ダンジョンにろくでなしが居たって間違いじゃ無いだろう?   作:ケツアゴ

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ろくでなしは気にしない

「この場所に街を作るだって? 病院に行くべきイカレっぷりじゃないか、是非やろう!」

 

 オラリオが誕生して暫く経った頃、とある冒険者が私に相談を持ち掛けた。

 モンスターの出現しない十八階層に冒険者の街を作りたいってね。

 

 

 そう! それこそがリヴィラの街なのさ。

 

 お酒も奢ってもらったし、主神だった女神を口説くのに協力してもらったりと先払いしてくれたし、資材や食料とかを運んで最低限の基盤作りにはさせてもらったよ。

 

 まっ! 三ヶ月で壊滅したけれど、互いにゲラゲラ笑ったものだ。

 

 

「次はどんな風に壊滅するのやら」

 

 ふらっと立ち寄った先で開いたボールス君との酒の席も終えて次は何処で飲もうかって考えつつ周囲を見渡せば昔から変わらない簡素な作りの建物が立ち並ぶ。

 中層以降のモンスターが果物目当てでやって来ては襲撃を掛けるんだから壊滅前提とはいえ、初めて連れ込んだ時は大抵の女神は文句を言うんだよ。

 

 言わなかったのってイシュタル様とデメテル様と……ああ、フレイヤ様も創設した頃に連れ込んだっけ?

 送還されたのを含んで三桁以上の女神を連れ込んだのに、大抵は受け入れられないって、天界ではどんな場所に住んでいたのやら。

 

 ギルドが投げ出した事業を同業者を助ける為ってお為ごかしで進めようとして、実際はお金儲け……但し実際はってよく分からない子だったよ。

 

 

 

「おい、そこのお前。私を買わないか?」

 

 今は亡き友達未満の知り合いとの日々の回想の途中、変な子が声を掛けて来たんだ。

 スタイルとか顔は良いけれど、性格が目付きに現れちゃってるよ、この子。

 目にさぁ、残虐さが出ちゃってるんだよねぇ。

 

「え? 無料でヤらせてくれる女神がいるから買わないよ? 君って年下過ぎるしさ」

 

 まさかこんな風に断られると思ってなかったのか本人は固まっちゃってるけれど、周囲の子達は分かり切ったって感じだ。

 

 

「おいおい、何処のファミリアだよ。今時旦那の事も教えてねぇのか?」

 

「姉ちゃん、その旦那は若作りのろくでなし爺ぃだぜ? 俺が買ってやろうか?」

 

 だって十年位前から探索系に限らずファミリアの新人には私についての注意が義務化されているし。

 そもそも目の前の子は変だ。

 

「あっ、そうだ。君達、この子は普通じゃないから逃げるか戦いに備えるかしなさい。ちゃんと身を守れる様にね」

 

「やべっ!? おい、手近な荷物だけ持って逃げるぞ!」

 

 私の警告を聞いた途端に彼等は大慌てで去って行く、その警告を伝えられた子達もだ。

 この思いっきりの良さとか、私に頼って色々を放棄しない自己責任で此処に留まっている。

 強者が守ってくれて全てを保証してくれるのは当たり前って思考もしていないからね。

 

 暗黒期の話を聞いたけれど、あの時に外で動いていて良かったぁ。戻った後で何か言われたっぽいけれど防音の魔法使ってたから分からなかったよ。

 

「それで君の目的はこれかい?」

 

 異空間に仕舞い込んでいた赤子を取り出して掌の上で軽く転がせば彼女の目つきが鋭くなり殺気が放たれる。

 私が隙を見せればその瞬間に殺しに来る気だろうね。

 

 あー、神とモンスター以外に殺気を向けられるって久しぶりだ。なんか子犬がキャンキャン吠えてくるような気分だよ。

 向こうは威嚇して攻撃している気なんだろうけれど、こっちは飛び付かれても特に気にしないんだ。

 

「見抜いていたか。騒ぎを起こさずに取り戻す予定……おいっ!?」

 

 金の視線が赤子に集中した時、私はそれを高く真上に放り投げた。続けざまに炎の球を向けて放てば明らかな狼狽を見せ、飛びついて、かばおうとしようとするが間に合わない。

 

 伸ばした指先が触れる寸前に赤子に炎が触れたと思ったら彼女の目の前から消え失せ、私の手元に現れた。

 

 

「残念無念幻覚でした。騙されてるね、ぷっぷ〜!」

 

 はっはっはっ! 迫る熱気も赤子の放つ力も鮮明だっただろう?

 

 特に炎は自信がある。何せ弱い頃は化け物として火炙りにされたり溶岩に投げ込まれたり熱した油を浴びせられたから、熱いって感覚の再現は得意なのさ。

 

「あっ、思い出したら腹が立って来たし、墓か遺跡が残ってたら吹き飛ばそう」

 

 赤子の宿す精霊の力は適当にして、後は相手を冷静じゃなくせば……ぶふぅ!

 

「貴様っ! 貴様ぁあああっ!」

 

「よ、予想以上に怒っててウケる。ねぇ、何もない所に覚悟決めた顔で突っ込んだと知った今の気持ちを教えてくれる?」

 

 返答の代わりに私の顔面に向かって放たれる拳。遅いし軽いけれどフィン君辺りが直撃したら少しキツい程度の力だね。

 向かって来る拳を私が避けないのだから当然直撃する。踏み込みで強靭な地面が割れ、肉がひしゃげて骨が砕ける音と共に鮮血が宙を舞う。

 

 

 

「ごめんよ。君は敵だから反動を殺すのが面倒だった」

 

「があっ!?」

 

 当然だけれど砕けたのは彼女の拳、普段の私なら戯れついた相手が怪我しない憂慮はあるんだけれど、ほろ酔い気分を邪魔されたし別に良いよね?

 

 それにしても随分と人間を辞めた子だな、と拳の骨が砕けたらしい彼女を見ているけれど、その傷も徐々に再生して行く。

 

「おおっ! そんなのが出来るなら先に言ってよ。少し可哀想だって思って損したよ。それでさ……君って何?」

 

「何を……っ!?」

 

 私の質問の意図が掴めなかったのか腕を押さえながら睨み上げるけれど、その顔の直ぐ近くまで私の顔が来ていた。

 指は胸の肉と骨を貫通して心臓の横辺りまで突き刺さって奥に存在する硬い物質を優しく撫でる。

 

「ぐっ! このっ! 放せっ!」

 

 その物質は魔石、思った通りに変な子だ。指を追い出そうと肉と骨が蠢きながら再生を進めるけれど、彼女が退こうとしたり殴ったりしているのと同じく無駄だ。

 

「おいおい、人を殺す気で殴ったんだし、胸に指を入れられる位で怒らないでくれ。どうせ治る程度だろう?」

 

 さてさて、寄生して乗っ取る奴なのか、元から人の姿なのか化けているのか、魔法かなんかで……おや?

 彼女の魔石からも精霊の力を感じ取った時から、何やら指笛を拭こうとしたので空いてる手で喉を少し貫いて邪魔をする。

 

「穴から空気が漏れてヒューヒュー音がしても死なないし、モンスターで確定……いや、恩恵を受ければ可能かな? でも、大体どんな存在なのかは分かった」

 

 私がテレポートなんかしたから急いで集めたんだろうけれどリヴィラの街を包囲するには三倍は必要な数の花のモンスターの気配を湖から感じる。

 そのモンスターも目の前の子も似た感じだ。

 

 

「もう別に良いや。直ぐに死んで……あっ、グッドタイミングだよ」

 

 十八階層の入り口付近から姿を見せたのはアイズちゃん達の姿。多分ヘグニ君達のランクアップに触発されて来たんだろう。

 

 

 

 

「じゃあ、あの子達と戦って経験値になってくれるかい?」

 

 連れて行くのは面倒だし、このまま放り投げて呼びかければ良いよね?

 




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