ダンジョンにろくでなしが居たって間違いじゃ無いだろう? 作:ケツアゴ
私の人生を例えるならば、深く冷たい海の底に沈み続ける、そんな感じかな?
母と父と神の住む世界で再び一緒に居られるんだって信じていた頃、飢えて死に病で死に寒さで死に後色々な理由で死んだり殺されたり狙われたりで捻くれに捻くれた時に出会ったアルゴノゥト達との旅路。
あの頃は海に浮かんで星空を眺めていて……大切な相手は皆揃って私を置き去りにして、私は一人ぼっちになって行ったんだ。
どんなに深い海の底でも届く程に眩い星明かりは確かに存在して、掴もうと手を伸ばした私を照らしてくれたけれど光る星はやがて流れ落ちて消え去る物。
何度も何度も私は諦めずに手を伸ばし続け、時の流れは容赦無しに私から光を奪って行く。光が見えない時期もあって、その間は音も光も存在しない水の中で一人ぼっちさ。
私は魂の形を見る事が出来るから失った光と再会して、私の事を思い出してくれるんじゃと期待しては何度も裏切られて、もー! どーでもいいやー! って感じになったんだよねー。
それで神々が地上に降りて来て、不老不死だからって期待したんだけれど、事故や病気や悪意が重なって生まれ変わりって形でさえ会えなくなるし、地上に居続ける不老不死が誰かと深い関係を持つべきじゃないよ。
手に入れなければ失わないのさ。
その点、女神と肉体だけの関係とか気軽で良いよ。適当に楽しく生きてれば関係性だって都合の良い感じで済むし?
あっ! 私の言い付けを破って酷い状態になった弟子とか論外だよ、論外! 破門してやったんだから!
「じゃあ、事前の予定とは違うけれど頑張ろうか、春姫ちゃん」
「えっと、アステマ様、勝手な事をして宜しいのですか? そもそも私は何をするのか聞かされたばかりですが……
」
「私が勝手な事するなんて知り合いは慣れっこだって。寧ろ予想された内容を飛び越えないとって頑張ってるんだよ?」
「頑張る所でしょうか……」
「普通は違うし、よい子は真似しちゃ駄目だよ? お爺ちゃんとの約束さ」
闘技場の控室、皆の頼れるお兄さんモードから小悪魔妹系モードになった私は春姫ちゃんと今から行うショーについての話し合いの最中さ。
「あっ、君達も今の私はプリンと呼んでくれたまえ」
私の視線の先には本日の主役であるリド君達数体、弱い子達は先にご褒美である小旅行として無人島にある私の別荘で遊んでる最中だよ。
仲間を働かせてする遊びって楽しいよね。
「……おい、春姫っち。人間社会的てもこんな感じなのか?」
指差すなよ、失敬だな。まるで私が常識知らずみたいじゃないか。知っては居るんだ、守らないだけで。
「ええ、普段から。……それにしても凄いですね。本当に言葉が通じるなんて」
結論! 永い人生、面白可笑しく好き勝手に生きれば良いのさ。恨まれたって大丈夫! 敵も味方もどうせ直ぐに居なくなるしさ。
春姫ちゃんは驚いた様子でリド君達の装飾品に付けられた透明の珠に視線を送る。凄い魔力が籠った珠にね。
因みに壊れにくくしただけで実際はガラス製、ぶっちゃけ粗悪な安物を見た目だけ良くしてる。
「……」
何をやってるんだ、あの子はぁあああああああっ!?
ボクは思わず出そうになった叫びをギリギリで抑え込んだけれど、他に誰も気がついてないよね!?
アステマ君ったら何を考えて別人に成りすましているのやら、多分そっちの方が面白いからだろうけれど、ガネーシャは所の眷属が動揺してる辺り、話通して無いだろ絶対!
「アステマ兄さんはとある理由で姿を見せられないし、代わりに私と団長である春姫ちゃんが務めよう。応援お願いするよ」
ボクは彼に恩恵を刻んだ身だし、普段の神と人が混じった気配を隠していても正体が分かる。
そもそも今の姿って友神である彼の母親とそっくりだし。
……本来神はバベルを建てた少し前に降臨したとされているけれど、本当は違う。
地上に影響を与えない仮初の肉体の作り方も天に昇る魂を自分の領地に引き入れる方法も彼女が編み出した。
じゃあ、何故隠されていて、そもそも他の神は降臨しなかったかって?
彼女の行いは神でも……神だからこそ許されず、彼みたいな悲劇を繰り返さない為さ。
だから地上で起きた事を見過ごせなくなるまで、人々に希望が生まれるまでは……。
「フッ」
周囲を見渡したけれど、こっちに意味深な視線を送っているのはイシュタルだけ。
あー、何だかんだ付き合いは長くて深いし、女の勘って奴かな?
彼女が黙ってるから良いけれど、バレたら大勢の前で女の子に化けた変人って広まるぞ、アステマ君!
「いや、今更か……」
気付いたのはヘスティアさんとイシュタル様……それと人間に擬態してるフレイヤ様だけか。
オラリオ最強の姿を見たかったのか、今の私達の登場に少し落胆の色が走る観客達だけれど、空中に私と春姫ちゃんの顔を映し出してウインク。
「わぁあああああああああっ!」
わーお! 普段イシュタル様が使っている魅了の劣化版を使ったら凄い効果だ。
腐っても女神の姿を真似ただけあるって事か。
イシュタル様とフレイヤ様なんて驚いて凄い顔、今度アイシャちゃんにでも絵を見せようっと。
「それじゃあ昨年は演奏、去年は演劇と皆を楽しませてくれた子達の挨拶だ。先に言っておきう。L v.12が本気を出せばモンスターだって喋るんだ」
その言葉に動揺が走るより前に姿を現したのはリド君と他の仲間二体、あまり多いと連携が難しいからね、
「それじゃあ既に一昨年時点で紹介しているが、名乗ってもらおうか! 先ずは彼等のリーダー!」
闇を照らす光の柱はリド君を照らし、打ち合わせとちょっと違う展開に少し戸惑いながらも彼は声を拡散するアイテムに口を近付ける。
「二年前から来てようが親しみなんて持ってないんだろうが……リザードマンのリドだ。宜しく頼むぜ!」
「ハーピーのフィアです。皆さん、よろしくお願いします」
「ガーゴイルノ……グロス」
リド君とフィアちゃんは愛想良く、グロス君は無愛想に自己紹介を行う。
嫌悪や恐怖は…:…まあ、二年前からの活動もあってぼちぼち程度か。
アイズちゃんは当然として、上位の冒険者は警戒してると。
今まで演奏や演劇で知性は見せた、そして言語の仕様だ。それが敵としてみたらどれだけ厄介なのかは経験を積んだ子程に理解してる。
ティオナちゃんは普通に面白がってるね。君はそのままでいなさい。
「さてさて、今回の演目はなんと私達と彼等の共闘! その相手は……おや?」
用意していたモンスターをテレポートで連れて来ようとした時、地面を突き破って精霊の力を混じらせる妙なモンスターが四体現れた。