機甲猟兵エルフリーデの屈折した恋愛事情~最強ロボパイロットの英雄譚~   作:灰鉄蝸

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双頭の邪竜

 

 

 

 ロイ・ファルカは久しく訪れていなかったおのれの故郷を、険のある表情で眺めていた。

 日頃、穏やかな微笑みを絶やさない金髪碧眼の青年には珍しいことだ。

 周囲には品のいい調度品に彩られ、ゆったりとした拡がりのある部屋──そう、どこかのお屋敷の一室とでも言われた方が、よほど納得できる光景。

 

 体のいい軟禁だった。

 よもやこれほど列車の主──ユシュナ・ゼオ・アンリバフが強引な手段を執ってくるとは読めなかった。

 

 わからないことは多い。

 何故、相互不可侵の暗黙の了解があったユシュナが、今日になってクロガネに手を出してきたのか。

 

 

 ──帝国の上層部で何かが起きている、ということでしょうか?

 

 

 長らく触れてこなかった場所である。

 クロガネの従者として車両に乗り込んだことは幾度となくあったが、そのとき彼はあくまでクロガネの従者だった。一般乗客向けの客車であれば、生まれ故郷とは遠い──物理的に数キロメートル離れている車両だ──からよかった。

 

 だが、これはダメだと思った。

 ここはあまりにも、幼少期を過ごした場所に近すぎる。

 

 

 ──皮肉なものです。まだ私にも、このような郷愁の念があると証明されるとは。

 

 

 青年はため息をついた。

 ロイ・ファルカはかつて、帝国皇帝の側近として仕えていた名家の子息だった。この〈世界蛇〉を故郷として生まれ落ち、外界と隔てられた列車の上で育てられ、やがては列車の外に出て学門を学ぶ──そのような人生もあったかもしれない。

 

 だが、すべては消え去った可能性だった。

 彼の父は先帝──勝利帝アルドリックによって処刑され、一族は追放刑を受けた。

 今から一六年前のことである。

 

 バナヴィア戦争に強く反対したことで粛清された貴族の子弟が、今ではバナヴィアの次期指導者と目される男の従者──個人的秘書をしている。

 数奇な運命だった。

 

 

 ──私にとっての現実は、すでにこの列車の中には存在していない。

 

 

 腰掛けていたベッドの上から立ち上がる。

 幸いここはトイレやシャワールームまで完備の個室だった。

 閉じ込めておけばそれで事足りる部屋というわけだ。

 

 監視要員がいないのは、少々、不用心なようにも思えたが──いや、監視カメラの類で見られているのだろう。

 テーブルの上には茶器と茶葉が入ったティーバッグが用意されていた。

 

 おそらく今頃、主であるクロガネ・シヴ・シノムラは、この列車の主ユシュナ・ゼオ・アンリバフによって、もてなしという名の嫌がらせじみた時間を過ごしているのだろう。

 それに比べると、セルフサービスのこちらはずいぶんと気が楽のように思えた。

 

 

 ──目的が見えない相手は、やりにくいものですね。

 

 

 そうロイが思った瞬間だった。

 車体が揺れた。

 ありえないことだ。

 

 この大陸横断鉄道〈世界蛇〉は何重にも振動対策が講じられている。車体幅が三、四メートルほどの通常の列車ならいざ知らず、全幅三〇メートルの巨大列車ではちょっとした振動も増幅されて、凄まじい災害につながりかねないからだ。

 

 ましてや磁気浮上式リニアレールである〈世界蛇〉で、揺れが生じるような環境は考えづらい。

 つまりこれは、人為的に仕掛けられたものだった。

 続けて揺れが来た。

 

 もう間違いなかった。幾度となく鉄火場をくぐり抜けてきたロイにはわかる。

 これは爆薬を使ったときの衝撃だ。

 

 

 

 ──旦那様、それにエルフリーデ様やリザ様が危ない。

 

 

 

 よもや列車に乗っているクロガネたちを狙っての襲撃ではあるまい。

 ロイは電子錠がかけられていることも承知で、部屋に出入り口に近づいた。

 何とかしてこの部屋から出る方法を考えねばならない。

 

 仮病や発作を装って、監視カメラ越しに異常を検知させる──そのような突拍子もない方法が脳裏をよぎった。

 どうする、どうすれば、この隔離された状況を切り抜けられる。

 焦りを抑え込んで思考した刹那のことである。

 

 

 

 ──部屋の入り口が、何の前触れもなく解錠(アンロック)された。

 

 

 

 予想に反して入室してくる相手はいなかった。

 ロイは慎重に部屋の扉に歩み寄り、やがて意を決して一歩、外に踏み出した。

 一刻も早くもクロガネたちと合流しなければならない──そう決意した瞬間、廊下の明かりが消える。

 

 すぐに非常灯に切り替わったそれを見て、ロイの柔和な微笑みは、ますます強ばったものに変わっていた。

 電子制御の鍵の開閉に加えて、照明への電力供給が断たれるなど尋常ではなかった。

 

 この列車では今、確実に不可解で不安定な異変が起きている──それもおそらく末端部のトラブルなどではなく、より中枢に近いところで。

 ロイは遠い景色の中の思い出と照らし合わせて、広大な列車の中を走った。

 

 

 

 ──自分が果たすべき責務があるのだと信じて。

 

 

 

 ◆

 

 

 

「…………それで、伯爵。そろそろ説明してくれてもいいのではないでしょうか? その仮面の子爵様はどういう風の吹き回しなんです?」

 

 

 非常時の避難用通路は、お茶会の部屋の裏手に用意してあった。表向きの地図には載っていない隠し通路らしく、幅はせまく照明も心許ない光量である。

 それまでの貴族趣味で広々とした通路──まるで一流ホテルの廊下みたいだ──に比べると、こちらは如何にも閉鎖空間の列車の中ですという感じの雰囲気があった。

 

 そう、普段は使われていない通路のはずである。

 いつの間にか姿を消していたと思ったら、するっとそれを探り当てていたゲオルギイ・カザールは、いくら何でも怪しすぎた。

 

 そして不審人物そのものを、見逃して黙っているなんてクロガネらしくない。

 つまり彼は何かを知っているはずだった。

 

 

「いい質問だ、エルフリーデ。その問いかけにはこう答えよう──俺がゲオルギイにあらかじめ、何かあったときのバックアップを依頼していた。そして今回の旅では、懸念通りの行き違いが生じてしまった。彼が味方であることは間違いない」

 

 

「……あ、ありなんですか? そういうの?」

 

 

「ああ、不本意だ」

 

 

 その一言を聞いて、ゲオルギイはやれやれと肩をすくめていた。一度はヴガレムル伯爵と敵対し、エルフリーデの命を狙ってきた男である。

 諸々の譲歩や賠償を引き出して手打ちにしたとはいえ、つい半年前の出来事をけろっと水に流すのは、スピード感が違いすぎて常人には理解しがたい。

 

 それとも元々、ゲオルギイはクロガネの弟子だったと言うことだし、そういう情もあっての許しなのだろうか。

 エルフリーデは少々考え込んだ。

 

 たぶん違う気がする。

 不本意というのはクロガネにとっても本音で、その原則を曲げてでも保護したいものがあったからそうした。

 つまりそういうことだろう。

 

 

 ──不器用な人だなあ。

 

 

 呆れたような気持ちと、そうまでして大切に思われていることへの歓喜が同時にわき上がってくる。

 続けてリザが、何かに気づいたように声を上げた。

 

 

「あのぅ……ロイさんはどちらに?」

 

 

「ユシュナ殿下が別室に招いていた。殿下、詳しくうかがっても?」

 

 

 クロガネはちらりと前方を見やる。甲冑を着込んだ神殿騎士に侍従、メイドらに付き添われて、ゆうゆうと一同を先導しているユシュナがそこにいた。

 この場で一番の貴種である少女は、誰よりも早く逃げ延びる権利があった。

 黒髪の美しい少女はすまし顔だった。

 

 自分の住まう城に等しい場所が、何者かの襲撃を受けているというのに、冷や汗ひとつ掻いていなかった。

 それが長い人生ゆえの慣れなのか、すさまじく肝が太いからなのかは、ぱっと見で判別できなかったけれど──話を振られたユシュナは、こちらの方を振り向いて微笑んだ。

 

 

「彼とは後ほどゆっくりとお話をするつもりでした。別室で待機してもらっていますが、身の安全は確保されています」

 

 

 エルフリーデは形容しがたい顔になりそうな表情筋をぐっと押さえ込んだ。

 それが本当なら、そもそもこんな爆発だの銃撃戦だのは起きていないはずである。

 現在進行形で説得力が失われている建前のトーク──果たして今の状況下で、そんな説明を聞いて「ああよかった、彼は安全なんだ」と納得できる人間がどれほどいるだろうか。

 

 馬鹿馬鹿しい話だった。

 相手が皇帝に近しい血筋のお姫様だから、馬鹿にするなというわけにもいかないのは、えらく気苦労するものだと思う。

 

 果たしてリザは納得するだろうか。

 もし彼女が口を滑らすようなら、自分がフォローしなくては。

 そう決意したのも束の間、リザ・バシュレーは冷ややかな理解を浮かべた。

 

 

「……ええ、はい。安心しました」

 

 

 リザの中で、このお姫様に対する隔意が芽生えた瞬間のようだった。それでも言葉の上では丁寧だったのは、理性の賜物(たまもの)だろう。

 

 

「リザ、ひとまず退路を確保してから次の行動に移ろう」

 

 

「はい、異論はありません」

 

 

 エルフリーデもリザもそこはプロフェッショナルだった。感情はそっと胸の内に留めておいて、ここぞという場面で表に出すものだと心得ている。

 感情を殺すだなんて冗談じゃない。

 そうして、やや剣呑な空気で避難用通路を早足で駆けること数分。

 

 先導するユシュナが足を止める。薄暗い通路の端っこには、大きな隔壁が横たわっていた。黒髪の美姫は、白い法衣の裾をひるがえして、通路横のコンソールに指を這わせた。

 すばやくその掌を液晶画面に重ねる。

 同時に大きく見開かれたその瞳を、何かの機械装置がスキャンしているのがわかった。

 

 

『生体認証を確認しました。お通りください、ユシュナ・ゼオ・アンリバフ殿下』

 

 

 機械的なメッセージが再生される。

 電脳棺のインターフェースほど先進的ではなかったが、人間が読み上げている声の抑揚ではなかった。あえて平坦さを残すことで、自らが機械的応答であることを自明の理とした合成音──ベガニシュ帝国の定める異端の定義に触れないよう配慮されたもの。

 

 隔壁が開く。

 エルフリーデは違和感を覚えた。

 非常時の避難用通路は、そもそも、こういうまどろっこしいセキュリティを使っている暇がないとき使うためのもののはずだ。

 

 限られた人間しか出口にアクセスできないなんて、避難用通路の設計としてはあまりにも──人命軽視がすぎる。

 いくら貴族制が現役のベガニシュ帝国とはいえ、ここまで露骨な仕組みがあるとは。

 エルフリーデとリザが抱いた違和感を、目ざとく見つけたのか──すかさず金髪の美丈夫、オリヴィエ・ライアーが口を開いた。

 

 

「この車両は巫女姫のために建造されたものだ。仰々しく見えるかもしれないが、このような厳重なプロテクトもまた、必要と考えられているのだよ」

 

 

 果たして真実、物事がそうあるべきは知らないが、と言いたげな声音。

 軽妙で愛嬌たっぷりの笑顔は魅力的なのに、その陽性の輝きゆえに、見えないところの闇もまた強く感じられる物言いだった。

 エルフリーデ・イルーシャは改めてこう思った。

 

 

 ──怖い人だな、本当に。

 

 

 オリヴィエは今まであったことがないタイプの帝国貴族だった。

 かつて戦場で敵味方として出会ってきた血の誇りを是とする貴族将校たち。

 

 その血の呪縛を憎み、実力主義を標榜(ひょうぼう)したミリアム・フィル・ゲドウィン。

 根っからの現場主義者で人道主義者であるがゆえに身分階級に否定的なクロガネ・シヴ・シノムラ。

 そもそも主義主張も思想も何もなく、現世利益だけで動く小悪党という感じのゲオルギイ・カザール。

 

 いずれもその是非はともあれ、血統による支配に対する立場ははっきりしていた。

 それこそが正義とか、そんなものは間違っているとか、心底どうでもいいとか──各々の考え方はわかりやすかったように思う。

 

 

 ──でもオリヴィエは違う。彼はたぶん、わたしたちに心を開いてそう振る舞っているんじゃない。

 

 

 わかっている。

 そういう芝居ができてこその貴族だ。

 素直に好意を露わにして接してくれたミリアムのような子が例外なのだろう。

 だとしても傷あり(スカーフェイス)の少女は、自分の直感を信じるべきだと思った。

 

 

 

 ──オリヴィエ・ライアーはきっと、露わにしていない本音を持っている。

 

 

 

 ──その正体がわかるまでは、背中を見せていい相手じゃない。

 

 

 

 隔壁が開ききった。

 扉の向こう側は、どうやら列車の中央部にある連絡通路だった。各車両を繋ぎ、路面電車(トラム)が走っている連結部と直結された場所──この大陸横断鉄道の大動脈というべき場所である。

 

 一両二〇〇メートルの車両の向こう側まで見渡せた。

 床も壁も天井も人工物で、鈍色のつるつるした素材でできたトンネル状の構造体が、車両間をまたいでずっと続いているのだ。

 全長二〇キロメートルにもおよぶ怪物的巨大列車を、ひとつの身体につなぎ止めている要所──なるほど、ここならば襲撃を受けている車両を放棄して、他の車両に移動するのも容易いだろう。

 

 

「ここからは電動車両をお使いになってください。通路脇に専用の移動レーンがあります」

 

 

 護衛として同行していた神殿騎士が、そのように声を発した。

 言われてみると隅っこの駐機スペースと思しき場所に、電動の二輪車や小型の四輪車が固定してあるのが見えた。

 

 いや、それどころか。

 よく見ると駐機スペースには、見慣れた人型の姿もあった。膝をつくような形で駐機状態になっている巨人である。

 身長四メートルの騎士人形。

 

 

「……〈ブリッツリッター〉? なんでバレットナイトが、こんなところに……」

 

 

 口にしてから気づいた。ここは巫女姫という特権階級のための専用列車で、避難用通路の利用にすらその血が必要なのである。

 であれば移動の足と護衛を兼ねて、戦闘用の人型兵器が準備されていても不思議ではなかった。

 あまりにもスケールが大きすぎて、思わずエルフリーデは口を半開きにしてうめく。

 

 

「……避難用のバレットナイト……?」

 

 

「そういう列車だ、ここは」

 

 

「慣れろって言われても困ります……!」

 

 

 クロガネの冷静な補足に、思わず素でツッコミを返してしまう──少女騎士は次の瞬間、ほぼ本能的に身体が反応していた。

 視線が動く、四肢がひとりでに動き出す。

 

 一拍遅れて異変に気づいたクロガネが、スーツの裾をひるがえした。エルフリーデとリザ、少女二人に覆い被さるようにして──刹那、轟音とともに視界が閃光に染まった。

 それは金属が溶解し、その物理的強固さを失い、崩落するときの轟音。

 

 続けて熱波が押し寄せてくる。

 床に背中を打ち付けた痛みなど、忘れてしまうような鉄火場の空気があった。

 うかつに喉を開けば、そのまま呼吸器を焼かれるのではないかという錯覚──三〇メートルほど先で天井が焼き切られたのだ、と理解する。

 鋼鉄の車体に穴を開け、階層構造の積層金属を爆発させるほどのエネルギー放射。

 

 

 

 ──熱線砲。ベガニシュ帝国の指向性エネルギー兵器、金属すら融解させる高エネルギー放射。

 

 

 

 ごおぉおおん、と何かが着地した音。

 そして誰かの体温(ぬくもり)体重(おもさ)を感じた。

 まぶたを開く。愛しい男が、自分の身を立てにしたのだと理解する。

 

 

「クロ、ガネ……!」

 

 

「……無事か?」

 

 

 エルフリーデとリザを庇って、とっさに身を投げ出した男──クロガネはいつも通りに平然とした表情だった。

 同じく庇われたリザが、打ち付けた背中の痛みに顔をしかめて。

 

 そして、肉が焼けるにおいに気づいた。

 先ほどの爆発だった。飛んできた溶けた金属の断片が、深々とクロガネの背に食い込んでいた。エルフリーデは反射的に身を起こした。

 

 見たくはなかった。

 クロガネの背にあったのは、ひどい火傷と裂傷の合わせ技だ。

 きっと常人ならば致命傷。

 

 

「……伯爵様、背中が……!」

 

 

「お前たちが……無事なら、問題ない」

 

 

 エルフリーデは本気で顔をしかめた。

 

 

 

「──()()()()()()()()()()()

 

 

 

 だが、クロガネがそう言った理由もわかった。不死者である自分とそうではない少女たち。どちらが身を(てい)して相手を庇い、傷つくべきかは明白なのだ、と。

 その論理的正しさがわかってしまう。

 

 悔しかった。

 さあ誰を犠牲にするのが最適解か選んでみましょう──残酷で理不尽な算数の時間だ。

 エルフリーデが幾度となく戦場で試されてきたのと同じ論理が、唐突に顔を出していた。

 

 

 

 ──ふざけるな、こんなものが正しいわけあるかッ!

 

 

 

 ぐったりとしているクロガネの身体を押しのけて、少女騎士は這い出した。

 流された血のにおいと燃え盛る火焔の熱気が、皮膚を撫でつけ、髪の毛を焼け焦がすような気がした。

 構うものか。

 

 視線に先にあるもの──ぐねぐねと二本の長い首をくねらせる双頭の邪竜。

 まるで神話から抜け出してきたおとぎ話の怪物だった。途方もなく大きく、異形であるそれは、エルフリーデのことなど気にしていなかった。

 

 そう、たぶん気にかけているのは──ユシュナかオリヴィエか、その両方だろう。

 襲撃者の狙いは最初から、そっちなのだから。

 怒りで燃えそうなほど身体は熱いのに、頭は冷え切っていた。

 

 

「リザ、クロガネの身体を支えてあげて。しんどいと思うけど、物陰まで退避して。クロガネはもう少し踏ん張ってください」

 

 

「お姉さん──()()()()()()?」

 

 

 リザ・バシュレーの理解は早かった。

 エルフリーデはうなずいた。静かな怒りが燃えたぎっていた。

 

 

「〈ブリッツリッター〉がある。わたしが時間を稼ぐ」

 

 

 エルフリーデがクロガネの肩を支えて、その上体を起こすと、リザの方もするりと這い出てきた。

 クロガネは重症を負っていたが、それでも流れ出る血はもう止まりかけている。

 

 これが不死身ということか。

 虚ろに視線をさまよわせていたクロガネは、それでも目に力を込めて──ただ最愛の少女に言葉を投げかけた。

 

 

 

「……エルフリーデ、勝て」

 

 

 

 笑ってしまうほど不器用すぎる言葉選びだった。

 生きろとか死ぬなとか、もっと言いたいことは山ほどあったろうに──ああ、でも一番こっちがほしい言葉をくれたんだな、と思う。

 

 大好きだった。

 彼のことを守りたいと改めて思う。

 少女騎士エルフリーデ・イルーシャは、にっこりと笑った。

 

 

 

 

 

「──仰せのままに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 














・〈ドッペルドラッヘ〉
双頭の邪竜。
車体高4メートル(竜頭部込みの全高12メートル)、全長18メートル。
2本の竜の首を持った異形の超大型試作バレットナイト。便宜上、第3世代機に分類される。

2対4本の脚部を持っており、その機体構造は人型というよりも陸生爬虫類に近い4脚型。
四つん這いにした人型というべき駆動フレームを持っており、手足それぞれに内蔵した大出力スラスター(リフトジェット)によって限定的ながらホバリングを行う。

通常の位置にある頭部は簡易的なセンサーターレットにすぎず、胴体背中側から2本の竜頭がメインセンサーと主砲を兼ねている。
胴体部の機銃砲塔と合わせて、その火力は非常に高い。

あまりにも奇抜な見た目と裏腹に、本機は「バレットナイト関連技術を応用した次世代戦闘車両」の概念実証機として試作されたものである。
電脳棺による機体制御および動力源の確保、アルケー樹脂による軽量な装甲、高出力ビーム兵器である熱線砲、反動推進エンジンの搭載――ベガニシュ帝国で試作されてきた第3世代機の特徴を色濃く受け継いでいる。

脚部に内蔵された4基の電気熱ジェットエンジンによる高推力を揚力に変えることで、その巨大さに見合わない機動力を発揮する。
戦闘時にはエーテル粒子を用いた短時間使用型のロケットエンジンに点火、短時間であれば時速180キロメートル超での空中飛行が可能である。

本機の機体構成は思いのほか人型に近しい上、リフトジェットエンジンは非常にシンプルな制御(方向転換は補助用ロケットエンジンで行う)のため、その異形ぶりに反して、融合者へのフィードバック負荷は低く抑えられている。

竜の首を思わせる双頭は、やはり正しくこれに適合できる人間は限られるのが現状である。
難易度としてはミトラス・グループの〈アシュラベール〉のスラスターバインダーの手動制御ほどではないが、バナヴィア独立派の〈ミステール〉のサブアームなどと同等の習熟が求められる。

肝心の主砲――竜の首を思わせる双頭――を動かし、照準しながらの戦闘は難易度が高く、また機体の大型化にともなって増大した前方投影面積を補えるほどの防御力も機動力も得られなかった。
「ビーム砲搭載のホバー戦車」というコンセプトは成功させているものの、想像以上に使いどころに困るというのが本機の嘘偽らざる評価である。

武装
・頭部:主砲:熱線砲×1
・頭部:超硬度衝角×1
・頭部:固定装備:光波シールドジェネレータ×1
・首筋:放熱フィン
これら頭部ユニットが2基。

・胴体:自動砲塔:20ミリ電磁機関砲×2
・胴体:機動補助用ロケット推進装置×3
・脚部:自走用ローラー(超伝導モーター駆動)×2
・脚部:リフトジェットエンジン(電気熱ジェット)×4


ダブラスM2(マジンガーZ)みたいな首が生えてるゼーイーゲルみたいな。
もしくはイージスガンダム(MA形態)を寝かせたような構造。
一見するととんでもないゲテモノ、機体構造を見ると意外と人型兵器の骨格そのまんまらしい。

「人型ロボット作れる技術で戦車つくろうぜ!」という熱い気持ちを形にしてみたところ「……いや、強いっちゃ強いッスけど……うーん……」みたいなゲテモノメカが誕生したらしい。














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