二人の背中に手を伸ばした少年は転び落ちた。
“届かない”
少年はそこに一人残された。
英次とハルトは下校する生徒に混じって学校の校門に歩いて行く。
「むぅ、君はもう少し斑鳩蓮を警戒するべきだ。もう少しで落ちるところだったんだよ」
ハルトは英次の腕をいつもより強く握りしめた。
「そう怒ったとしても俺があいつに落ちることは絶対にない」
(そうだ、俺の1番はあの日からずっとアルなんだからな)
英次は妻との大切な日々を思い浮かべた。
♢♢♢
その日々の一つ、英次はアルに膝枕をしてもらいながら一緒に空を見ていた。
「やっぱり空はいつ見てもいいね」
「ああ、本当綺礼だ」
二人は何かあるごとに共に空を見に行った。
「空を見て英次君と出会った時をよく思い出すんだ」
「その日もこんな空だったな」
英次はアルの瞳の青色も曇り一つもない満々の青空のように綺麗だと思った。
「英次君がいたから私は孤独じゃなかった。だから今度は私が英次君を助ける番だよ」
「助ける番?」
「まあ、私は怪人と戦うことができないけどね…」
アルは自分の力に苦笑した。
「俺がこうして生きているのはアルのお陰だ」
「戦うことができなくたってもう充分助けてもらっている」
「英次君…」
英次はアルを肯定した。
「それに関しては俺に任せて欲しい。俺がこの命を張ってアルを守ってみせる」
英次はもう何度目かわからない宣言をした。
「もうまた無茶な事を言って」
「こうやってアルの笑顔が見れるならなんだってするよ」
「もう…」
「少しだけ見てみたい私も私なんだけどさ」
アルは笑い、英次は彼女に吊られて一緒に笑った。
♢♢♢
だが、彼女の事を思い出せば、思い出すほど、英次はあの日のことを思い返してしまう。
「愛してる」
マキナ・ゼウスの手によって消滅するアルが最後にそう言った。
♢♢♢
アルが消える光景を思い出した英次は暗い表情を浮かべた。
「ハルト、帰る前に買い物をするから先に家に行っていてもいいぞ」
「わかった、先に帰っておくね」
英次はハルトと校門を出たところで別れた。
(もう何も失いたくない…)
英次は拳を強く握りしめた。
♢♢♢
英次が行った先に人の悲鳴が聞こえた。
「…なんだ?」
英次がそこに行くと真っ先に不良が腰を抜かしているのが見えた。
「なぁ、もういいだろ!」
不良が見上げていたのはアナザーライダーだった。
「こんな中途半端なところで終わるのは嫌なんだ。ノルマを全て終わり切るまでは止まるつもりはないよ」
「なんかの冗談だろ!勘弁してくれ!」
「さらばだ」
アナザーライダーは叫ぶ暇すら与えずに不良を消した。
♢♢♢
その頃
「英次は帰れって言ったけど」
ハルトはスマホを開いた。
「テッテレ〜!G〜P〜S〜!」
ハルトが起動すると画面上にマップが表示された。
「英次はここだ!」
ハルトはマップ上に映る赤い点のところに向かって行った。
♢♢♢
アナザーライダーは英次の気配に気がついて彼の方を見た。
「人を消したな…」
英次はアナザーライダーの前に姿を現した。
「君は人を消されるのをただ見殺しにしたね」
「なあ、お前なんだろ。夢や鏡を使って何度も俺に語りかけたり、怪人を差し向けたりしたのは…」
「御名答」
アナザーライダーは人間の姿になった。
「蓮…」
アナザーライダーになっていたのは斑鳩蓮だった。
「まず質問させろ。お前はこの世界の人間じゃないな」
「そうだ。私は君と同じ世界出身でね。そもそも人間ですらない」
「それが俺を狙う理由か?」
「そうとも言えるが私が君を狙う理由は他にある」
「私の理想を叶えるためにまずは君にライダーの力を取り戻してもらわないとね」
「英次!」
この場にハルトがやってきた。
「ハルト…」
「ちょうどいい、彼を使うとしよう」
蓮はアナザーウォッチのボタンを押した。
【ディエンド】
蓮はディエンドアナザーウォッチを取り込み、アナザーディエンドに変貌した。
「ば、化け物!」
ハルトは足が恐怖で震えて動けなくなった。
「やめろ!」
「止めるのなら変身すればいい。ほら、これが君の力だろ」
アナザーディエンドが投げたクアンタライドウォッチを英次の足元に転がってきた。
「俺は!」
英次はクアンタライドウォッチに伸ばした手は震えて掴む前で止まった。
「ぐっ…」
「ハルトっ!」
アナザーディエンドはハルトを気絶させ、片腕で抱えた。
「ハルトを返せっ…!」
英次はクアンタライドウォッチを掴んだ。
「そのライドウォッチを掴めたところで君にはボタンを押すことはできない筈だ」
「力を取り戻した瞬間、君は今の生活を失い、一人孤独に戦い続ける生活に戻るのだから」
「っ…」
英次は蓮に言われた通りになっていた。
「そうだ、君は臆病者だ。誰かに縋っていなければ自分の平常心を保っていられない」
「そこはあいつとは違うな…」
アナザーディエンドはオーロラカーテンからガーディアンを出現させた。
「ガーディアン!」
ガーディアンは既に銃を向けた状態だった。
「何もできないままこいつらにやられろ」
「っ…!!」
ガーディアンが弾丸を放ったタイミングで英次は何者かの何よってこの場所から消えた。
♢♢♢
英次の前にはクローズマグマがいた。
「万丈…」
クローズマグマは変身を解除した。
「怪我ねえか?」
「俺は大丈夫だ。けど、あいつに親友を連れ攫われた…」
「なら取り返しに行かないとな!」
万丈は拳を叩いた。
「待て」
「なんだよ?」
「俺はもう戦うことができない…」
「あいつが言った通りだ。俺は一人になるのが怖くて変身したくないと思っているんだ…」
万丈は怖がる英次を見て言った。
「そんなの当たり前だろ。一人がなるのが怖くない人間なんてどこにいるんだ」
「俺もお前も人間だ。怖がって当然だ」
「でも、俺達は仮面ライダーだ。だったら戦ってやろうぜ。ラブ&ピースを守るためにな」
万丈は英次の胸を叩いてそう伝えた。
「……」
英次は万丈に伝えられた言葉で旧世界で戦兎と映司と出会った時の想いを思い出した。
「お前のおかげで大切な想いを思い出せた」
「俺は愛と平和を守る仮面ライダーだ!必ずあいつの手を掴んでみせる!」
英次はクアンタライドウォッチを構えた。
(そうだろ、マコト)
英次は目を瞑った。
♢♢♢
英次が目を開けると、周りの景色は花畑になった。
「………」
英次の前にはマコトが頷いていた。
「俺は必ずお前のところに辿り着く。首を洗って待っていろ」
英次はマコトに伸ばした手を握りしめた。
“待ってます”そう聞こえた。
♢♢♢
英次はクアンタライドウォッチを押した。
【クアンタ】
クアンタライドウォッチが起動した。
「力を取り戻したみたいだね」
「海東大樹…」
英次たちのところに海東が近づいてきた。
「彼女にやられてディエンドの力を失ってしまってね。君に僕の大切なお宝を取り返して欲しいんだ」
「俺を利用する気で近づいたんだな」
「君も彼を追いかけるために僕らの知識を付けたのなら僕らの性格はわかっている筈だ」
「ああ、望むところだ。利用されてやるよ」
英次は万丈と一緒に蓮がいる場所に向かった。
♢♢♢
廃墟ビルには蓮が召喚した様々な怪人がいた。
「うぅ…」
ハルトは悲しい夢を見て涙を流した。
「…来たか」
蓮がそう言って背後を振り向いた。
「はぁっ!」
「おらぁっ!」
そこでは英次と万丈の二人が怪人と戦っていた。
「人間を辞めて何をしに来たんだ?」
「決まってるだろ。大切な人を取り返しに来たんだよ」
この場にいる怪人は英次たちの周りを囲んだ。
「行くぞ、万丈」
英次は背合わせで万丈に伝えた。
「ああ、今の俺達なら負ける気がしねえ!」
万丈はクローズボトルを持った手を握って答えた。
【クアンタ】
【WAKE UP!CROSS-Z DRAGON!】
【ARE YOU READY?】
「変身!」
【ライダータイム】
【仮面ライダークアンタ】
【WAKE UP BURNING!GET CROO-S DRAGON!YEAH!】
英次はネオクアンタ、万丈はクローズにそれぞれ変身した。
「ふっ、馬鹿な奴らだ」
「俺は馬鹿じゃねえ!プロテインの貴公子だ!」
「いや、馬鹿だろ」
「まあ、いいさ、私の勝ちは揺るがない」
【ディエンド】
蓮はアナザーディエンドになった。
「さあ、かかって来い」
「雑魚達は俺に任せろ」
「ああ、頼んだぞ、万丈」
ネオクアンタはアナザーディエンドに向かって行った。