機甲猟兵エルフリーデの屈折した恋愛事情~最強ロボパイロットの英雄譚~ 作:灰鉄蝸
窓から見える景色は雲の流れだけだった。
高度一万メートルを超えるはるか上空に退避したティルトローター輸送機――与圧キャビンによって機密されているから、機内は外気の薄さとは無縁だった。
しばらくの間、無言だった黒髪の伯爵が、沈黙を破って口を開いた。
「…………何もできることがない、とは歯がゆいものだな」
どこか歯がゆさを感じさせる男の呟きに対して、その傍らのシートに座る少女――リザ・バシュレーは肩をすくめた。
今年に入ってから伯爵家に入ったばかりの彼女は、肩書きの上ではエルフリーデ・イルーシャの副官ということになっている。
つまるところ騎士見習いというやつなのだが、情報機関で育成された腕利きの工作員という経歴のため、こういうテロリズムに対しては肝が据わっていた。
何せ元々は、こういうテロ攻撃による要人暗殺を仕掛ける側だったのだ。リザを十数年しか生きていない小娘と侮るものは、この伯爵家の面子には一人もいなかった。
「伯爵様。無防備な私たちがさっさと逃げ切るのが、エルフリーデお姉さんにとっては一番の支援になりますよ」
「そうだな。〈アシュラベール〉の機体性能であれば、あの状況からでも生還できるだろう――俺もそう信じている」
だが、それでも。
そう言外に告げて、黄金色の瞳を持った男は目を細めた。
複雑な心境ってやつですねえ、とリザは思った。騎士として平民の娘を取り立て、軍事機密の塊を預けているのだから、クロガネとてエルフリーデの力量を信頼しているのだろう。
その判断能力や人柄も含めて、ヴガレムル伯爵クロガネ・シヴ・シノムラがエルフリーデ・イルーシャを高く買っているのは間違いない。
それはそうとその身を案じるところが、この謎めいた伯爵様の矛盾であり、可愛げなのだろう――そのようにリザはシニカルな思考を巡らせた。
あるいは真実、彼が年端も行かない少女を機動兵器に乗せて戦わせることを拒否するのであれば、エルフリーデやリザを戦闘員として用いるべきではないのだ。
だが、リザの知る限り――有史以来、子供が戦争から切り離された時代など数えるほどしかない。
古来から戦争には多くの子供が動員されてきた。それは成人年齢が昔は低かった、なんてレベルの話ではないのだ。記録に残っているだけでも、一桁の年齢の幼児が駆り出されたことがある。
強力な銃器の普及は、さらにこの状況を悪化させた。
強靭な成人男性の体格がなくば扱えない武具よりも、銃口の数をそろえて殺し合う方が効率がよくなったのである。
そして自動火器の普及は、飛躍的に非戦闘員への虐殺の難易度を下げた。太古の昔から虐殺は発生していたが、連射可能な自動小銃や機関銃を、戦場の誰もが持つようになってからの歴史は、数十人、数百人という犠牲者を容易に作り出せるようになった。
戦場には男が出て女子供は後方にいればいい、などという牧歌的風景は、極めて限られたシチュエーションでしか成立しなかったのである。
この世界は、殺し合いの輪から逃れることがとても難しいのだ。
リザの冷ややかな視線に応じるように、クロガネが口を開いた。
「
「……生来の体格差や身体的なハンディキャップすら、バレットナイトの前じゃ無意味ってことですか?」
「ああ。本来、
体格や筋力で劣る子供、女性、老人が戦車を駆逐して二四時間戦い続けられる巨人に変わる。
なるほど、それはあまりにも身も蓋もなく――地獄の釜を開く行いだったのだろう。
そのように理解はできる。
けれど。
――何もかも遅すぎる悲嘆だと思いますよ、伯爵様。
最初の
リザにとってバレットナイトとは、気づいたら世界中に広まっていた兵器の一つだ。それは銃器や爆弾や戦車と何ら変わりなく、現代戦を彩る風景でしかない。
クロガネの嘆きを理屈としては理解できても、真実、その感情に共感することは難しかった。
結局のところリザ・バシュレーは、大人たちの作った残酷で醜悪な世界に怒り、すべてをぶち壊してしまいたいと願った側の人間なのだ。
エルフリーデに手を差し伸べられ、こうして第二の生を生きている今になっても、クロガネ・シヴ・シノムラという人物のことを図りかねている自分がいた。
鬼火色の瞳に浮かべられた困惑を見て取って、黒髪の青年――この男の実年齢を少女は知らなかったが、少なくとも見た目は二十代に見える――はため息をついた。
「お前の疑念は正しい、リザ・バシュレー。俺の嘆きはつまるところ、老人が自分の全盛期を懐かしみ、世相を憂う感情と大差がない。変わっていく世界に対して、建設的な影響を及ぼすことはないだろう」
「伯爵様、おじいさんあつかいは嫌がるわりに自虐はそっち系なんですね?」
「ああ、俺は老人ではない」
比喩表現であると主張された。そういうところが一番おじさんっぽいんですよ、とリザは思ったが口には出さなかった。
ともあれクロガネの言わんとするところを、異郷の地で産まれた少女はなんとなく理解した。
エルフリーデ・イルーシャが戦地に送られ、その類い希な怪物的才能を開花させ、今こうして〈アシュラベール〉の搭乗者として戦っているのも――
薄ら寒い事実を噛みしめて、リザは呟いた。
「
◆
エルフリーデは敵機から発せられた声を聞いて、〈アシュラベール〉の中で目を細めた。研ぎ澄まされた感覚器が周囲の光学情報と音響情報を拾って、それらを組み合わせて分析していく。
接近してくる敵の方角、移動速度がわかる。レーダー波を使うまでもない。
所属不明の敵バレットナイトの搭乗者が、年端も行かぬ少女――おそらく妹のティアナぐらいの年齢だろう――だったことに、エルフリーデは驚かなかった。
機械仕掛けの身体を意味する
この地上に存在する人間であれば、理論上は赤子すらも兵器にできる。それがバレットナイトという兵器システムの本質であると、以前、クロガネから聞いたことを思い出す。
――ろくでもない世界だよ、本当。
ジェット噴射と共に、水面の上を滑るように〈アシュラベール〉が疾走する。高度を上げないのは、水面を足下に捕まえておくことで敵機の襲撃してくる方向を減らすためだ。
理論上、この状態ならば前後左右と上方だけを警戒していればいい。
高性能な
高出力のレーダーユニットを搭載している〈アシュラベール〉とて、その感覚器の大半はパッシブ・センサーであり、搭乗者自身が周囲を意識して警戒しなくては意味がない。
バベシュ大河の水面を、ジェット噴射の圧力で水飛沫に変えて機動する。
遠くからでもよく見える軌跡は誘いだった。
――さあ、来い。
エルフリーデの意思は透明だった。
彼女は相手が妹と同じぐらいの年頃の女の子であろうと、容赦なく切り捨てるための動作を迷いなく行える。
罪悪感や良心のブレーキを感じないわけではない。だが、それを理由に手を止めて殺されてやるほどお人好しでもなかった。
自己弁護の理論武装など必要ない。彼女は戦争に愛されたものであった。
〈アシュラベール〉から見て前方一時の方向、敵が来る。
毒々しい紫色に塗装された異形の巨人、彼我の距離は七〇〇メートル。その両腕がこちらに向けられた。
間髪入れずに光波シールドジェネレータを展開する。コンマ一秒の余裕もなく被弾――粒子防御帯に突き刺さったのは、二〇ミリ機関砲弾の雨だった。
弾速は超音速をゆうゆうと超えている。
おそらくは
「――チィッ!」
エルフリーデは舌打ち一つ、高エネルギー粒子の盾で悪化した視界を補うように勘で動いた。
強力な非質量装甲――エネルギーバリアである光波シールドジェネレータは、その出力限界までの間、バレットナイトに重戦車の正面装甲のような防御力を提供するが、被弾時には激しい発光現象をともなう。
着弾した運動エネルギー弾や化学エネルギー弾を、より強力な指向性高エネルギー粒子と相殺することで打ち消しているから、解放されたエネルギーによって起きる爆発の影響は避けられないのだ。
つまりどういうことかと言うと、光学センサーや音響センサーにとっては悪影響が出る。
そして光波シールドジェネレータによる防御は、粒子防御帯を貫通するテロス合金製のブレードには無力だった。
二〇ミリ電磁機関砲は
本命は急接近しての斬撃。
――右斜め上、振り降ろしだ。
互いにジェットエンジンを搭載して、時速五〇〇キロメートル超の速度で機動するバレットナイト同士の戦いは熾烈だ。
光波シールドジェネレータが生きている限り戦車並みの防御力を維持し、航空機並みの速さで低空を飛び回る――そんな速度域の殺し合いは、一瞬で射撃戦の間合いが白兵戦のそれに変わる。
一秒間に一三〇メートル以上の距離を詰めることができる。
コンマ数秒でも間合いを読み間違えれば、殺されるのはエルフリーデの側だった。
――今だ。
真っ向勝負の突撃であった。紫色の竜人が、その右手に据え付けられた三本の爪を振るう――相対速度の上では音速を超えている白兵戦という馬鹿げた戦闘。
〈アシュラベール〉が太刀を振り上げた。
打ち下ろされてくる刃の軌跡に合わせて、両手で握った太刀を逆袈裟に切り上げる。
一閃。
絶大な運動エネルギーが衝撃に変換され、エーテル粒子の飛沫が飛び散り、耳障りな金属音が鳴り響いた。
火花が散る。
斬撃と斬撃のぶつかり合う剣戟は一瞬だった。
互いの位置が入れ替わる――前方から突撃してきた異形の竜人が、〈アシュラベール〉と交錯して飛び去る。
深紅の悪鬼は見事な切り替えでこれに応じた。電気熱ジェット推進機構を根元から可動させ、ぐねぐねとうごめく偏向ノズルで推進方向を切り替える。
最小の旋回半径でのUターン――生身の人間なら失神しているようなGと共に、〈アシュラベール〉が敵機の後ろに取り付いた。
見れば再び変形/変身を遂げた敵機は、今や二本足のオオトカゲの姿になっていた。恐るべき高速飛行――脚部のジェットエンジンと尻尾のようなロケットエンジンが合わさって、〈アシュラベール〉と同等以上の速度を実現している。
――だけど加速性能はわかった。あなたは遅すぎる。
敵機は〈シュツルムドラッヘ〉ほどではないとはいえ、通常のバレットナイトに比べて大型の機体だ。ロケットの尾を含めれば全長一〇メートルにも届くだろう。
尾の部分抜きでも〈アシュラベール〉よりも大きいはずだ。そして高負荷の加減速を交えた機動に耐えられる機体強度を思えば、その総重量はかなりのものになる。
どれほど総推力に優れていようと、最高速度に達するまでの時間はどうにもならない。
長距離走で追いつけないとしても、短距離走ならば追いついて殺せる――それがこの短い間の戦闘で得た、エルフリーデの実感する彼我の戦力差であった。
悪鬼が地獄から響くような轟音を吐き出し、弾丸のように飛ぶ。
双発のジェットエンジンが最高速をたたき出し、時速八〇〇キロメートル超の亜音速で敵機を捉える。
〈アシュラベール〉が手にした大太刀は全長三五〇センチメートル。その斬撃が届く白兵戦の間合いまで、
彼我の距離一二〇メートル、八〇メートル、五〇メートル、二五メートル、一〇メートル――流れる矢のように過ぎ去る時間の中でエルフリーデは見た。
――ぐるん、と魔竜が反転する。
人工筋肉のしなりと両足のジェットエンジンの噴射を連動させ、瞬時に機首を一八〇度反転させる――あまりにも美しい
その巨大な竜の
大型爬虫類の口腔を思わせるそれは、エーテル粒子の光が渦巻く砲口だった。
理解する。
これは罠だ。敵機は加速性能の差を餌にして、この至近距離になるまで温存していた兵装を使うつもりだった。
〈アシュラベール〉のジェット推進機構の噴射角度を変更――両肩の光波シールドジェネレータを使いたくなる本能を抑えて、最高速度で敵の射角から逃れる道を選ぶ。
刹那、魔竜がその牙を剥いた。
『さあ、死んで――〈剣の悪魔〉!』
光が弾けた。
恐ろしいエネルギーの奔流が、〈アシュラベール〉の右側面を掠めた。右肩の光波シールドジェネレータが高熱で溶解し、粒子防御帯の発生器が高エネルギー粒子で穴だらけになった。
熱線砲だった。
ギリギリで粒子ビームの殺傷半径から逃れたエルフリーデ――その背後一〇〇メートルで爆発が起きた。
爆音と衝撃波が襲ってくる。おぞましいほどの熱量を秘めた熱線を浴びせられ、瞬時に大河の水が沸騰、凄まじい速度で気化して膨張、水蒸気爆発が起きたのだ。
ガクガクと揺れて機体の挙動が乱れる。巻き上げられた大量の真水が、熱水の飛沫となって空間を埋め尽くす。
叩きつけられる水蒸気の熱風で、視界が遮られていた。
「――わかるよ、あなたの考え」
それでもエルフリーデには見えていた。お互いに殺し合い、相手の裏を掻こうとし続けるこの戦闘行為こそ、最高にして最優のコミュニケーションだった。
相手の気持ちを骨の髄から理解する。限りない共感を武器として、少女騎士は攻撃のタイミングを把握した。
コンマ三秒後に敵機の追撃、超硬度重斬爪による刺突が来る。未来予測じみた理解の果てに、〈アシュラベール〉の腕部がなめらかに動き、超硬度重斬刀が閃いた。
斬撃、切断、破砕――手応えはあった。
『
動揺したような見知らぬ少女の声――魔竜の片腕が落ちる。肘から下を切り落とされたその右腕が、軽々と宙を舞っていた。
剣呑な殺気が薄れていくのを感じた。すれ違い様に片腕を叩き切った〈アシュラベール〉と、思わぬ反撃で武装肢を欠損した敵機――遠ざかるジェットエンジンの駆動音を聞いて、エルフリーデ・イルーシャはどうすべきか迷った。
追撃してもいいが、戦闘を継続するうま味がなかった。すでにクロガネたちは戦闘空域から離脱している。深追いしている間に新手が来ては本末転倒だった。
機体を反転して敵機が逃げる方角を確認した。
バベシュ大河の東岸、ベガニシュ帝国本土の方に向けて全速力で逃げていく敵影――こうなると領空侵犯になりかねないので、〈アシュラベール〉の側が追撃するのは不可能だった。
もう状況証拠が真っ黒すぎて笑うしかなかった。
明らかに〈アシュラベール〉を意識した第三世代バレットナイト、ベガニシュ帝国しか実用化していない熱線砲の使用。ベガニシュ帝国内部の誰かが、〈アシュラベール〉とエルフリーデ・イルーシャを狙い撃ちしてきたのだ。
ふと、忌々しげな呟きの電波を拾った。
『おかしいわ、あなた』
襲撃者は戸惑い混じりに苛立っていた。
深紅の悪鬼は、電気熱ジェット推進機構で水面すれすれを飛ぶ。至近距離で熱線砲を浴びせられ、ジェットエンジンが損壊しなかったのは幸運だったと言わざるを得ない。
もう少しで死ぬところだったのはこっちの方である。エルフリーデ・イルーシャは抗議の意を込めて、心からの本音を呟いた。
「いきなり殺そうとしてくる子よりはまともだと思うけど……」
『…………ちっ』
舌打ちされた。うちの妹にはこういう行儀が悪いことさせたくないな、と思った。
どこか締まらない空気の中、〈アシュラベール〉は推進方向を変える。右側の光波シールドジェネレータを失って、重量比の変わった機体を操るのは骨が折れた。
季節は秋。
とある事件の始まりは、その激しさに反して――締まらない決着を迎えた。
・〈ヤークトドラッヘ〉
紫紺の竜人/魔竜。
強襲形態時=全高4.4メートル、全長10メートル
最高速度:時速920キロメートル、巡航速度:時速700キロメートル
高火力・重装甲・高機動の三点を満たしたベガニシュ帝国初の可変バレットナイト。
射撃戦を得意とする強襲形態と、長大なブレードを両手で振るう格闘形態――竜型と人型を行き来する。
ベガニシュ帝国先進技術研究所が開発した最新鋭の第3世代試作バレットナイトであり、〈アシュラベール〉打倒がその存在意義である。
その存在意義は〈シュツルムドラッヘ〉のコンセプトと技術を受け継ぎ、より洗練された第3世代試作バレットナイト。
言ってみればエルフリーデ・ショックに対する回答の一つである。
脚部に集中した推進装置、神話の竜を思わせるシルエットなど、その機体構造の多くに〈シュツルムドラッヘ〉の後継機としての側面が見て取れる。
〈アシュラベール〉の影響を受けて電気熱ジェット推進機構の搭載に踏み切っており、超低空での機動力はこれに準じて音速に迫る。
その一方で腕部は〈シュツルムドラッヘ〉のそれに近く、ほぼ完全に汎用マニピュレータとしての機能を捨てており、射撃武器と近接武器が一体化した複合兵装の武器腕となっている。
総じて〈シュツルムドラッヘ〉と〈アシュラベール〉の間の子のような機体。
〈シュツルムドラッヘ〉では主翼に2門搭載されていた熱線砲は、機体中央の構造体――つまり頭部の1門に変わっている。
竜の頭蓋骨を思わせる巨大な頭部が砲塔であり、熱線砲の運用時には前傾姿勢の獣脚類=大型肉食恐竜(ティラノサウルス)じみたシルエットとなる。
この強襲形態で尾部に当たるクラスターロケット機構=スラスターテールと熱線砲が同一軸に存在するようになり、高出力ビーム砲の連続照射の反動を制御できる。
熱線砲の展開時は顎の装甲が開き、エーテル粒子砲が露出する。
この短距離熱線砲〈リヒト・ゾイフツェン〉は、通常型の熱線砲に比べて連射性能に優れるがその射程は大きく低下している。
本機は対地攻撃機としてその機動力で敵陣に接近、熱線砲で殲滅する強襲型バレットナイトとして設計された。
極端な前傾姿勢による前方投影面積の最小化は、空気抵抗の低減の面でも好都合であるため、〈ヤークトドラッヘ〉の基本的形態はこの竜としての姿である。
また〈ヤークトドラッヘ〉は〈シュツルムドラッヘ〉が白兵戦で敗れたことから、高度な格闘戦能力を持った巨人――竜人と呼ぶべき格闘形態を備えている。
この形態では熱線砲の制御が困難になる反面、普段は折り畳まれている腕部が展開され、自由度の高い武装肢として斬撃・刺突・機銃掃射が可能となる。
〈シュツルムドラッヘ〉に比べて機体重量、サイズが抑えられていることもあって、格闘形態での運動性は非常に高い。
とはいえ本機の欠点は明確である。
揚力を稼ぐための翼を持たず、低速域での安定性に欠けた機体は、飛行というよりも突進に近い推力任せの機動を取るしかない。
また〈シュツルムドラッヘ〉の反省から、格闘戦を重視した簡易変形機構を盛り込んだ結果、大量の推進装置と相まってメンテナンス性が悪化している。
長年、この種の技術の研究をしてきたミトラス・グループのそれに比べて、ジェットエンジンの問題点も多い。
肝心の電気熱ジェットエンジンの製造を、自動設計AIの
本機は機体制御および整備性の点で大きな課題を残しており、カタログスペックは高性能だが第3世代バレットナイトとしてはやはり試作機の域を出ない。
人型を逸した独特の可変フレーム、非人間的機構である内蔵火器、高推力の推進装置の制御など、融合する搭乗者のハードルを跳ね上げる機体特性ばかりなのだ。
このため電脳棺への高度適性とパイロットとしての技量、非人間的構造との親和性が最初から求められる。
ベガニシュ帝国の特務機関「
武装
・頭部内蔵主砲:短距離熱線砲〈リヒト・ゾイフツェン〉
・頭部同軸機銃:6.8ミリ電磁機銃×2
・頭部固定装備:光波シールドジェネレータ×1
・背びれ:放熱フィン…熱線砲の放熱器を搭載。
・腕部近接兵装:3連装超硬度重斬爪(大型)×2
・腕部射撃兵装:20ミリ電磁機関砲×2
・尾部:4連装光波ロケット・スラスターテール×1
・太腿部:電気熱ジェット・スラスターレッグ×2
可変ティラノサウルスロボこと正式名称〈ヤークトドラッヘ〉は〈シュツルムドラッヘ〉の後継機に当たります。