ダンジョンにろくでなしが居たって間違いじゃ無いだろう? 作:ケツアゴ
「明日はいよいよ怪物祭。年に一度のお祭りだ。これを機会に気になるあの子を誘うのも良し、家族同然の仲間と共に過ごすのも、浮かれずにダンジョンに行くのだって自由だ」
ダンジョン十八階層にて私はフレイヤ・ファミリアの皆に協力してもらいながらの特訓の締め括りに入っていた。
どうせなら最後は特別な事がしたいし、午前中に普段の特訓を密度を上げて終わらせて、リヴィラの街で食事休憩を取ったら本番。
「じゃあ、君達も掛かって来なさい。大丈夫、多分手加減は失敗しないから」
どうせなら格上相手に経験値を稼いだ方が良いし、私vsその他大勢って事で頑張ってもらおうか。
あっ、オッタル君達は開始五秒で沈めたから残りは春姫ちゃん達だけだよ。
「えっと、対集団戦では弱い相手から狙うって言ってませんでした?」
ベル君、ちゃんと覚えてたね。そう、毒とか厄介な力を持ってる場合を除き、群れを相手取る時は強いのに集中する為に雑魚から相手にするのが定石なのさ。
だから先にオッタル君達を……あれ? あれれ?
「うん、ガチで間違えちゃった。ごめんごめん。教えた方が間違うって情けないね」
でもさ、L v.7も1もそこまで変わらなくないかい? 全力で叩いたらミンチになるか消え去るレベルで吹っ飛ぶかどうかだし。
「まっ、誤差の範囲って事でセーフだよセーフ」
因みにどうやって倒したかだけれど、アレン君は流石はオラリオで二番目に速いだけあって一番先に来たから槍を掴んで引き寄せて、そのまま腕に持ち帰るとフルスイング(超々手加減)!
ブーメランみたいにヘディン君に飛んでって激突! 両者ノックアウト! 掴んでいた槍がリーチを伸ばしてガリバー兄弟の一人にも当たって連携を崩したから両手で二人を掴んで一人に両側からサンドイッチ式叩き付け(超々手加減)!
この技をランサーブーメランとでも……ところでブーメラン発言ってあるけれど、普通は命中したら戻って来ないよね?
残りはオッタル君の正面からの攻撃を受け流して背中を掴んでの旋回バックドロップ(超手加減)でクレーターの中心に突き立て、最後にヘグニ君をキュッと締めて終わり。
「都市最大派閥の幹部も我々と大差ないとは、これが都市……いや、世界最強」
この間、春姫ちゃん達には視認不可能、レベルが違うんだから仕方がないよね。
彼女達からすればオッタル君達が凄い速度で倒れて行く感じだし、言葉を漏らす命ちゃんなんて冷や汗を流していた。
「そんなに褒められると照れちゃうな。私は年寄りだから若者に褒められると照れ臭いんだ。じゃあ、時間も惜しいしさっさと来なよ」
命ちゃんの褒め言葉に気分が良くなった私、これは更に良い所を見せるべきだよね?
じゃあ、二百年ぶりに使ってみようか。
「行きます!」
先陣を切ったのはタケミカヅチ・ファミリアの桜花君、流石はランクアップしてるだけあってアレン君にはちょっと劣るけれど速い。
でも、私にとっちゃサッと服を脱いでバッと入浴出来る到達時間だ。
「ねえ、私は普段無詠唱で魔法を使っているけれど、あれってあくまで開発した魔法であって発現した魔法じゃないんだ。【永遠の孤ど……】」
そう、私にだって恩恵によって使える様になった魔法は存在するんだ。ちょっとした失敗と理由で使ってないけれど、褒められて気分が良いから使うよ。
「【く、っ!?】」
「あっ、噛んだ」
痛っ!? 久々の痛みだなぁ。
オッタル君に殴られるよりも自分の唇噛んじゃった方が正直痛い、この時に生じたのはオッタル君じゃ発生させるの不可能な隙だ。
そう、これが私が普段この魔法ってか詠唱をしない理由。昔から詠唱って途中で噛むんだよね。だから速攻魔法ばかり頑張って作ったんだし。
もー! 恩恵って本当に厄介だよ。
「このす……」
この隙に、かな? そんな言葉を口に出している桜花君の顎を真下から優しく撫でれば顎骨の砕ける音と共に天井に突き刺さる。
これで一人……じゃないか。
「はい、失格。君達、本番じゃここで死んでるよ?」
私と付き合いの浅い子達が戦意喪失、命ちゃんは近くで見てたけれど、残りの子達はちょっとだけ自分より強い子に鍛えてもらっていたからね。
その子が負けて、自分達の中で一番強い子が天井でブランブランしてるんだから当然っちゃ当然か。
確かに臆病は慎重さでもあるから怯えは必要だけれど、身を竦ませて思考を止めちゃモンスターの餌になるだけ。
ちょっと殺気を弱〜く放てば気絶してリタイア、惜しいけれど経験値は期待出来ないね。
「前にヘディン君が漏らした時の二十分の一……あっ、言わない約束で一ヶ月間の飲み代奢ってもらったんだ。皆、今のは聞かなかった事にして」
「は、はあ……」
あの冷静沈着なヘディン君だって子供よりは少し歳を重ねた程度、怖かったら尻餅をついてお漏らしだってしちゃうけれど、立場があるから恥ずかしいよね。
可哀想だから川に投げ込んでお漏らしを誤魔化して、口止め料を請求した。
「でも、神に質問されたら誤魔化せないんじゃ? アステマさんの事だから話すかもってバレバレでしょうし」
「じゃあ、後で皆の頭をスコーンとやって記憶を消すよ。それなら万事解決さ」
「思ったより力技だ!? いやいや!? 魔法でどうにか出来るでしょう!?」
「記憶改竄の魔法は作ってないなあ。ベル君、君は私がそんな魔法に頼らなくちゃ駄目なやらかしをするとでも思っているのかい?」
「今まさにやらかして、僕達の頭を殴って記憶を改竄しようとしてますよね?」
「おっと、うっかり」
じゃあ、今後気が向いたら作ろうか? 頭スコーンの方が楽で良いんだけれど。
「【フツノミタマ】!」
そんな風にお喋りしている間にも命ちゃんは制御可能な範囲内に精神力を注ぎ込み……いや、微量だから(私基準)分かりにくいけれど少し超えてる、成長したね。
昨日までの限界を超えた制御力にょって渾身の魔法が私に向かって発動した。
まあ、そんなこんなで私に向かって降りてくる光の柱、それに向かって私は無造作に腕を振り上げる。
技も気合いも無しの適当な一撃は拳が殴った空気の圧力だけで重力の結界を粉々に破壊した。
「【ファイアボルト!】 【ファイアボルト!】 【ファイアボルトォオオオオ!】」
「細かい狙いも少しはマシになったみたいだね。関心関心」
褒めながらのデコピン連打、空気を飛ばしてファイアボルトを跳ね返す。
「渦よ!」
それを防ごうと発生したのは風の渦、それも二重防壁。続けて間髪入れずにウチデノコヅチの詠唱を始めたけれど、あのトロくて世間知らずで天然で少しムッツリな春姫ちゃんが成長したなあ。
「まあ、無駄だけれど」
だって私のデコピンはベル君の炎を巻き込んで飛んで行ってるし、あの程度の竜巻じゃ防げない。
一瞬で貫いて三人に触れる瞬間に続けて放ったデコピンの空気圧で破壊して、衝撃で三人は気絶しちゃったよ。
「さてと、治療と二十分の休憩後に再開だね。なぁに、訓練は精々日付が変わる迄だ。人間、強くなりたいのなら死に掛ける程度が良いのさ」