機甲猟兵エルフリーデの屈折した恋愛事情~最強ロボパイロットの英雄譚~   作:灰鉄蝸

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ヴィタフォード襲撃

 

 

 

 炎の中でうごめくものがあった。

 燃え上がる貨物船のコンテナ区画から、高温の火をものともせずに這い出る影。それは四つの足で歩行する大砲のようにも、流体力学的に優れた頭足類の親戚のようにも見えた。

 

 それは巨大な殺戮機構、砲システムでありロケット推進システムである機械仕掛けの肉体。

 この世界で生まれ落ちた禁忌の体現、機甲駆体(バレットナイト)と呼ばれる存在でありながら、致命的なまでに人型を逸脱した何か。 

 それは火焔の中で目を覚まして、ただ死をもたらすために産声をあげた。

 

 

 

――特殊作戦用第三世代バレットナイト〈アビス・ウォーロック〉。

 

 

 

 深淵の魔法使いとは、いささか詩的にすぎる名前だが、そのような感傷に浸る感覚をそれは持ち合わせていなかった。

 第三国を経由した偽装貨物船に乗せられていたその兵器は、周囲を舞う火の粉を見て、どうやらすでに自分が正常な状態に置かれていないことを悟った。

 

 すでに事態はイレギュラーな事象が起きている。

 本来であれば港湾部にもっと接近してから出撃するはずだったのに――彼の目の前に広がるのは、火災で今まさに燃え尽きようとしている景色だ。

 

 〈アビス・ウォーロック〉はまず、自らの搭載された船が、すでに何らかの形で攻撃を受けている可能性を検討して。

 すぐに違うと気づいた。

 これはおそらく、内部からの破壊工作の結果だ。

 バラバラになって散らばった死体を見て取って、〈アビス・ウォーロック〉はため息をついた。

 

 

――作戦の間際に内紛とは、我が国の工作員の質も落ちたものだな。

 

 

 だが、起きてしまったものは仕方がない。

 全長一五メートルにも達する長大な胴体を、通常のバレットナイトの胴体ほどもある四本の歩行脚で支えるもの――あるいは胴体の細長い昆虫にも似たシルエット。

 それは自らのセンサーシステムが損なわれていないことをチェックし終えると、安堵しながら立ち上がった。

 

 異形であった。

 あるいは触手で歩行するように進化したダイオウイカがいたら、こんな姿をしているかもしれない。

 それは装甲されていたが、決してその重量は重くなかった。特殊な樹脂製の外殻は、アルケー樹脂と呼ばれる先史文明の異物に支えられている。

 

 樹脂製の装甲、通電で伸縮する人工筋肉、合金製のフレーム――紛れもなく機甲駆体である存在は、その自我を安定して保っていた。

 火災によって生じた高温をものともせず、それは四本の足を駆動させた。

 跳躍。

 

 一四メートルの胴体に見合わぬ、軽快とすらいえる挙動で飛び上がったイカの化け物――次の瞬間、その胴体の末端から火が吐き出された。

 ダイオウイカで例えるならば、ちょうど口吻(こうふん)が存在する位置――〈アビス・ウォーロック〉に内蔵されたエーテルパルス・ロケット推進機構が作動したのだ。

 

 電脳棺(サイバーコフィン)が生み出す高エネルギー粒子が推進剤となって、膨大な推進力を生み出した。

 それは正しく爆発的な加速だった。

 空力制御フィンが展開され、まるでイカが水中を泳ぐように、〈アビス・ウォーロック〉は飛翔した。

 

 そのロケットエンジンと砲身を兼ねた構造――長大な胴体そのものである複合システムが、この矛盾した飛行機能を支えていた。

 高エネルギー粒子を高圧噴射するエンジン部とその物理強度を、大口径火砲の発射システムに転用する。

 

 まともな航空技術者の頭からは出てこない発想――ガルテグ中央情報局という組織が、天文学的回数に渡って自動設計システムを酷使して、正気とは思えない兵器開発を行っていることの証左。

 〈アビス・ウォーロック〉は正しく、ガルテグ連邦の暗部から生まれ落ちた存在だった。

 

 

――飛行する。帝国に媚びを売って栄えたものたちに、正義の審判を下すために。

 

 

 それは一つの悪夢だった。〈アビス・ウォーロック〉に内蔵されている火砲は、口径二八〇ミリ――破城砲と呼ばれる拠点破壊に特化したものだった。

 総重量七〇トン級の重戦車の主砲ですら、口径一四〇ミリなのである。これが如何に悪夢めいた数字なのかは、言うまでもあるまい。

 

 時速三八〇キロメートル超の速度で空を飛行し、途方もない大砲を自在に展開できる砲システム。それはすなわち、砲弾の着弾地点を中心とした半径一五〇メートル圏内に死を振りまく悪意を表していた。

 〈アビス・ウォーロック〉の目標は明確だった。

 

 彼は無差別な死傷を好むテロリストではない。これは正規の軍事作戦ではなく、また本国の承認が得られたものでもなかったが、ガルテグ中央情報局にとっては必ず遂行すべき目標だ。

 巨大な頭足類じみた造形――実際にダイオウイカを参考にして製造された流線型の外殻が、水上一〇メートルほどの低空を舐めるように飛翔する。

 迷彩として水色に塗装された機影は、まるで子供の落書きのような存在感をそれに与えていた。

 

 

――接近する飛行物体だと?

 

 

 〈アビス・ウォーロック〉の電子戦システムが、自身に照射されたレーダー波を感知した。軍用と思しき高出力のレーダー照射は、敵機によってこの機体がロックオンされたことを示していた。

 次の瞬間、水色の化け物はロケットの噴射角度を調整。

 

 その推進方向を改めた直後、真横で水面が爆ぜた。凄まじい速度で浴びせられる機関砲の嵐が、海水を貫いて水柱を立てているのだ。

 超音速で投射される砲弾の雨。小口径だが飛来する速度が速すぎる。

 

 

――光波シールドジェネレータを展開。

 

 

 胴体側面に内蔵されたエネルギーバリアの発生装置が起動する。粒子防御帯と呼ばれる高エネルギー粒子の障壁が、まるで光で編まれた皮膜のように広がった。

 弾着。

 

 強力な運動エネルギー弾が突き刺さる。そのすべてを、弾体を砕くことで無力化する。機関砲から発せられた砲弾を破砕するほどの高エネルギーが、盾となって〈アビス・ウォーロック〉を守護したのだ。

 

 バチバチと粒子の火花が散る。砕かれた砲弾の破片と、飛散した弾体がまき散らされた。

 ガルテグ連邦では未だに新規製造ができず、ベガニシュ帝国製のそれを鹵獲して使用しているにすぎない装備。

 だが、こうして少数が運用するには十分だ。

 

 

――迎撃か、早いな。

 

 

 互いを目視可能な距離だった。

 〈アビス・ウォーロック〉はそうして視認した。深紅の機影、燃えるような紅蓮に染まった鎧が、都市上空からこちらに急接近してくるのを。

 港湾部に向けて飛翔する異形は、そうして自らの敵を完全に見た。

 

 

――〈アシュラベール〉。ヴガレムル伯爵クロガネ・シヴ・シノムラの懐刀というわけか。

 

 

 であれば情報は正しい。

 彼らが独自の情報網で掴んだ敵の所在は、やはりこのヴィタフォード市にあったのだ。

 目標の所在地と目される場所は限られている。市内に存在する上流階級の利用する老舗ホテル、そして政治的な会談に用いられるヴィタフォード市庁舎。

 

 そうした如何にも、政治家の利用しそうな施設を、重点的に破壊すればよい。

 〈アビス・ウォーロック〉は正しく、そのように肉薄して対象を抹殺するための機甲駆体(バレットナイト)だった。

 

 馬鹿でかい砲身でありロケット推進器である長大な胴体――そこに副砲として内蔵された、二〇ミリ電磁機関砲が火を噴いた。

 ようやくガルテグ連邦が実用化に成功した小口径レールガン。

 

 凄まじい速度で機関砲が放たれる。

 弾幕だ。〈アシュラベール〉の推進方向をさえぎるように、機銃掃射の雨が放たれていた。真っ正面から向き合うようにして、二機の第三世代バレットナイトが飛翔する。

 

 

――回避運動を取れば、敵はこちらとすれ違うしかなくなる。機体を反転させるまでの間に、私は着地して目標を砲撃できる。

 

 

 〈アビス・ウォーロック〉がそのように思考した刹那。

 予想外の事象が起きた。深紅の悪鬼はこちらの砲弾を避けなかった。光波シールドジェネレータの眩い光――こちらの張った弾幕に、回避運動一つ取らずに突っ込んできたのだ。

 光が爆ぜる。

 

 粒子防御帯に接触した機関砲が、砕けては散って、光の飛沫をまき散らしているのだ。

 それは曇天の下のヴィタフォードにあって、冬の澄み切った空気を引き裂くような異音を鳴らしていた。

 まるで雷鳴だ。

 〈アビス・ウォーロック〉は自分の失敗を悟った。

 

 

――弾幕をすべて受け止めたのか!? こちらの散布射撃を無力化するために!

 

 

 ありえない。機体が消耗するだけの行為だ。何のために?

 そう思考したコンマ数秒が命取りだった。相手は推定時速七〇〇キロメートル近い速度、こちらは時速三五〇キロメートル超――相対速度は時速一〇〇〇キロメートルを超える亜音速域だ。

 

 つまりそれは、一秒間に二七〇メートル以上の距離が詰まることを意味していた。

 水面が途切れる。

 港湾施設の一角、コンクリートで舗装された岸辺で――真っ正面から深紅の機影が飛び込んでくる。

 

 水色の〈アビス・ウォーロック〉とは正反対の色、まるで地獄から抜け出してきた悪魔のような形相――狂っている、回避運動を取る様子がない。

 ぶつかる、ぶつかる、ぶつかる。

 

 〇・三秒後、馬鹿でかいイカの化け物に、悪鬼の飛び蹴りが突き刺さった――それは数トンの質量を持った運動エネルギー弾として作用し、〈アビス・ウォーロック〉を文字通り叩き落とした。

 墜落する。

 地面が迫ってくる。それまで得ていたロケット噴射の速度が凶器に早変わりする。

 衝撃。コンクリートの欠片をまき散らして、〈アビス・ウォーロック〉は地面と衝突した。

 

 

 

 

 

 

 エルフリーデ・イルーシャは冷静だった。

 突如としてダイオウイカのような化け物が空を飛び始めたときは仰天したが、かといってびっくりして時間を無駄にするようなことはしなかった。

 

 不審船の出現が報告されたことで、最寄りの港湾施設からは人員の避難が完了していた。

 つまり人気がない。

 迎撃のため急降下したのも、三〇ミリ電磁機関砲を放ったのもとてつもなく冷静な判断の果てだった。

 

 そして敵機が機銃掃射を撃ち返してきたのも、ある程度、事前に予測できるタイミングだった。

 すでに彼女は決断していた。

 

 

――回避はしない。流れ弾はできる限り、この機体で受け止める。

 

 

 〈アシュラベール〉の機動性ならば、十分に回避できる攻撃だった。

 そのすべてを受け止めた。敵は一〇メートル以上ある長大な胴体に、たっぷりと弾体を詰め込んでいるようだった。展開済みの光波シールドジェネレータに、光と騒音をまき散らして機銃掃射が突き刺さる。

 

 問題ない。

 敵の狙いは思いのほか正確だから、こうして粒子防御帯で受け止めれば流れ弾の被害は生じない。

 バリア表面で起きる小爆発によって、カメラアイの光学センサーはあてにならない。〈アシュラベール〉は一本角(ブレードアンテナ)の複合センサーで外界を知覚していた。

 

 強烈なレーダー波による距離測定を頼りに、勘だけで推進方向を定める。

 速度を、角度を、調整して突き刺さった。敵の放つ機銃掃射を受け止めて、一本の矢のように突き進んだ。

 加速、加速、加速――そして絶大なる衝撃。

 

 脚部に走った強烈な負荷とともに、馬鹿でかいダイオウイカの化け物の脳天に飛び蹴りを叩き込む。

 まるで鉄槌。

 〈アシュラベール〉そのものを運動エネルギー兵器に仕立て上げた一撃――小口径レールガンの掃射では、光波シールドジェネレータを持つ敵を撃墜しきるのは難しい。相手も自分と同じく、エネルギーバリアの耐久限界に任せて突っ切るのが最適解になるからだ。

 

 ゆえにこれは想定外の一撃となった。

 敵機が墜落する。低空飛行が祟って姿勢制御する時間を与えられず、コンクリート製の岸辺に叩きつけられる異形――ダイオウイカの化け物が、凄まじい轟音と共に墜落する。

 砕ける、舞い散る、転がり落ちる。

 

 馬鹿でかいクレーターを作って、舗装されたコンクリートを砕き割りながらイカの化け物が地面の上を跳ねる。

 周囲に人影はない。

 

 本来であれば港湾労働者が働いているだろう倉庫と倉庫の合間を、イカのような怪物が転がり落ちた。エルフリーデはその姿を認めながら、推進方向を反転させた。上空で旋回しながら間髪入れずに三〇ミリ電磁機関砲を撃ち降ろす。

 防がれた。

 粒子防御帯が展開されている。敵機の機能はまだ死んでいない。

 

 

――当然か。生身の人間なら死んでるけど、あいつはバレットナイトだ。

 

 

 エルフリーデ自身、かつてミリアムの〈シュツルムドラッヘ〉と相打ち同然となって、結構な高さから墜落したことがある。そして生還したし、当時はそれでも戦闘を続行したぐらいだ。

 この全長一五メートル近いダイオウイカの化け物のスペックは不明だが、その程度の機体強度は敵にもあると見るべきだろう。

 

 急降下する。

 そして左腕で背中から太刀を引き抜いた。超硬度重斬刀――通電することでその原子間結合を強化、極限までその物理強度を引き上げられたテロス合金製のブレード。

 あまりにも頑丈すぎて生産性も最悪だから、原始的な武器の形に仕上げるだけで手一杯という曰くつきの素材だ。

 

 垂直降下の速度を乗せて、それを振り下ろす。

 斬撃。

 火花が散った。意外なほどの俊敏さ――ダイオウイカの化け物が、その身を起こして四本の脚部の一つを振り上げ、エルフリーデの一太刀を受け止めたのだ。

 

 超振動ブレードの爪だった。しかしながら通常の金属でできた刃と、超硬度重斬刀が触れ合ってまともな勝負になるはずもない。

 武器としての強度、硬度、破壊力すべてで勝る究極の金属との鍔迫り合いは二秒と経たずに決着した。

 イカの化け物の足が折れ飛ぶ。

 破砕する。その馬鹿でかい胴体に刃を押し込む。

 

 

『やめろ、この〈アビス・ウォーロック〉には使命がある! 邪悪な貴族どもを討つという使命が――』

 

 

 敵の絶叫。至近距離で浴びせられた電波の叫び。ガルテグなまりの言葉は、その歴史的経緯から文法も単語もバナヴィア語と近しい。

 それを聞いた瞬間、エルフリーデ・イルーシャは敵の狙いが何だったのかを悟った。

 こいつはクロガネを狙っていたのだ。

 

 敵機がどういう存在であるかを、間近で見て理解した。この機体はおそらく、小型化された〈イノーマス・マローダー〉と呼ぶべき代物だ。胴体に内蔵した巨大砲を、迅速に敵地で展開するための機体構造。

 自爆でもされたら厄介だな、と判断。

 太刀を半ばまでその胴体に押し込めながら、少女は冷酷に告げた。

 

 

「――ああ、そういうことなら容赦はしない」

 

 

 空飛ぶダイオウイカ――〈アビス・ウォーロック〉がロケット噴射で飛び立とうともがいた。そのロケット噴射の瞬間、肘打ちを叩き込んだ。前腕から生えた超振動ブレードが、斬撃となってロケット噴射口ぶち込まれた。

 

 ひしゃげ、砕け、火が爆ぜる。

 一四メートルもの巨体が浮かび上がった。

 〈アシュラベール〉L型に採用されている高出力人工筋肉のパワーは、容易く自分の三倍以上の巨体を揺るがす。

 

 次の瞬間、エルフリーデは迷うことなく左の太刀を装甲に押し当てた。エーテルパルスと呼ばれる高エネルギー粒子の波動を身にまとった超硬度金属が、アルケー樹脂装甲を砕き割っていく。

 それは斬撃というよりも、押し潰すような圧殺だった。

 

 

『ぐぎゃあああぁああああ!?』

 

 

 両断。

 死がもたらされる。その胴体を断ち切られ、同時に制御中枢たる電脳棺(コフィン)を破壊されて――〈アビス・ウォーロック〉は息絶えた。

 

 自爆プロトコルの実行などさせずに、ありとあらゆる電子制御のシステムを破壊する。人の魂が還ったエーテルの奔流が、可視光線となって燐光とともにまき散らされる。

 見慣れた光景だった。

 たった今、撃破した敵――その目的を、エルフリーデ・イルーシャは頼れる相棒に告げた。

 

 

 

「ライオネス2、今すぐ市庁舎に向かって。こいつの目的はクロガネの命だ。敵の別働隊がそこに向かっている可能性がある。索敵しながら上空を旋回、敵発見時は現地の警備に情報共有。その後はきみの判断で動いていい」

 

 

 

「ライオネス2、了解です(ラジャー)!」

 

 

 

 告げながらエルフリーデもまた、〈アシュラベール〉を動かした。堅牢な二本の足が地面を蹴り上げ、ジェット噴流がその巨体を空へと押し上げる。

 深紅の悪鬼はそうして飛び立った。

 流血を願う、誰かの夢を終わらせるために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 








・P1811〈アビス・ウォーロック〉
全長14メートル。
GCIで開発された異形の破壊工作用重バレットナイト。ロケット推進装置を備えており、その特徴からベガニシュ帝国の基準では第三世代機に分類される。
ウォーロックの名前は、魔法使いのとんがり帽子を思わせる胴体形状から名付けられた。

しかしその実際の形状としては頭足類の方が近しく、全体像を見たエルフリーデの印象は「馬鹿でかいイカの化け物」という感じだった。
事実、本機の設計においては海洋で発見された巨大水棲生物の形状が参考にされている。

その開発コンセプトは「水中を移動し、河川を伝って敵地に重砲を展開、攻撃を加える強襲駆体プラン」である。
言うなればテロ攻撃に特化し、自ら高速で敵地に展開できる自走砲という、類を見ない異形の兵器であった。
ガルテグ連邦の情報機関GCIの推進する紛争地域安定化プログラム(この安定化が意味するところは傀儡政権の樹立である)に基づき、第三国で開発・建造された。

そのダイオウイカを思わせる胴体に内蔵された280ミリ破城砲〈バリスタ〉こそ、本機の特筆すべき機体構造を決定づける主兵装である。
機体全長の大半を占める主砲は、自動装填装置によって280ミリ電磁投射砲の複数回の発射が可能。

とはいえ開発元であるガルテグ連邦が電磁投射砲の技術開発で出遅れているため、高出力レールガン特有の砲身の劣化は解決されていない。
弾倉内の砲弾を撃ち尽くした場合、再使用が望めない程度の砲身寿命であるが、本機はあくまで破壊工作用の特殊作戦機ゆえ問題ないとされる。

通常時は静音性に優れたウォータージェットで推進――ダイオウイカを思わせる水中潜航形態で水中を移動後、四本の歩行脚を用いて上陸。
胴体装甲に内蔵された主砲を展開し、砲撃を行う。
着弾の観測と修正のために、小型の有線式観測ドローンを搭載している。

本機はバレットナイト技術を応用した潜水艇として開発が進められたが、その実態はむしろ、可変機構を備えた水陸両用型バレットナイトというべきものである。
世界初の水陸両用可変型バレットナイトだが、そのシルエットは人型を大きく逸脱している。

しかしながら内部構造は単純で、四つん這いになった人型フレームから、馬鹿でかい砲身――電磁バレルが垂直方向に伸びている。
通常の戦闘車両のような形態を取らなかった理由として、この長大な砲身に複数の機能を持たせたことが挙げられる。

破城砲〈バリスタ〉の電磁バレルは、エーテルパルス・ロケット推進のスラスターとして機能する。
通常時は静音性に優れたウォータージェットで推進し、戦闘時には高エネルギー粒子ロケットによって時速380キロメートル以上での高速機動を可能としている。
流体力学的にも優れた装甲外殻ゆえに、短時間であれば空中飛行すら可能とする。

強力な火砲の運用と、高速展開に必要な軽量化――この二つは本来、矛盾し相反するものである。
軽量な発射機で大火力を望むのであれば、ミサイルを運用する方がはるかに技術的ハードルは低い。

しかしながら〈アビス・ウォーロック〉はその画期的な構造――ロケット推進装置と砲身を兼用する電磁バレルの実用化、アルケー樹脂による装甲の軽量化、人工筋肉駆動の四肢による反動制御――によって前代未聞の性能を実現している。

何故、ミサイルではなくレールガンなのか、その理由は明確だ。
既存の誘導ミサイルやロケット弾では、小口径レールガンの普及によって迎撃が容易になり、目標命中率の向上が困難である。

このことから砲弾を高速投射する砲システムの運用が望ましいとされ、〈アビス・ウォーロック〉の機体コンセプトは決定された。
すなわち敵地への上陸後、防衛ラインの内側から重砲による攻撃を行い、対象を民間人諸共に抹殺する――これこそが確実な暗殺手段である、と。


武装
・胴体内蔵主砲:280ミリ粒子装薬破城砲〈バリスタ〉/大型エーテルパルス・ロケット推進機構×1
・胴体内蔵副砲:20ミリ電磁機関砲×1
・胴体防御装置:光波シールドジェネレータ(鹵獲品)×2
・観測用有線式ドローン×1
・脚部:反動制御用武装肢/超振動クロー/姿勢制御アンカー×4

Q:機体形状が上手くイメージできません、たすけてください。
A:バイラス(怪獣)とかイージスガンダムのMAモードを垂直に立てた感じのゲテモノです。








書籍版「機甲猟兵エルフリーデ」好評発売中!
というわけで書籍版のキャラデザやメカデザが見られちゃうURLをご紹介します。

・特設サイト
https://over-lap.co.jp/narou/824014115/

・公式紹介ブログ
https://blog.over-lap.co.jp/site-elfriede/

・機甲駆体《バレットナイト》の設定画
https://x.com/OVL_BUNKO/status/2004879500950282535



可愛いエルフリーデ、超イケメンなクロガネ、超胡散臭いハイペリオンなどはもちろん…!
作中設定の身長差(4mと4.5m)が再現されたアイゼンリッター系列とアシュラベールの骨格の違いなど、すっごい情報量でとにかく素晴らしいので是非一度、目を通されるのをオススメします。
かっこいいぜ…!!





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