ダンジョンにろくでなしが居たって間違いじゃ無いだろう? 作:ケツアゴ
「皆、最初に言っておこう。これは予定外だ。何処の誰の横槍かは知らないけれど他人の予定を狂わせるだなんて」
私達の目の前で地面から現れたモンスターは正体を表す。
最初は蛇かと思いきや花、極彩色の派手な奴で喉の奥にも同様の色の魔石、あの芋虫脳同類か。
さーて、此処で予定外のトラブルだと知らせ、さっさと目の前のを片付けてから本来の流れにするのは簡単だけれど……。
「今日はめでたいお祭りだ。無粋な輩には盛り上げ役になってもらおうよ」
そんな普通じゃ面白くない。上級冒険者でも未知のモンスターを大勢の前で倒すって方が盛り上がるじゃないか
「おうよ! ……いや、それにしても本来の流れを変えまくったアンタが言うなよ」
どうやら芋虫と同様に魔力に反応するらしく、絶賛魔法使用中の私……が狙われると思った?
おいおい、魔法で変身した痕跡すら残していないんだ。なら、狙われるのはリド君さ。
花の突撃を正面から受け止めたリド君はそのまま頭を蹴り上げたけれど音が鈍い。
あれはダメージも少なそうだな。強さ自体は3程度だと思うんだけれどね。
リド君は私が運んだおかげで魔石はたらふく食べてるし、今の彼は少し前のヘグニ君より少し弱い程度。
ダメージ自体は少なくても勢いは殺し切れずには大きく仰け反り、牙の破片を撒き散らかしながら後ろの仲間を巻き込んで倒れ込む。
「硬っ!? 蹴った足が痛ぇ!?」
「油断は駄目ですよ、リド。ほら、付いて来なさい!」
悶絶しながら足を摩るリド君の頭上を飛び越したフィネちゃんは起き上がった花達の上を舞う。
ガチガチと歯をぶつけて鳴らしながら追いかけるけれど、我先にって連携も無しに追い掛けて互いに邪魔をしていたら追い付ける筈も無しだ。
「まあ、花だしね」
互いの胴体が絡み合い更に動きが鈍くなった時、地面を突き破って無数の根がフィアちゃんへと伸びるけれど、それが届くよりも前に風の刃が全てを切り飛ばした。
「春姫ちゃん、今何割注いだ?」
「一割五分程……」
「胴体なら五割だけれど、根っこなら一割で足りたね。その辺の見極めを養おうか」
風扇から飛んだ無数の風の刃は魔法と同じく魔力による物、だから芋虫と同類の花等なら優先する。
飛び回るフィアちゃんよりも春姫ちゃんの方を狙うべき相手と定めたのか一斉に飛び掛かり……。
「渦よ!」
今度は精神力を三割注いだ風の渦で纏めて弾き飛ばされた。
うん、今のは良い判断、あの勢いを防ぐにはほぼ正解だったよ。
「それじゃあ私も口だけじゃなくて働こうかな。【シャイニングチェイン】」
「詠唱無し……」
現れたのは光の鎖、それが花達を完全に束縛して動きを封じる。
これは速攻魔法、詠唱不要……っぽく見せ掛けただけで実際は私が作って思い付きの名前をつけただけの魔法。
はっはっはっ! アイズちゃんったら見事に騙されてるー。
レフィーヤちゃんもビックリしてるけれど、簡単に騙されるなんて生徒の時なら補修だよ?
「じゃあ、後は任せた」
「風よ!」
「おうよ!」
「マカセロ」
「了解です!」
風の刃が、剣が、爪が花の胴体を切り裂き、そして上顎の魔石を破壊する。
正体不明の謎の美少女の登場と新種のモンスターの強襲、そして喋るモンスターと冒険者の共闘。
一瞬の静寂、それが即座に大歓声に変わらない筈がなかった。雷鳴の様な拍手喝采に鳴り続ける口笛、それぞれの名を人々が呼ぶ中、私の声が響く。
「今回春姫ちゃんが使ったのは魔扇。外付けの魔法スロットみたいな物で……ギルドの承認を得たファミリアのみ注文を受け付けるよ。今は使った風、そして癒しの力の二つだ」
さて、暫く行方を眩まさないと。だってロイマン君には言ってないし、多分問い合わせが凄くなりそうだし、そっちの方が面白い。
「それとベートちゃんになったベート君、ロキ様と混浴と添い寝をしてみたらどうだい? 明日には戻れるし、別に互いにタオル巻いてても良いからさ。じゃあ、私は用事があるから」
混浴とか添い寝の意味? 別に全然? 明日の朝には戻ってるけれど、戻ったベート君を皆はどう思うかな?
ベート君が否定すれば神には伝わるだろうさ。でも、それ以外はどうだろうね?
人には人の嘘は見抜けず、噂を話すだけじゃ嘘判定もされはしない。
明日にはベート君は元の姿に戻り、ロキ様と混浴&添い寝をしたって目で見られるのさ!
……胸は貧弱貧弱ぅ! でも脱いだら結構エロいんだけれどね、あの女神。
「はい。そんな訳でやって来んだ、神聖浴場IN私&ベル君&生け贄のヘグニ君!」
「そんな訳ってどんな訳ですか!? 僕、男だけで打ち上げに行くって聞いただけだし、歓楽街とかじゃないって話でしたよね!?」
「生け贄って言った!? 今、僕の事を生け贄呼ばわりしたよね!?」
「おいおい、ベル君。君は女神を食い放題とでも思ったのかい? 此処はギルドが神への畏敬の念を示す為に建てた浴場だぜ? アレン君が足繁く通う歓楽街とは別物さ」
「え? あの人、歓楽街通っているんですか?」
「女の子を眺める為に豊穣の女主人にも通ってるよ。相思相愛(兄妹愛的な意味)の女の子だっているのにね」
そう、男神は殆ど利用しないけれど豪華な内装を理由に女神の利用の多いこの場所に私は忍び込んでいたのさ。壁とか部の間に作った秘密の通路、その先には壁の装飾に隠した覗き穴。
あの大神ゼウスさえも退けた警備システムが存在するこの場所だけれど、そのシステムを作ったのは私だからね。
「何処かの誰かの元弟子が私対策を施してるけれど甘い甘い。あっ、スリルの為にこっちの声も届くから静かにね」
「それで僕はどうして連れて来られたんだろう……。只でさえ他の覗き場所を(無理に)教えられて、それが広まって大変なのに。ま、まさか逃げる時の囮に……」
あらら、ヘグニ君ったら相変わらず心配性。普段の思春期真っ盛り拗らせた言動も、彼が変人の誤解をされない為にと団員達に事細かく解説してから私の前ではしない。
悪戯心なんてなかったよー。 ほんきだよー。
「ヘグニ君、安心しなさい」
「え?」
将来有望な若者が不安に陥っているのなら、此処は年長者として不安を消し去ってあげるべきだ。
私は彼の肩に手を置き、優しい声で話し掛ける。
ベル君は何故か不安そうにこっちを見てた。
「フレイヤ様が今日利用しないのは分かっているからね。捕まっても主神の裸を見たって仲間に制裁されないからさ」
「覗きの時点でされるんだけれど!?」
「大丈夫。プリンはねっとりしたのかプルプルなのかで揉めて辞めたけれど、私は君達の大先輩、フレイヤ様の初代眷属だ、安心しなさい」
「え? 何それ、全部初耳」
「因みに互いに相手の好みを否定したのが切っ掛けさ。ヘグニ君はどっち派?」
「プルプルした方が……え? その表情、まさかフレイヤ様は……」
「君を選んで正解だったよ、同志! ……なーんてね、嘘さ」
「よ、良かった……」
安心するヘグニ君だけれど、断言しよう。君は気になる事になるのさ……プリンの話自体が嘘なのか、フレイヤ様の好みが嘘なのかってね。
「実際はそれだけじゃなく、粒餡と漉し餡で揉めたのさ。反する好みの持ち主を完全否定しあってね。ヘグニ君はどっち?」
そして新たな火種をプレゼント。この時、フレイヤファミリアが真っ二つに割れるだなんて予想してなかったよ。
まあ、嘘だけれど。
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