機甲猟兵エルフリーデの屈折した恋愛事情~最強ロボパイロットの英雄譚~   作:灰鉄蝸

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魔竜再来

 

 

 

 

 

 

 

「嫌な時間ですね、これ」

 

 

 ぽつりと呟きながら、リザ・バシュレーは自身とデータリンクで繋がっている無数の目とやりとりしていた。電動プロペラ推進の無人飛行機が、眼下の地上にカメラアイを向けては、その情報を元に動態探知プログラムが移動目標の検出に努めていた。

 

 身長四メートルの巨人〈アイゼンリッター〉と一体化している少女は、今では増設された電子戦システムによって高度な統制能力を獲得している。

 ここはヴガレムル伯領、サンクザーレ地方の一角にある森林地帯――現代の高層建築にも匹敵しようかという巨大な樹木が林立する森は、四メートルの巨人が隠れ潜むには絶好の場所だった。

 ヴガレムル伯爵家の軍が有するティルトローター輸送機で、朝一番にサンクザーレまで足を伸ばしたリザは、巨人の機内でため息一つ。

 

 

「どこに逃げたやら」

 

 

 空を見上げる。

 遠くから視界に入ってしまうのは、馬鹿でかい黒い塔――サンクザーレ地方に半年前に出現したという遺跡、サンクザーレの黒塔と呼ばれる超巨大構造体(メガストラクチャー)だった。

 この黒塔、とにかく大きい。およそ地面に七〇度の角度で傾斜している斜塔なのだが、その長さたるや二〇〇〇メートルにも達するという。

 

 当然、こんなものが目立たないはずもない。元々、開発が進んでいないサンクザーレの森の中ににょきっと生えているだけなので、人々の暮らしへの影響は最低限に抑えられているのだが――現在でも正体不明の黒塔は、ひとまず周辺への立ち入り禁止ということになっている。

 

 遠巻きにこの塔を見物しようとする観光客や、彼らを相手にした屋台や土産物などの商売が始まっているのは、バナヴィア人の商魂たくましさだと思えばいいのだろうか。

 ともあれ、リザが出撃した今朝の時点でわかっていることは四つ。

 

 第一にバドムア子爵ゲオルギイ・カザールの背後にいるのは、ベガニシュ帝国陸軍のお偉いさんらしいこと。

 第二に彼らは今回、従者もつけずに自家用車で単身、ヴガレムル伯領に乗り込んで来たこと。

 第三に諸々の証拠から判断して、ヴガレムル伯領の側で彼らを拘留して尋問する根拠が存在すること。

 第四にゲオルギイとシャルロッテは不死者と呼ばれる存在であり、多少の攻撃で重傷を負っても死に至らないこと。

 

 いくつかの納得できる背景と、にわかには信じがたい与太話の混じったブリーフィングだったのは言うまでもない。

 とにかく大事なのは一つだけ――ゲオルギイとシャルロッテの乗っている乗用車への攻撃は多少、容赦せずにやっても問題ないということだ。

 

 さて、彼らの捕縛が決まった時点で流れはスムーズだった。ヴガレムル伯領の警察組織が動いて、彼らの泊まっていたホテルに踏み込んだときには、ゲオルギイとシャルロッテの姿は消え失せていた。

 

 表の駐車場に泊まっていた自動車は乗り捨てられており、すでに彼らが何者かの手引き――ヴガレムル伯領に入り込んだ協力者だろう――で脱出していたことをうかがわせる。

 ただちに捜索用のヘリコプターが駆り出された。

 そしてこのような事態に備えて、ハイペリオンはリザに内々の依頼をしていた。

 

 

――すでに敵がバレットナイトを領内に運び入れていた場合に備えて、フル装備の〈アイゼンリッター〉改修型を投入。

 

 

――予想される敵の進路上に大量の偵察ドローンと共に運び込んでおく。

 

 

 高速輸送機の機動力なしには不可能な作戦だった。

 少なくとも警察組織に死者が出る前に、迅速にゲオルギイとシャルロッテを確保すること――それが荒っぽいやり方を含めて許可された、現在のリザの仕事だった。

 

 いずれベガニシュ帝国側の密偵や協力者は、これまでよりずっと厳しい処置で壊滅させていく必要が生じるだろう。今までは同じ帝国側の存在として見逃していたとしても、今回のような事件のあとではそうも言っていられない。

 とにかく厄介なのは、バレットナイトという機動兵器の大きさだった。通常に比べればはるかに大型機である、件のジェット推進する可変機とて、間接機構を折り畳めば大型トレーラーで輸送可能なのだ。

 

 

 

――まるでドデカい兵器の墓場ですね。

 

 

 大型偵察ドローンが送ってくる映像を見た。それは上空五〇〇メートルほどの高度から見下ろす、半年前のサンクザーレ会戦の跡地だった。聞いた話によれば、例の黒塔を求めた公爵家の軍勢が、一方的にヴガレムル伯領に侵略してきた事件なのだという。

 

 先鋒だけでも数十台の戦闘車両、一二〇機超のバレットナイト、陸上駆逐艦と呼ばれる巨大兵器をともなった凄まじい陣容だったという。

 その大半は今ではスクラップと化して、サンクザーレの荒野に骸をさらしていた。その半数ほどはエルフリーデとその愛機〈アシュラベール〉による単騎駆けで撃破されたというから、まさに神話的な戦争の舞台だったのだろう。

 

 転がっている残骸のうち、使えそうなものや危険なものは企業連合体ミトラス・グループの子会社が回収していったらしいのだが、まだまだサンクザーレの戦場跡は片付いているとは言いがたい。

 

 

――さて、ゲオルギイがどこを通っているのかが問題ですが。

 

 

 偵察ドローンから送られてくる情報は、怖いぐらいに鮮明な映像だった。

 これから戦場になるとは思えないほどに、サンクザーレの風景はのどかだった。ここから二〇キロメートルも先に進めば、そこはもうヴガレムル伯領の手が及ばない土地である。

 

 バナヴィア都市連合という形で、こういった無意味な国境を無効化しようとクロガネが動き出しているとしても――現実がそれに追い付くには、最短でも半年以上はかかるだろう。

 これまでハイペリオンからもたらされた情報を総合すると、この戦場跡を隠れ蓑にして敵はなにがしかの機材を持ち込んだ可能性が高い。

 

 

――熱源なし、音源なし、動態探知は未検出。

 

 

 真っ昼間の戦場跡地を偵察ドローンで見ていく。地面に落っことしたセンサーポッドを使って、周囲の音を集めていくのも忘れない。

 通常、バレットナイトも自動車も電動が普通である。つまり静音性がすこぶる高く、熱源になるようなものもないので発見しづらいことこの上ないのだ。

 

 だがしかし、第三世代バレットナイトはこの限りではない――それがクロガネ・シヴ・シノムラやエルフリーデ・イルーシャなど、第三世代バレットナイトの運用に携わってきた人々の助言だった。

 

 第三世代バレットナイトはジェットエンジンやロケットエンジンを積んでいるのが普通で、高温に熱した噴流を吹き出して推力を得ている。

 この推進システムゆえに、第三世代バレットナイトはその戦闘機動(マニューバ)時に赤外線と騒音をまき散らす兵器なのだ。

 

 

――プラズマ化した大気を吐き出すエンジンなんて、うるさくて熱くて最悪ってわけですね。

 

 

 であればこのようにセンサーユニットを空中からばらまいて、しらみつぶしにエリア全体をモニタリングするのも無駄ではなかった。

 現在、リザが乗っている〈アイゼンリッター〉改修型はこういった通信機能や電子戦能力を強化されており、ミトラス・グループの手で独自の改良が施されたモデルである。

 

 電脳棺の中で偵察ドローンが中継する、センサーポッドからの情報を解析していると――大当たりが出た。

 周期的な振動の波形――電動車両に搭載されている、周囲に注意を促すための走行音の発生装置のそれ。発信源は道路こそ整備されているが、見通しの悪い森の中を走っているような道だった。

 現在のリザから見ても近い。

 

 

「――当たりだ(ビンゴッ)!」

 

 

 〈アイゼンリッター〉が地面を蹴る。軽快に走り出した巨人の右手には斥候(スカウト)用の四〇ミリ電磁狙撃砲――長銃身型の狙撃用レールガン――を一挺、背中には通信機能を強化するための通信ユニット。

 近接用のサーベル刀と予備弾倉を腰部ハードポイントにぶら下げて、バレットナイトが巨木の森を駆け抜けていく。

 

 瞬く間に時速一〇〇キロメートルを超える速度に到達した騎士人形――そのカメラアイが、たしかに道路上を走る車体を見つけた。

 どこにでもあるような民間用の自動車だった。屋根とドアがしっかりついていて、窓ガラス越しの車内もばっちり目視することができた。

 

 

――お面被った変態が運転席にいる。決まりですね。

 

 

 それでも即座に発砲しなかったのは、ここにいるのが工作員のリザではないからだ。彼女はエルフリーデと嫌になるほど読み込んだ職務規程を思い出した。

 念のため拡声器のスピーカーを起動させ、強烈な音として警告を送った。

 

 

「そこの車両、ただちに停止してください。一〇秒待ちます、車を停止させてください――」

 

 

 そしてもちろん、ゲオルギイの乗った自動車は止まらなかった。曲がりくねった森の中の道だというのに、それでも彼の自動車は時速七〇キロメートル近い速度を出して路面を駆けている。

 まさか逃げ切れるとでも思っているのだろうか。

 

 木々の隙間を抜けて、森の中に整備された道路の上に躍り出る。前方を走行する自動車の尻を追いかける。

 それからきっかり一〇秒待ったが、停止するそぶりすら見せなかった。リザは長距離通信で目標を発見した位置を送信すると、ためらいなく宣告した。

 

 

「――警告はしましたからね?」

 

 

 無手の左手を背中に伸ばして、兵装ラックに搭載されていた投げナイフ――全長一メートルほどの分厚い刃の塊をつかみ取る。

 巨人の手指がつかみ取ったそれは、あるいは東洋で忍者が用いる短剣クナイにも似た、独特の膨らんだ刃を持つ武装である。

 

 レーザー照準装置が、目標に照射される。リザと一体化している〈アイゼンリッター〉は、流れるように見事なスローイングフォームで短剣を投げつけた。

 身長四メートルの巨人が短剣を投擲(とうてき)――その初速を感知した加速度センサーが作動、さらに強力な遠心力によって機械的ピンが抜けて、ロケットモーターの点火回路と信管が接続された。

 

 それまで短剣の柄だった部位から安定翼が展開され、同時に尾部で固体ロケットモーターが点火。

 その推力によってほんの二秒ほどで超音速に達した成形炸薬弾は、バレットナイト本体からのレーザー誘導に従って目標に突入した。

 

 

――噴進手裏剣(シュリケーン)の術ってわけですね。

 

 

 炸裂する焔の華。

 ベガニシュ帝国で噴進手裏剣(シュリケーン)と呼ばれる誘導ロケット弾――その直撃を喰らって、民間用の自動車が無事でいられるはずもなかった。

 

 戦車の装甲をぶち抜くことを目的として、たっぷりと詰められた成形炸薬弾の弾頭である。

 ゲオルギイとシャルロッテが不老不死の超人であろうと、ひとまず常人なら即死するだけのダメージを負ったことだろう。

 バッテリーに引火したのか、もくもくと黒い煙を上げて停止した自動車。

 乗員が這いずり出てくる様子はない。

 

 

――嫌な予感がする。

 

 

 思い返してみる。

 自分がカメラアイで捕らえたのが、妙な仮面を被った運転手だけだったことを認識する。てっきりシャルロッテは座席の影になって見えなかったのだと思っていたが、これはもしかすると。

 周囲に散布したセンサーポッドが、空気を引き裂くような竜の鳴き声を送ってくる。

 

 化け物じみた出力の電気熱ジェット推進機構が、吸い込んだ大気をプラズマ化させて吐き出すジェット噴射の音。

 近づいてくる。自機の集音センサーもまた、接近してくるジェットの轟音を拾ってしまった――ほとんど反射的に森の木立の間に飛び込む。

 刹那、世界が白く染まった。

 

 

――熱線砲ってやつですか!?

 

 

 着弾地点が白熱したプラズマに昇華され、熱波と爆風をまき散らして爆発が起きた。

 あっという間に〈アイゼンリッター〉が立っていた道路が、ドロドロに溶けたアスファルトが煮立つ地獄に変わっていた。

 

 強烈な熱風を浴びた草木が、小さく揺れながら燃えていく――火の粉が舞い落ちる地獄の中で、リザ・バシュレーは冷静に四〇ミリ電磁狙撃砲を構えた。

 これは完璧な奇襲などではない。これまで辺り一帯にばらまいたセンサーポッドのおかげで、敵機の現在位置の特定は容易だった。センサー間の音響の差異から、ジェット推進する高速飛行物体の現在位置を予測する。

 

 〈アイゼンリッター〉のカメラアイが敵影を捕らえた。彼我の距離は一四〇〇メートル、対地高度三〇メートル付近を飛翔する紫紺の竜――その姿を照準器に収めて、引き金を引いた。

 

 四〇ミリ電磁狙撃砲の弾頭重量は一五〇〇グラム、バレットナイトが一般的に用いる二〇ミリ電磁機関砲の弾頭重量の一〇倍以上――純粋な運動エネルギー弾として見た場合、この電磁投射砲を防げる装甲のバレットナイトは存在しない。

 大気がプラズマの尾を引いて砲弾が投射される。肉眼で目視すること叶わぬ絶対的運動エネルギー弾は、ほとんど一瞬で目標に着弾するはずだった。

 

 

――強烈な閃光が弾けた。

 

 

 それがエーテルパルスの輝きだと気づいて、リザ・バシュレーはこの現実を罵倒したくなった。

 なんてこった、ありえない、クソッタレ。飛んできた砲弾を、あの紫紺の竜は超硬度重斬刀――ああいや、この場合は重斬爪だろうか――で切り払ったのだ。

 意味不明すぎる。

 こっちは真面目に兵器を使って戦闘してるのに、向こうはヒーロー映画の世界で戦ってますという感じの理不尽だった。

 

 

最悪(シット)! まるで映画ですね――」

 

 

 うめいた直後、反転してきた敵機が急接近――数秒で距離を詰めてきた馬鹿でかい竜が、その脚部で大地を踏みしめる。火花を散らしてアスファルトを削りながら、禍々しい巨体が〈アイゼンリッター〉の進路方向に回り込んでくる。

 以前、エルフリーデが交戦したときとは似て非なる姿だった。

 

 神話の竜を思わせる力強くも流麗なシルエットが一変――その背中側から生えているのは、竜の首にしか見えない一対二本の構造体。

 かつては肉食獣のようだった紫紺の竜は、今や三つ首を持った異形の多頭竜であった。

 

 それが張りぼてでないことは、うごめく背中の二本の首から見ても明白だった――人工筋肉で駆動する竜の首が増えて、如何なる戦術的優位性があるのか、リザ・バシュレーにはまったく理解不能だったけれど。

 ただ一つわかっているのは、この魔竜の搭乗者が誰なのかということだ。

 

 

『動きでわかったわ。あなた、たぶんリザさんでしょう?』

 

 

 昨日、人殺しの告白をして涙していた少女とは思えない声だった。どこか圧倒的な暴力に酔っ払っているような響き。〈アイゼンリッター〉より一回りは大きい背丈の魔竜が、三つの首をうごめかせて歩み寄ってくる。

 右手に四〇ミリ電磁狙撃砲を、左手に噴進手裏剣を握りしめて、リザは軽口を叩いた。

 

 

「ええまあ……ここはお祭りを一緒に見て回ったよしみで仲良くできませんかね?」

 

 

 彼我の距離が二〇メートルを切った。

 リザは焦った。第三世代バレットナイトから逃げることは難しい――陸上を走行する第二世代機と、ジェットエンジンで飛行する第三世代機の間の格差は埋めがたいものがある。

 

 

『無理ね。たかが人間のまま、のうのうと息をして――〈ヤークトドラッヘ〉に勝てるはずがない』

 

 

 その言葉がかんに障った。

 望まずとも機械仕掛けの怪物に改造され、自我すらおかしくなっていった二人の弟――その末路を思い出したのだ。

 

 シャルロッテ・シャインにどんな理由があって、人型を外れた怪物的機構と融合しているのかは知らないが。

 とにかく腹が立った。

 絶対に言うべきではないとわかっているのに、言わずにはいられない毒を吐き捨てた。

 

 

 

 

「人間やめるのが気持ちよくなる? おしまいでしょ(イッツオーバー)

 

 

 

 

 光が爆ぜる。

 ならば死ね、と言いたげな〈ヤークトドラッヘ〉――その多頭蛇の首が吐き出すプラズマジェットを、やけくそみたいなランダム回避運動で躱して。

 衝撃が走った。背後でプラズマの槍を浴びた樹木が、一瞬で灰の塊になりながら倒れる音。強烈な熱塊が掠っただけで吹き飛んだ肩部装甲にぞっとする。

 反撃に噴進手裏剣を投げつけながら、リザ・バシュレーは叫んだ。

 

 

 

 

「こっちはお姉さんの名誉妹(シスター)なんですよ、この怪物女(フリークス)!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
















・近接プラズマ投射システム〈フォイアラート・シュランゲ〉/増加ブースターユニット〈ラケーテン・ロック〉
〈フォイアラート・シュランゲ〉は〈ヤークトドラッヘ〉の背部ハードポイントに増設された、近距離戦対応の武装型サブアーム。
副腕とは名付けられているものの、その形状・機能はむしろ竜の頭を模した一対二本の自動無人砲塔(RWS)である。
厳密には追加装備ではなく、設計段階では存在していたものを復活させた形となる試作兵装。
〈ヤークトドラッヘ〉の完成度を上げる段階でオミットされた装備である。

この多頭竜を思わせるユニットは、高出力の人工筋肉によって駆動する柔軟な「首」の部分と、プラズマ放射器を内蔵した「竜頭」から構成されている。
これは人工筋肉による生物的構造を、駐退機として運用することで重火器の反動制御に転用したもの。
人工筋肉による自動砲塔は、従来のターレット型と比べて軽量化と強度の両立がしやすいという利点がある。

通常時は竜の頭を思わせる流線型の外殻に収まっており、使用時にカバーが展開して砲口が露出――「首」が敵機に追従、プラズマ放射を行う。
このプラズマ放射器は電気熱ジェット推進機構に近しい兵装で、大量の電力を消費して取り込んだ大気を加熱、金属を融解させるほどの高温プラズマジェットを噴射するもの。
その熱量は凄まじく、現在、ベガニシュ帝国で使用されている重戦車の正面装甲すら貫通可能である。

その原理上、空気さえあれば燃料を必要とせず使用できるが、射程距離が極めて短く、熱線砲以上に排熱問題が深刻なため扱いは難しい。
強烈な熱放射によって赤外線センサーでの探知が容易になるなど、運用上の問題が山積している。
破壊規模と射程で熱線砲に劣り、射撃兵装としての完成度でレールガンに劣り、近接兵装としての信頼性で超硬度重斬刀に劣る――それが現在のプラズマ放射兵器の嘘偽らざる実情である。
だが、近接戦における攻撃力の増大を望んだシャルロッテによって、〈ヤークトドラッヘ〉への搭載が決定された。

この〈フォイアラート・シュランゲ〉装備によって増大した重量を補うため、〈ヤークトドラッヘ〉はさらに脚部にロケットエンジンポッドを追加している。
ロケットのスカート――〈ラケーテン・ロック〉はエーテル粒子を燃料とした光波ロケットエンジンの一種であり、ロケットエンジンを流線型の外殻で包んだもの。
高エネルギー状態のエーテル粒子を噴射することで推力を得、瞬間的な加速性能は原型機よりも向上しており、重量増加による速度低下を補っている。

しかしこれらの異様なまでの重装備化によって、〈ヤークトドラッヘ〉の操縦性はさらに悪化しており、乗り手を選びすぎる機体特性を発揮する。
加速時はいいものの、低速度域での失速のしやすさや機体コントロールの困難さは筆舌しがたい。
言ってみれば〈シュツルムドラッヘ〉と同じ欠陥を持つに至った醜悪な先祖返り――それが〈ヤークトドラッヘ〉重装備型なのである。


※ケルベロス〇クゥハウンドみたいな。
※アジ・ダハーカというかキングギ〇ラになります。






噴進手裏剣(シュリケーン)
通称は手裏剣(シュリケーン)
棒手裏剣型の投擲武器。成形炸薬の弾頭と簡易誘導を担うシーカー、固体ロケットモーターの推進装置から構成されたレーザー誘導ロケットの一種。
全長0.8~1.2メートルほど。重量は10~15キログラムほど。
有効射程距離は1500メートル~2000メートル。
見た目はスローイング・ナイフやクナイのそれに似ている。
巨大人型兵器バレットナイトの腕を用いて投擲され、一定の加速度に応じて信管の安全装置が解除、安定翼が展開される。
人工筋肉による投擲を一次加速、固体ロケットモーターの点火で二次加速を行い、約一秒で超音速に到達する。
バレットナイト本体のレーザー照準装置、火器管制システムと連動することで高い命中精度を出すことが可能。
専用発射機を必要とせずに誘導兵器を運用でき、省スペースで軽量というメリットを持つ。

噴進手裏剣(シュリケーン)は大型の成形炸薬弾を投擲するため、純粋な運動エネルギー弾である小口径レールガンに比べて重装甲車両――重戦車に対して有効である。
その反面、投擲動作にともなう空間的・時間的余裕(スローイングナイフを投げるための動き)が必要であること、短距離ではロケットモーターによる加速が十分ではないことから迎撃される恐れがあり、運用に癖がある。





※コトバノリアキさんから支援絵いただきましたので、是非ご覧になってください(宣伝)








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