いいのかこれで
やぁ、みんな元気?
僕はスパイダーマン!
親愛なる隣人。スパイディだったり、ウェブヘッド、ウェブスリンガーなんて呼ばれることもあるけどやっぱりスパイダーマンが僕の名前だ。
ちなみにスーパーヒーロー歴は今年で8年目。最初はピチピチのティーンだったけど今じゃ立派な23歳になる。
アベンジャーズに入ってスタークさん…アイアンマン達と一緒に戦ってサノスに消されて…ようやく平和になったと思ったらシニスターシックスなんて僕を倒す為にヴィランが徒党を組んだり、全員をラフトにぶち込んだらスターロードとロケット達が地球にやってきて僕を宇宙に誘拐したり、地球に帰ってきたらマイルズがスパイダーマンになってたり…いや、ホント忙しい。
で、僕がなんでこんな自己紹介なんてしてるかというとだ。
実はいつものニューヨークに居ないんだよね。 9ヶ月? 10ヶ月?くらい前に何時ものようにヒーロー活動をしていたら突然目の前に穴が空いて落ちちゃったんだ。 そして気がついたらなんと、ジャパンに居た訳。
え? 意味がわからない?
大丈夫、僕もわかってないから。
さて、これがフツーのジャパン……日本だったなら飛行機に乗ったり、色々な手段で国に帰ればよかったんだけど調べた結果マルチバースってことが分かった。
だって、個性なんて僕の世界にはなかったし!
事の始まりはこの世界での中国の何処かで【発光する赤子】が産まれたらしい。
そこから世界各地で【超常】を持つ人々が増え【個性】と呼び、世界総人口の8割が何らかの力を持つ超人社会になっている…
うん、つまりヒーローもヴィランもわんさかいるって事だよね。
しかもこの世界はヒーロー活動をするのに免許が必要みたいで僕がそれを知らないでやってたらヒーローに捕まりそうになった。
まぁ誰もが力を持っていたら取り締まりは必要だと思うから仕方ないとは思うけど。
あーっと、何の話だっけ。そうそうコレは僕だけの話じゃない。かつて普通の少年だった僕が"親愛なる隣人"になった時と同じように、前途ある少年少女達が"ヒーロー"になる物語。僕はそれをちょっと手助けする先達ってところさ。
時は戻って10ヶ月前。
ドサッ! と鈍い音がした。そのことに気がついたのはたまたまだった。というか、ゴミだらけの海岸線にくるモノ好きは今の所、師匠であるオールマイトとそして特訓中の緑谷 出久だけなのだから。
今日も今日とてえっちらおっちらとゴミの山を切り崩し、ゴミを撤去していた出久の耳に入ったのは普段聞こえる波の音とは異質な音。 恐る恐る音がした方へと近寄れば赤を基調として蜘蛛の巣状のラインが入ったヒーロースーツを纏った人物がゴミの山の中に倒れていた。
「た、大変だ!? いやどこから……いやいやそれよりも!? 大丈夫ですか!!」
時刻は朝の五時を少し回ったところ。オールマイトはまだ来ていないのでとりあえず倒れていた(多分)ヒーローに声を掛ける。ヒーローフリークである出久が見たことの無い格好だが、無視していいわけが無いと助け起こすように手を出した。
「ん、ぁ、あー…大丈夫……大丈夫…」
頭を打ったのか、後頭部を手で抑えながら声の質からして男性の蜘蛛の彼が起き上がると周囲を見渡しながら目を細め(正確には覆面のようなスーツの目が機械的になのか細まって)出久を見つめた。
「えーと…ごめんね? キミは? そしてここはどこ?」
「え、えっと僕は緑谷 出久です。ここは静岡の海辺ですが」
「ありがと出久。 シズオカ?」
「静岡です…」
「あー、聞いた事あるよ。ジャパンの…うん。嘘でしょ」
「え!? あ、あの大丈夫ですか本当に!?」
頭を抱えて座り込んでしまった彼の様子に慌てると手で制されてしまう。
「ごめんごめん少し、いやぶっちゃけめちゃくちゃ驚いちゃっただけだよ。そっかぁ日本かぁ…どーしよ!」
「あのお兄さんはいったい…」
「僕はスパイダーマン。アメリカのニューヨークでヒーローをしてるんだ」
「アメリカのヒーロー! 僕の守備範囲外だったか…! アメリカと言えばスターアンドストライプさんが有名だけどまだまだ凄い個性を持ったヒーローは沢山いますもんね!」
「スター…? ちょっと待って、そんなヒーロー僕は知らないけど」
「え? アメリカのNO.1ヒーローですよ?」
オールマイトに負けずとも劣らない最強ヒーローと呼ばれているスターアンドストライプを知らない…?
「因みに西暦は」
「2XXX年ですけど…」
「OK…OK……つまり僕は未来か、それともマルチバースに飛ばされてきたわけだ。どーしよ、どうやって帰ろう」
ブツブツと呟くスパイダーマンに対して出久は興味を持ったからか、休憩には早いもののゴミ掃除を一旦やめたまま彼へ質問を投げかける。
「スパイダーマンさんはどんな個性を持ってるんですか?」
「個性? 個性って言うのはなんだい?」
「こ、個性はその、手から爆発する汗が出たり、凄いパワーみたいなもので…」
個性をまるで知らないような質問に驚きつつも出久は身近で凄い個性を持つ彼を例にあげてみると納得がいったように手を打ち何度も頷いた。
「つまりミュータントみたいなものか。出久くんはどんな個性を?」
「あ、いえ…僕は無個性でして…はは…」
これにはスパイダーマンも失敗したと目を瞑る。どうやらこの世界には『個性』なるものがあり珍しいものでは無いようなのだが、そんなパワーが有り触れた世界での『無個性』というのは逆に目立つのだろう。
「ごめんよ出久くん、僕が悪かった。 でもキミはヒーローや個性に詳しいみたいだね? 良かったら僕に教えてくれないかい?」
「そ、そんな! 現役でヒーローをやってるスパイダーマンさんに教えることなんて!」
「あ〜、先ずは認識の違いから解いていこう。 改めて僕はスパイダーマン。 多分だけど2023年頃からやって来たんだ。もし調べて僕の経歴みたいなものが一切出てこなかったらマルチバースから来たんだと思う」
マルチバース。多元宇宙論。
超常が日常となった昨今でも創作やコミックになるSFジャンルでよく見かけるワード。出久的にはイマイチ刺さることは無かったが好きな人は好きな題材でよく聞くものだ。 それが、今目の前に?
「いきなり信じろ。なんて言われても無理だよね。何かいい証明が出来ればいいんだけど…」
「やぁ、おはよう緑谷少年!! それとキミ!」
「オールマイト!」
スパイダーマンが居るからかマッスルフォームの姿でやってきたオールマイトに出久が声を上げて歓迎する。
「ハァイ、僕スパイダーマン。よろしくねオールマイト」
「よろしくスパイダーマン。キミはここでいったい何を?」
「出久くんに色々と教えてもらってたんだ。僕ってば世間に疎くてね」
「HAHAHA!! なるほど、それはいい事だね緑谷少年! ここ最近は特訓ばかりで大変だっただろうし現役ヒーローから教わることも多い!」
「あ、ごめんねオールマイト。僕はヒーローだけどヒーローじゃないんだよ。なんていうかうーん、ヴィジランテ?」
「なんと、うーん私も立場があるからなんと言えばいいか分からないが…うん。とりあえず少しの間、私と一緒に緑谷少年の特訓の面倒を見ないかい?」
「え!? オールマイト!?」
「え、いいの?」
「うーん、調べてもスパイダーマン。アイアンマン。キャプテンアメリカなんて名前が出てこない…バットマン? スーパーマン?ううん…ちがうなぁ」
ある日は未来の可能性をかけて調べてみるも影も形もなく。マルチバースの可能性が高まったり。
「すごい!スパイダーマンさんは超パワーを持ってるんだ!?」
「こう見えて力持ちなんだ」
ある日は浜辺に捨てられたデカイ冷蔵庫を持ってみせ。
「すごい!? サポートアイテムを自分で開発したんですか!?」
「ウェブシューターっていって便利なんだよこれ」
ある日はウェブを見せてみて、誤爆して出久くんが絡まったけど。
「はぁいおばあちゃん。荷物返すね?」
「ありがとう新しいヒーローさんかい?」
「待て貴様! ヴィジランテだな!?」
ある日は街中でひったくりを捕まえた後にヒーロー達と鬼ごっこしたり。
「やぁ、オールマイト! なんだか今日は萎んでるね?」
「ゴフゥ!? な、ななななお、オールマイトだなんて私は!」
「あれ、もしかしてタブーだった?」
ある日はガリガリになってたオールマイト。トゥルーフォームについて知ってしまったりなんだかんだと長い数ヶ月を過ごした。
出久くんがオールマイトに特訓されていた理由がここにあった。なんでも彼の個性は譲渡でき、オールマイトは怪我や年齢もあって後継者を探していたようで…うん。なんかコミックで読むような感じなことがあったらしい!
こんな感じで簡単な回想は終わり。特に大事件なんて起こらなかったし、微々たる犯罪は多いけどとんでもないヴィランとかは現れなかった。というのもオールマイトという偉大で強力なヒーローが抑止力として存在しているからだろう。
「ねぇオールマイト。出久くんに個性を継承? するって何時するの?」
「予定では雄英高校の試験当日の朝だね」
「……え? ちょっと待ってよオールマイト。 そんな当日に渡して出久くんは上手く個性使えると思ってるの?」
「え、私は最初から上手く扱えてたし…」
「オールマイト。今から僕のウェブシューター貸して、アナタが僕と同じようにビルからビルへスイングしながら移動出来る!?」
「………………確かにぃ!? 緑谷少年! ストップ!ストップ! ちょっとメニューの調整し直さなきゃだぁ!?」
そしてなんやかんやとその日が来た!
雄英高校の入試! のひと月前。
出久くんにOFAをオールマイトが譲渡するその日が。
「私のDNAを取り込んでもらう!」
「え!?」
「うげ…それマジ?」
まぁ僕も蜘蛛のDNAを取り込んでるわけだけどもさぁ…髪の毛を飲み込むってちょっと何とかならなかったの?
すごい顔をしながら髪の毛を飲み込んだ出久くんをまじまじと観察する。オールマイトみたく筋肉モリモリになる訳じゃないのか。
「どう?なんか変わった?」
「ん、んー……よく分からないです」
「使おう!と思わないと使えないかもね! 海に向かってスマッシュ!ってやってみるんだ!」
SMASH!!!!!!!
出久くんの気合いの入った雄叫びとともに振るわれた拳は凄まじい空圧を産み、海面を割るとまではいかないものの拳の一直線上に筋を残して静かな海に派手な水しぶきを巻き上げた。
すっっっっごい! パワーだけならハルクとも殴りあえるかもしれない!
褒めようと思って出久くんの方を見ると振るわれた右腕は色が変色しバッキバキに折れていた。
「〜〜〜ッ!!!!」
「緑谷少年!? 腕が! 今すぐ連れてかねば!」
「やばいでしょこれ!? オールマイト行く宛てあるの!?」
「ある! スパイダーマン。申し訳ないが明後日にまたここに来てもらえるかな!?
「緑谷少年今助けるぅ〜!!」などとドップラー効果のように声を辺りに振りまきながら2人の影は遠ざかっていく。これはもしかして前途多難かもしれない。あんなグロい折れ方するなんてスパイダーマンになる前だったらトラウマものだよ。
そして言われてた2日後。あれだけバッキバキに折れていた腕が元に戻ってる出久くんが居た。ここまでくると個性って怖いなぁ!?
「まだ器が足りていなかった、ということでしょうか…」
「個性を引き継いだ時点で緑谷少年の肉体が無事だったから安心していた私が悪かったね…これでは安易に個性を使えない」
「前もって使ってみてよかったね。試験日に行動不能になってたら目も当てられないでしょ」
うぐっ!? とオールマイトが声を詰まらせる。いやほんと気をつけようねオールマイト? というか、肉体が無事ってダメだったら木っ端微塵になってたらしいし賭けにするにしてもギリギリがすぎる。
「スパイダーマンはこういう時どういう風にしたらいい、とかあるかい?」
「そうだなぁ…少しずつ耐えれるように!は時間的に足りないからね。やっぱり出力調整じゃない?」
先日海岸で集めたゴミの山の一角からバカでかい冷蔵庫に近づき、細腕一本で持ち上げてみせる。
「すごい!? 前にも大型のゴミを軽々持っていたのを見せてもらったけどやっぱりスパイダーマンは身体能力もすごく高いんだ! 戦い方も格闘戦がすごいし察知能力も高い、それにウェブでの高速移動…オールマイトのようなパワーにも憧れるけどもしかして僕が目指すべき地点は…ブツブツブツ」
「なんだかめちゃくちゃ褒めてくれてるみたいだけど、僕は何時もこんなに力を使ってないんだよ。普段から全開だったらドアノブとか潰しちゃうし、要は力加減だよね。オールマイトだってそうでしょ? 全力のスマッシュなんてしたら敵なんて爆発四散しない?」
「確かにそうだね。私は無意識に力加減していたかもだけど」
感覚派って教えるのに向いてないんじゃない?
「ワンフォーオールの出力調整…」
「そうそう上手くはいかないと思うけどね。1%から始めてみよう」
「うん、そうだね。いきなり私みたいに力を使わず緑谷少年が使いこなせる分量から始めてみようか!」
「使いこなせる分量、イメージ…蛇口を開けて力を出すように……ッ!?」
SMASHッ
ビュゥ! 風が飛んでくるような拳圧。一昨日みたような大破壊力は一切ないし仮に僕が受けたとしてもそこまでダメージにならない程。それでも個性を使わない状態の出久くんに比べれば数倍、力強い一撃だった。
「ぐっ…まだ少し強すぎた…」
「いやいや、飲み込み早いね!? 一発でほぼ制御出来てるじゃん!」
「うん、ヒビは入ってないようだし少しずつ! 今の威力よりも抑えてカラダを少しずつ慣らしていこう!」
「は、はい!」
それから2日に1度、朝から少しずつ出久くんの個性を馴染ませる為の特訓を行ってなんなら僕と組手までやった。彼の分析力は本当にピカイチで癖を掴むのも上手かった。ヒーローだけに限らず向いてるモノは沢山あるんじゃない?この子ってば。
【アース?????】スパイダーマン
間違いなくピーターパーカーであり、顔はトムホランド似。
ホームカミングやらエンドゲームとMCUの世界線にほぼ似た状況を経験した後にキングピンを捕まえたり、Mr.ネガティブと戦ったり、途中で宇宙に拉致られたりして色んな世界線の経験をしてしまってるスパイダーマン。
スーツはトニーからの頂き物を改造したり、宇宙の技術を使ったりとかなり高性能。 マルチバースの存在は知ってるし、ヴィランと戦ってはいるものの他の世界の自分には会ったことがない模様。