊塾』

 サイコ・ショッカー、王宮のお触れを駆使した『罠制圧サイコスクール』

 

 他にも、『エンディミオンデュエルスクール』『ディアンケトそっくりの講師が教えてくれる! 回復デュエルスクール』『女性に大人気! ローレベルデッキ塾』等である。

 

 他にも色々とあるが、とにかく癖の強い塾が沢山あったよ。

 

 そんな中から、俺がバイトとして選んだのは『RISUS(リーゾス)』という、デュエル喫茶だ。リーゾスとは、ラテン語で『笑顔』と言う意味らしい。

 このお店は、メインは喫茶店として機能しており、そこにデュエルを組み込むことで、サービスを受けることが出来るとのこと。

 

 前世では考えられない仕組みだが、今の内に慣れておかないと、後々疲れると思ったので割り切ることにした。

 そして、この店を選んだ理由としては、単純に時給が良かったからである。本当に単純だな、と自分でも思ってはいる。どこの世界でも、お金は必要なのさ。

 

 と言う訳で、明日はバイトの面接があるから、ここで切り上げようと思う。転生後、初のバイト面接……落ちないことを祈る。

 

 お休みなさい。

 

 

 ─月─日

 

 

 転生して、7日目。

 

 朗報!! 無事、面接に合格! 

 

 面接なんて久し振りだったから、少し緊張したが、そこは元社会人。緊張に負けることなく、ハキハキと店長さんと話して来たぜ! 

 

 店長さんは男性で、背の高いダンディなおじ様だった。話によると、奥さんと一緒にお店を立ち上げたのだそうだ。面接の際、奥さんと一緒に俺の面接を対応してくれたのだが……ここだけの話、奥さんはメッチャ美人だったよ。

 

 さて、ここからはお店の話になる。

 RISUSは、街ではかなりの人気があるお店なのだ。インターネットで調べた所、一番の理由としては、やはり喫茶店なので提供する料理が美味しいからだそうだ。値段も比較的に安いのもポイントの1つ。

 他にも、店長さんと奥さんも人気の理由らしい。まぁ、気持ちは分かる。店長はダンディなイケおじで、その奥さんは美人ときた。人気にならない訳がない。

 

 更には、従業員も人気の理由らしい。俺はまだ会ったことはないが、ネットによると全員が可愛い子だとのこと。

 正直、ちょっと会うのが楽しみになってきた。下心はないぞ、決してな! 

 

 話を戻そう。

 色々と理由を上げたが、もう1つある。ここからが、この世界特有の要素なのだが、やはり『デュエル』だ。

 昨日の日記に書いた事だが、俺がバイトする店は普通の喫茶店ではなく、『デュエル喫茶』だ。

 RISUSでは、店員さんとのデュエルで勝つことにより、ちょっとしたサービスを受けることが出来る。

 

 ラインナップとしては、スイーツ1つ無料券、お会計半額、店員さんとのツーショット(店長と奥さんも含む)である。中でも、店員さんとツーショットが一番人気とのこと。美人な奥さんと可愛い店員達と撮りたい客が多いらしい。店長さんも女性客からの人気が高いとのこと。

 

 ちなみに、お会計半額に関してのみ、お客側が負けたら+500円加算される仕組みになっている。結構、ちゃっかりしているなと思った。

 

 言い忘れていたが、店での俺の役割はホール兼デュエル係だ。デュエル係は、お客が上記のサービスを使用した際に、そのお客とデュエルするのが仕事だ。この係は、俺がシフトで入っている日は全て担当し、俺が居ない日は店長が担当することになっている。

 どうやら、この係の前任者が辞めてしまったので、求人雑誌に募集をかけたと言っていた。

 

 辞めた理由は、お客とのデュエルで負けが続き、自信を失くしてしまったそうだ。店長さん達は、気にしなくて良いと色々とフォローしていたそうだが、努力虚しく去ってしまった。

 まあ、確かにプレッシャーが掛かる仕事だから、仕方がないとは思う。そうならない様に、俺も気を付けなければ。

 

 最後に1つ、報告がある。

 なんと、俺がお客とデュエルする際、コスプレすることが許可されたのだ! 

 面接の時、『何か趣味や特技はあるかい?』と聞かれたので、正直に『コスプレデュエルです!』と答えたら店長さん達が食い付いてくれた。部分的に誤魔化しつつ詳細を話したら、面白そうだからOKとすんなり許可が降りた。

 

 コスプレしたいキャラが沢山あるから、デッキの用意が少し大変だが、楽しくなりそうなので問題無し! 

 

 バイトは明後日からなので、万全な準備をしておかないと。

 

 今日は、ここまで。お休みなせい。

 

 

 ─月─日

 

 

 転生して、8日目。

 

 今日は、コスプレの選定を行った。

 

 エクストラデッキが使用できないので、それに極力依存しないDMかGXのキャラクターが望ましい。その上で、現状のデュエル環境に問題なく対応が出来るデッキ……候補が多すぎて、逆に悩んでしまった。

 色々と悩んだ末、GXの有名なキャラクターに決定した! キャラ的にもインパクトがあり、カードの種類もそれなりに豊富で、今の環境なら丁度良いと判断した。

 

 既にコスチュームとデッキ、デュエルディスクはバッグに詰めて準備万端である。

 何回デュエルすることになるのだろうか。最低でも、5回はしたいところだ。

 

 明日の為に、今日は早く寝ようと思う。

 

 今日はここまで、お休みなさい。

 

 

 ─月─日

 

 

 やっべぇ、初っぱなでワンキルしちゃった……。

 

 

 

 

 ▼▲▼▲▼▲▼▲

 

 

 ────舞網市。

 

 ここは、日本において最もデュエル事業が盛んに行われている街。

 デュエルディスクやリアルソリッドヴィジョンと言った、最新のデュエル技術から始まり。カードデザイナーやカード製造、零細企業から大企業まで幅広く存在する多種多様なデュエル塾。

 

 他にも、デュエルモンスターズ関連を取り扱った飲食・服飾・広報・記者、様々な業種が入り乱れている。

 

 正に『デュエル都市』と言っても過言ではないだろう。

 

 そんな街に、住民から人気とされている飲食店が複数存在する。

 

 その内の一つが、一年半前にオープンしたデュエルカフェ───RISUS(リーゾス)だ。

 

 このお店は、提供する全ての料理が絶品で値段がリーズナブルなこともあり、子供から大人まで足繁く通っている。人気店となった理由の一つにコーヒーも含まれており、店長が淹れてくれるコーヒーを飲む為だけに通っている者も居る程だ。

 

 更には、働いている従業員の女性達が可憐な容姿をしていることもあってか、老若男女に好かれているのも理由の一つとなっている。

 

 そんな人気店に、今日からとある男が働くことになる。

 

 

「──になるかな。何か、質問はあるかい?」

 

「とても分かりやすい説明でしたので、大丈夫です!」

 

「そうかい? なら良かったよ」

 

 

 開店前のリーゾス店内にて、二人の男が向かい合って話し合いをしていた。

 一人は、整った顔立ちに180cm後半はあるであろう身長と邪魔にならない程度の顎髭を生やし、穏やかな雰囲気を放っている。この人物こそ、リーゾスの経営者であり店長を勤めている──『上坂正典(うえさかまさのり)』である。

 

 そして、もう一人。店長より少し低めの身長に黒髪短髪、やや童顔の青年。

 この人物こそ、若くして過労で亡くなり、転生神によってこの世界へと転生を果たした存在──『神楽坂幸人(かぐらざかゆきと)』である。

 

 気付いた人も居るだろう。彼の名字は、偶然にも遊戯王GXに登場するコピーデッキ使いの『神楽坂』と同じだったりする。その為、前世では名字とキャラデッキ使い、神楽坂レベルの運命力を発揮していたことで遊戯王好きの友人達からネタにされていた。

 

 ここだけの話ではあるが、この世界に転生してから幸人の運命力が前世の頃より高くなっていたりする。どれぐらい上がったかと言うと、前世ではアテムデッキで10回中2回は事故っていたが、転生後は基本的に事故らなくなった程だ。

 

 話を戻すが、彼は転生して3日目で街のデュエル大会に参加して優勝。30万円という大金を手に入れたものの、それだけでは足りなかった。家賃は問題ないが、食費や光熱費、引っ越し資金の為にアルバイトをすることになったのだ。

 

 

「そろそろ時間だ。お店を開けるから、さっき言った通りにお願いするよ」

 

「分かりました、任せて下さい」

 

「良い返事だ。困ったことがあったら、遠慮なく私に聞いて欲しい」

 

 

 そうこうして、時間通りに開店。平日ということもあり、開店直後のお客の入りは疎らだ。

 だが、早めの昼食を摂る為なのか、お昼の時間帯に近付くにつれてお客が徐々に増えて来ていた。

 

 店内は、変わらず店長と幸人の二人だけで対応している。店長の奥さんも居る筈だったのだが、どうしても外せない急用が出来てしまったとのことで店には居ない。店長が調理を行い、出来上がった料理を次々に幸人がお客の席まで素早く届けていた。その様は、どこか手慣れているように見える。

 

 初日なのにも拘わらず、彼が想像以上に動けているのには理由がある。なんてことはない、高校生時代に飲食店でバイトをしていた経験があったのだ。こうして転生後でも役に立っているのだから、アルバイトの経験は馬鹿に出来ないものだ。

 

 そして、お客の出入りが落ち着いた頃、店内で食事を終えた常連客の一人が、カウンターに立っていた店長に声を掛けた。

 

 

「店長、新しい子を雇ったんだ?」

 

「えぇ、新人の神楽坂くんです。漸く求めていた子が来てくれたので、一安心ですよ」

 

「ってことは、彼が新しいデュエル担当?」

 

「そうなんですよ。ですので、神楽坂くんが出勤している日は、彼が対応してくれます」

 

 

 それを聞いた常連客の男──『強田(ごうだ)ツヨシ』は、待ってました! と小さくガッツポーズした。

 

 

「1ヶ月振りに店のサービスを利用できるな!」

 

「一応言っておきますが、1ヶ月前からサービス自体は利用できましたよ?」

 

「その場合、デュエルの相手は店長だろ? 無理だよ、俺じゃ勝てねえって」

 

「やってみないと分からないじゃないですか」

 

「いやいや、常連客の間じゃあ共通認識だぜ? 店長がメチャクチャ強いってのはさぁ」

 

 

 そう、強田の言う通り上坂店長のデュエリストとしての腕はとても高い。店を立ち上げた当初、今より従業員が少なかった頃は、店長自らがデュエル係を担っていたのだ。

 その時の戦績は、まさかの無敗。腕に覚えのある客達は、悉く店長の前に倒れ伏していった。その容赦のない圧倒的な強さから次第に挑む者は居なくなってしまい、それを危惧した店長はデュエル係のアルバイトを雇い始めたのである。

 

 ちなみに、店長の使用するデッキは【ライトロード】だったりする。

 

 

「よしっ! んじゃあ、新人くんの最初のデュエル相手になってやるか! 店長、サービスを利用するぜ!」

 

「承りました。どのサービスになさいますか?」

 

「勿論、お会計半額で!」

 

「分かりました。強田さんが負けた場合、+500円になります」

 

「へへっ、悪いな店長。そう簡単には負けないぜ。この1ヶ月の間にデッキを見直したからな!」

 

 

 そう言うと、彼は自信満々に腰のデッキホルダーをベルトから外して掲げる。そこへ、丁度よく神楽坂が空いたお皿を下げに戻ってきた。

 

 

「丁度良かった。神楽坂くん、デュエル係としての初仕事だよ」

 

 

 店長のその言葉に、待ってました! と言わんばかりに、顔を綻ばせる。彼は「準備してきますね!」と、笑みを浮かべたままバックヤードの奥へと小走りで消えていく。それを確認した店長は、彼が戻ってくるまでの間に強田に対して説明をすることにした。

 

 

「強田さん。神楽坂くんとのデュエルのことで、少し説明させて頂きたいのですが……」

 

「ん? なんだい店長?」

 

「新しいデュエル係である神楽坂くんなんですが、前任の子とは違って少し特殊でしてね」

 

「と言うと?」

 

「彼は、コスプレをした状態でデュエルするんですよ」

 

 

 店長の口から放たれた、コスプレというワード。それを聞いた強田は、一瞬だけポカーンと間抜けな表情になったが、自分の中で情報処理が上手くいったのか「へぇ~、なるほどね」と返した。

 

 

「おや? あまり驚かないんですね?」

 

「まぁ、今時コスプレしながらデュエルする奴なんて、そこまで珍しくはないからなぁ」

 

「言われて見ると……そうかもしれませんね。この辺りでは、あまり見かけませんが」

 

「あぁ~、それもそうか。そう言う意味じゃ、確かに珍しいのかもな」

 

 

 強田の言う通り、コスプレをしながらデュエルするデュエリストは意外と多い。と言うのも、デュエルモンスターズが世界的に大人気エンターテイメントとして、最早常識となっているこの世界において、アマチュアからプロまで数多くのデュエリストが世界中に存在している。

 

 故に、少しでも名を挙げたいという考えを持つ者が出てくるのは必然と言うべきだろう。デュエルの実力だけでなく、派手に着飾り、自身にキャラ付けをした上でデュエルをすることで周りから注目を集める。

 分かりやすく例えると、遊戯王5D'sのフォーチュンカップ編で、十六夜アキにボコボコにされた『ジル・ド・ランスボウ』みたいなデュエリストが世界中に居るということだ。

 

 

「彼がコスプレをしている時は、キャラに成りきっているので口調や態度が荒かったりする場合もあるので……」

 

「安心してくれよ店長。俺も大人だぜ? そういった事は、エンタメだって割り切れるさ」

 

「助かります」

 

「それにしても、一体どんなコスプレなんだろうな? 店長は知ってるのか?」

 

「いえ、私も知りません。彼曰く、レパートリーは豊富らしいのですが……」

 

 

 幸人がどんな格好で現れるのか、二人で談義をしていると……。

 

 

「すまない、待たせたな」

 

 

 聞こえてきたのは、低く冷たい声。二人が振り向いた先に居たのは、神楽坂とは似ても似つかない男だった。全身を黒い服で身を包み、その上から金のラインが走る漆黒のロングコートを着込んでいる。髪は首元まである少し長めの茶髪、顔の上半分を額部分に紅玉が埋め込まれた禍々しい黒い仮面で隠していた。

 

 身長が変わってない所を除けば、完全に別人である。随分と気合いの入ったコスプレに、店長達も「おぉ……!」と思わず唸る程だ。

 

 

「見違えたよ神楽坂くん。話には聞いていたけど、これ程とはね」

 

「ふっ、当然だ。私にかかれば造作もない」

 

「おぉ、もうキャラに成りきってやがる。ちなみになんだが、その格好の時は何て呼べばいいんだ?」

 

「ふぶ……ダークネスだ」

 

「OKダークネス。んじゃ、やろうぜ」

 

 

 不適な笑みを浮かべながら、二人は移動を開始する。向かうは、店の一番奥に設置されたデュエルフィールド。スペースの関係と飲食店という観点から、リアルソリッドビジョンを搭載しておらず、アクションデュエルは出来ない仕様になっている。

 

 向き合うようにデュエルフィールドに立つ二人。すると、その姿を確認した周りのお客達が一様に反応し出す。

 

 

 ──おっ、デュエルが始まるみたいだな。つーか、サービス使ったの強田かよ

 

 ──この店でのデュエルは久し振りよね? 

 

 ──デュエル係の子が辞めたらしいからね。てことは、あの仮面の子が新しい担当かな? 

 

 ──コスプレかしら? 元ネタとかあるのかなぁ? 

 

 ──オリジナルじゃね? 最近はそういうのが流行ってるし

 

 

 周りが賑やかになってきた中、二人はデッキホルダーからデッキを引き抜き、腕に装着しているデュエルディスクにセットする。強田が愛用しているのは、街で流通している一般的なディスクでカラーリングは紺色だ。

 

 一方、ダークネスのデュエルディスクは青と白の流線型の旧型タイプであった。 

 

 

「へぇ、旧型を使うのか。でも、見たことないタイプだな。特注品か?」

 

「そんな所だ」

 

 

 無駄話も程々に、両者はディスクを構える。装填したデッキがディスクのオートシャッフル機能によってシャッフルされる。その後、互いにディスクを展開。強田の最新型はカードを置く為のプレートを実体化させ、ダークネスは収納されていた部分が横に展開しプレートとなる。

 

 

「「決闘!!」」

 

 

 

 ダークネス(吹雪ver) LP4000

 

 VS

 

 強田ツヨシ      LP4000

 

 

 

 遂に始まった二人のデュエル。互いにデッキトップから初期手札となる5枚のカードをドローする。すると、準備を終えたことを認識したデュエルディスクが先行・後攻の自動振り分けを開始した。2、3秒経つと、強田のディスクのモニターに『先行』の二文字が表示される。

 

 

「どうやら、俺が先行みたいだな。遠慮なく行かせて貰うぜ!」

 

 

 意気揚々と告げると、自分の手札に視線を落とす。彼の初期手札の内容は以下の通りである。

 

 

 ・キング・オブ・ビースト

 ・ワン・フォー・ワン

 ・攻撃の無力化

 ・サイクロン

 ・偉大魔獣ガーゼット

 

 

 悪くない手札だ、と内心ガッツポーズを取る。見直して強化したのはいいが、このデッキでの実戦は初めての為、事故が起きないか不安だったのだ。一先ず、最悪の事態は免れたので行動に移す。

 

 

「手札のモンスターを墓地に送ることで、魔法カード《ワン・フォー・ワン》を発動! デッキからレベル1のモンスターを一体、特殊召喚する! 俺は《モジャ》を守備表示で特殊召喚!」

 

 

 ディスクにセットしてあるデッキから1枚のカードが飛び出し、そのカードを実体化したプレートにセットした。すると、黒いボディに黄色の顔をした小さいモンスターがフィールドに出現する。

 

 

 モジャ レベル1

 

 ATK100 DEF100

 

 

「墓地へ送った《キング・オブ・ビースト》の効果により、俺のフィールドに存在する《モジャ》をリリースすることで墓地から特殊召喚できる! 蘇れ、《キング・オブ・ビースト》!!」

 

 

 フィールドの《モジャ》が粒子となって消滅すると、先程とは比べ物にならないデカブツが現れる。黒いボディに黄色の顔は《モジャ》と共通しているが、体はより大きくなり、その巨体を支える為に太く強靭な足が数本生え、不気味な顔付きへと変貌を遂げている。

 

 

 キング・オブ・ビースト レベル7

 

 ATK2500 DEF800

 

 

 召喚された《キング・オブ・ビースト》は勇ましい咆哮を上げ、対戦相手であるダークネスを睨み付けるが、当の本人は微動だにしない。

 

 

「俺はカードを2枚伏せて、ターンエンドだ」

 

 

 残り3枚となった手札から、2枚のカードを魔法&罠ゾーンにセットする。セットカードは速攻魔法の《サイクロン》とカウンター罠の《攻撃の無力化》だった。

 

 

(次のターン、彼が《キング・オブ・ビースト》を越えるモンスターを出したとしても、《攻撃の無力化》でバトルフェイズを強制終了させて、魔法罠を伏せたならエンドフェイズにサイクロンで破壊……完璧だな!)

 

 

 強田は、頭の中で次ターンでの動きを予想する。現代遊戯王でも、通れば強い『エンドサイク』を一発かます気でいるが、それをこのデュエルで使うことがないことを彼はまだ知らない。

 

 

「私のターン、ドロー」

 

 

 ターンがダークネスへと移り、後攻である彼はドローフェイズでデッキからドローすることで出来る。6枚に増えた彼の手札は以下の通りである。

 

 

 ・ライトニング・ストーム

 ・黒竜の雛

 ・真紅眼の黒竜

 ・黒炎弾

 ・レッドアイズ・インサイト

 ・黒炎弾

 

 

 なぁにこれぇ、と初手を確認した時にダークネスの心の中で漏れた言葉だった。ドローしたカードが2枚目の《黒炎弾》な辺り、ワンキルしろ、そうデッキが告げているかのように思えた。

 だが、ダークネスは少し迷っていた。果たして、記念すべきデュエル係としての初戦をワンキルで終わらせて良いものかと……。

 

 

(いや、初戦だからこそ、インパクトのある終わらせ方が良いか……)

 

 

 一瞬の逡巡の後、彼はワンキルすることを決意し、直ぐに動き出した。

 

 

「私のフィールドに表側表示のカード存在しない為、手札から魔法カード《ライトニング・ストーム》を発動。2つある効果の内、1つを選び発動させる。私は2つ目の効果を選択する。その効果は、相手フィールドの魔法・罠カードを全て破壊する」

 

「なんだと!?」

 

 

 カードをディスクに読み込ませると、天井から雷が落ちる。落雷は、強田の2枚の伏せカードを貫き破壊した。

 

 

「くっ、サイクロンと無力化が……!」

 

「邪魔なカードは排除した。私は《黒竜の雛》を攻撃表示で召喚!」

 

 

 黒竜の雛 レベル1

 

 ATK800 DEF500

 

 

 フィールドに現れるは、真っ赤な卵から頭だけを出している小さな黒い竜。召喚と同時に口から軽く火を吹いていたが、《キング・オブ・ビースト》を視界に入れると、あまりの迫力に驚いたのか縮こまってしまう。

 

 

(随分と可愛い挙動をするな)

 

 

 役に成りきっている為、変化することがない表情と態度とは裏腹に、微笑ましいものを見たなと内心ほっこりするダークネス。彼がデュエルする際、デュエリスト同士のやり取りだけでなく、こう言ったモンスター同士の細かな挙動を見るのも楽しみの一つだったりする。OCGでは味わうことが出来ない、ソリッドヴィジョンを利用した遊戯王ワールドだからこそ楽しめる事柄だろう。

 

 

「《黒竜の雛》の効果により、自分フィールド場に表側表示で存在する自身を墓地に送ることで、手札よりこのモンスターを特殊召喚することが出来る」

 

 

 ディスクにセットされている件のカードを墓地に送ると、フィールドの小さき黒竜に変化が訪れる。燃え盛る黒い炎が身体を包み込み、それが空気を入れる風船のように膨れ上がっていく。

 

 

「現れろ、《真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)》!!!」

 

 

 力強い声と共にデュエルディスクにカードをセットする。それと同時に、膨れ上がった炎が内側から突き破るかのように弾け飛ぶ。中から現れたのは、《キング・オブ・ビースト》にも引けを取らない巨体の黒き竜。雛から成体へと至った姿だった。

 

 

 真紅眼の黒竜 レベル7

 

 ATK2400 DEF2000

 

 

「れっ、レッドアイズだって!?」

 

 

 ──す、スゲェ! レッドアイズだ! 

 

 ──嘘だろ、ホンモノなのか!? 

 

 ──デュエルディスクが認識したってことは、ホンモノってことだろ……

 

 ──スゴい……レッドアイズなんて私、初めて見た

 

 ──というか、見たことある奴の方が珍しいだろ

 

 ──真紅眼の黒竜、この眼で拝める日が来ようとは……

 

 

 強田だけでなく、二人のデュエルを観戦している客達も驚きに満ちていた。それも仕方のないことなのだ。

 

 《真紅眼の黒竜》

 それは、《ブラック・マジシャン》《青眼の白龍》と同様にデュエルモンスターズ黎明期において製作されたカード。

 当時、破格のスペック故に生産数が限られ、上記の他二種類同様に『伝説のレアカード』の扱いを受けている。

 

 生産数は、三種類共に10枚~20枚であり、中にはイラスト違いも含まれていると言われている。

 

 

「れ、レッドアイズには驚いたが、それでも攻撃力は《キング・オブ・ビースト》のが100ポイント上だぜ。どうする?」

 

「慌てるな。直ぐにでも分かる」

 

 

 フィールドに存在する2体のモンスターが互いに睨み牽制し合っている中、ダークネスは次の行動へと移る。

 

 

「私は、モンスターゾーンに存在する《真紅眼の黒竜》を対象として、魔法カード《黒炎弾》を発動! 対象とした《真紅眼の黒竜》の元々の攻撃力分のダメージを相手に与える!」

 

「レッドアイズ専用のバーンカード!?」

 

「2400ポイントのダメージを受けるがいい! やれ! レッドアイズ!」

 

 

 睨み合っていたレッドアイズは、その雄々しい口を大きく開ける。黒紫色の禍々しい炎の塊が口に中に生成され、発射態勢へと入り──

 

 

「黒炎弾!!!!」

 

 

 ──発射された。

 

 

「ぐぅあああああああああッ!!!?」

 

 

 強田ツヨシ  LP4000→1600

 

 

 強田に向かって放たれた炎の塊は、《キング・オブ・ビースト》の体をかすめながら着弾した。たった1枚のカードによって、強田のライフは半分近くにまで削られてしまう。

 

 

「くぅ~、今のは効いたぜ……!」

 

「《黒炎弾》のデメリット効果により、このターン《真紅眼の黒竜》は攻撃することができない」

 

「なるほど、それ相応の反動があるのか。なら、次のターンで失ったライフ分を取り戻さないとな!」

 

「残念だが、貴様に次のターンは回ってこない。このターンで、貴様のライフポイントは尽きる」

 

「どいうことだ? レッドアイズは攻撃できないんだろ? 例えできても、レッドアイズの攻撃力じゃ俺のモンスターを破壊できない。どうやって俺のライフを0にするんだ……」

 

「フッ、ならば教えてやろう。私が発動した《黒炎弾》には、ターン1制限は付いてない」

 

「それがどうし……ま、まさか!?」

 

 

 何かを察した強田。そんな彼に対し、ダークネスは笑みを浮かべながら、残り2枚となった内の1枚を公開した。

 

 

「に、2枚目だとぉ!?」

 

 

 ダークネスは、公開した2枚目の《黒炎弾》をディスクに読み込ませる。すると、沈黙していたレッドアイズが再び雄々しい口を開け、力を溜めていく。

 

 

「黒炎弾!!!!」

 

 

 その言葉と共に、再び放たれる。黒竜より発射された弾は、先程と同じように真っ直ぐ強田に向かい着弾した。直撃した際に発生した、ソリッドヴィジョンによる砂煙が晴れると、強田が片膝を着いて悔しい表情を浮かべていた。

 

 

 強田ツヨシ  LP1600→0

 

 

【WINNER ダークネス】

 

 

 ダークネスによるワンターンキルによって、デュエルの決着が付いた。店の複数箇所に設置されたモニターには、勝者の名が表示される。それと共に、観戦していた客達から拍手喝采が沸き起こった。

 

 

 ──良いぞ二人とも! ナイスファイト!! 

 

 ──残念だったな強田! ありゃあ、相手の手札が良すぎだ! 

 

 ──新入り君おめでとう! 良いものを見せて貰ったよ! 

 

 ──おいダークネス! 次はオレとデュエルしてくれ! 

 

 ──ちょっと、あなたまだ店長から許可取ってないでしょ! 次は私よ! 

 

 ──僕も彼に挑んでみようかなぁ

 

 

 聞こえてくるのは、二人に対する称賛や、強田を慰める声など様々だ。そんな二人は、お互いにフィールド中央まで歩き、握手を交わす。

 

 

「まさかワンキルされるとは。でも、次は勝つぜ?」

 

「私が働いている時間帯なら、いつでも挑戦を受けよう」

 

 

 互いに笑みを浮かべまま、デュエルフィールドを後にする。

 こうして、ダークネスのデュエルカフェでの初勝負は勝利で飾るのだった。

 

 ちなみに、この後デュエルの申し込みが立て込み、滅茶苦茶デュエルした。

 

 

 

 




如何でしたでしょうか?

2回目のコスプレは、遊戯王GXよりダークネス(吹雪さん)になりました。いずれは藤原やミスターTもやりたいですね。

ギリギリ年内に間に合って良かったです。不定期更新になりますが、来年もよろしくお願いいたします。

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