英次が目覚めると防塵服を身に付けた多くの者達が作業をしていた。
「…!」
英次はスピリットウォッチを見つけて反応したが腕と足に付けられた鎖によって動けない状態に堕とされていた。
「体を動かそうとしても無駄だ」
刃が防塵服の者達の間を通って英次に話しかけた。
「俺をどうするつもりだ!」
「どうすると思う?」
「まさか俺を使って人体実験…!?」
「いや、君は人間ではないだろう。何せあの方によって作られた祝福されるべき存在なのだからな」
英次はその言葉を聞いて体を動かした。
「まさかお前もこいつらもマキナゼウスの手下かっ!」
英次はその相手に憎しみを向けるように言った。
♢♢♢
英次が様々な世界に渡る原因になったのも、家族を失うことになったのも全てはマキナゼウスという存在のせいだ。
♢♢♢
刃は英次の首を強い力で握りしめた。
「あらゆる世界を支配する神に相応しいあの方に憎しみを向けるとは浅はかだな」
「ぐぁぁ…」
刃は英次から手を離した。
「まあ、今のお前はお前自身のセフィラをスピリットウォッチにしたことで完全に人間の体になっている」
「殺すと本当に死ぬから直前で止めた」
刃が話していると他の部下がスーツケースを持って近づいてきた。
「スピリットウォッチ…!」
英次はそのスーツケースの中に入った先ほど見つけたスピリットウォッチを見て鼓動の高鳴りが強くなった。
「お前には伝えてなかったが、これはあの方がお前との絆が強い精霊から奪ったセフィラを変化させたものだ」
「…あいつらをあいつがやったのかっ!」
英次は体を激しく動かし、涙を流す目で刃を睨みつけた。
「この程度はまだ甘い。お前にもっと地獄を味合わせてやろう。俺が味わった地獄をな」
「さあ、まずはどのウォッチがいい?」
「お前の初恋となる相手の物か?それとも大切な義理の妹のか?それともお前をお前たらしめる母親の物か?」
刃はサンダルフォン、カマエル、ラジエルのスピリットウォッチを選ばせた。
「潰す!一人残らずぶっ潰してやるっ!」
英次は刃の質問に返さず、反抗的な態度を取った。
「まさか正義の為なんて言うんじゃないだろうな?」
「お前たちが悪じゃなければなんだって言うんだっ!」
「見せてやれ」
刃は他の部下を顎で使って、英次に魔法をかけた。
「お前らをぶっ潰すまで…俺は…」
英次は眠りに付いた。
♢♢♢
英次が気がつくと周りにこの世界の住人がいた。
「…どうなっているんだ?」
すると、その住人は英次に向かって石などあらゆる物をぶつけた。
「消えろ化け物!」
「俺が化け物…!?」
英次は動揺している中で自分の手を見ると血に塗れていた。
「ち、違う!俺は化け物なんかじゃない!」
「嘘だ!」
「嘘なんかじゃない!俺は正義のヒーロー、仮面ライダーとしてみんなを守ってきたんだ!」
英次の頭に石が当たって血が流れた。
『これは人間がお前に向ける本当の声だ』
英次の耳元に刃の声が聞こえた。
「人間は俺を認めてなんてくれない…」
『そうだ、お前の正義なんて所詮は独りよがりの思想に過ぎない』
「俺は正義のヒーローなんかじゃなかった…」
英次は心に鍵をかけるように飛んできた物を受け続けた。
♢♢♢
それが相手の魔法だと知らずに英次は刃たちに好きなようにされていた。
「決めた。まずはこれを与える」
刃は英次の体にスピリットウォッチを埋め込んでいった。
♢♢♢
その度に英次はその天使を持っていた精霊がやられていく場面を見せ続けられた。
「………」
英次はその悪夢をただ見ることしかできなかった。
♢♢♢
刃たちは英次が天使の力を手にするたびに実験動物のように扱った。
「はは、心さえ閉ざしてしまえばただの人形だな」
英次はやがて何も反応しなくなった。
♢♢♢
その頃、ネクスは平成1期の怪人と戦闘を繰り広げていた。
「英次さんは何をやっているんだっ!?」
ネクスは自分一人だけ戦っている事実に気づかず、果てしない戦いに身を投じた。
♢♢♢
英次は囚人が着るようなボロ切れ一つに体を包み、監獄のような部屋の隅に蹲っていた。
「…みんな」
英次が精霊達の事を思い出す度にマキナゼウスにやられたことを思い返して嘔吐をした。
「汚いなぁ、床が汚れてしまうじゃないか」
メガネをかけた男が嘔吐した物を拭いた。
「雷人…」
その男は英次の相棒の雷人だった。
「君は誰かの意志に屈しないと思っていたよ。相手の意志が例えどれだけ強かろうが弱かろうがね」
「…お前に何がわかる。俺は全てを失った。俺は一度負けているし、もう何もかも無駄なんだよ」
「だが、君は黒く染まってまで戦い続けてきた。敗れて消滅した僕らと違いここで生きているんだよ」
「生きているのなら戦い続ければいい」
雷人は英次にそう告げた。
「……」
英次は雷人の方を見るがそこには元から何もいなかった。
♢♢♢
刃が施設のモニター越しにネクスの戦っている姿を見ていると部下がやってきた。
「鷹神英次が脱走しただと!?」
刃は復活できると思っていなかった相手の情報を聞いて驚いた。
♢♢♢
英次はジカンマグナムで自分を縛る鎖を壊して、施設の入り口を目指して歩いていった
「邪魔だ…」
英次は人を見つけ次第、自身の中にあった大切な人との思い出を浮かべながら消し炭にしていった。
♢♢♢
英次はとある部屋に入った。
「これは…」
「驚いたかね。この部屋でマコトは生まれたんだ。あの方から託された本当の君の作り方を元にしてね」
この部屋の中にはマコトに似ていた男たちが眠っていた。
「まさかあいつもクローンだったとはな…」
「思い出すか?」
英次はマキナゼウスに自分がクローンだと突き詰められた事を思い返した。
「本物のマコトは2000年の交通事故でとうに死んでいる」
「そうか…」
「何をするつもりだ?」
「決まっている。全て破壊する…」
英次はジカンマグナムの銃口をクローンに向けた。
「やめろ!」
「あの時の言葉をそのまま返す…」
刃が止めるとわかっていた英次は向けたと同時に引き金を引いて弾丸を放っていた。
「貴様っ!」
刃が剣を振り下ろした先に英次の姿はなかった。
♢♢♢
クローンが爆発した事で発生した炎によって施設は家事になって施設にいた人間ごと燃え尽きた。
「……」
英次は施設の中にあった熊の人形を拾った。
「もはやお前の中には正義のヒーローの欠片も残っていないな」
刃は英次にパチパチと拍手をしながら近づいた。
「俺の目的はマコトを最低最悪の存在になるループから抜け出させてやることだった」
「別の奴をその位置に押し込めることによって…」
「それが貴様だ」
刃はクアンタアナザーウォッチを取り出した。
【クアンタ】
刃は起動したクアンタアナザーウォッチを体の中に取り込んでアナザークアンタに変貌した。
【クアンタ】
「変身…」
【ブラックタイム】
【仮面ライダークアンタ】
英次は仮面ライダーネオクアンタに変身した。
「あんたを倒して俺は自由を手に入れる…」
【ケルビム】
「変身…!」
【スピリットタイム】
【ケルビム!】
ネオクアンタはケルビムアーマーに変身した。
「「はぁーっ!」」
ネオクアンタは瞬間移動、アナザークアンタは目に止まらない速さで戦いを繰り広げた。
♢♢♢
レナは戦い続けているネクスの元にやってきた。
「マコト!」
レナが呼びかけるとネクスが彼女の存在に気がついた。
「レ、レナ!?」
【フィニッシュタイム】
【タイムストリーム】
「はぁーっ!」
ネクスはライダーキックを放って周囲の怪人を倒した。
♢♢♢
マコトたちは部屋に帰ってきた。
「平成1期のライドウォッチが!?」
マコトはライドウォッチが壊れているのを確認した。
「…壊れたらライダーの歴史から怪人が解放されるという事か」
「…これがこの世界の終わり」
レナはマコトに消滅に向かっている手を隠しながら言った。
「…終わり…この世界の…」
マコトはレナが手を隠していることに目線を向けた。
♢♢♢
ネオクアンタが瞬間移動したところにアナザークアンタが接近して二刀流の片方を振り下ろした。
「ぐっ…」
ネオクアンタは拳を突き出すが簡単に避けられてもう片方の剣を振り下ろして斬撃を食らった。
「お前がどこに現れようとも俺はその場所に移動して倒せる」
「この!」
ネオクアンタはジカンマシンガンを連射した。
「……」
アナザークアンタは連続して向かって来る弾丸を全て切り裂いた。
「っ、弾切れか…」
ネオクアンタが弾切れになった瞬間にアナザークアンタが接近して両腕に剣を突き刺して拘束した。
「ぐっ…!」
「最後の虫足掻きも無駄に終わったな」
「そのようだな…」
ネオクアンタはジカンマシンガンを下ろした。
「この世界はもうすぐ終焉を向かえる。その時がタイムリミットだ。マコトを助けるためにお前は世界最大の害悪になれ」
「ふっ…」
「何がおかしい…?」
アナザークアンタはネオクアンタの体の一部にケルビムアーマーが付いてない事に気がついた。
「まさか!」
(弾丸を放ったのはこのアーマーを隠すためのフェイク…!)
アナザークアンタの後ろにケルビムアーマーが向かって来ていた。
「ぐっ…!」
アナザークアンタはケルビムアーマーの斬撃を受けた。
【ケルビムタイムストライク】
「はぁーっ!」
ネオクアンタはその瞬間に残りのケルビムアーマーを足に纏わせてアナザークアンタに蹴りを放った。
♢♢♢
倒れそうになったアナザークアンタは剣を支えにして立った。
「あの方に与えられた力の一端で時にはこの世界の運命を捻じ曲げマコトにライドウォッチを集めさせて最強の存在を作った」
「その最強がいずれお前を倒す…」
アナザークアンタは目の前からやって来る者に顔を向けた。
「………」
目の前には銀色のクアンタがいた。
「この拳の中に理想を叶える力がある」
「ふんっ!」
「ぐあぁぁぁっ!」
銀色のクアンタはアナザークアンタを後ろの壁に叩きつけた。
「その力で俺はこの世界を破壊し、俺の理想の世界を築き上げる…」
銀色のクアンタはベルトの左右を押し込んだ。
【終焉の刻】
銀色のクアンタの拳に憎しみや怒りなどの負のエネルギーが収束されていった。
【破斬怒必殺撃】
「はぁーっ!」
銀色のクアンタはアナザークアンタにライダーパンチを放った。
「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
アナザークアンタは断末魔をあげて建物を巻き込むほどの大爆発をあげた。
♢♢♢
刃はウィンやメアなど今まで消して来た者達と同じく粒子の粒が浮かび上がっていた。
「この物語は世界の敵になったお前を倒すことによって完遂される…」
刃は近くにいるアナザークアンタにそう言った。
「だが、俺の目的は変わらない…」
「そうか…」
刃だった粒子の粒の一つ一つは風に吹かれて空に散って行った。
♢♢♢
マコトは家に居ながら刃に不穏な事が起こったのを感じた。
「お父さん…?」
だが、マコトは刃の正体や目的、英次にやられた事を何も知らない。
♢♢♢
廃墟ビルの屋上
「……」
英次は街を見下げた。
「おお、凄くいい眺めだね」
ハルトは世界に悲鳴が溢れる状況を見て喜んだ。
「…この世界を破壊する」
(その先で待っていてくれ、アル)
英次は愛する事への思いを胸にしながら拳を握りしめた。