とにかく話を進めねば…
雄英体育祭
国立雄英高校が行う個性ありの超大型イベント!
視聴率は高視聴率をキープし、なんでも「オリンピック」に代わって全国を熱狂させるものらしい。
つい先日生徒たちがヴィラン連合に襲われたのも束の間。ヒーローは、雄英はヴィランに屈してないというアピールもあり強行するようで警備体制も普段の倍近くに見直しているとのこと。
とはいえ、これだけのビッグイベントだ。僕が雄英教師になる前からプランやら配置やらは考えていた為か、完全に手持ち無沙汰なんだよね。 当日は会場内を自由に歩き回っていいとか言われたけど…んー、外のパトロールとか? 外部協力者に手伝ってもらってスーツの受信機をちょっと弄って警察とかヒーロー無線を傍受出来るようにしてみたし。あの子、ほんと凄いな。
「くっ、やっ!」
「おりゃっ!」
「はい。手の振りが大雑把になってるよ。 僕の戦い方は我流が多いけど常に余裕を無くさない。これを心掛けてるんだ」
「は、はいぃっ!」
「ゥぐ!!」
体育祭当日まではまだ時間があり、A組の生徒の何人かのお手伝いをしている。今日は麗日ちゃんと峰田くん、それに八百万ちゃん。 僕イチオシの生徒三人だ。
「オイラはモテたくてヒーロー目指してるんだよぉ! なんでアメリカンなヒーローの補習受けなきゃいけないんだぁ!」
「僕、結構女の子からお誘い受けたよヒーローになってから。 知りたくない? アメリカ式モテ術」
「スパイダーマン先生! よろしくお願いします!」
チョロっ!
「麗日ちゃんと峰田くんは
「せ、精神と基礎……ですか…」
「うん、格闘術とかはしっかりとしたプロに教わるのがいいからね。僕から言えるのはその二つ。 精神はさっき言ったみたいに冷静に余裕を持つため。 基礎は体力と体幹! こんな、風に!」
横合いから棒術のように振るわれた得物をブリッジ回避しながらウェブで巻き取って投げ飛ばす。
「峰田くんは僕みたくモノで相手を捕らえるし、麗日ちゃんもどんな体勢からでもしっかりと腕を振るえれば手数が増えるからね! そして八百万ちゃん」
「あっ!」
「創造、なんてすごい個性を持ってるからこそ選択肢があり過ぎて逆に動きが遅くなっちゃうのが欠点だね。 手札が増えれば増えるほど出来ることは沢山だけど考える時間が必要でしょ? だったら最初っから手札の数を絞ってみればいいんじゃないかな」
「それは……考えてなかったです。私の強みは何でも創れて利用できることだと思っていましたので」
「うん。それは間違いじゃない。最初は4つとか5つに絞って、慣れてきたら少しずつ手札を増やしていけばいいんだ」
八百万ちゃんの個性は本当に優秀。 敵を倒すだけじゃなくて、医療品を作れば傷ついた市民を助けられるし、災害現場での救助道具だって用意出来る。まさに万能。だからこそ本人の知識が必要だけど、その辺りは彼女持ち前の勤勉さでなんとでもなっている。 敵連合の襲撃の時だって絶縁シートを作って上鳴くんの無差別放電をしっかり防いだようだし。
「ちなみに僕のスーツも色々出来るけど、基本的には普通のウェブしか使わないしね。シンプルイズベストってやつ」
「なるほど…」
きっと彼女はこれぐらいの助言だけでめちゃくちゃ考えるだろうし、これ以上は余計なお世話かな。
「じゃあ今日はこの辺でっ」
「ありがとうございましたっ!」
「ご指導ありがとうございました」
麗日ちゃんと八百万ちゃんが元気に頭を下げ、峰田くんは床に転がって天井を見上げていた。 うーん、体力を付けないとね。
二人が居なくなった頃合にようやく峰田くんが立ち上がり、此方を見ていた。
「先生、もう少しお願いしますっ!」
「お、やる気だねぇ。モテるため?」
「オイラ、敵連合が来た時、怖くて…! でも緑谷のヤツ、自分も震えるくらい怖かったのに行動して……! アイツ、すげぇんだ。 オイラにとってあの瞬間ヒーローだったんだ! だからオイラももっとやらないとって!」
出久くんは行動で人を動かすのが上手だねぇ。まぁ本人は意図せずなんだろうけども。ということで追加で30分。峰田くんの基礎トレーニングに付き合い彼を見送って書類作り……いや、まさかこの世界のヒーローって報告書とかも作るんだね。
あっちだったら取っ捕まえてユリ……警察にお願いしたりハッピーがなんかしてくれてたりしてたのに。
「あら、スパイダーマン。また捕まえた敵の報告書?」
「やぁミッドナイト。うん、今朝捕まえた3件のヤツね〜。ホントさ、日に何件事件起きてるの? おかしくない?」
「これでもだいぶ減ってるのよね。とはいえ、雄英が襲撃されたってことが敵達に妙な刺激を与えたのも確かだとは思うけども」
悪党には悪党のネットワークがあるからね。やれあのヒーローはどうだっただの、あの辺はヒーローの見回りが薄いだのそういうのが結構あったりする。ナワバリもあるだろうし、チンピラ程度の敵は肩身が狭く大きな事をしようとするとヒーローからも
死柄木弔、彼は連合の頭なんかではなく尖兵と考えるのが正解だろう。 彼を上手く扱い、脳無なんていう怪人を与えてオールマイトの殺害を狙うなんてことを考えるのは……
「ミッドナイト? なんでそこから離れないの? ちょっと貴女の格好が目に毒過ぎるんだけど。そんな格好、僕の地元でさえほぼ居ないよ?」
「あら、そう? 初心なのね」
「初心とかじゃなくて。イレイザー、何とかならない? 」
「諦めろ」
リカバリーガールの個性で骨折を治したイレイザーヘッドはこちらに目もくれずPCで打ち込みを続けてる。
「はい、スパイダーマン。お茶あげるわ」
「どーも。んー、美味しい。これどこの?後で買ってこよ」
「……マスクを脱がないでどうやって飲んでるの?」
「このスーツ、極地対応型だからね。スーツを脱げない環境でも水分補給とか出来るようになってるの」
僕の正体が気になってる点を除けばいい人なんだよなぁ、ミッドナイト。
「どこの会社のスーツなのよそれ」
「自前だよ。調整とかも僕がしてるし」
「くけけ…俺も調整してる姿見たかったがもう一着のスーツ着ながら調整してた」
なんだかんだ、ガジェットの調整を手伝ってくれてるのはパワーローダー先生。まぁ彼も彼で僕のマスクの下が気になってたみたいだけど。
「まだスーツがあるのかスパイダーマン」
「あれ、イレイザーヘッドも気になっちゃう感じ?」
「同僚ヒーローの事情を知っておいた方が合理的だからな」
「単に気になるって言えばいいのによ!」
ナノスーツの設定を弄って見た目を少し変えたりはしてたりする。とはいえ、そんなに大きく外見は変えてたりしない。皆が僕を僕だって分からなくなった困るしね。でもちょっと、アイアンマンカラーのスーツを用意してみたかったりするんだよ。スパイダーアームの取り回しはいいしきっとこの先役立つから。
「オールマイトと校長が決めたことだから大丈夫だって思ってるけど、だいぶ謎だらけよねアナタって」
「ヒーローのマスクは秘密の証!ってね」
「くけけ…秘密主義もそこまで来ると凄いものだな。理由でもあるのか?」
興味津々、といった顔で教師たち。なんならオールマイトや校長に会話に入ってきてなかったブラド先生や13号先生もソワソワと視線を向けてきている。
「んー、面白い話じゃないよ? だいぶ前、っていうか僕がヒーローとして向こうで活動始め少しだった頃なんだけどね。色々あって僕の正体が
軽い口調で話すのは割り切った、というわけではないが乗り越えられたからだろうか。
「でも何とかする頃には僕が愛した人が犠牲になっていた。叔父さんだって僕が力を得て最初の頃に僕のせいで亡くなったっていうのに。『大いなる力には大いなる責任が伴う』叔父さんが僕に教えてた言葉の意味を正しく理解したのはきっとそれからだね」
職員室が葬式のようにシン…としてしまった。
「君の叔父は素晴らしい言葉を君に残したんだね」
「えぇ、校長。 だから僕はスパイダーマンであって、誰かじゃないんですよ。 もし、このマスクを脱ぐとしたら…それは僕が要らなくなった時かもしれないね」
とはいえ、僕の正体を知ってる人は元の世界には何人か残ってるんだけども。MJにネッドとハッピー、ドクターストレンジとブラックキャット、あとは……あー、アイツ。アイツはアイツでなんか別の場所から来てたらしいけども。
「その、ごめんなさいね? 度々マスクを脱がせようとして」
「いいんだってミッドナイト。顔を見せない人を信用しろ!だなんて難しいことだし」
オールマイトが名前を公表せず、プライベートが一切不明なのも似たような理由な気がするし。
「ねぇオールマイト、根津校長。先生達にも僕の素性話しといた方がいいんじゃない?」
「え、うーーーーん。どうかなぁ!?」
「たしかに、君は特異な存在だからね。今後の連携にも関わるし知ってもらうのも悪くないかもしれないねっ」
ということで、僕が蜘蛛に噛まれてスーパーヒーローになるまでの120分ほどの編集動画を観てもらうことにした。ポップコーンの準備もコーラの準備もOK!
あ、もちろん僕の本名の所とか顔とかはCGと編集で変わってる。アンドリューにしようかトビーにしようか悩んだんだよねぇ。
さて体育祭当日。僕は警備の仕事とかが無いので会場の外をぶらぶら歩いていた。
あのスパイダーマン誕生秘話を見せてからマルチバースの説明とかをちょっとしたんだけど、ブラドは涙を滲ませて肩を叩いてきたしミッドナイトには抱きしめられるし……んー、お涙頂戴みたいに見えちゃったかな。
「あ、スパイダーマン!?」
「やぁ、Mt.レディにシンリンカムイ! それにエッジショット! キミ達、会場の警備かい?お疲れ様っ」
「何でアンタがここにいるのよっ」
「我々と同じく警備か?」
「んーん、僕はフリーだよ。 雄英の教師だけど今日は役割を与えられてなくてね」
出店みたいなのが出ていて、そこの店主さんがこの前たまたま助けた人だったからかめちゃくちゃご飯もの貰っちゃったけど食べきれないし丁度いいか、
「ってことで、警備頑張ってるヒーロー達にお裾分け」
「アンタ、雄英の教師だったの!? 有難く頂くけど!」
「デビューしたて、というわけではないのか?」
「うん、元々アメリカの方でヒーロー活動していてね。その時の縁でオールマイトから引き抜かれてきたんだ」
って言うのが校長とオールマイトと考えた僕のバックストーリー。アメリカの方に確認を取られたらちょっとマズイけど、ヒーロー飽和社会である今、そこまで調べようとする人はあまりいないから大丈夫とのこと。 オールマイトの方でもアメリカの偉い人に少し口裏を合わせてくれるらしいけど…ホントかなぁ。
「実力の高さもそれ故か」
「何でもかんでもアンタが解決しちゃったら私達も死活問題なんだから勘弁して欲しいんだけど」
「だったらサクッと解決することだね、Mt.レディ?」
「うぐぅ!?」
言葉につまると目を逸らしながらたこ焼きを頬張る彼女を見ながらシンリンカムイとエッジショットは苦笑している。
「今年の1年生、キミが面倒を見ているのか?」
「うん。たまーにだけどね。あの年齢で敵と実戦を行ってるし強くなるよあの子達は」
「だろうな。体育祭が終われば職場体験の時期だ。色んなヒーローが目を光らせてるだろう」
「職場体験? 何それ」
考えたら先の行程表とかちゃんと教えてもらってないな。と思いつつモニターを眺める。 第一種目は障害物競走らしい。ミッドナイトが張り切って司会をしていた…んだけど、あの格好って全国放映していいの? 純粋な子供が見ちゃいけないもんでしょあれ。
「数日間、ヒーロー事務所に1年生の子たちを招くんだ。現場体験、インターンの先駆けのようなもので結果を残したり目に留まるような事をすれば多くの指名を貰える」
「自分を売り込むのも体育祭の目的、ね。やだやだ、子供にそんなことさせるなんて」
「アナタはなんでヒーローになったのよスパイダーマン。目立ちたいから?」
「ん? 僕は…責任を果たすため。かな」
スパイダーマン
元のバースではグウェンは亡くなってるし、メイおばさんはリーの事件のせいで犠牲になっている。
ノーウェイホームが起きてないおかげでアベンジャーズの一部と友達と数名はスパイダーマンの正体を知っているまま。スーパーヴィランも皆ラフトにぶち込んだけどオクトパスが脱走させたりととにかく忙しい。
スパイダーマンが居ない今、あの街を守ってるのはマイルスである