明日テストなのに何してるんですかね私。
世界線としてはプロローグと同じ所です。
今回から短編から連載にしました。好き勝手書いてるけどそれはそれとして承認欲求には勝てませんでした。怒られたら戻します。
ビール、コーヒー、ティーパーティー
「あれ、どこだっけ...。」
先生は、その時とても焦っていた。
シャーレ中の机の上をひっくり返し、書類を漁っては適当なところに雑に積んでいるのがその証拠だ。*1
「鏡...どこやったっけ...。」
鏡*2とは、ヴェリタスのハッキングツールとはまた別の、ウタハによる発明品である。
並行世界の人物を映し出すが、その姿に惑わされた人間は一様に鬱々としか気分に陥ってしまう。
そんなものを預かってはいたのだが...どこかに失くしてしまったのだ。
あれが誰かの手に渡ってしまったら、間違いなく混乱が起こる。
だからこうやって探しているが、一向に見つからない。
全てを諦めた顔で椅子に座り、大きなため息を吐く。自分が100割悪いのはわかっているが、それでも世界を恨みたくなった。先生とて人間なのだ。
そんな時、スマホが鳴った。
『一刻も早くティーパーティの元に向かってください。』
『緊急事態です。本当に早く来てください。』
ハスミからのモモトークのようだ。
あの子供にしては、いやに切羽詰まった連絡だった。
普段なら一通り仕事をし終えたタイミングで連絡を返すが、今回はそうもいかないようだ。
それに――なんとなく嫌な予感がした。本当に何となくだったが。
『すぐ向かうよ』
そう打ってから、急いで支度してトリニティに向かった。
通りすがり、リンちゃんの視線が鋭く差してきたが、気づいてないふりをしてそのまま突っ走った。
トリニティに着き、ハスミに指定された場所に向かった。
「先生...来てくださってありがとうございます。」
「大丈夫だけど...何があったの?」
全くもって大丈夫ではないのだが、それを隠して尋ねた。
「その...ティーパーティのお三方の様子が少し――いえ、大分おかしいのです。」
形容詞を修正するほどの異変が、あの三人に起こっているらしい。
とにかく、彼女らのもとに向かうことが先決だと思い、彼女らが普段いる場所に向かう。
焦りからか、自然と足早になっていた。
荘厳に立てつけられた扉を叩き、三人の存在を確かめた。
「お入り。」
その返答に、違和感を覚えた。
確かにセイアの声が聞こえた。だが、その声色は厳かで、聞く人を威圧するような、或いは諭すようにも聞こえる。
まるで、自分こそが子供であるような――そんな気分になった。
――いや、それこそ幻惑だろう。そう思い振り切って、先生は扉を開けた。
まず初めに飛び込んできたのは、いつもとは全く異なる匂いだった。
そして、その正体が何かはすぐに気づいた。知っていた、というべきか。
一つは紅茶の匂い。これはいつも通りだ。
もう一つは珈琲、そして最後の匂いは、酒精のそれだった。
そして、中央に目を向けると。
確かに、三人は揃っていた。なのに、何かが...否、何もかもが決定的に違っていた。
まず目につくのはナギサだ。彼女自身は机に突っ伏して眠っているようだ。その姿自体が、彼女自身の性格からすると考えづらい。
その上、彼女の周囲にはアルミ缶が散乱していた。遠目からでも分かる。あれらは酒だ。それもかなり安めのビールだ。いつもお世話になってるから分かる。
というかティーカップを手元に置いているところから、わざわざカップに注いでから飲んでいたようだ。なんでそこだけ律儀なんだろうか。
次にミカ。なんというか...優男みたいな顔つきになっている。
それに、飲んでいる黒い液体はコーヒーのようだ。彼女がそれを飲む姿は、酒に比べたらマシだが、それでも少々考えにくいかもしれない。
あとカップがすごく黒い。ベンタブラックかというぐらい黒い。
最後にセイアだが...見た目や振る舞いだけで言えば、他二人ほど変わっているようには見えない。
だが、あの二人を見ても何も動じてないどころか、微笑すら交えながら紅茶を啜っている。あの肝の据わり具合は、間違いなく何らかの異常が生じていることの証だろう。
そして目が怖い。普段の彼女とは違い、吸い込まれそうなほど黒い。ずっと見ているのが耐えられないと感じてしまうほどだった。
「えっと...三人とも?」
先生にしては酷く緩慢に、生徒たちのもとに近づきながら声をかけた。
その声に振り返ったのはミカだけで、ナギサは未だに突っ伏したまま、セイアは黙って紅茶を飲んでいる。
「えーっと...はは、悪い冗談かなぁ~...?」
言葉は軽いものの、ミカは明らかに狼狽えている。
死人にあったかのような顔だ。
「...こうして
そんなミカを無視して、セイアが顔を向けて言葉を発した。
正面から見た彼女の目は、遠くからでは分からなかった威圧感と嗜虐に満ちていた。
その瞳の中の感情をそのまま顔に出しながら、彼女は続けた。
「つい最近会わなかった...?」
「成る程。
矢張りやけに会話が噛み合ってない気がする。
というよりも、その言い回しはまるで...。
「...矢張り、御前もまた、我々の識る御前では無いのだろうな。」
そう言いながら二人のほうにちらりと目を遣る仕草をしたと思ったら、そのまま何事もなかったように静かに紅茶を飲み始めてしまった。
横を見ると、ミカがナギサを起こしている。普通じゃ考えられない光景だ。
「...もう少し寝させてください...。」
「そんなこと言ってる場合じゃないと思うんだけどな~?」
いい加減うざったく思ったのか、ナギサが気怠げに顔を上げた。
「...せんせい...?あぁ、夢ですか...。」
ぼんやりした眼をこちらに向けると、不明瞭な声を上げながらまた机に伏せてしまった。
「ナ、ナギサ...?大丈夫...?」
先生が言葉をかけると、ナギサは漸くまともに顔を合わせてくれた。
それでもかなり酔っているのか、焦点は定まっていないようだ。
「...今更何の用ですか、先生...私のことを恨む筋合いは無いでしょう...。」
「う、恨む...?さっきから何のことなの...?」
普段ならしないことだが、心当たりがなさ過ぎて流石に疑問で返してしまった。
その様子を見たナギサも、同じように困惑している。
「...とりあえず、一杯やりますか。」
そう言いながら、散乱している酒缶から新しいものを2本取り出し、そのうち1本をこちらに渡してきた。
「えっと...もしかして...。」
「この素晴らしい再会に乾杯しませんか?」
未成年でしょ、その言葉が出る直前に、ミカが横から缶を取り上げた。
「そんな急に勧められても、先生も困ってるんじゃないかな?」
そう言いながら缶を懐に仕舞い込むと、ミカは漸く先生と向き合った。
やはり、微妙な顔をしている。
「はは...こうして向かい合うと緊張するな~。
でも確か、貴方は私たちの知ってる先生とは違うんだよね?」
「多分そう...だと思う。」
自分でも笑えてくるぐらいの曖昧な返事だったが、ミカは納得したようだった。
「とりあえず、コーヒーでも飲むか...」
そう言いながら、ミカはコーヒーを勧めてこようとしたが。
その瞬間、セイアが無言でミカの方向に手を翳した。
彼女の手元から発せられた黄色と黒が入り混じった何かが、凄まじい音を立てながらミカのカップを狙い撃つ。
案の定カップは割れ落ち、それをミカは嘆くように見つめていた。
「セ、セイア!?」
「其のような濁ったものを、あまつさえ私の目の前で彼の者に呑ませようとは...随分強かになったようだね、お嬢ちゃん。」
「そんな寂しいこと言わずにさ~、それなら目を閉じて後ろ向いていたらいいんじゃないかな?」
互いに余裕そうな笑みを浮かべながらも、その言葉の端々には隠し切れない怒りが見え隠れしている。
そして、そのまま今度はナギサの方に手を向けた。
地面から鎖が伸び、新たな缶ビールに手を伸ばす彼女の腕を拘束してしまった。
それでも、ナギサは必死に藻掻きながらプルタブを開けようとしている。
どうやら、飲み物については互いに譲れない何かがあるようだ。
「って、飲み物の話じゃなくて!!」
「まあ落ち着きなさい。焦燥は常に我々の背後に在るが、星は追う毎に徒に歩みを進めるだけだよ。」
諭すように言いながら、視線は絶えず先生に向いている。
まるで何かを見透かされるような感覚に、少しむず痒くなってしまう。
けれど、彼女の話すことも(分かり辛いことこの上ないが)的を射ているように思える。
明らかにセイアのペースに乗せられている証拠だが、先生自身は未だ気づいていない。
「さて。御前は、私達に起こったこの現象についての理解を欲しているのだろう?」
「そ、そうだけど...。」
単刀直入だが正確なその言葉に、少したじろいだ。
その様子を見ながら、セイアは矢張り微笑を湛えている。
そしてその表情のまま、懐を弄り何かを取り出した。
「...!それは...」
「御前が探していたものであり、此度の事象の由であろうよ。」
セイアが取り出したのは、『窓硝子』と『鏡』だった。
「『窓硝子』と『鏡』...。」
「名は何であれ、唯映し出すものに変わりはないであろう。」
「どうして君が...。」
「さあな。唯私が目覚めたときには、既に此処に在った。」
もしかしたらセイアが...などという疑念は一蹴されてしまった。
そして。
「星を追うこともまた我々に課された本能ではあるが、時には唯立ち止まり、互いの星を見詰めあうことも要るだろうね。」
「...会話しようってことでいいのかな?」
そう尋ねると、セイアは静かに頷いた。
「嬢ちゃん達も、この世界において彼の者が何を見詰め歩んだか、識りたいだろう?」
「それは貴女が興味あるだけじゃないかな~。」
「否定は出来ぬだろうがね。」
「それも...そうだねぇ。」
ミカは何かを諦めたかのように、割れたカップを集めて座った。
ナギサの周りもいつの間にかある程度整っている。残った缶を回収されたのか、本人はどこか物憂げな顔つきで座っていた。
「それじゃあ...まず、先生の知ってる私達について教えてくれるかな。」
その疑問に、先生は素直に答えた。
「まず、私の知ってるミカはもっと天真爛漫で、少し我儘だけど可愛いお姫様だよ。
自分の気持ちを隠しちゃうところはあるけどね。」
それに対して、ミカは素直にへぇ~とだけ答えた。
「...思ったよりもリアクション薄いんだね?」
「そうかなぁ~。ただ、今の自分と違いすぎて、全く別のブレンドを同じだって言われてるような感じかなぁ。」
微妙に分かるような例えを出しながら、ミカは遠くを眺めている。自分と全く違う自分について、思いを馳せているのだろうか。
だが確かに、先生の知っているミカと目の前のミカは、容姿こそ同じであれ中身は全くの別人と言っていいだろう。目の前の彼女は、思慮が深いのか浅いのかよく分からない、掴みどころのない性格のようだ。元のミカとは正反対といってもいいだろう。
「ナギサは、そもそもお酒...というよりも紅茶以外飲まないし、いつも真面目に物事に取り組もうとしているね。
その真面目さが空回りすることもあるけど、いい子だよ。」
それを聞いていたナギサは、気だるげな口調で答えた。
「今の私とは正反対ですね。私は今の自分にも、何もかもに意味なんてないと思えてきて、面倒になっちゃったんです。
それでも、生きようかとは思いましたけどね。それも全部崩されちゃった訳ですし。」
そこまで言って疲れたか、或いは面倒になったのかは定かではないが、またもやナギサは机に突っ伏してしまった。これ以上何も聞くなという意思の表れだろうか。
実は先生自身は、知っているナギサと目の前の彼女が別人だとは思っていない。確かに目の前で突っ伏している彼女は不真面目そうだが、根っこは真面目過ぎるほどなんだろう。
それを態々言う気は起きなかったが。
「セイアだけど...元々は諦観というか、どうしようもないと諦めちゃう感じだったけれど、今は誰かを信じて意思を伝えることが出来るようになったかな。」
それを聞いても尚、セイアは黙って紅茶を飲んでいる。
暫くすると、カップを置いて一言、
「この世界の私は、星を標に出来たのだね。」
無関心に声を発して、それ以上は何も言わなかった。
「君は...。」
「私は、星の輝きに涙を流せず、未知への恐怖に目を逸らした。故に恐怖に自分を飲み込み、我がものとした。
...其の目で見詰めることは関心しないな。私は唯、己を識っていただけだよ。」
一瞥しながら、そこまで言うと黙りこくってしまった。これ以上は聞いても無駄な気がしてきた。
「それで...そっちの私って、どうなの?」
話題を変えて、自分のことを尋ねた。ミカやナギサの反応が、ずっと頭に引っかかっていた。
そして、その疑問を口に出すと。
二人はまたもや微妙な顔になった。
最初に口を開いたのはミカだった。
「そうだねぇ〜...何もかもを犠牲に、自分の目標に突き進む人だったかな。」
「なにもかもって...生徒も?」
その疑問に、ミカは少し笑った。
「はは、真っ先に生徒が出てくる所は変わってないみたいだね?
そうだねぇ、あの人は生徒ばかりを犠牲にしたと思ってるだろうね。一番犠牲にしたのは自分だったのにね?」
ミカの言葉に続いて、ナギサも口を開いた。
「...先生は、生徒達が自分の力で立てるようになる、そんな世界を望んでいました。結局、私達もあの人も、それを見届けることは出来ませんでしたが。」
「生徒が、自分の力で立てる世界?」
「責任を背負う力、とも言ってましたね。ただ、そのお陰で、私も少しは生きてみる勇気を貰えたんです。だからあの人が私に会うなら、恨み言かと思いまして...。」
子供達が自立出来る世界。子供の責任は大人が取るべきだという先生の考えとは、少しばかり違っているようだ。
その後は、向こうの世界がどうなっているのかを聞いた。
先生は、自分の研究の過程で犠牲になってきた生徒達と向き合い、光とやらをキヴォトス中に蒔いたらしい。
しかし、蒔き終わる直前になって、アリス*3の生きたいという望みに妨げられ、不完全な光は、時に生徒を自分にしか向き合えないようにしてしまうという。最終的に光は完全な状態になり、ゆっくりとだが着実に、先生の望んだ世界は実現しようとしている様だ。
その中で、他の生徒のことも聞いた。ホシノはナギサと良く杯を交わすらしいし、ヒナとミカは犬猿の仲だという。思わぬ生徒から思わぬ名前が出てくることに驚いたが、それも世界がまるきり違っていることの証左なのだろう。
「それで、結局どうすれば戻れるんだろうね?」
話が一通り終わり、ミカがその疑問を口に出す。
そして非常にタイミング良く、扉が叩かれた。
実は、話しながら先生は密かに連絡をとっていた。
一人はウタハ。窓硝子を見つけ鏡を作った張本人だ。だが現状を説明すると、「そんな機能は付けていないはずだ」と返され、すぐに向かうと言われた。
そしてもう一人、頼りたくなかった奴にも連絡した。
「お待たせ、先生。」
「くっくっく...お困りのようですね、先生。」
ウタハと黒服という見た事のない組み合わせが、目の前に現れる。
ウタハの顔は、以前ほどでは無いが矢張り窶れている。それに対して、黒服はどこか元気なように見える。研究者気質な分、未知に対する興奮もそれなりなのだろう。
「それで。鏡はどこに...。」
その言葉に答えるように、セイアが鏡を指で示した。
「ふむ...これ自体に人を丸切りかえてしまう影響がある訳では無いはずだけど...。」
「ただでさえテクスチャとテクストの相互関係が他より強いここでは、別の世界のテクストがこうして影響を与える可能性も十分考慮に入れるべきかと。」
鏡を見つめながら互いに話し合う二人を見ていたセイアは、藪から棒にウタハの肩に手を置いた。
「百合園セイアさんだったかな。どうしたんだい?」
「どうやら、星を見失っているようだね。視える星々が等しく同種であるように思える星空は、眺める程に苦痛を映し出すだろう?」
その言葉に、ウタハは改めて身体ごと振り返った。
セイアの眼は、尚もウタハを射抜いている。そして試すような口調で続けた。
「自分と同じであるはずなのに、自分よりも輝きの劣る者。逆に御前よりも強く光る御前。全て同じ星なのに、何故輝きは違って見えるのか...。」
「...何が言いたいのかな。」
「其の疑問を解くために、御前は幾度、幾日星を見詰め続けた?」
問いかけに対して、ウタハは黙った。
その顔には、数え切れない苦痛が蘇っている。
「星を追うことこそが本能だが、其の輝きを見詰め続けることは、却って其の視界を暗闇で埋める行為であろうよ。」
「...あなたが...あなたが何を知っていると言うんだ!」
ウタハにしては珍しくーー本当に珍しく、声を荒らげた。
その怒声に反して、目からは涙が溢れていた。
セイアは動じることなく、口を動かし続ける。
「私は私の識っていることしか識らないよ。だが、御前のような子供を何度も見てきたことも叉、否定出来ない事実ではあるね。」
「...それでも、どうすればいいのか、私には分からない。」
ウタハの口から、漸く弱みが漏れた。それに満足したのか、セイアは少し口角を上げた。
「簡単だよ。唯、御前だけの星を見つければいい。」
「私...だけの...。」
「空が違えば、浮かぶ星も叉変わるものだよ。唯、善く似た星は遠くから見れば同じに視える。それだけの事なんだよ。」
或いは、そう続けながら、黒服の手から鏡を取り上げる。
「或いは、御前は月は星だと想うか?」
「夜空に遠く浮かぶような星では無いさ。」
ウタハもまた、完全にセイアのペースに乗せられて答えている。
「鏡もまた、同じでは無いのかい。月の輝きが唯死したものであるように、彼れが映し反射するものもまた、追う価値のない死んだ光だろうね。」
その言葉を最後に、二人とも黙ってしまった。
ウタハは思考のために、セイアはそもそもこの沈黙を楽しんでいるようだった。
「皆さん、凡そ分かりました。」
直後の黒服の言葉で、沈黙は破られたが。
「戻し方も?」
「ええ。と言っても、至極単純ですが。
逆のことをすればいいんです。」
そう言いながら、黒服は窓硝子を取り出し翳した。
その奥には、本でいっぱいの空間に居座る3人の姿があった。
「みんな!」
その言葉が向こうにも届いたのか、3人は手を振り返してくれた。
「恐らくいつでも返せますが...其方の3人は大丈夫ですか?」
その問いかけに、3人はそれぞれ頷いた。
「それでは、返しましょう。なにか伝えたいことがあれば今のうちに。」
その言葉に真っ先に反応したのは、意外にもセイアだった。
「先生、そして紫髪のお嬢ちゃん。短かったが、愉しい茶会だったよ。
また迷ったなら、私の所に来なさい。共にまた、星空を見上げる事になるだろうね。」
「私からも、楽しかったよ〜。久しぶりに先生の声も聞けたしねぇ。」
「...今度また会う時は、酒の席にしたいですね。」
3人それぞれの挨拶が終わると同時に、黒服が窓硝子を弄る。
その瞬間、3人の目が、いつもの様に変わった。
「3人ともごめんね、元はと言えば私があれを置きっぱなしにしたせいで...。」
「いや、そもそも初めに触ろうとしたのはミカだ。先生はただの過失だよ。」
「ち、ちょっとセイアちゃん!あのことはもう謝ったでしょ!?」
どうやら、こうなったのは先生が所用でティーパーティーの元を訪れた時、誤って鏡と窓硝子を置いてきてしまったことに由来したらしい。
その後、ナギサが見つけ先生に報告しようとしたものの、ミカが返す前にどういうものか見てみようと提案し。
勘で酷いことが起きると思い逃げようとしたセイアをミカ捕まえ、そのままセイアが暴れたせいで二つを落としてしまい、その時に不具合が起こったようだ。
そして3人口々に、向こう起こった事を話し始めた。
「何故か分からないけど、ゲヘナの風紀委員長に追いかけ回されて...見たことも無い赤い剣?も担いでたし、誤解を解くのが大変だったの!」
「私は、目の前でアビドスの生徒会長によく似た人が目の前で酔い潰れていて...酒の匂いも相まって少し吐きそうでした...。」
「私の周りの生徒が全員虚ろな目をしていて...ああ言った恐怖を感じたのは、生きてきて始めてだったね...。」
どうやら、3人も向こうで苦労していたようだった。
先生は、自分も過失がないように徹底して気をつけること、怪しいものは直ぐに自分に連絡することを言い含め、今度菓子折を持っていくことを約束した。
その後...
鏡と窓硝子はウタハに回収され、再度分析を始めることになった。
そこに黒服も手伝うことを提案し、先生監視の元でのみ協力を許可した。
「そう言えば、黒服ってこの窓硝子のことを知ってるような感じだったけど...。」
「くっくっく...私達は元々、神秘に関する研究を行っていました。その過程で恐怖、そして色彩のことも調べるようになり...必然、別世界のことも研究対象に含まれました。なので、私もこの手の話にはある程度は口出しできるかと。
勘違いして欲しくないので言いますが、窓硝子は私たちが作ったものではありません。キヴォトスが成り立つ前の小さき神々の時代の産物でしょう。」
その言葉通り、黒服はウタハの分析に的確なアドバイスを送っているようだった。
そして...
「星について、また語らうことを望んでいるようだね。」
時折、ウタハと鏡の向こうのセイアは、窓硝子を通して話をするようになった。
ウタハにとって、それは他の精神療法よりも効果があるらしい。
向こうのセイアもまた、楽しげに会話をしている。
心を繋げる鏡、そういったものもあるのかと思い。
先生は、またぼんやりと鏡を見つめた。
夜空は、多くの星々で照らされていた。
感想やお気に入り、投票などしてくれると作者がとても喜びます。
それと、リクエストも募集しているので、感想などに書いてくだされば書こうと思います。
プロムン関係無い純粋なブルアカ創作をここに載せてもいいか
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ええよ
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あかんで