ダンジョンにろくでなしが居たって間違いじゃ無いだろう?   作:ケツアゴ

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ろくでなしは女神にモテる

 私の母はそりゃあもう自由な神だったよ。息子の私がこれだけ美形なだけあって美女ではあるだけれど、捻くれた所もあってさ、人の指示と逆な事をするんだ。

 

 いや、力を制限していても女神、それも他に神が降臨していない時代だから指示する相手なんて父しか居なかったけれど、私は小さい子供だったし。

 

 神が地上に降り立つ術を編み出した才能は凄いんだけれど、幼心にあの母の振る舞いには呆れる事があったなあ。

 

「ほらほら、気張りなよ。私が居なければ君達は既に転生待ちだぜ? その際は良い神に当たると良いね」

 

 だから別に私だって自由に振る舞って良いだろう? 誰かに一生迷惑を掛け続けたとして、その相手がエルフであっても数百年ぽっちだしさ。

 

「そもそもお前が居なければ戦ってなどいない!」

 

「うん。だって私が連れて来た上で封印解いたし。

……そろそろ解ける頃だったし、見に来たのは正解だったな」

 

 アンタレスは強力なモンスターだ、私以外にとってはって付くけれど。

 

「つまり私が君達を引き連れて神聖浴場を覗いたのも必要だったと許され 」

 

 そのハサミがヘグニ君の脇腹を軽く抉り、切り裂かれた部分は即座に癒える。

 痛みをものともせずに蹴り飛ばすけれど、武器も防具も着けていない状態じゃ幾らヘグニ君でも厳しいか。

 

「やっぱりパンにはチーズだね。しかもチーズが伸びる伸びる」

 

「こっちは朝ごはんも食べてないのに何を食べている!」

 

「パンとチーズ」

 

 パンに乗せたチーズは噛み切ったと思ったのにビヨーンと伸びて、周囲に漂うパンを焼いた香ばしい匂いと共に私を楽しませてくれる。

 

 美味っ! アルテミスさんから分けてもらったけれど美味っ!

 

「不利な状態での戦いは経験値の質を上げてくれる。それにダンジョンで迷えば飲まず食わずの上に防具も武器も失うなんて有り得る話だろう? 頑張れ、若者」

 

「【ファイヤボルト】! 【ファイヤボルト】! そ、そうなんでしょうけれどキツ過ぎますって!?」

 

 ヘグニ君が直ぐに重傷が癒える状態で戦うのなら、ベル君は傷一つ追わない状態だ。

 アンタレスの小さい分身の攻撃を食らって腹に穴の空く痛みや吹っ飛ばされて叩き付けられた時に全身の骨にヒビが入るみたいな痛みは受けるけれど無傷。

 

 うん、傷を負わないだけでダメージは普通にある。

 

 二人ともまだ若いから朝食抜きに腹の虫がなっているけれど、口に出来るのは舞う粉塵と自分の血反吐、ベル君だけはマジックポーションを口にダイレクトシュート! 私のコントロール最高! な感じだけれど、ヘグニ君と違って集中力を持っていかれているね。

 

 接近戦は絶対に無理、そんな甘えは私が許さない。

 

 今の彼の魔力の値じゃ速攻魔法が直撃しても分身の甲殻の表面を少し焦がす程度、だから地面に撃つ。

 

「【ファイヤボルト】!」

 

 分身が前脚を踏み出した瞬間に足下に撃ち、受けるダメージと衝撃に耐えながら甲殻の隙間にナイフを差し込んでチクチクとダメージを重ねて行く。

 

 速度も力も上の小型モンスターなんて下級冒険者が相手にすべきじゃないって?

 普通に食っていくならそれで良いけれど、ベル君は英雄になってハーレムを築きたいんだし普通じゃ駄目なんだ。

 

 あっ、また吹き飛ばされた。私の守り無しだと八十回は即死、それ以外を含めれば倍は死んでるな。

 

 

「ベルくーん! そんなんじゃアイズちゃんの処女をもらえないぞー!」

 

「処っ!? ぐえっ!」

 

「あーあ、戦闘中に止まるから」

 

 首を貫ける一撃を受けたベル君はそのまま転がって行くけれど、この程度で赤面して止まってたら本番で失敗しちゃうよ?

 

「何を急に言ってるんですか!?」

 

「だってアイズちゃんと両想いになりたいんだろう? じゃあ、そんな事もするじゃないか。朝元気になってたんだから、アレが使い物にならない訳じゃないんだろう?」

 

 なら別の変な話じゃない筈だ、彼には刺激が強いだけで。

 

「具体的な目標には中間と最終を設けておこう。先ずはアイズちゃんと肩を並べて、最後はアイズちゃんを孕ませる。派閥の違いとか面倒なのは忘れておこう」

 

 あっ、また固まって攻撃喰らっちゃってるよ。ガチガチに硬くするのは下半身の一部だけで良いだろうに。

 でもナイフを離さないのは及第点をあげちゃおうか。

 

「ヘグニ君も此処で頑張ればランクアップしてフレイヤ様からご褒美をもらえるかもよ?」

 

「それしかないのか! 歳を考えろ、エロ爺!」

 

「良いじゃないか、肉体が若いんだから。それに生殖能力無い上に私以上に歳を重ねた神々だって性欲はあるんだぜ?」

 

 じゃあ、私が三千歳を越えてても下半身に素直なままでも問題無いだろうと指摘するし、絶対キレるから言わないけれどフレイヤ様だって性欲強いじゃないか。

 

 

「おや、流石はL v.6だ。アンタレスを追い詰め始めた」

 

「幾ら大怪我を負っても即座に治るってハンデを貰ってるんだ。これで倒せなくてはフレイヤ…ファミリアの名折れだ!」

 

「それはそうだ。私ならデコピンで速攻なんだけれどね」

 

「死ね!」

 

 装備無しで朝食抜きって部分を差し引いても第一級冒険者は伊達じゃない。

 拳を叩き込んでヒビを入れたハサミの横振りを躱すと踏み付けて完全にへし折り、それをアンタレスの頭に突き刺した。

 

 ベル君の方も相手の動きに慣れて来たのか、本来ならとっくに死んでいるけれど優勢、ナイフだけは持たせて良かったよ。

 

 

 

「ベル君も素手でやらせるべきだったかな? 次の機会があれば……」

 

「ヘグニさん、どうしてこの人が女神様達からモテているのか分からないんですけれど……」

 

「同感……」

 

 最後に突き刺さったハサミを殴り付けて深く突き刺せばアンタレスはその場に崩れ落ちる。

 ダンジョンが神に対抗する為に産み出した黒いモンスターの一体で、解析すると神を取り込む事でその力を使える事が分かったけれど、それなら人間が相手になれば良い。

 

 黒いモンスターの特性が無かったら私だけで黒龍を倒せるんだけれどね、

 神の血で強化されている魔法の威力が大幅に削られちゃ私だって苦戦するよ。

 

 

「手札を削られるのは面倒だよね、まったく」

 

 私は呟きながらアンタレスの攻殻を手で突き破って魔石を引き摺り出す。

 おや、ドロップアイテムだ。

 

 

「アンタレスの尾だね。二人で分け前を話し合いなさい。それと疑問の答えだけれど、私が女神に人気な理由は……私だからさ」

 

 気軽に相手をしているってのもあるけれど、大抵の女神は口にするんだ。

 私が相手なら自分も子供を宿せるのかって。

 

 

「神は未知に貪欲だからね。私がモテるのは当然さ」

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