ダンジョンにろくでなしが居たって間違いじゃ無いだろう? 作:ケツアゴ
「【フツノミタマ】!」
深い霧が立ち込めるダンジョン十二階層、その場に高く伸びる光の柱が出現する。
その正体はタケミカヅチ様眷属のヤマト・命って子の魔法による強力な重力結界、私の見立てじゃランクアップすればゴライアス相手でも押さえ込めるだろうさ。
「魔法自体は強力だけど、詠唱は長いわ目立つから遠くの敵を引き寄せるわ、近距離主体の仲間が攻撃に参加できないわ、ぶっちゃけ総評は……はい、
「ふがっ!?」
その魔法を持続させる為に薬で回復、そして魔法を受けているのはベル君だ。
「ほらほら、ベル君も魔法止まってるよ」
「ファ…【ファイアボルト】!」
流石に今の彼が食らったら全身の骨がグッチャになって死ぬから春姫ちゃんの魔法【ウチデノコヅチ】で一時的にランクアップした状態で片手腕立てしながら魔法連発、当然彼も精神力が切れそうな時に私が口に薬を流し込む。
重力結界? はっはっはっ! この程度、私からすれば真上から来るそよ風程度さ。
「とりあえず一人辺り五ダース用意したから。最後の一本飲んだら残りの精神力を全部注ぎ込んで自爆で耐久鍛えようね。エリクサー有るから、その後でエリクサーが全部無くなるまで殴り合いだ」
「ベル殿、少し思ったのですが……」
「偶然ですね。僕も一つ……」
「この人、加減を知らない……」
口を動かす余裕があるみたいだし、午後からは初級レベルからもう少し上げるとしようっと。
「レフィーヤちゃんとか学区の生徒は逆立ち走りとか重り担いで走りながら魔法を限界まで使ってたんだよ? 慣れて来たら魔法を打つ側と避けながら逃げる側を交代でやってたんだぜ」
「一体何人の心を折って来たんですか!?」
「九割以上? 私って創設者と知り合いだから歴代の責任者とも顔見知りで臨時講習をしてたけど、毎年そんなことになってたら残った子がいくらランクアップしても解雇されちゃった」
むしろあんな所で心折れた方が良くない? ダンジョンの奥で泣き叫ぼうが誰も救ってくれないんだから。
「恩恵って本当に便利だよね。普通の人間はズタボロに痛め付けようが能力が飛躍的に上がったりはしない。生死の間を彷徨うだけで生き残る確率が上がるならドンドン彷徨おう。だって私以外は一度死ねば終わりだしさ」
せっかく(打てば響く)面白い子に出会ったんだ、特にベル君も
みたいに私の本性を知ってるのに簡単に騙せ……純粋で真っ直ぐな子は未だに荒れてる今の世界じゃ珍しいからね。
モンスターへの憎悪は代を重ねる事で積み重なり、積み重なったノウハウでランクアップを重ねた悪い子が他人を虐げる。
いやはや、世界に平穏が訪れるのは何時になるやら。
「まあ、そんな事はどうでも良いか。目の前のお気に入りが平和なら。それで春姫ちゃんはっと……」
さて、彼女の魔法は強力だけれども、それだけで良いのかって話なんだよね。
私なんか遠くの国に行けばすれ違うレディが見惚れる程で、魔法だって自分が使い易い様にって開発と改良を重ねている。
ナイフの扱いは教えられるレベルじゃないけれど、概ね何もかもが完璧じゃないのかな?
「一芸特化じゃ生き残れないからね。私じゃあるまいし、たった数人の強者に出来る事なんてたかが知れてるんだ」
頼むから寿命までは私を置いて行かないで欲しいものだと思うんだけれど、人って死ぬ時は前触れも無く簡単に死ぬからなあ。
そもそも死なせたくないならダンジョンなんか行かせるなって思うんだけれど、
「何処を狙っている」
「判断が遅い」
「そもそもやる気があるのか?」
「ほら、さっさと立て」
具体的に説明するとガリバー兄弟相手に実戦形式の稽古付けてもらってる。
先日にちょっと無茶振りした結果、四人揃ってランクアップを果たしたし、フィアナ騎士団が自ら名前を掘った彫った鍋敷き……じゃなくて
石板の事もあって怪物祭までの数日間だけ付き合ってくれてるのさ。
無論、私が彼等の相手をする時ほどじゃないけれど、蟻を潰さずに摘む位の手加減で春姫ちゃんを攻撃、それを避けるか痛くても怯んで動けなくなるのを避ける特訓。
目を閉じた敵なんて絶好の的だものね、当然さ。
「渦よ!」
幾ら友達の孫の孫の孫の曾孫だからってその辺は甘くしない私だけれど、ちょっとしたプレゼントはあげている。
それは二つの扇、雉と矢を描いた物と瓜と雀を描いた物で、雉と矢の方は『
詳しく説明すると面倒なので簡単にすると外付けの魔法スロットだ。自分の魔力を消費する代わりに内蔵された魔力が切れて壊れる事のない魔剣の扇バージョン、但し耐久力以上のダメージを受ければ普通に壊れる。
春姫ちゃんが速攻魔法レベルの速度で発生させたのは短文詠唱レベルの風の渦、こっちは防御用で風の刃だって飛ばせる。
もう片方は
「魔力の練りが甘い」
「そろそろ限界か? 気絶前に精神力を回復させろ」
「あの性悪爺に借りを作ったままなのは嫌だから付き合ってやってるんだ」
「さっさと構えろ。一人じゃ何も出来ない赤子か、お前は。建前だけでも団長なら踏ん張れ」
蟻を摘むって表現は小人族の体型を揶揄った訳じゃなく、そもそも彼等が春姫ちゃんを殺さない程度に攻撃する事への例えなのに怒ったのはちょっと心配けれど、多分大丈夫だろう。
あくまで私がフレイヤ・ファミリアの幹部勢を相手にするよりは手加減が楽って意味で例えただけなのに、ちょっと短気なのは直すべきだと思うよ、最近の若者は忍耐が足りないんだね。
今の春姫ちゃん達が相手に出来るモンスター程度じゃ経験値もそこまで稼げないけれど、こうして可能な範囲で無茶をしたり格上にボッコボコにされる事で強くなれるだろうさ。
私は才能にあふれていたから強くなろうとしたら簡単に強くなれたし断言は出来ないけれど。
「あっ、二人のステイタス更新はどうしよう? 違法な薬でも使えば良いか」
困った事にヘスティアさんは暫く帰らないらしいし、こまめに更新して更にハードな内容にしたいからタケミカヅチ様に頼む事にしよう。
私が予想外に開発に苦労した薬を使えばヘスティアさんじゃなくたって更新は可能だ。
「本当にギルドって頭が固いよね」
頭を持っていかれた死体の身元を調べる為に開発した方も含めて違法扱いの薬達、師匠の言い付けを破って馬鹿な物を目指した元弟子を側近にしているウラノス様がトップとは思えない。
あっ、思い出したら腹が立って来たよ。
尚、残りのタケミカヅチ・ファミリアの子達はヘグニ君に鍛えてもらっている。理由? 笑えそうだから。