ダンジョンにろくでなしが居たって間違いじゃ無いだろう?   作:ケツアゴ

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ろくでなしにも苦手だった相手はいるらしい

 君の楽しみは何だい? 何をすれば楽しいと思える? そんな質問に答えられないなんて悲しい事は世界に溢れているよね。

 

 幾ら正義の神だの豊穣神だの子供の守護神だのが地上に降り立ったとして、貧困も飢餓も疫病も戦争も差別も世界から無くなったりはしない。

 

 モンスターという共通の敵がいるからこそ抑えられていたとしても、モンスターの存在が邪魔で開拓が進まない土地の代わりを欲しがる国は多いし、これでモンスターが全て世界から消え去ったとして、支配が曖昧になっている場所を狙ってどれだけの争いが起きる事やら。

 

 長い長い人生の中、私は多くの人の欲に触れて来た。ぶっちゃけ十歳の時には自分を捨てた母親を恨んだり、不老不死目当てに狙われたりでひねくれてしまっていた。

 

「そんな私の楽しみは何だ、だって? そりゃ三大欲求を満たす事と悪戯と……君達みたいに苦労している子達の前でダラダラする事かな?」

 

 此処はダンジョン六十五階層【千蒼の氷園】、空飛ぶ絨毯の上に携帯式のコンロと鍋を置き、熱々のスープパスタを啜りながら真下に目を向ければ、極寒の地で巨大な氷が浮かぶ水の中を泳ぐフレイヤ・ファミリアの幹部達の姿。

 

 

 

 ふぅ、ちょっと絵面が地味だね。

 

「ほらほら、頑張れ頑張れ。鍛練の為に戦えとか言ってきたのは君達だろぉ? じゃあ、自分の鍛練の為だ、私の楽しみに付き合ってくれたまえ」

 

 そう、この子達はフレイヤ様の愛情を独占したい云々で仲間内で殺し合いに近い戦いをする困ったちゃん、しかも戦いの後は肉中心だし。

 お肉だけじゃ駄目なんだぞぉ? もっと野菜や魚も食べるんだ。

 

 そーんな子達だから質の良い経験値が欲しくって格上の私に挑む。せめてアポイントメントが必要だって覚えなよ。

 そうすれば絶対に逃げ切るんだからね。

 

 でさ、今回はベル君の件で頭が一杯だったから全員纏めてテレポート、極寒の水の中(モンスター生息中)にご案内。

 寒いだろうし、せめて気分だけでもと防寒具フル装備で温かい食べ物を目の前で食べているのさ。

 

「困難こそ成長に繋がるからね。私も目と鼻と耳を塞いだ状態で不眠不休でのダンジョンアタックでランクアップしたし、君達だってこのまま岸まで泳ぎ切った後でモンスターに素手で挑もう! あー、温かいスープが身に染みるね」

 

「糞っ! 殺す、絶対にぶっ殺、うぉ!?」

 

 わざわざ激励してあげてるのに酷い事を口走るアレン君の口に目掛けて錠剤を指で弾くけれど、私を除けば都市最速、ギリギリの所で避けられて、ちょうど息継ぎで口を開けたオッタル君の口の中にゴール!

 

「ぬっ……。何を飲ませた」

 

「昔、私をバラバラにして薬にすれば不老不死が手に入ると思った馬鹿な国王が国を挙げて狙ってきてね。騙すために作った若返りの薬(偽)の強化バージョン」

 

 本当に若返っているわけじゃない。周囲と自分の認識を現実から改変するだけだ。

 尚、身体能力は周囲からすれば若返る前と同じだが、本人は若返った時の年齢そのままに感じられる。

 

 今回の場合、ほんの少ししか距離を離されていなくても、子供になったオッタル君にはドンドン引き離されている様に感じてしまう。

 

 

「ひぇ……」

 

「また凄まじい物を……」

 

 子供の姿に戻り、ブカブカになった(風に見える)装備が邪魔なのか泳ぎにくそうにしているオッタル君の姿にヘグニ君とヘディン君は青ざめていた。

 

 尚、(偽)の部分は口にしていないので、彼らに若返りの薬としか伝わっていない。

 

 

「本当はベート君で試す予定だったんだよ。基本的にあの子で試しているし。明日辺り、どうせ打ち上げをして酔っ払った末に誰かに絡むだろうから、その時にもう一つの薬と合わせて飲ませても許されるかなぁって」

 

 

「彼奴に同情はしないが……何か恨みでも?」

 

「まあ、普段から爺だの言ってるからな」

 

「口が悪いんだ、自業自得だろう」

 

「結論、あの馬鹿狼が悪い」

 

 

「いや、ベート君は打てば響くからお気に入りの子だよ? ただ、あの子の前世と旅をした頃の私ってひねくれた子供でさ、偉そうに兄貴風を吹かして来るから何時か一泡吹かせてやろうと思ってたし、何よりも反応が楽しいから」

 

「「「「あっ、これは彼奴は悪くない奴だ」」」」

 

「そりゃあ悪いのはどう考えても私じゃないか。さて、岸が見えたし、もう少し頑張ろう。確かに準備も無しに極寒の水に放り込まれたら君達でも大変だろうけれど、これも経験だ。……それはそうとして、子の状況で食べる暖かい麺類って最高だね」

 

 殺気と同時に全員の泳ぐ速度が一気に上がり、私への罵声や言葉にならない叫びも聞こえて来た。

 

 

「さて、この辺の宝財の番人(トレジャー・キーパー)の口に魔石押し込んで連れて来ないとね」

 

 今の彼等はフルスペックを発揮出来る状態じゃないけれど、これも試練だし、私相手にフル装備かつフルスペックかつ連携バッチリで挑むよりは遥かに勝機が高い。

 

 うーん、勝手に試練与えるとかフレイヤ様に似ていて嫌だな。

 

 

 

「まあ、フレイヤ様が最初に恩恵を刻んだ先輩として君達後輩に試練を……どうしたの? ヘディン君、皆揃って口を半開きだけれど、なんで?」

 

「いや、今聞き逃せない言葉が。えっと、フレイヤ様が一番最初に……」

 

「オラリオの外でね。その後でファミリアを結成しようとしたら希望者が次々に来るし、手続きとか書類作業とか面倒だから辞めさせてもらった」

 

 あの時点でステイタスの封印無効とかのスキル出てたし、適当に渡り歩いてたんだよね。

 

 

 

「え? じゃあ、テメェがずっと団長をやってた可能性も……」

 

「全員揃って嫌そうな顔をするんじゃないよ。失礼だなあ、まったく」

 

 特に発言者のアレン君、君にももう一つの薬を飲ませちゃうぞ? 実験台は多い方が嬉しいし。

 

 

 

 

 

 

 

 

「相変わらず飯の時でさえつまらなさそうな顔してやがるな、チビ。何がしたくて生きてるんだよ、テメェは?」

 

「さぁね。生まれた理由も生きる意味も僕には答えられないよ。……お母さんに会いたいって理由もどうでも良くなったし」

 

 あの後、周辺のモンスターを逐次投入しつつ見守っていたフレイヤ・ファミリア幹部勢の戦いも終わり、地上に全員送り届けた後で私はホームまでの散歩を楽しんだけれど、話に出したからか思い出すのは幼い頃だ。

 

 

 

「実際は希望を捨てきれてはいなかったんだよね。何時か迎えに来てくれる。もし自分が母さんの所まで行けたら泣いて抱き締めてくれるのか、それとも笑って出迎えてくれるのか、そんな風に期待してたっけ」

 

 ちょっと思い出したくない過去まで甦ったのを振り払い、ドアを開ける前に魔法を使う。

 何せベル君に誘われた豊穣の女主人、普通に入ったら怒られるんだよ、目立つから。

 

 

 

「やあやあ、今帰ったよ!」

 

「お帰りなさ……誰ですか!?」

 

 だから今より若い女の子に変身したらベル君が困ってしまった、そりゃそーだ。

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