それと、今回のタイトルは友人に考えてもらいました。由来とかも教えてもらったので後書きのほうにでも書いておこうかね...。
取り敢えず、電脳安楽椅子という言葉を置いておきます、知りたかったら僕か僕の感想欄に時たま現れる友人にでも聞いてください。
評価感想お気に入り登録、いつも嬉しいですわよ〜
そこには、幾つかの、或いは無数の蝋燭が立っていた。
蝋燭には火が灯っており、周囲を淡く照らしている。
その中心に、一人の少女がいた。
少女は、この空間においては常に独りだった。否、いつしか二人になっていたはずだが、もう一つ此処に居た何かは居なくなっていた。
少女は、片手に羽毛で出来たペンを、もう片方にはびっしりと文字で埋まった本を持っていた。
そして、少女はまた、ページを捲ってはペンで何かを書き記し続けていた。
少女は、いつも夢を見続けていた。今もそうなのだろうが、ならばここは夢なのだろうかと、ふと考えたことがある。
少女の見る夢は決まって、何時かの未来の破滅と崩壊だった。
今もそうだ。だが、破滅と崩壊は止めどなく押し寄せ、そのいつかに怯え打ち震えていたことが懐かしい。
今はただ、書き下せば良い。今まで見てきた終末を、余すことなく記していくのだ。
或る人は、それを神聖な予言と言っただろう。
また或る人は、煌々と燃え上がる真実に目を眩ませただろう。
二章八節。
四章六節。
八章五節。
十七節九節。
予言は終わりを知らない。
きっと終わることはない。
いつだって、全ての世界は終わりを迎えていた。
書いているうちに、ふと、脳裏に何かが過ることがある。
けれど、その何かもまた――
蝋燭の火に掻き消され、燃え尽き、見えなくなっている。
初めはそうではなかったかもしれない。
だが、そもそも初めなんてあったのだろうか?
少女には未来しか見えていない。幾ら予言書の頁が積み重なれども、その厚さは分からない。
その全てもまた、蝋燭の火に燃やされていた。
或いは、この蝋燭の中こそが、全てだったのかもしれない。
蝋燭はすべての世界と未来を明るく照らす。それなら、外の世界などに意味も意義も無いのかもしれない。
いや、きっとそうなのだろうと、少女はそう思っていた。
だからこそまた、記すことしか出来なかったのかもしれない。
けれども、それでも満足だった。
結局は、この明るく照らされ、破滅を迎えるこの場所だけが、少女の居場所だったから。
そんな中、一人の人間が、少女の前に立っていた。
少女はその人に気づかないまま、ただ予言書を書き続けた。
「君は、いつからそうしているんだ?」
その人はそう聞いたが、少女は答えなかった。
否、正しくは答えられなかったのだろう。少女には未来しか見えていなかったからだ。
この灯火は、過去の暗闇を、未来への輝きに塗り替えてしまうほどに、ひどく明るかった。
「君は、何故そうしているんだ?」
その言葉にも、少女は答えなかった。
矢張り、その理由も遠い過去のものだったが故に、答えることなど出来ようも無かった。
その人は、少女の隣に座り込んだ。
暫くの間は、無言の間が続いた。
「君には――大切な人がいたはずなんだ。覚えてる?」
少女は反応しない。
「私は、その子達に頼まれて、こうしてるんだけど...。」
少女は何も言わない。
無言のまま、誰かの破滅、誰かによる崩壊を書き連ねている。
「君は一体 、何を書いているんだ?」
その言葉にも反応しない。
応えたところで変わらない。
結局、未来に待つのは破滅なのだ。
「きっと、それは書きたくて書いてるんじゃない...と思う。」
その人は独り呟くが、少女は何も答えない。
答えたくなかったのかもしれない。
「多分...誰かのために書いていたんじゃないかな?」
ふと、少女の大きな耳が動いた。
それを、隣に座っている人は認めて、また続けた。
「君は、大切な人達の為に、それを書いていたんじゃないかな?」
その言葉に、少女は手を止めた。
けれど、頭に浮かぶのは、目に入ってくるのは、矢張りどれも終焉だ。
「君に何が見えているかは分からないけど──」
その人は、寂しそうな声で続けた。
「きっと、大切な人も 、その視界の中に居るはずなんだ。」
見えていないはずがないんだ。
その言葉に、少女は再び目を開いた。
刹那、風のない筈のこの場所に、一陣の風が吹きつけ、蝋燭が少し揺れた。
ゆらゆらと炎は揺れ動き、ともすれば消えてしまいそうなその動きに。
少女は、咄嗟にペンを隣にいる人に向かって仰いだ。
ペンからは、小さな炎が漏れ出し、種火となって大きく燃え上がる。
それでも、その人は動じずに続ける。
「ここは眩しくて、上手く見えないかもしれないけれど...それなら、私が少しだけ、灯りを落とすから。」
そう言いながら、その人は笑って、蝋燭の一つに近づいた。
火は藻掻く様に揺れ続け、少女も呼応するように炎を撒き散らす。
それでも、その人は、蝋燭の一つに、ふっと息を吹き掛けた。
火は揺らめき、やがて次第に、溶け落ちるようにゆっくりと消えた。
周囲が少し暗む。
少女の視界もまた暗んだ。
いつかの、何処かの未来では、矢張り誰かが死んでいる。
全てに耐えきれなくなり、どうしようも無くただ笑ってばかりいる、誰かがいる。
誰かによって引き起こされた、誰かの破滅。
誰の?
考えることなど、これまで一度もなかった筈なのに、ふとそれが気になった。
蝋燭は揺らめき、視界を遮る様に、眩く灯っている。
その火に手が触れて火傷しながらも、少女は目を見開いている。
誰なんだろうか。
『これも全て、セイアさんの──そして、ミカさんの為に──』
これもまた破滅への序曲だったはずだ。
そしてまた、聞いたことのある声だった。
『皆──皆私のせいだ。だから──』
誰かによって、破滅を迎えようとしている世界だ。
その姿には見覚えがあった。
また滅亡が始まる。早く書かなければならない。
そう逸る手を、隣にいる人は抑えた。
「でも、その人達は、本当にそれだけだったのかな。」
再び蝋燭が揺らめく。
誰かの為に自分も他人も、果ては世界をも犠牲にしようとした人が、また映る。
その人もまた、終わりへと進んでいく。
でも、その姿は見たくなかった。
蝋燭は燃え盛る。その未来を明るく、ギラギラと映し出そうとする。
でも、その瞬間に、炎は消えた。
隣には、指を熱そうに振り回す人がいた。
少し暗くなった中、再び光景が映し出される。
自分の感情のままに全てを壊し嘆く人がいた。
でも、その奥底には、誰かを想う気持ちがあった。
再び蝋燭が消される。再び 、再び、再び。
「それでも...思い出せない?」
思い出したくないだけだ。
あの炎の明るさに、眼を暗ましていただけだから。
いつしか、周囲はすっかり暗くなっていた。
残っている光源は、淡く燃え続けるペンだけだった。
少女はただ震えてばかりいた。
今まで明るく暖めてくれていた火が消えてしまったから。
少女の目には、何も映っていない。暗く、暗く、それ故に怖い。
「でも、この暗さこそが、
そう言いながら、その人は少女の手からひょいとペンを奪って、振り翳して見せた。
淡い光が、そのままこの場所そのものを照らし出す。
「君は今に生きている。決して、未来に、恐怖に縛られてはいけないんだ。」
少女は穴が開くほどに、目の前を見ている。
薄明りのみが灯る空間に、視界が次第に順応していく。
果てしなく、
否、元からあったのだろう。初めから見ようともしていなかっただけだ。
「昔があって、今があって、初めて未来があるんだ。だから、昔を知らなきゃいけない。そしてそれは――」
そう言いながら、その人はペンを握り潰した。
空間は完全な暗闇になって、果てしないコズモスとなって見えない二人を取り囲んだ。
「昔は、記憶にしかない。そして記憶とは
開けることのできない黒い箱の中にいる様に。
「この真っ暗闇だからこそ――見えるんじゃないかな、黒い箱の中に置いてきた物が。」
その言葉通りに、少女は暗闇の中を見渡した。
暗闇だが、その中に星があった。
一つに気が付くと、また一つ、また一つと照り映え映し出されていく。
そうして少女は星々を繋げて、弄び、ある一つの星座を浮かび上がらせる。
滅亡に見飽きたから。終焉に恐れも畏れも抱かずに、ただ在るものだと思ったから。
「でも、それだけじゃないはずだ。繋ぎ方は単一じゃない、自由に、星空の奥底の奥底にある星々を摘まんで、一つも取りこぼさないように。」
コズモスは果てしなく深く、それ故に古く旧い
少女はまた星を弄り、描き、再び別の図形を映し出す。
かつて、否、ずっと傍にいた友人の、破滅と崩壊。
その全てを見てきた。
その全てを否定して、何でもない明日を手にしたかった。
けれど、鏡の欠片に映し出される、幾多ものパターンによって迷路を連ねていく崩壊の様相に、終ぞ心を折った。
全ては自分のためだという利己心で包帯を巻かなければ、骨は打ち砕けて圧し潰されていたから。
「でも、その包帯は時に鎖となって、君に枷を着けていた。」
折れないように巻かれた包帯は、何時しか己を地面に縛り付ける鎖と化していた。
少女は大切な人を想っていた。過去に刻まれた星々はそう謳う。
少女は少女本人で在る。今を見詰めながらそう思う。
少女はこれからも少女である。未来は今の、今は過去の影だから。その先に在る破滅は、少女が枷に縛られる由には成り得ない。
いつしか、少女の頭には王冠が被せられていた。予言者よ統べる者たれと、旧く人々は彼らを崇めてきた。
少女は、その王冠を外して。
「立てるかい?今度は、自分を識った上で、その足で。」
少女はその言葉に確かに頷くと、ゆっくりと立ち上がった。
そうして、暗闇は再び光に包まれ、
朝が来た。
或る日の朝、トリニティのある一室は、普段の活気からは想像もつかないほどに湧き上がっていた。といっても、三人しかいないのだが。
その中心には、百合園セイアが佇んでいる。
彼女の傍には、二度と開けないほどに封された本が一冊置かれてある。少女二人はそれについて聞こうとしたが、どこか躊躇って聞けていない。
彼女の友人である二人の少女は、口々に感激の言葉を並べ立て、時に抱き着いたりもしている。
それを些かうざったく思いながらも、この光景の懐かしさに、セイアは静かにそれらを受け止めていた。
「皆おはよ~、朝から元気だね。」
扉をギイと軋ませながら、先生はそう言って部屋に入ってきた。
「体調はどう、セイア?」
「大丈夫だよ。それよりも...何か隠してるんじゃないか、先生?」
その言葉に眉一つ動かさずに、愉快そうにその大人は笑って、懐を弄った。
その中から出てきたのは、一つの硝子片だった。
二人の少女がそれを不思議そうに見つめる中、セイアだけが不愉快そうな表情を浮かべた。
それを見てまた面白がる先生とセイアの表情を見比べて、少女達は矢張り不思議そうな顔をした。
「...これは、私を狂わせた原因だ。正確にはその一つと言うべきかな。」
重々しくそう言うセイアに合わせて、少女達も一様に顔を顰めた。
「残念ながらこれを持ち込んだ奴は見つけられなかったけど、実物だけでも回収しておいたんだよね。」
「あの...自殺自販機だかを謳っていた人か。そうか...。」
セイアは少し顔を曇らせた後、再び鏡に向き合いながら続けた。
「それで、これは当てつけかい、先生?」
「そんなまさか、君がこれをどうしたいか気になったからさ。」
「...何をしてもいいのかい?」
その言葉に先生が頷くと、セイアは鏡を地面にそっと置いて――
足で踏んづけて、そのまま割ってしまった。
二人の少女は、驚いたような顔をしていたが。
セイアは一人、晴れ晴れとした顔つきで笑い始めた。
――タイトルの由来について――
()内のスラッシュ以降は一応出典というか元ネタ的な感じです。あとは自己解釈多め、文句は友人まで。
灼(陽に焼かれ)
架(空に掛けられ)
薔薇(焼けた智慧の実/創世記の知恵の木より、善悪問わず可能性を開く智慧の実が焼き切れて可能性を見ることしかできない)
薔薇海(窮極への試練と過去・現在・未来/「未知なるタガスに夢を求めて」より)
覇(未来を制する)
蝋(蜜蝋の翼は焼き切れる/イカロスの翼)
ご拝読ありがとうございました。
毎度のことながら、感想やお気に入り、評価などしてくれると作者がとても喜びます。
それと、リクエストも募集しているので、感想などに書いてくだされば書こうと思います。
マシュマロは作品の概要欄にありますわよ!
プロムン関係無い純粋なブルアカ創作をここに載せてもいいか
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ええよ
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あかんで