【僕たち】のヒーローバース   作:夢見969

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新年明けましておめでとうございます。初投稿です。

数話かけようかと思ったのですが難産でしたし一話で終わらせちゃった……ごめんなさい…


残り火の最後

岳山優はここ最近、不運な方である。

巨大化というド派手に人目を引く個性を持った自分は将来、ヒーローになって人気になると確信していた。

そしてヒーローデビューの来る日。おあつらえ向きに巨躯の敵が現れてこれから一撃かますといった瞬間に敵は瞬く間に蜘蛛の糸に絡め取られて捕縛されていた。行き場の失くした勢いのノッた蹴りは近場のビルへと突っ込み、デビュー初日から保険の適用対象になってしまったのである。後で分かったことは、自分の華々しいデビューを潰したのが『スパイダーマン』という当時ヴィジランテとして有名な男であった。

そこから数度に渡ってスパイダーマンは度々現れては手柄を奪っていったり、ヒーローとして彼が認められてからは共同戦線を張ったりした。話してみれば気さくで気が利く方。年上かどうかまでは知らないが、他の同年代ヒーローよりはギラギラとした野心も感じず付き合いやすいタイプの同期みたいなものだ。

 

今回の作戦も危険度が低い方に回されたのは捕物としての自分の巨体を活かせる点と経験の浅さだろうと自分で分析していた。

 

もう一度言うが、最近の自分は不運だ。

 

どのくらい不運かと言うと、自分がメインヒロインを張るはずだったのにいつの間にかサブに回されメインヒロインの座に別の…具体的に言えば地方出の少女に取られたキャラクターぐらい不運だろう。

だからこそ、こんな所に敵の親玉が急に現れて先輩方共々吹き飛ばされそうになって、そこから巨大化した自分と大差のない大きさの敵と取っ組み合いをしているのだ。

 

「こ、のォォォォ!!!」

 

子供たちは逃げた、市民の避難は先輩たちがしている。

自分がすべきは目の前の大型敵の撃破と捕縛。

硬い甲殻のような肉体に対して肉弾戦は無理と判断し、八足あるうちから二本をガッシリと掴んで周囲を気にせずに全力で振り回した。ブチッ! と音を鳴らして蛸足はちぎれ跳ぶ。 痛覚はあるようでのたうち回るように暴れ、周囲の瓦礫を破砕していく。一撃の重さは尋常ではない。

 

「ほらほら、鬼さんこちら!」

 

スパイダーマンは周囲を飛び跳ねるように走り、時には敵のカラダを駆け上がってその甲殻を殴り飛ばしている。 その威力たるや巨大化した自分よりもあるのか、数発で硬い敵の肉体が凹んでみせた。

 

「……!? ま、Mt.レディ!直ぐにそいつを掴んで!」

「なっ!? その巨体で……!?」

 

暴れているだけ、と思えばその巨体では飾りがせいぜいかと思われた翼が大きく動き強風が地面を叩き、周囲の瓦礫を吹き飛ばし始め、なんとその巨体を浮かし始めたのだ。 咄嗟にスパイダーマンが地面と敵の蜘蛛足を糸で結びつけるもブチッ…ブチッ…と鈍い音を鳴らして引きちぎれていく。精々数秒の時間稼ぎ程度。 咄嗟に飛び込んで敵の身体を何とか掴むも強風が身体を打つ。

 

「お、ち、な、さい、よォ!」

 

力ずくで地面に引き寄せようとするも嘲笑うようにその巨体は徐々に上へと上がっていく。どうすれば、そう意識が逸らされた時、悪寒が首筋を襲う。

 

「ぐぅああ!?」

「スパイダーマン!? アンタ、どうして!」

 

蠍の尻尾のような部位が首筋に迫り、その先端が刺さる直前スパイダーマンがその身を盾にして防いでくれていたのだ。

腹部に刺さった針の先端を離さずに持てる力の全てを使って針をへし折る。

 

「こ、のでかいの、暴れさせない為にはキミが必要だMt.レディ…! 頼んだ…よっ!」

 

勢いをなくし、ボロきれのように地面に打ち捨てられるスパイダーマン。

掴んでいた腕を精一杯動かし、浮き始めたその巨体に無理矢理よじ登り何度殴打されようとがっぷりと巨躯を掴んで離れず。遂にはその首根っこを掴むほどによじ登り羽ばたいている羽根を文字通り鷲掴みする。

 

「Ga!!!!??」

 

初めて、怪物の声聞いた気がする。

気にするものか。

 

べキッ…!! オールマイトと敵の首魁の殴り合いの轟音にも負けぬほどの音が響き渡る。同じタイミングで自らの片脚が敵に捕まれ、バキッ…と鳴り響いた。

構うものか。

 

「Mt.レディ!」

「若いの無理すんな!」

 

業火が羽根の先端を焼き、大きな顔の顎を蹴り上げ脳を揺らされた敵が漸く地に向かって落ち始める。

まだだ。

経験不足だろうが、実力不足だろうか、怪我をしてようが倒れる理由にはならない。

 

だって私は、ヒーローなのだから。

 

 

 

 

 

 

 

──────────────

 

 

 

 

「ハハ、オールマイト。 見るといいヒーローたちが散る様を」

「分かってないなAFO! 散る様? 違う。 脅威に立ち上がり守る姿さ! 個性で老いの無い身体を持っても老眼は止められなかったかい? いやいや失敬、その顔を見るに目が、見えてないようだね!」

 

超速。そう言うに相応しい速度で二人は幾度もなくぶつかり続ける。 拳を打ち合い、躱し、睨み合う。 その空間に入り込めるのは歴戦のヒーローと敵くらいなものだ。

 

「残りカスの力でよくもまぁ出てきたよ」

「他人からの借り物でよくもまぁ威張れるものじゃないかな?!」

 

OFAの残り火。それは最早、風前の灯火に等しく今この瞬間に残っている全てを注ぎ込んで燃やしている状態である。 とはいえここ数ヶ月、スパイダーマンが居てくれたお陰で自分は力を常にセーブ出来た為に『正史』におけるオールマイトよりも数段コンディションは上。加えてスパイダーマン直伝の煽り口プは僅かながらもAFOに苛立ちを与える。

 

数度目の轟音は地面を割り土埃を巻き上げていく。 少し離れたところでその巨体を使って戦うMt.レディにそれを援護するエンデヴァーとグラントリノの姿が視界の端に入れば、戦っているのは自分だけでは無いと力を貰える気がした。

 

「なら、これはどうだろうか」

 

すわ、新たな個性を使っての攻撃かと身構えるオールマイト。

 

「死柄木弔はね、志村菜々の孫だよ」

 

空白。

 

思考が止められ、行動も何もかもが止められ今まで打ち返し、受け流してきた強烈な一撃が半身を撃ち抜いた。

 

「ハハ、やはり自らの師匠の事となると考えが無くなるねオールマイト。君のその顔が、見たかったんだ」

 

巻き上げられた土煙の中に沈むオールマイトの姿を見てAFOは静かな口調の中に高揚した気分を隠しきれていない。 そして報道ヘリが映していたその瞬間が多くの市民に絶望を与えている。 誰もが勝利を疑わなかったオールマイトが沈められたのだから。

 

「スパイダーマン。キミも…いや、キミのおかげで僕は更なる高みへと登れそうだよ。改めてお礼を言おう」

「それは、オレに言ってくれているのか?」

「それとも私?」

「がっ!?」

 

息も絶え絶えなスパイダーマンに向けて唄うように礼を告げたAFOに対して拳と蹴りが返答として飛んできた。

 

「……な、るほど。マルチバースのスパイダーマンか。 驚いた。 やはり世界は広いね」

 

濃紺と白の蜘蛛が倒れている2人のヒーローの前に立ち巨悪を睨みつけている。

 

「此処に居ていいのかい? 街には大量の脳無を放ったハズだが」

「既に全て制圧済みだ。随分と此方を甘く見てるようだな」

「これなら、キングピン相手の方がまだやりにくい」

 

確認するように、一度黙り込むAFOを他所に白のスパイダー。グウェンは倒れている彼に寄り添う。

 

「大丈夫!?」

「ちょぉっと、マズイかも……傷は塞がるけど毒がね…っ」

「あー、もうっ。 アテはある?!」

「……ッ、ん、んー…どうだろ分かんない」

 

グウェンからしてみれば死にかけている彼を、『彼』を見るのは二度目だ。 精神穏やかではなく、珍しく焦っている。

そんな彼女の横からスルリと少女が現れた。トガヒミコと呼ばれた少女が止める間もなくその牙をスパイダーマンの手首を取って突き立てた。

 

「うぇ……不味いです…」

「ちょっと、何してんの!?」

「私がある程度スパイディくんの血を毒ごと吸って、その後にスパイディくんに私が変身して輸血します。あとは治癒因子(ヒーリングファクター)で何とかなるハズですよ」

 

器用に血を吸いながらなんてことは無いと言う風に告げるトガ。

 

「アンタに毒が回るじゃない!」

「大丈夫です。 そういう方面にある程度耐性あるので」

「休憩はここまでのようだぞグウェン。トガ、その阿呆を頼んだ」

「ハァイ」

 

戦場のど真ん中で輸血を行おうとする少女の姿にグウェンは戸惑った。のだが、直ぐ様ミゲルの声によって引き戻される。

 

「驚いたよ。 まさか脳無達を完璧に処理してきたと? エンデヴァーや他のヒーローたち程度では手が足りないと思ったが…?」

「何。 ヒーローといえど取引はするものだ」

「取引…?」

 

街中で暴れ回っていた脳無たち、特に上空を飛び回っていた個体はヒーロー達が一番手の出しにくい相手をたまたま逃げ回っていたマルチバースから来たヴァルチャー、女エレクトロに取引と称して手を借りたのである。 ヴァルチャーは身の安全を、女エレクトロはとりあえず此方にいる間のエネルギー源の確保を。

そしてトガヒミコも、この場を退いたMr.ネガティブと一つ約束を交わしていた。

 

「ヒーローが敵と交渉したと? 正義が聞いて呆れる」

「悪が正義を説くのか。笑わせる」

 

ガラリ、瓦礫が崩れる音がすればオールマイトが土煙の中から這い出てきた。その姿は、誰もが知る姿ではなく。ごく一部の人間のみが知る骸骨の様な姿(トゥルーフォーム)

 

「あの程度で死ぬとは思っていなかったが、随分と無様な姿だねオールマイト?」

「なに、……こんな姿でも貴様を牢に叩き込むことは出来るさ。オールフォーワン…! 済まないね、ミゲルくん。 奴は私がやる」

 

その姿はテレビカメラに映され、日本中に、それどころか世界へと映し出されている。誰もが一度不安を覚えるも眼光にある力強さに不安を口にするよりも先に声を上げた。声援を、願いを。

 

「そんな燃えカスで僕に勝つだって?」

「知らないのか。ヒーローは最後に勝つのさ……!!!」

 

ザっ、と一歩踏み出す。

 

ミゲルとのすれ違い際に「手を出すなとは言われていないからな」と告げられ笑ってしまう。

その笑みは普段のヒーロースマイルとは程遠いだろう。然して、笑みは人々に勇気を与える。

 

右手を握りしめる。

 

同時にAFOの片腕が肥大化する。

 

睨み合う二人の上空でMt.レディが巨大なキメラ紛いのヴィランと取っ組み合いをし、遅れてやってきたシンリンカムイが縛り、身動きが取れなくなったところでエンデヴァーの最大火力が焼き払う。必殺になりうる一撃が巨体を沈め、轟音を響かせながら落ちた時、二人は駆け出した。

 

死に体なオールマイトに比べ、AFOの方が俊敏で力強い。

振り被り撃ち抜くように放たれた拳を迎え撃つオールマイト。

 

ヴィランが地に落ちた音よりも重い音を鳴らし二人は激突する。

 

「ハハ、ハハハハ! 残念だったね、オールマイト…キミの負けだ!」

「いいや、私の勝ちだ……!」

 

不格好にひしゃげた右腕を見て確信するAFOを他所に、左拳を握りしめ再度笑う。

 

「それも読んでの、……ッ!!?」

 

AFOはオールマイトが右手を犠牲にして反撃してくると分かっていた。だからこその勝利宣言。 しかし誤算はあった。

 

同じく肥大化させた反腕を振りかぶった瞬間、腕が動かなくなった。

 

「ヒーローは、私だけでは無い。オールフォーワン。何時までも一人のお前とは、我々は違う!」

 

エッジショットによる神経への攻撃。加えて三人のスパイダーマンによるウェブが腕へ絡みついていた。倒れていたハズの赤いスパイダーマンすら半身起き上がらせての妨害。振りほどくのは一瞬で出来る。だが、その一瞬が────

 

 

UNITED STATES OF SMASH ッ!!!!!!!!!

 

 

勝負を分けるには十分だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先生……!!!」

 

その姿を遙か遠くで見せられた死柄木弔は愕然とする。 やはり悪は負けるのか? いや自分がやるのだ……でもどうやって?

脳無を失い、先生を失い、協力体制にあったMr.ネガティブすらどこかに消えた。 ヒーロー(クズ)はあんなに多いのに、自分達はどうしてこうも……

 

「気を落とすにはまだ早い。死柄木弔」

 

声がした。自分以外の仲間たちは皆気を失っているのに。

 

「……誰だ…!」

「まだ名乗る段階では無いがキミの先生に託された者……敢えて言うなら、洒落た名前をつけてみようか。……一人は独りの為に(ワン・フォー・ワン)とでも」

 

悪は止まらない。




Mt.レディ
巨大キメラヴィラン相手に肉弾戦。脚を片方と肋骨数本をへし折られるも気力と根性、プライドで市街地への移動をさせず長時間縫いつけ多くのヒーローの救援まで耐えきった。


トガヒミコ
Mr.ネガティブと斬り合いをしていたが飽きてきたために交渉。ネガティブが退いたのでスパイディの毒入り血液を飲み、変身して輸血まで行った。 トガヒミコの身体の中に流れている劇毒のお陰でスパイダーマンの因子は作用しなかった。あいつらの血ヤベェです。


ミゲル・オハラ
グウェンと共に脳無撃滅、一緒に暴れていたまたまた別のヴァルチャーを引き入れて時短。 マイルズの時よりかなり柔軟な発想と対応が出来るようになってる。


グウェン・ステイシー
ミゲルと同じく脳無撃滅に出て、ようやく現場に駆けつければスパイダーマンがぶっ倒れてたせいで大パニック。見せ場この先。頑張れ。


AFO
慢心&油断。 ぶちのめされた。
しかしその余裕は崩れることなく、この話すら計画のうち。
捕まえたからって終わると思ったかい?残念。


OFO
ワンフォーワン。便宜上、そう呼ばれることに。
その正体は、お察しの通り。
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