ダンジョンにろくでなしが居たって間違いじゃ無いだろう? 作:ケツアゴ
「ごめんなさいね? 眷属にはこんな事を頼めなくって」
月明かりが僅かに差し込む寝台の上、一糸纏わぬ姿のデメテル様の腕が私の首に絡められる。
少し息が上がった様子で押し付けられる胸はさっきまで激しく揺れていた、それは凄まじい勢いで。
「なぁに、私も美しい女神との割り切った関係は大歓迎さ。特に普段のおっとりとした雰囲気と違って、事の最中は上に乗って自分が動くのが好きな、おっと」
余計な事は言うなとばかりに耳を引っ張られたので止めておくか。イシュタル様は娼婦としての面からこういった弄りには比較的寛容だけれど、デメテル様は拗ねちゃうからね。
彼女とは偶にこうして性欲の発散に付き合う関係だ。
イシュタル様の場合は大金を払ってホームに数日滞在、朝昼は酒を飲んだりダラダラ過ごし、夜は客として相手をしてもらう関係だけれど、此処にはテレポートで眷属には知られない様に寝室に来て、やる事をヤったら痕跡を消して帰る。
不老不死の筈の神でさえ三大欲求は存在するけれど、主神となれば保ちたいイメージとかあるから大変だと思うよ。
ヘスティアさん? はっはっはっ、黙秘で!
「割り切った関係、ね。アステマは人の子には手を出さないし、結婚には興味が無いのよね?」
「私の価値観は人間だからね。神と違って大きく歳が離れていれば対象外なのさ」
だから手を出すのは女神だけ、それと肉体に引っ張られてか神でも子供や老婆は対象外。
「置いて行かれるのは堪えるから今のままで良いんだよ。神でさえ常人の肉体な以上は……」
「会話の途中で悪いのだけれど続きをして良いかしら? 一人で解消するにしても痕跡が残ると困るから難しいのよ」
会話の途中で言葉が遮られる、デメテル様のキスによって唇が塞がれ、返事をする前に起き上がった女神の身体は私の上に跨った。
「次は私が好きに動いて良いかしら?」
「次も、だと思うけれどなあ」
「野暮な事は言っちゃ駄目よ? 可愛げがなくなるもの」
いやー、この姿をデメテル様を慕う子達に見せたらどんな反応になるのやら。
しないよ? したら関係性が変わってしまうじゃないか。今の気軽なのが一番だからね。
女神の腰に手を回し、何処かの神の悪戯を記憶に関わらない範囲で解除しながら暴れ回るお見事な胸を堪能する。
この光景を絵にしてファイルに入れておこうと考えつつ爛れた関係を楽しんだ。
「あー、疲れたわ。明日も畑仕事があるのに激しくするのだもの。エリクサーを貰えるかしら?」
「えぇ……。いや、別に良いけれど」
他の女神達と違って始終自分が動いてたのにこの物言い、やはり神と人の価値観は違うのだと思い知らされながらエリクサーを差し出す。
蓋を開け、そのまま飲み干す……事はなくて私の口元に差し出された瓶が示すのは口移しの要請だ。
「はいはい、分かってるよ」
「んっ。……ところで今年の
「そうだね。……本番のお楽しみって事で」
一昨年は演奏、去年は私の朗読に合わせての演劇を仲良くなったモンスター達にしてもらったけれど好評だったよ。
公開調教ショーも良いけれどさ、自分達じゃ手も足も出ない恐るべき相手を人間離れした力で恐れられる冒険者が圧倒する事で嗜虐心と親近感を刺激、双方への恐れを減らすって魂胆だからね。
でも、演劇の時は題目について一部のエルフからの抗議があったんだよ。
その内容は旅の女魔法剣士のエルフが村近くの山に巣くったワイバーンを倒すんだけれど、実はハイエルフの血を引いていたって内容だ。
実際は当時の友人との賭けに負けて女装した私が正体で、当時はエルフしか魔法を使えないのが常識な上、合流した友人が悪ふざけで姫君呼びしただけってオチ。
対応はギルドとガネーシャ様達に押し付けたけれど、元ネタの私が許可したんだから別に良いよね?
私のやらかしなんて事前の知らせと演目が違ってただけだしさ。
「そんな訳で私の落ち度なんて大した事が無いよね?」
「いや、悪いの殆ど貴方じゃない?」
あれぇ?
「てな訳で、今年は連れ出したモンスター相手に私の指揮下で戦う感じにしたいんだけれど、ゴライアスとアンフィス・バエナとカドモスのどれが良いと思うかい?」
「いや、普通にインファントドラゴン辺りを数匹でお願いしますからな?」
ギルドで出し物の相談をしたいと言って通されたのは応接室、向かい合うのはギルド長であり私の担当であるロイマン君だ。
若手時代に私のアドバイザーを担当してただけあって物申してくる愉快な子だよ。
「えー? 最悪の場合、私が素手で倒せば良いじゃないか」
「せめて武器を使って下さい!」
「私程になれば素手の方が武器より強いんだよ」
「現場を知らない市民からすれば冒険者を一括りにしてモンスター以上の怪物扱いを冒険者に向けるでしょうが! 少しは考えて下さい!」
「え? 美青年が血に塗れてモンスターの頭を素手でかち割るとか黄色い歓声があがらない?」
「絶叫や悲鳴の間違いでは!?」
この打てば響く感じは相変わらず変わらないなあ。女神を十八階層に連れ込んだ時や女神複数を巻き込んでの修羅場になった時も苦労させたっけ。
「兎に角! 他の手頃な相手の選出をですね……」
「いや、既にインファントドラゴンを三匹捕まえてるし、予行練習も済んでるんだけれどね」
「今までのは!? 今までの流れは何だったのですか!?」
「君は変わらないなあ。横領とか豪遊とかで素行や見た目はすっかり変わっちゃったけれど、一世紀程前の新人時代から変わらないよ」
「貴方も全然変わらんでしょうが、まったく、そんなんだからギルド長の私が担当アドバイザーなど任されるのですよ?」
いい年して叫び回ったせいかロイマン君は息が上がってしまっているし、額にはうっすらと汗をかいている。
昔はスリムな好青年だったのにねえ。
「だって君じゃないと抑えられないでしょう? 私に黒竜を討伐させろって言う声を有耶無耶に処理可能なのはさ」
「私とてこの街が消え去るのは勘弁していただきたいですからね。いくら忙しくてもそうしますよ」
「私も死ななくても疲れるのは嫌だしねぇ」
神々が出した結論、私なら単独での撃破は可能。
但し、長期間の激戦で戦場は拡大、大陸の多くの国が消え失せて、最後は魔石を求めた黒竜によってオラリオが崩壊、大穴が再び姿を見せて厄災クラスのモンスターが出て来る。
「公表してくれればせっつかれずに済むのに」
「出来るかぁ! 混乱と絶望が広がるでしょうが!」
うんうん、ロイマン君はこうでなくっちゃね。
「だから私以外にも戦力になる子が現れて欲しいんだけれど、中々ねぇ。……ちょっと外すね」
あー、黒竜を倒したら神の魂でさえ完全消滅させる魔法とか使えるようにならないかなあ。
ちょっとモヤモヤして来たし、パッとテレポートとして向かったのはカドモスの泉、目の前には当然カドモスだ。
「言葉は通じる? 通じないか、良かったよ」
私の言葉は理解されず、第一級冒険者でさえ直撃すれば身体がグチャグチャになる突進を地響きを立てながら私に向かって行う。
「君は一回で完全に死ねるんだろう? 羨ましいな」
「!?」
そっと伸ばした手はカドモスの下顎辺りに添える様に置いて、その突進は終わる。
どれだけ力を込めても足は地面を削るだけ、やがて恐怖が目に宿った時、足を振り上げた私が頭上まで跳んで、そのまま頭を踏み砕いた。
衝撃で鱗も頭蓋も砕けて血と脳漿が飛び散り、やがて灰になる。
「うん! 友を看取るのと同じ死は自分の手で感じるのが一番だ」
あー、スッキリ。ドロップアイテムもあるし、ロイマン君との話に戻ろうっと。