ダンジョンにろくでなしが居たって間違いじゃ無いだろう?   作:ケツアゴ

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ろくでなしは顔が広い

「副団長は平和な村で育ったみたいだね。うんうん、平和に過ごせるなんて今の世の中じゃ幸福な事なんだ。故郷を棲家に選んだ家族に感謝しなさい」

 

「は、はい!」

 

 いやはや、ヘルメス様からあの二人の子供をゼウス様が育てているとは聞いたけれど、モンスターの脅威に晒されて否が応でも戦いの場に身を置くって悲惨でそれなりに居る境遇とは無関係。

 

 血走った目も世の中全てを憎むって感じも自分への諦めも無い、世界の汚さを知らない純粋さだけがある。

 

 

「まあ、ナイフ捌きはど素人だけれどね」

 

 そんな彼がどれだけ動けるか見せてもらったけれど、うーん、0点!

 ただ闇雲にナイフを振り回すだけじゃ体幹も崩れるし隙だらけ、此処から少しずつ成長するのが冒険者の基本なんだけれども……。

 

「頑張って強くならないとね。私、これでも恨みを買ってるし、同じファミリアなら狙われちゃうし、何よりも君には事務仕事も頑張ってもらわないと私が困るんだ」

 

「あれ? ちょっと理由が酷い?」

 

「因みに恨みの七割は正当な物さ」

 

「ちょっとじゃない!?」

 

 体の方は畑仕事はしてましたって程度、戦う為の物とは違う。まあ、変な癖が付いてるよりはマシかな?

 

 それはそうとして打てば響く感じで良いね。純粋だから簡単に騙せそうだし!

 

「ヘスティアさん、人を見る目が素晴らしいよ」

 

「なんだろう? ボク、褒められている気がしないんだけれども」

 

 こんな身近に弄りがいの子が来るだなんて久しいぞ。アイズちゃんはロキ・ファミリアに保護されちゃって、この前みたいに組み手の相手を頼まれた時に苦手なオバケの話をした程度だしさ。

 

「副団長はオバケとか信じる? 私は信じないよ。慕ってくれた相手も恨んで来た相手も、どれだけ会いたいと願ったところで私に会いに来てくれた子なんて一人もいなかったしさ」

 

「えっと、よく分かりません。存在したら怖いとは思うんですけれど。それにしても……はあ」

 

 おおっと、ベル君が落ち込み気味だぞ。アレだな、自分は素人だって理解しつつ、実は眠っていた才能が開花するとかを夢見てたってパターンだな。

 

 結構ある話さ、現実に打ちのめされるのも含めてね。

 

 

「おっと、落ち込むのは早いぞぉ! 私のコネを使って一流の講師を連れて来ようじゃないか!」

 

「え? アステマさんは教えてくれないんですか? って言うか、アステマさんってあの【不滅】ですよね! 年齢不詳で不死身の冒険者! 世界各地で強力なモンスターを倒し続けた英雄って聞いてます!」

 

 ベル君は目を輝かせているけれど、英雄って誰の事だろう?

 

 

「うん? ……あー、はいはい。何かやってる感を出さないと五月蝿いのが居るし、団体行動も面倒だから旅をして回ったっけ」

 

 世界を回って郷土料理を楽しんだり、女王にバカには見えない服(ガチ)を売ったり、女神を口説いてワンナイトラブしたり、昔の私が元となった伝承に爆笑したり、女神との一晩に対価とか路銀稼ぎで封印されていたモンスターを倒したり、それなり観光旅行は楽しめた。

 

「アステマ君、君はもう少し隠すべき所を考えるべきだって。春姫君の時も似た感じだっただろ……」

 

 そんな風にベル君の憧れをぶち壊したところでヘスティアさんのお小言だ。

 正直なのが一番だと思うんだけれどね。

 

「春姫ちゃんの時? どの話だろ?」

 

「あの子が本を読んでた時だよ。ポロっと漏らしただろ? 怪物に怯えてる人を救うシーンについて語ってる時、飯屋で飯を食った後で財布を落としたのに気が付いたから代金代わりだった、とかさ」

 

 あー、あの子が好きな英雄のお話の幾つかが実は私が元ネタだって教えた時か。尻尾と耳が萎れてたっけ。

 あれ? よく考えれば失礼じゃないかい? 伝承の英雄が目の前にいるんだぞ

 

「伝承なんてそんな物さ。面白可笑しさを求めたり、都合の悪い部分を省いたり、とかね」

 

「あのぅ、それで僕は誰に教えてもらえば?」

 

「私のコネだと先ずはイシュタル・ファミリアの副団長かな? 団長はちょっと素行に問題があって困ったちゃんだけれど、副団長のアイシャちゃんは面倒見の良い子だよ。足技も得意さ」

 

「……イシュタルの所って事はアマゾネスだろ? 駄目駄目! ベル君の貞操が危ないじゃないか!」

 

「今の彼じゃ見向きもされないさ。じゃあ、次はガリバー兄弟の誰かかな? フレイヤ様は苦手だけれど、一部の団員では遊ばせて……じゃなかった、一部の団員とは遊ばせてもらってるからさ。建前は大事」

 

「うん、次は最初から隠す努力をしようか。大切だよ?」

 

 あの子達には第一級冒険者になったお祝いにフィアナ騎士団の初代メンバーが名前を彫った石板を贈ったからね。馬鹿な金持ちに高く売れると思ったけれど何となく売れずにいたからさ。

 同族に渡された方が鍋敷き……もとい石板だって喜ぶと思うよ。

 

「使いやすそうな鍋敷きを市で見付けなければフィン君に渡していたかもね」

 

「神様、つまりそんな貴重な品を鍋敷きに使ってたって……」

 

「考えるな、ベル君。疲れるだけだ」

 

 さてと、他には誰に頼めば楽しそうかな? ベル君、アルゴノゥトの生まれ変わりだしさ。

 

「しかし、何か大きな流れが来ているのかな?」

 

 一部の神が魂の色を認識出来る様に私は形を認識可能で、だから前世を知っていれば生まれ変わりかを判別可能なんだけれど、どうも伝説に残る英雄の生まれ変わりが同時期にオラリオに集まって来ている。

 エルフは別として、同年代になる様に魂の転生時期を意図的に調節した?

 

 当時は未だ神々は地上に降りて来ていない、ってなっているし、地上を眺める余裕も無かった筈だけれどね。

 

 まあ、前世の記憶なんて一切持っていないんだけれど。

 

「ぷっ! くっくっく」

 

「アステマさん?」

 

「い、いや、悪い。オラリオの暗黒期に出会った連中が自分達は伝説の英雄を凌ぐ精神力を持っていると勘違いしてたと思うとさ」

 

 愛する相手の近くに転生すれば絶対に思い出す? 無い無い、長生きしていると友人恋人知人怨敵の生まれ変わりと出会うけれど、誰も私を覚えていてくれなかったんだぜ?

 

 幽霊として留まって会いに来てくれる奴も、前世を思い出しての再会をする奴もいなかった。何度も期待して、毎回落胆した私が断言するよ。無理だって、ね。

 

 

「まあ、ファミリアの関係とか考えたらヘスティアさんの友神のタケミカヅチ様が一番だけれどね、武神だし。春姫ちゃんとも団員含めて仲が良い同郷だし、月謝を払えば差し障りの無い資金援助にもなる」

 

 元々知り合った理由が彼女のお願いで孤児に援助をした事だっけ? じゃあ、朝御飯に呼ばれた彼女が帰って来たら話を纏めれば良いか。

 

「ボクもタケの所なら安心かな? 団員だって良い子だったし」

 

「じゃあ、決めるべき事は決めたから二度寝するよ。お昼ご飯には起きるから」

 

「アステマ君、ちょっと生活態度を見直すべきじゃないのかい? 春姫君だけじゃなくベル君だって入団したんだしさ。年上として見本になろうよ」

 

 え? だらけが過ぎて居候先を追い出されたヘスティアさんがそれを言うのかい?

 

「ここ数百年で最大最高最悪最低の侮辱を受けた気分だよ」

 

「なんでっ!?」




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