鏡の中の青春   作:ひいろの鳥

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一回目はワザリング・ティーパーティ・ハイツです。
せめてこれを終わらせるぐらいの気力が残ってることを僕自身祈ってます。


嵐吹く丘と魔女狩りの夜―ワザリング・ハイツ×ティーパーティ
訪問と回想


「...あなたは、魔女狩りの手伝いをしてくださるのですか。それとも...この没落を嘲りに来たんですか。」

 

雨が窓を激しく叩きつける中、彼女...桐藤ナギサの視線は、彼女の手元に置かれた片手剣よりも鋭く刺さる。

窓の隙間から入ってきた風に酷く咳き込みながらも、警戒心を解く気はないとでもいうかのように先生の顔を覗き込む。

酷い顔だ。誰が見てもそう思うだろう。

顔は全体的に青白く、目の周りは重い隈で覆われている。その割に眼光は鋭く、それだけが彼女を生たらしめているのではないかと思うほどである。

まるで死人だ。

本来ならある筈の左腕と、対になっている筈の右翼が千切られたように亡いのも、その感覚を助長させる。

風が吹きつける中、先生とナギサ、サオリの間を厭な静寂が覆いつくす。

吹きすさぶ風は一層強くなり、ここから出て行けと騒ぎ立てる。墓場に生者は必要無い。ここにいるのは...死者だ。

 

何故このような状況になったのか。話は数時間前に遡る。

 


 

曇天の中、先生は一人巨大な屋敷の前に立っていた。

ここに、シャーレの呼びかけに応じてくれた生徒「桐藤ナギサ」と「錠前サオリ」が住んでいるらしい。

らしい、というのはまだ彼女たちに会っていないからだ。

では何故、先生がこの屋敷の前にいるのか。答えは単純で、彼女たち...主にナギサが屋敷から出られないほどの虚弱体質であることに起因する。

呼びかけに応じたからには顔を合わせるのが礼儀だが、ナギサが屋敷から出られない為先生の方から出向いてほしい、という旨のモモトークをサオリから受け取っている。

生徒の要望に応えないわけにはいかず、またそうそう出向くことのない貴族の屋敷だということで、彼は大人げなく浮足立った気持ちで向かった。

 

そんな先生の眼前に広がったのは、曇天に覆われ陰鬱な空気を湛えた巨大な屋敷だった。

確かに立派な屋敷だったが、天気のせいか立派さとは違った理由で近づきがたい雰囲気を醸し出している。

巨大な庭に色はなく、まるで死んでいるように見える。

それは、屋敷にも言えることだった。この屋敷は、死んでいる。色がないのも、曇天のせいばかりではないだろう。

キヴォトスでは滅多に見ない死んだもの。それがより一層、先生の中で異質な何かを掻き立てている。

 

雰囲気に気圧されながらも、門を叩きサオリの名前を呼んだ。

暫し忙しそうな音が中から響き、直ぐにギイと音を立てて門が開いた。

 

「すまない、出るのが遅れたな。待たせてしまったか。」

 

そう言いながらも毅然とした出で立ちでメイドの格好をした者が出迎えてくれた。

 

「君が...錠前サオリだね?」

 

確認するようにその名を呼んだ。

 

「そうだ。わざわざ来てもらって申し訳ないな。」

 

上がれと短く命じられ、その通りに邸宅に足を踏み入れた。

外と違って中は暖かく、彩が特別豊かな訳ではないが確かに色がある。

この中は生きている。そう感じるのは、バトラーのように見える人達が慌ただしく動き回っているせいでもあるだろう。

 

「そこ、まだ窓に埃が残っている。やり直しだ。お前は茶を、そっちは暖炉を頼む。」

 

案内しながら、目の前の彼女は次々にバトラー達に指示を飛ばしている。

それらが全て的確なものであること、そしてそれを日常の一動作として行っていることから、彼女自身も一流のバトラーであることは想像に難くない。

 

そんな彼女に、別の一人のバトラーが駆け寄って手振りで何かを伝えている。

その内容を諒解したのか、サオリは小声で何かを命じて直ぐにそのバトラーを何処かに向かわせた。

 

「手振りだけでも伝わるんだね。」

 

「チーフバトラーだからな。」

 

驚きの声に対して、自慢をするでもなく単に事実を述べるように返答した。

彼女にとっては驚嘆に値しないのだろう。

 

「そこで待っておけ。」

 

客室に案内されると、彼女はそう言い残して何処かに去ってしまった。

代わりに入ってきたバトラーが出してくれた茶を飲みながら、周囲の様子を見渡す。

バトラー達は皆一様に忙しなく働いていて、中には先程のサオリのように指導をする者もされる者も見受けられる。

それらに集中していると、自然と会話の内容も耳に入ってくる。

 

「やはり『狩り』は近いのでしょうか...。サオリ様もいつにも増してナイフを磨いてますし...。」

 

「今度のゲストは、一筋縄じゃいかないらしいね...もっとも、サオリ様の口からそんな言葉は出ないだろうけど。」

 

物騒な会話が聞こえてきて咄嗟に耳をすませたが、直ぐに他の者に注意されたのか、会話は中断されまた忙しない音だけになってしまった。

 

暫くするとサオリが帰ってきた。先程の会話の内容について聞こうと思ったが、それを遮るように彼女の方から口を開いた。

 

「今は少しだけならご主人様と面会が出来るが...あの方も身体が優れなく、短い間しか話せないだろう。」

 

それでも大丈夫かと問う彼女の顔は暗い。主人の身を案じているのだろう。

大丈夫だと答えると、サオリは静かに頷き、後についてくるよう言ってツカツカと歩き出した。

 

先程まであったバトラー達による喧騒は歩みを進める毎に消えていき、それに呼応するかのように色も失われていく。

決して掃除が行き届いていない訳ではなく、むしろこの辺りは綺麗すぎるほどに感じる。

それでも、この空間からは、外から見たときにあの臭い…死の雰囲気を感じ取ってしまう。

やがて大きな扉が目の前に立ちはだかる。灰色で覆われた扉の奥からは音がしない。その奥に生者がいないのでは無いかと勘繰ってしまう。

 

「入る前に、一つだけいいか。」

 

部屋に入ろうとすると、サオリがそれを止めて口を開いた。

 

「事情があって、今あの方は気が立っている。お前も大切な客人ではあるが…あの方の意によっては日を改めて貰わなければならないかもしれない。」

 

それを無言で諒解すると、サオリは扉の向こうの存在に声をかけた。

それに反応して何かしらの物音が聞こえる。

了承の合図だったのだろう。サオリは重々しい扉を開けて、先生に中に入るよう促した。

 

死の匂いが立ち込める、灰色の空間。その奥に一つ寝台があり、そこに誰かが上半身だけを起こして座っている。

その人影こそが、桐藤ナギサ…なのだろう。

雨音が酷く木霊する中、その顔はもはや生徒とは呼べない程大人びて、そしてやつれている。

よく見ると肩が少し震えている。睨みつけている目も、それを隠そうとしているように思える。

そして、それ以上に目につくものが寝台の側に置かれてある。

キヴォトスではそう見ない片手剣…レイピアと呼ばれるものだ。

ここキヴォトスでは、銃撃戦が主で剣を使う者は見たことが無い。その刃がこの世界の住民に効くのかすらも、先生には分からない。

それでも、長く鋭利な剣先は見ているだけで心臓を貫かれそうな気になってくる。

 

「えっと…」

 

「近づかないで下さい。私は…あなたを信用している訳ではありません。」

 

掛ける言葉を失って近づこうとすると、ピシャリとそう言われ動けなくなってしまった。

 

「ナギサ、少し落ち着け。」

 

「…すいません。」

 

サオリに背中を摩られながら諌められる彼女は、そうは言っても子供だった。

震えを抑えながら、慣れない手つきで紅茶を飲み始めると、幾らか落ち着いたのか少しずつ息を整え始めた。

ふう、と息を吐くと、彼女は身体をこちらに向けて身を低くした。

 

「…先ほどはすいません。ですが…やはり、まだ貴方を信用出来ている訳ではありません。あくまで、魔女を捕まえる為に契約しただけです。」

 

魔女という言葉を一段強調してそう言うと、憎々しげに窓の遠くを見詰め始めた。

 

「えっと…魔女っていうのは?それに没落っていうのも…。」

 

「…あの人に、魔女に全てを奪われたんですよ。一晩のうちに、まるで悪夢みたいに…。」

 

つい溢してしまった疑問に対して、ナギサは躊躇う様子を見せながらも苦しげに言葉を紡ぎ、その度に顔が酷く崩れていく。

 

「嵐として窓を叩きつける悪夢に何度も起こされながら、その度にこの全てが悪夢だったんじゃないかと疑って…私は…。」

 

語気を強めながらやがて最高潮に達し、続けて何かを言おうとしたようだが、限界を迎えたのか途中で激しく咳き込みだして中断された。

サオリに落ち着かされている間にも、その眼には窓の向こうの景色が映っていた。

今にも雨が降りそうな天気の中、窓の外、丘の向こうに一軒の建物が見える。

こちらと同様に風が強いのか、辺りの植物が右に左に揺れ動いているのがここからでも見える。

彼女の眼は、変わらずあの邸宅を捉えている。

 

「すいません、今日は帰っていただけますか。知りたいことがあれば、サオリさんに伺って下さい。」

 

そう言い残すと、彼女は目を開けたままベッドに横になった。

 

「...すまない。続きは場所を変えて話そう。」

 

そう言うと、サオリは先生を引っ張るように部屋を出て、釣られて先生もその場を去った。

 

 

 

 

 

 

「やはり少し埃っぽいな...。」

 

サオリがそう呟くこの空間は、いわゆる邸宅の別館というものなのだろう。

長い間使われていなかったのか、彼女の言う通り埃が目立つ。

だが、所々誰かがいたような跡がある。それについて触れると、サオリはバツが悪そうな顔をしながら椅子をこちらに差し出した。

 

「ボロい椅子で申し訳ないな...謝罪はいい?そうか。では...話そうか。」

 

雷が鳴り響く。今日で何回目だろうか。雷光で映し出されたサオリの顔は、一層険しいものになっていた。

 


「始まりは...そうだな、あの丘の向こうの邸宅が見えるだろうか?

あの場所の名前は『嵐が丘(ワザリング・ハイツ)』。嵐が吹きすさぶ、寂しい場所だった。きっと今も変わらずそうだろうな。

私はここに来る前、嵐が丘のバトラーだった。その時の主人に拾われたような形で、今よりも程度は低かった。恥ずかしい話だ。

 

...っと、話が逸れたな。あの場所には、二人の少女がいた。私とそう変わらない位の歳の...先生から見れば生徒と言えるだろうな。そんな二人がいた。

一人は百合園セイア。病弱だが聡明で、先を読むことに長けていたが、少し言葉足らずなところが目立ったな...根は優しかったんだがな。

もう一人は聖園ミカ。こっちは拾われるようにしてあの邸宅に流れ着いた。元は有名な家柄だったそうだが...あそこに来た時には、そんなことは忘れられてたな。

ミカはセイアとは正反対で、元気で、短絡で、思ったことを直ぐに口に出す性格だった。その癖、心の奥底は誰にも話さなかったな。

彼女たちの相性は悪くなく、よく二人で遊んでいた。主人もそれを喜び、二人のことを目にかけていた。

私も、姉妹のように彼女たちに接していた。頻繁に悪戯してはバトラーに叱られを繰り返して、私もよく二人を追いかけまわしていたな。

だが、勿論よく思わない者もいた。一部のバトラー連中...特に、娘のように可愛がられていたチーフバトラーなんかは蛇蝎のごとく嫌っていたな。

そんな彼女たちからの嫌がらせもあったが...ミカはセイアを愛し、セイアもミカを愛していた。その絆がある限り、大丈夫だったはずなんだ。」

 

大丈夫なはずだったんだ、サオリはそう繰り返した。

そこまで言って一息つくと、彼女はまた嵐が丘の方に目をやった。

その時の彼女の顔は少し幼く、同時に何かを哀しんでいるように見えた。

 

「ある日、主人が亡くなった。歳も若くなく、老衰だった。

本来はセイアが当主になるべきだったが...いくらセイアが聡明だからと言っても、流石に若すぎた。代わりに、チーフバトラーがセイアが育つまでの当主ということになった。

彼女は当主になるや否や、ミカを召使の地位に貶めた。子供っぽいが、それに賛同する者も少なくなくてな。

結局、ミカは汚らしくこき使われる身分になり、周りの者もそれを何とも思わなかった。

気にかけていたのは私かセイアぐらいだっただろうな。

だが、その時もセイアがいたからミカはずっとそこに居続けた。

 

...そうして幾らかだった日のことだ。二人はいつものようにこっそり邸宅を抜け出して、あてもなく歩き回っていたらしい。...その時、丁度私は別のことをしていて、目を離していたんだが、その隙にな。

そうして歩いていると、いつの間にか迷ってしまったらしい。この辺りの風景は変わらない上に、その日はちょうど、こんな雨だった。

 

二人が彷徨っていると、嵐が丘とは別の邸宅を見つけたらしい。...察しただろうが、それがここ、『鶫の辻(スラッシュクロス)』だ。

そこでいつもの悪戯心が働いてしまったのか、邸宅を覗き込もうと敷地内に入ってしまったらしい。それが間違いだったんだろうな。

丁度その時、この家は番犬を飼っていたらしい。セイアがその番犬たちに噛まれてしまった。

幸い、セイアはすぐに鶫の辻の主人...先代の桐藤家当主に助けられて手当されたが、ミカの方は追い返されてしまった。

...そんな顔をするな。セイアは曲がりなりにも名家の出であることが知られていたが、ミカは既に落ちぶれた家の子で、その時は既に召使だ。貴族がそんな子を迎え入れる理由なんて無かったんだ。

 

結局ミカは一人で帰ってきて、私がこっそり家に上げて事情を聴いた。どうやら、療養のために暫く向こうにいるということだった。

セイアが帰ってくるまでの間、ミカは無気力だった。自分の人生の意味を奪われたような、自分の身体の一部を裂かれてしまったような、そんな風に見えた。

 

セイアが帰ってきたのは、一ヶ月が経とうかとした時だった。

どうやら向こうでは鶫の辻の娘...今の当主の桐藤ナギサと仲良くしていて、更に身分に相応しい教育などを受けたようでな。見違えるようだった。

...そのせいで、いつものようにミカとふざけあうことも無くなってしまったんだがな。

それからというもの、二人の距離は空いてしまった。私が口出しするような問題ではないかと思ったが...今思えばな...。」

 

気づけば、彼女の言葉は小さく萎んでいき、消え入りそうなほどになっていた。

彼女自身もそれに気づいたのか、頭を振りかぶった。

静寂を引き裂くように雷が鳴り、それを契機にサオリは続きを話し始めた

 

「...すまない、昔を思い出すとどうしてもな。

ああ、セイアが帰ってきてからも色々あった。だが、そのどれもが二人の間を引き裂くものでしかなかった。

思えば、そのどれもがこんな雷と嵐で包まれていたかもしれない。あの丘を包む嵐が、二人を引き裂いたのかもな。

 

そうして暫くすると、セイアが当主になるような動きが高まっていた。

確かにセイアも当主を務めるに相応しい気品と風格を持っていたが...その時ぐらいから、百合園家は傾きかけていた。体よくセイアに押し付けたようなものだった。酷い話だがな...。

 

そうして、セイアは半ば押し付けられるような形で当主になった。

だが、その時私は少し安心していたんだ。これで二人がバラバラにならずに済むかと思ったからな。

...その時だったか、セイアが私の元を訪ねてきた。

彼女からの訪問は珍しかったし、普段の彼女とは違った深刻な面持ちだった。

 

開口一番、彼女は言ったんだ。

『桐藤家に家柄を渡して、私も桐藤家の人間になる』

『このままこの家の当主を続けていれば、いずれミカと共倒れになってしまう。それだけは避けたい』と。

馬鹿な話だと思うだろう?だが、その時の当主はナギサだったし、二人の仲も良好。その選択をすれば、少なくとも血筋を保つことは出来るだろう。彼女らしい判断だった。

ただ、ミカのことを考えていない、最も愚からしい考えでもあった。

ああ、私は直ぐに否定した。それはミカを捨てることになるとな。

だが、彼女はミカを救い上げるつもりでそれを提案していたようだった。勿論、それは身勝手な論理だ。理論上はそうだとしても、そう上手くいくはずがないんだ。

 

そして...その一部を、どうやらミカが聞いていたらしかった。

丁度、桐藤家になろうと言ったその時にな。

この時か、いや、もっと根本的なところですれ違っていたんだろうな。

私が気付いたころには、ミカは嵐の中を一人で走っていた。彼女は全てを奪われ、捨てられてしまった。

私も追いかけようとしたが、嵐の中、雷が鳴り続ける外で人探しなんて無謀だった。

次にあいつが来たのは...。

 

 

 

 

 

セイアが死んだ後、全てを壊して奪おうとする時だった。」

 

 

 

嵐が窓を叩き続ける。その風は泣いているようだ。

本当は笑っているのかもしれない。いや、笑っているのだろう。

自分のすべてを奪ったものから、逆に全てを壊しつくすことに。

魔女のように不気味で、どこか物悲しい泣き声は、まだ止みそうにない。

 


 

どれほど走っただろう。

雨は時が経つに連れて強さが増していく。

あの邸宅にいた時と同じだ。

いや...違う点があるとすれば、セイアちゃんっていう傘がいたことかな。

でも、その傘も私のためのものじゃなかったって気づいて...。

だから、この雨は私にお似合いなんだろうな。

泥だらけで、まるで人じゃないみたい。

多分、初めから人じゃなかったんだろうな。それを勘違いしてただけだったのに。

 

私には何が残っているのだろう。

あの邸宅にあったものはどれも私のものじゃなかったし。

セイアちゃんも...結局他人に奪われちゃった。

ナギちゃんは良い子だけど、他人なことには変わりない。私たちの仲を引き裂いた者の内の一人なだけ。

私に残ったのは、泥だらけの羽と、屈辱だけだったってことかな?

 

 

 

いつからすれ違ったのだろう。

セイアちゃんが犬に襲われたとき?

私がナギちゃんに酷いことを言ったとき?

セイアちゃんが、私という魔女を捨てたとき?

嵐がずっと吹き付けるここに立つと、いつも思い出す。

私は墓石の前で、絶望に打ちひしがれながら泣き叫んでるんだ。

セイアちゃんが私を置いて逝ったことに。私を独りにしたことに。

 

『私を、私を置いていかないで!!

セイアちゃん...貴女すらも消えちゃったら...私は、私は!!!』

 

だから、どうか、神様...。

苦痛の中で、セイアちゃんが惨たらしく目覚めますように。

貴女がいない苦痛は、私の身を引き裂かれるこの痛みは、何にも耐えがたいものだから...。

 

 

 

 

 

声が聞こえる。

不思議と、心に染み渡るような声。

ふと空を見上げると、大きな穴がぽっかりと空いていた。

ああ、これか。多分、セイアちゃんを殺したのは、これなんだろう。直感的に、そう思った。

...力?そう、力は欲しい。

全てを引き裂ける力が欲しい。

お前も含めて、私から何もかもを奪っていった全てを壊す力が。

 

 

 

 

 

そうだ、その時からだ。

もう、私に残ったものは何一つ亡くなった。

全部、全部奪われた。

ただ、一方的に奪われたのなら。

この雨に私を置き去りにした全てを壊しても。

私から奪ったもの全てを奪い返しても。

あの色褪せた邸宅を、血の嵐に呑み込んでやっても。

その瞬間に、私の人生の意味は決まった。

私は、人殺しをも躊躇わない、人じゃない何か。

復讐の魔女だ。

 

 

 

 

 

 

 

いつだったか、私の手には一本の大剣が握られていた。

見覚えのないのに、何故か凄く手になじむ、不思議な剣。

それを握って、振り回した瞬間に、それが人殺しの道具であることがわかった。

私はすぐに、あの忌々しい邸宅に乗り込んだ。

慌てふためくバトラーを見ていると、滑稽で笑いが抑え切れなかった。

そのうちサオリの指示で一斉に銃弾が降り注ぎ、『客人』用のナイフで体を切り裂いてきたが、その全てを私は知っていた。

剣で受け止めて、避けて、或いは拳で弾いて。

そして、握っていた大剣で、バトラー達の首を切り落とし、身体を叩き潰し、胴体を貫いていった。

殺した者を服従させる術に気づいたのも、その時だった。

そうして、最終的にナギちゃんの腕を切り落として。

私は、ゆっくりとこの全てを壊していくことを叫んだ。

準備はたっぷりとさせてあげる。

ありとあらゆる準備をした上で私と私の行軍に立ちはだかって。

 

 

そして、その全てを私が壊したときに、遂に私は人生の到達点に至れる。

その時、私は嵐の中叫ぶんだ。

哀しみと怒り、そして後悔を、心の中に溜まっていたもの全てを、あの墓石の前に、全部。

それで、全てが終わるはずだから...。

プロムン関係無い純粋なブルアカ創作をここに載せてもいいか

  • ええよ
  • あかんで
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