貞操逆転世界になっていたので、幼馴染を色仕掛けで落としたい   作:138ネコ

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第48話「あっ、ほら。今日は暑いから、ちょっとぼーっとしちゃったかも」

‐3人称視点‐

 

「そろそろ京の出番だっけか」

 

「あっ、うん。まずは次の100m走だね」

 

 そう言って、競技場へ向かう選手たちを見る栄太郎と大倉さん。

 選手たちの中に西原の姿を見つけ、栄太郎と大倉さんが「がんばれー」と声を上げるが、西原は気づかない様子で自分の出る種目のレーンへと向かっている。

 そんな西原に、同じユニフォームを着た少女が声をかけ、栄太郎と大倉さんの方を指さす。

 

「……んっ」

 

 西原は困ったような表情を浮かべながら、栄太郎と大倉さんへ軽く手を振り返すとすぐに振り返り、少し早足で歩き始める。

 決して西原は2人の存在に気づいていなかったわけではない、ただ照れくさくてどう反応すれば良いか分からず、気づかぬふりをしていただけなのだ。

 西原の行動で、なんとなく心中を察し、少女は申し訳なさそうな顔で栄太郎と大倉さんに手を合わせ軽く頭を下げる。目線は栄太郎をキープしたまま。

 軽く頭を下げ終えると、西原を追いかけるように小走りで去る少女。

 

(今の子、絶対に島田君を見てた!)

 

 むむっと大倉さんが顔をしかめる。

 とはいえ、少女が栄太郎を見てしまう気持ちも同時に理解出来ていた。

 何故なら今日の栄太郎は陸上女子のユニフォームに負けないくらいの露出度である、チアボーイ衣装を着ているからである。

 もちろん、栄太郎本人が着たくて着ているわけではない。応援のために着ようと陽キャに迫られ仕方なく着ているのだ。栄太郎に断る勇気がないので。

 

 最初は恥ずかしがっていた栄太郎だが、客席を見渡せば、他校で自分と同じような格好をした男子たちが相当数見受けられる。

 インターハイとなれば、どこの学校も応援団に力を入れているのだから、まぁ当たり前と言えば当たり前である。

 なので、恥ずかしいという気持ちは次第に薄れ、こういった場においてはこの格好が普通。なので、西原に堂々と露出した肌を見せて色仕掛けのチャンスなのではないかとポジティブに考える栄太郎。

 

(栄太郎のあの格好、ホントエロ過ぎるんだけど。どうせなら私の前だけでやってくれれば良いじゃない。もしかしたら良い結果残せば「お祝いだよ」とか言いながらチアボーイ衣装で迫ってきて……)

 

 栄太郎の想像通り、いや、想像以上に効果抜群である。

 もちろん、その事に栄太郎は気づいていない。

 そして、栄太郎はもう一つ気づいていない事がある。

 

「大倉さん、どうかしたの?」

 

「……えっ?」

 

 普段なら露出度の高い格好をしていれば、邪な目で栄太郎をジロジロとガン見している大倉さん。

 そんな彼女が、今日はチラチラと見てはいるが、いつものようなガン見をしてこないのだ。

 なんなら、どこか余所余所しい態度すら見せている。

 

「あっ、私何か変かな?」

 

 まるで大倉さんが変じゃない時があるみたいな言い方じゃないか。

 喉まで出かかった言葉を飲み込み、栄太郎は笑顔で首を横に振る。

 

「いや、なんとなく聞いてみただけだけど?」

 

「あっ、ほら。今日は暑いから、ちょっとぼーっとしちゃったかも」

 

「そっか」 

 

 そうだよね、今日暑いもんね。

 そんな栄太郎の言葉に、大倉さんは軽く笑いながら適当に相槌を打つと、西原の方へ顔を向ける。

 明らかに普段と違う行動をとる大倉さん。

 

(あまりジロジロ見ると、島田君にキモイって思われるかも……)

 

 今までの大倉さんなら、何もしないで嫌われるくらいなら、いっそ行動してしまえの自爆特攻な考えだった。

 栄太郎の言動や、周りの目線などお構いなしの。

 だが自分の恋心に気づいた彼女は、栄太郎の一挙手一投足を気にし、周りの彼に対する目も気になってしまっていた。

 その結果、明らかに栄太郎に不信感を持たれている。

 このままではいけないと焦りつつ、普段栄太郎に対しどんな風に接していたか必死に思い出す大倉さん。

 

(キモイって思われるかもって、もはや手遅れじゃん!!!!)

 

 思い出すのは痴態の数々。

 せっかく「バレてないと思っていた胸元をジロジロと見ていた事を、本人にバレて指摘された」黒歴史まで思い出してしまう始末。

 今にも叫び出して暴れ回りたい衝動に駆られる大倉さん。

 

「西原さん、頑張れー!!!!」

 

 その衝動を抑えるために、大倉さんは必死に叫び、西原の応援をする。

 

(このまま叫び過ぎて熱中症で倒れて死にてぇ、誰か私を殺してくれぇ!!!!)

 

 思い出せば思い出すほど恥ずかしくなってしまう。

 なので、出来る限り思い出させないように声の限り応援をする大倉さん。

 

(大倉さんって、西原とそこまで仲が良かったのか)

 

 貞操観念が逆転した世界で、スケベな衣装を着た自分が隣に居るというのに、ジロジロ見る事もせず、ただただ西原の応援を繰り返す大倉さんに栄太郎が関心を寄せる。

 

「京、頑張れー!!!!」

 

 スケベの化身のような大倉さんが、自分や他のチアボーイに見向きもせず西原の応援をしているというのに、西原に対し色仕掛けを考えていた事を恥じる栄太郎。

 先ほどまでの自分を恥じ、大倉さんの隣で、負けじと栄太郎も声援を送り始める。

 

 2人の応援が届いたのか、この日、西原は自己ベストを叩き出し好成績を収めた。

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