【僕たち】のヒーローバース   作:夢見969

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今月、あと2話くらいあげたいよね。
感想ありがとうございます。お気に入り登録も増えてハッピー。
もっとくれ(強欲)


保須市の騒乱

「その人を離せ……!」

 

保須市の路地裏。各地で爆発が起きている最中での蛮行。赤黒い血染めの布を身に纏い、マチェットのような大型の刃物のを振り被るヒーロー殺し、ステインの動きが声によって止まる。

 

「ハァ……スーツを着た、子供…?」

「ヒーロー殺し、ステインだな!? 今すぐその人を離して投降しろっ」

「ここは、子供の立ち寄っていい領域じゃあない……それにその瞳、私怨が混じっている…」

 

ギリギリとヒーローの首を絞めあげながらも鋭い眼光は飯田を貫く。 USJで会った敵なんかチンピラ同然と思ってしまうほどの恐ろしさを感じ取る。が、兄を、自分の憧れであるインゲニウムというヒーローをある意味で殺した(・・・)憎い存在に恐ろしさを上回る怒りが湧き上がって恐怖を制す。

 

「僕は、俺はお前が憎い! だけども! 兄に、人を沢山助けてきた兄ならば、そんな憎しみも!怒りも捨てて!! 人を助けるだろう! だから俺は、お前の手から人を助ける…!」

 

咆哮。とでも言うべき啖呵と同時にエンジンを噴かせて走り、勢いを乗せた回し蹴りを放つとステインも漸くヒーローから手を離して飛び下がった。

 

「……助ける、と言いながらも私怨丸出し。ヒーローにあるまじき主張…だが、俺好みでは…ハァ……」

 

易々と回避されれば真正面にステインを見据える。 何らかの個性によって人を動けなくする個性なのか、初見殺しになりかねない相手の出方を伺うよりも此方から飛び込み後手に回させる方がいい。

 

「いくぞ、ヒーロー殺し…!」

 

ドルゥン! エンジンをより噴かせて音が路地裏に反響する。

同時にステインが駆け出す。飯田を殺す為ではなく、その背後にいるヒーローを殺す為に。

高速移動を行える個性でも持っているのかという程にステインの動きに澱みなく、迫り来る。それに合わせて蹴りを主体とする飯田は縦に脚を振り上げるとステインは急制動しタイミングをワンテンポずらす。たったそれだけで一手目の攻撃が空振りに終わる。

ステインの振るうナイフが二の手で迫るが更にエンジンを噴かせてサマーソルトのように腕を蹴りあげて回避する。

 

「…………っ! いいな、少なくとも。子供だから、と切るには…ハァ」

「がっ!?」

 

腕を蹴り上げるがダメージは浅い。攻め立て続けなければ、と思った時には肩に2本の小型ナイフが突き刺さっていた。

 

「……だから、そこで…見ていろ。偽者がどうなるかを…」

 

痛みで動きが鈍り、身体を引く前にナイフを引き抜かれ途端に指先まで動かない程の虚脱感に襲われる。

 

「や、めろ…! これ以上、ヒーローを……!!」

 

声は、出せる。必死に絞り出すように言葉を並べるもステインには届かない。 凶刃が振るわれそうになる光景が目の前で広げられる寸前、影が差し込んだ。

 

 

 

SMASHッ!!!!!

 

 

 

力強い声とともにステインの身体が勢いよく吹き飛んだ。あぁ、彼は本当に……っ

 

「大丈夫、飯田くん!?」

 

ヒーローだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

燃え盛る炎に崩れ落ちるビル、ひび割れたアスファルトにひしゃげた車。 ここ暫く見なかった、シニスターシックスでも暴れたかのような現状に額を抑える。もう本当に嫌っ!誰が言ったかパーカー・ラック(不運)という程に僕は運がない。

いや、僕だけが運悪いなら何とでもいいんだけど行く先々で事件が起こるのは本当に勘弁して欲しい。

 

「まさか、保須市で飯田くんを探してるうちにこんな事になるなんて……」

「ガガガガガッ!!?」

 

壊れたオーディオのように音を上げる脳無。 USJで見たのはフツーのマッチョな人型だったけど…

 

「これって僕に対する意趣返し?」

 

上半身と下半身の前後が逆になっていて、しかも上下とも腕と足の数が2倍ある。正しく蜘蛛みたいな造形をしている。嫌がらせにも程があるでしょこれ。

とりあえず捕縛するためにウェブを打つと8本脚を使って特大跳躍し、口と思われる器官から糸を大量に吐き出して一瞬で巨大な巣を作ってしまった。WOW、やるね。

 

「スパイダーマンが蜘蛛の敵と戦ってるぞっ!」

「頑張ってスパイダーマンっ!」

「早く避難してねキミ達!」

 

問題点そのニ、市民がヒーローと敵の対峙を娯楽感覚で見てしまってる点。市民を守るためにヒーローはどうしても後手に回るしかなくなる。これってヒーローを人気商売にしてしまった弊害だよねぇ…

 

「聴こえる!? 保須市の状況どうなってるか教えて!」

『聴こえてるわっ。 あの脳無って言われてるのと同じ種類と思わしき敵が保須市の六ヶ所に現れてるのよ』

「嘘でしょ六体もいるの!?」

『ヒーローが対処してるけど…残念ながら芳しくないわね』

 

僕の相棒(サイドキック)みたいな人がスパイダードローンから得られる情報を取りまとめてスーツのモニターに映してくれてるんだけど…うーん、酷い状況だ。一体は謎の御老人ヒーローが足止めしてくれてるけど、ここにいる一体を含めた五体は絶賛大暴れ中だし。

避難が遅れている市民を抱き抱えて出来るだけ脳無から離れた場所に下ろし、ビルとビルの間を飛びながら敵の蜘蛛糸を回避し続ける。 蜘蛛糸打ってくるの本当にウザイな!?

 

「キミ、蜘蛛糸で人を捕らえようとするの恥ずかしくない?」

 

巨大な蜘蛛の巣から糸を放ち、車やら瓦礫やらを引き上げて上から落としてくる蜘蛛脳無。 ちょっと僕だけでコイツの相手は厳しいかもしれない。

 

「プロミネンスバーン!!!」

 

そんな時、掛け声とともに放たれた火砲が蜘蛛の巣と共に脳無の片腕を焼いた。同時に僕のスーツの一部もすこしアツアツになった。

 

「ちょっとエンデヴァー! 僕がいるのわかってて撃ったでしょ!? でもぶっちゃけナイス増援!」

「スパイダーマン、貴様はここから北に行け! 人手が足りん!」

「OK!」

「それから、江向通り4-2-10の細道! 焦凍が口にしていた住所だ。敵の方がついたらソコへ向かえ!」

「……!? わかった!」

 

エンデヴァーが蜘蛛の巣を焼き払いながら蜘蛛型脳無をも燃やす。 うわー、ぼこぼこ蠢いて再生してる。アイツも再生持ちだったの? 僕じゃ相性最悪じゃん。 と、言うかだ。住所を教えてきたのが轟くんということを加味すれば十中八九、そこにヒーロー殺しが居て飯田くん、ないしはA組の誰かが交戦してる可能性が高い…?

 

「やることが多いなぁ…!!」

 

ビルの上へ駆け上がり、空高く飛び上がると火の手が上がる街を視界に入れると肥大化した豪腕を振るうっている脳無を見つけた。

 

「お帰りはあっちだよ脳無くんっ!」

 

勢いよく突っ込みながら全力のパンチをお見舞いすると脳無の豪腕が弾け飛んだ。うわぁ、グロテスク。

ちぎれて血が出ている肩口にウェブを貼っつける。炎程じゃないけど再生を少し遅らせれるだろうし! 再生持ってるか分からないけど。

片腕になったのも気にせずに腕を叩きつけ、道路や付近の車をぶち壊す姿を見て不思議に思った。

 

変だな、と。

 

そりゃ市民にもヒーローにも被害は出てるけど率先して暴れ回っている、というよりは注目を集めるために各地で被害を拡大させているような感じだ。

なにか狙いでもあるのか…?

 

「ま、それはそれとして。USJの脳無よりパワーは無さそうだね!」

 

豪腕を片手で抑えこめば、投げるように地面に叩きつけそのまま地面にウェブを連射して張り付ける。 何度ももがくように動くがパワー不足かそのまま抜け出せない。

 

「とりあえずこれで2体…いや3体かな!?」

 

次はどっち! と振り返るとまた脳無。 正確には宙を舞ってきりもみ回転しながら落ちてくる脳無だ。

 

「キャニオンカノン!!」

 

そして落ちてくる脳無目掛けて横合いからの飛び蹴りが決まり天高く吹き飛んで言った。ホームランだねアレ!

 

「やぁ、Mt.レディ! なんで保須市に?」

「あらスパイダーマン! ふふ、手柄を求めてよ! 活躍の場を探している時に、職場体験に来ていた峰田くんが保須市にヒーロー殺しがいるって!!」

「ヒーロー殺しは置いておいて、キミの破壊力は脳無相手にもちょうどいいかも。ちょっとその辺の脳無を全員吹っ飛ばしてきてくんない?」

「扱い!! もーちょっとなにか、こう!あるでしょ!」

 

やるけども! と次の目標を目指して巨大化を解いて走り出して行った。バーカバーカ!と叫びながら。子供かな?

 

「先生!」

「峰田…じゃなくてグレープジュース! Mt.レディをここに連れてきたのは大手柄だよ!」

「へへオイラもやる時は…ってそれどころじゃなくてよぉ! 緑谷から変なメッセがきてたんだ!これ!」

 

両足に付けたモギモギで凄まじい勢いで走りよってきた彼が見せてきたスマホを見ると端的に、住所だけが載っていた。

 

江向通り4-2-10の細道

 

エンデヴァーが言っていた住所と同じ。

 

「あーくそっ。これ来たのいつ!?」

「ご、5分くらい前!」

「ってことは、5分前から少なくとも緑谷くんと轟くんは厄介事に巻き込まれてるってことか!」

「飯田くーん! どこに行ったんだー!」

「追加で飯田くんも確定だ」

 

ヒーローが飯田くんの名前を叫びながら走り待ってるのを見かけた。

3人がヒーロー殺しとやり合ってる可能性大。 何かあったら助けると言っておいてこの体たらくとは。

 

「ど、どどどどーするんだよ先生ぇ!?」

「少なくとも4体の脳無はやっつけられてるから、あとは任せて助けに行くか…」

 

ヒーロー殺しは生徒を信じて任せるか…危ないよなぁ。

残りの脳無はヒーロー達に任せても…悪い言い方をすればヒーロー達が怪我しようと何しようと自らの責任だし。

 

「グレープジュース。僕はヒーロー殺しの所に行く」

「お、おう! お、オイラはどうしたら!?」

「この混乱に乗じて何かあるかもしれない。Mt.レディ行っちゃったし、近くにいるヒーローと連携して避難誘導と負傷者の確認頼むよ」

「わかった!」

 

ビョンビョン、跳ねるように移動していく彼を見送りながら僕も飛び出す。 幸い言われていた住所は遠くない。次々にスイングしていけば、あっという間に目的地〜…って。

あれ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し時間は遡り…

僕、飯田くん、そして轟くんの三人はヒーロー殺しと対峙していた。

 

「下がれ緑谷!」

 

合図と共に大きく後ろに飛び退けば、巨大な氷塊がビルの間を埋め尽くす。

 

「視界を狭める、 ……敵の姿を見失う攻撃…ハァ、愚策」

「と、思うか?」

 

氷を出したばかりの隙を晒している瞬間、絶対にステインは見過ごす訳が無い。それを狙った行動。

氷は前にだけ出した訳ではなく、背後にも氷壁を出しており飛び退いた出久が脚をつけて再びステイン目掛けて飛翔する。

 

「だが」

「俺を忘れるな、ステイン!」

 

ステインにとって、轟くんの範囲攻撃、僕の攻撃力どちらを先に排除するべきかの思考は淀みがない。だがそこに第三の選択肢が現れる。ステインの個性『凝血』で動きが止められていた飯田くんが氷の壁を駆け上り、上からの挟撃を仕掛けエンジンが唸った。

上、前、下を取られ背後は氷の壁。 その状態まで追い込まれて尚、ステインの迷いは一瞬程度。向かってくる僕にナイフを投げ、上段からの飯田くんの蹴りを大型のブレードで受け止め、足先のスパイクで轟くんの肩を抉った。

 

「…なかなか、良い。 だが、まだ甘い…」

「いいや! こっちの方が、速い!!!」

 

ステインの個性上、相手に出血を強いり、そこから経口摂取するという工程を踏まなければ相手の行動を阻害することが出来ない。

冷たい風がもう一度巻き起こると肩を抉られた轟くんがそのままステインの脚を掴み、氷で捕縛。 投げナイフが肩口に刺さっているにも関わらず僕は怯まずに拳を振るい、脚を受け止められた飯田くんが空中で身体を捻り渾身のニ撃目をステインの背へと撃ち込んだ。

 

「油断するな! まだ………っ…」

 

二人の一撃の衝撃で捕縛していた氷は砕かれ、吹き飛んだステインを睨みつける轟くん。に続いて拳を構えるが見えたのはぐったりと全身が脱力して意識を飛ばしているステインだった。終わった…?

 

「とりあえず、起きる前に縛ろう」

「ロープ落ちてるかな」

 

飯田くんも僕も轟くんも、結構な血を流している。すぐには死なない程度だろうけど流しっぱなしもかなり不味いので人を呼ばないと…

 

「2人とも、巻き込んでしまい申し訳ないっ! 人を助けるために、私怨を晴らす為に人を巻き込んでしまうなんてヒーロー失格だ…!」

「飯田くん…、ヒーローはお節介だから僕が勝手に首を突っ込んだだけだよ」

「俺は、どんな理由であれ知っている…違うか。クラスメイトが危ない目に合うのが嫌なだけだ。だから手伝った」

「2人とも…!」

 

たぶん、ステインは僕たち相手に全力を出してなかった…と思う。 僕たちに向けていた攻撃はどれも出血を伴うものだったけど殺すには足りないモノだった。 全力のステイン…それを考えるとゾッとしてしまう。

 

「すまない、プロなのにキミ達の足を引っ張り続けて…」

「大丈夫です。一対一では分が悪すぎる相手ですから」

「何やってるおまえ!?」

「グラントリノ!?」

 

怪我をしたプロヒーローに肩を貸しながら路地から出ると突然現れたグラントリノに蹴りを貰った。うん、僕が悪い。

それからエンデヴァーからの要請を受けたヒーロー達も数名やって来てようやく、ヒーロー殺しの事件が終わりを迎え……

 

「伏せろ!!」

 

グラントリノの叫びに対応が遅れ、僕は空へと攫われた。

不味い、マズイマズイマズイ!!? 逃れれない!

 

羽の生えた脳無の足ががっつりと僕を掴んでいる。 拘束が解けたとしても僕は上空から真っ逆さまになってしまう!

 

「全ては、正しき、社会の為に」

 

ドスッ…、と重く粘っこい音と共に脳無の身体は急降下しクッション代わりになって不時着した。いやその前にこの声は!身体を抑えつけられる。

 

「は、なせ……!」

 

ヒーロー殺しが拘束から逃れて脳無をやったのかは分からないけど……!

 

「正さねば──…誰かが…血に染まらねば…!」

 

その異様なまでの威圧感に誰もが呑まれた。あのエンデヴァーでさえ、足先が後ろへと下がっている。

凄まじい悪寒に脚が震え、指先すら動かせないくらいのプレッシャーに襲われる。ステインの個性なんかじゃない。

 

英雄(ヒーロー)を取り戻さねば!!」

 

一歩、その一歩は誰よりも重く力強い一歩だ。

 

「来い。来てみろ贋物ども」

「違うね。ヒーローは誰かに取り戻されるものでもなければ、誰かが血を被ってでも守られる象徴でもない」

 

誰もが動けない中、いつものように。

先生は現れた。

 

「困っている人が居たら迷わず救いの手を差し伸べる それが真のヒーロー。でしょ。誰だって、キミだってヒーローになれたんだよ」

「ハァ…お前は、本物の英雄と…──同じ、だ」

 

立ったまま、気を失った…?

 

「はぁ…ごめんね、皆。来るのが遅れちゃったよ」

 

腰が抜け力が抜けてしまった。それ程までの威圧感。

後から聞いた話だけど、ヒーロー殺しは骨が折れ肺に刺っていたそうだ。そんな状態で誰もが動けなくなるほどの信念を見せた…それは……

 

「はいはい、みんな未だここは現場だよ。犯人を捕縛して早く連れていって! 怪我人は病院! リカバリーガールは居ないんだからねっ!」

 

マスクを付けているのに、どこかスパイダーマン先生は寂しそうだった。

 




飯田天哉
清濁併せ呑む、まではいかないものの復讐心より人を助けることを先に選んだ。故に、ステイン的には見込み無しよりはまだマシ。 己ならば、よりも兄ならば。にならってインゲニウムの名を忘れさせないために名乗る決意を得る。


ステイン
見込みありな子供達を相手にしたせいで全力とはいかなかったこと、3人中覚悟ガンギマリが3人だったことが敗因。 10代半ばで身体にナイフを突き立てられても殴ってくる子供怖い。今回は人からもらった道具を使わなかった。


Mt.レディ
峰田に唆されて数日前から保須市に張っていた。 如何に強靭だったり手数が多い脳無だろうと20m級の巨人からの暴力には勝てないのだ。


峰田実
出久から来たメッセージで変に察してしまい、めちゃくちゃ不安になった。またやったのかあいつ。と。
Mt.レディの事務所の掃除やら事務処理やらが忙しすぎて、何とか理由をつけてやってきた保須市であんな目に。 作者の匙加減で事件に突っ込むことが多くなってごめんね。


脳無.s
原作の数倍の数が存在するぞ。
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