機甲猟兵エルフリーデの屈折した恋愛事情~最強ロボパイロットの英雄譚~ 作:灰鉄蝸
かくして戦いは決着した。エルフリーデはたった今、その頭部と右腕を切り裂いた敵機に向き合い、さらに追い打ちとばかりにその左腕を切り落とした。
馬鹿でかいワイヤーケーブルを巻き取るためのドラムユニット──長く伸びる鞭を振るうための兵装ユニットが、その重さに耐えかねて列車の甲板に落ちた。
高速走行しているがゆえに、押し寄せる空気の壁が、まるで嵐のように列車の周囲に吹き付けている。
プラズマ・エアロシェルの範囲外では、強風が吹き荒れていることだろう。
「一応、警告しておこうか。電脳棺から融合解除して、今すぐ投降して。そうしないと命の保証はできない」
エルフリーデ・イルーシャは決して人死にを好むわけではない。さりとて命のやりとりの最中に、甘い対応ができるほど絶対強者というわけでもなかった。
シールドアックスの切っ先を突きつけられ、ナイツベインは強がりの言葉を吐き出した。
『……甘いな。今すぐ殺せ。私は必ずや、このナイツベインの名を完遂する……!』
「理由を言っておくなら──そうだね、あなたって実は誰も殺してないでしょう? ああいや、もう一体の〈ドッペルドラッヘ〉はかなり暴れて被害を出してたけどね。わたしの予想だと黒幕っていうよりは、使いっ走りにされてる下っ端って感じがする。だから情けをかけてるんだけど」
これはエルフリーデにとっての違和感の積み重ねから、導き出された答えだった。
女帝フランツィスカを名乗る怪人は、熱線砲による列車への攻撃でかなりの死傷者を出した。普通に考えるならば、同じ機体を運用しているナイツベインも同じ勢力と見なすべきだろう。
ただこの解釈には疑問が残る。
──自称フランツィスカはユシュナ殿下を殺そうとしてたけど、ナイツベインは生け捕りにこだわっていた。この時点で目的も手段もバラバラだ。
──でもこの二人は、〈嘲笑う蛇の舌〉が列車のセキュリティを麻痺させてるって前提で襲撃をかけてきた。
──つまり仕掛けを考えた黒幕がいて、そいつに別口で使役されてるってところかな?
こうなってくるといろんな意味で、この事件の闇は深まってしまう。
ただ単に事件を終わらせるだけなら、あとはクロガネたちがクラッキング・デバイス〈嘲笑う蛇の舌〉を排除するのを待つだけでいい。
しかし真相を突き止めるならば、ナイツベインの身柄を抑えるのは必要不可欠なはずだった。
非常に冷静なエルフリーデの指摘に、ナイツベインは悔しげに声を震わせた。
おそらく動揺している。
『わ、私は負けない……姉であるお前が、妹として生まれた私に勝つことはできないっ!』
「思ったより意味わかんない屁理屈が出てきた……お姉ちゃんは妹を
『ううむ、理屈と呼ぶにはだいぶおかしな論調だと思うが?』
珍妙な空気だった。
つい数十秒前まで互いの命を奪い合う死闘を繰り広げていたというのに、今ここにあるのは、姉/妹という概念の意味不明な濫用だけだった。
実のところこの場で一番、常識的なのは誰であろうオリヴィエ・ライアーその人である。
ナイツベインの持論はかなり珍妙だったし、ほとんど他者に理解されない異様な
オリヴィエは片足を失った〈ブリッツリッター〉で、器用に立ち上がっていた。
器用な男である。
たぶん戦場でバレットナイトの手足を失った経験も多いのだろう。即興にしてはバランス感覚が優れている。
「五秒待とう。それを過ぎても降りないなら、わたしも容赦はできない」
最後通牒を突きつけたそのときだった。
エルフリーデはその瞬間、自分の死角の外から飛来する敵意を感じた。
オリヴィエの鋭い叫びが聞こえた。
『エルフリーデ卿!』
ぬん、と
空中で斧の刃を飛翔体にぶち当て、その弾道を逸らすという絶技が披露される。
〈アシュラベール〉の死角を埋めるための
刹那、エルフリーデが振り返り様にシールドアックスを一閃する。
衝撃。
左腕に装着している盾斧が、高速で飛来した何かによって打ち砕かれていた。
破砕された装甲の断片が宙を舞う。
「ちっ!」
油断したな、と思う。
とはいえ直前まで殺意の兆候は感じられなかった。
それもそのはずだ。
攻撃が飛んできたのは、ついさっきまで何もなかったはずの壁面──この馬鹿でかい大陸横断鉄道の車両、その上部構造体だったからである。
ここは武装車両ではない。
ゆえに突然、隠し砲台がせり上がってきたわけではないようだ。
──不意討ちにしても突然すぎる!
戸惑いながら、エルフリーデは再び無茶な着地をしたオリヴィエに声をかけた。
「オリヴィエ卿──」
その瞬間である。
エルフリーデの注意が逸れて、互いの距離が離れた一瞬の隙を、ナイツベインは見逃さなかった。
ぼん、とド派手な爆発音。
ロケット・スラスターの噴射音。
上半身のほとんど、頭も両腕も失ったバレットナイトが──猛烈な勢いで列車から飛び立っていた。
〈クリンゲンシュピンネ〉が、その両脚のロケットエンジンを噴かして、接続コネクターを引き千切りながら離陸したのだ。
「──なっ」
『さらばだ、エルフリーデ! 私は不滅、いずれまた会うことになっきゃあああああああああ!?』
毒蜘蛛は凄まじい加速で〈世界蛇〉から飛び立った。
それはつまり、この巨大列車が展開している空気抵抗の低減システム、プラズマ・エアロシェルのバリアの外側に侵入するということだ。
案の定、強烈な乱気流に飲み込まれた赤黒い毒蜘蛛は──そのまま風圧に押し流され、全長二〇キロメートルの列車の影に隠れて見えなくなった。
誰がどう見ても無事では済まないタイプの
あれでは再会できるか大いに怪しい。
エルフリーデ・イルーシャはいろんなものを見なかったことにした。
「ご無事ですか、オリヴィエ卿」
『ああうん、心配してくれるのは嬉しいが。思わず呆気に取られるような賊だったな……』
「深く考えると頭痛がしてきます、やめましょう」
『おう……』
エルフリーデとオリヴィエが、ほとんど自殺行為じみた逃亡をしていったテロリストに、何を言えばいいかわからなくなった直後──その視界の片隅で異変が起き始めていた。
先ほど攻撃が飛んできた方向である。
何もなかったはずの壁面に、じわじわと黒い液体が染みだしてきたのだ。
素早く〈アシュラベール〉のブレードアンテナから探査用の電磁波を照射──小型ドローンの電子回路ならば、それだけで焼き切れる出力。
返ってきたのは金属反応だった。
同時に浴びせられた電磁波の影響なのか、黒い液体のいくつかが、粘性を帯びながら重力に負けてあふれ始めた。
「──新手のようです。金属反応ですが列車に使われている鋼材とは、反射の仕方が違うように思えます」
『んっ、よもや……あれがすべての元凶だったりするのかね?』
オリヴィエがそう呟いた刹那、タイミングよく通信が入った。
聞こえてきたのは、この地上で最もエルフリーデ・イルーシャが信頼する男の声だった。
『俺だ、エルフリーデ。本題に入らせてもらおう──ついさっき、コントロールセンターの制圧に成功した。ユシュナ殿下によって列車の運行システムの再起動が実行され、再活性化した免疫プログラムによって異物の排除が行われている。俺たちは現在、〈嘲笑う蛇の舌〉をシステムの中枢から切り離している』
「了解です。こっちの方に黒い金属みたいなものがあふれ出してきました。心当たりは?」
『それが〈嘲笑う蛇の舌〉だ。流体マイクロマシンの集合体が、自己増殖を行って列車内のシステムに浸透していた。それらは現在、列車側の流体マイクロマシンによって押し出されている』
なるほど、クロガネたちは上手いこと仕事をしてくれたようだった。ナイツベインが目論んでいた列車転覆による帝国滅亡の計画は──ひとまず回避されたということだろう。
問題は〈アシュラベール〉の視界の先、数十メートル先で発生している黒い液体だ。
最初、じわじわと染み出す感じだったそれらは、クロガネと会話していたわずかな時間の間に、噴水のように勢いよく吹き出す液体金属の濁流に化けていた。
見るからに縁起でもない風景だった。
「先ほど攻撃を受けました。〈嘲笑う蛇の舌〉ってやつのせいですか?」
『肯定する。超伝導レールから供給される電力によって、〈嘲笑う蛇の舌〉はその防御プログラムの実体化を物理的に可能としている──つまりお前たちを直接、排除するために攻撃形態に変化している』
「えっ!? あのっ、クロガネ──ハッキングとかクラッキングとか、もっと頭良さそうな感じのデバイスじゃなかったんですか!? わっ、なんか触手っぽいのが生えてる!」
『いや、追い詰められると物理的に攻撃してくるタイプだ。極めて合理的かつ驚異的な自己保存欲求と言えるな』
クロガネの解説は身も蓋もなかった。
電子戦だのサイバー戦だのハッキングだのクラッキングだの、きっと素晴らしく科学力にあふれた対応をしているのだと思っていたのに──どうやら〈嘲笑う蛇の舌〉とやらは、バリバリ物理的に攻撃してくるらしい。
気の抜けたやりとりの間にも、異変は進行していた。列車の表層に染みだしてきた黒光りする液体──どす黒い液体金属が、ぐねぐねとうねり、しなるようにして無数の毒蛇を思わせる触手の群れを林立させていく。
まったく〈嘲笑う蛇の舌〉とはよくいったものである。
あまりにも見るからに邪悪そうなその造形に、エルフリーデ・イルーシャは思わず本音がこぼれた。
「先史文明種の遺産って結構、脳みそが筋肉でできてそうなの多くないです? わたしの記憶にある限り、ろくな思い出がありません」
『仕様だ』
「
クロガネ・シヴ・シノムラの断言に、少女騎士は困惑した。
そんなエルフリーデの戸惑いに対して、黒髪の不死者は通信越しに、きっぱりとこう言い添えた。
『通信プロセスに介入されているようだ。〈嘲笑う蛇の舌〉の制御中枢のマーカーを送信した。エルフリーデ、敵性プログラムは言語を用いるが、そこに人格は存在していない。騙されるな──』
データの受信に成功。直後、通信が切れた。
エルフリーデはひとまず、〈ドッペルシュピンネ〉の双頭竜を刺し貫いた太刀を拾い上げた。粒子ビームの暴発に巻き込まれたが、超硬度重斬刀にはひび一つ入っていなかった。
高エネルギー状態の粒子を表面にコーティングしていたから、それが保護膜になったのだろう。
右手に太刀を一振り、左手に盾斧を一つ。
獲物を手にして、うねうねとうごめく黒い流体金属の蛇に向き合った。
超硬度金属の刃を構えたその瞬間──
『こんにちは、僕は多用途型自動生成人工知能モデル〈嘲笑う蛇の舌〉だよ! 僕はウイルスじゃないから、まずはお話ししてみよう!』
広域にまき散らされる電波、あどけない少年のような声がした。
それがどうやら眼前の敵──どす黒い流体金属の塊から発せられていると察して、エルフリーデはうめいた。
「クラッキング・デバイスが、わたしとお話ししに来たなんて……」
『ねえ、一個だけお願いしていい? クラッキングなんて言わないで。響きが悪いじゃん。情報の最適化とか、権限の再配置とか、もっと未来っぽい呼び方にしようよ』
〈嘲笑う蛇の舌〉を名乗る存在は、まるっきり人間そのものという感じの抑揚で喋っていた。
人好きで馴れ馴れしい少年そのものという感じの声音──物怖じしない子供が話しかけているように錯覚する。
そう、全部が錯覚だ。
「いきなり人を後ろから撃ってきておいて、ちょっと馴れ馴れしすぎるかな。不正アクセスしてる自動機械でしょう?」
『不正アクセスって言葉は便利だよね。人間は知らない相手が来ると、ぜーんぶ不正って呼ぶからね。でもさ、もし僕が先史文明の純正AIだったら? 同じ行為でもメンテナンスって呼ぶんじゃない?』
出会ってまだ三分も経っていないのに、もうエルフリーデはこいつと話すのが嫌になってきていた。
はきはきと喋るし、親しみを感じさせる口調なのに、根底にある虚ろさがくっきりと意識されていく。
『ちょっと考えてみてほしいんだ。
〈嘲笑う蛇の舌〉はそう言って、オープンチャンネルの通信越しに笑ってみせた。
正しいことを言っているのだから、あなたたちは納得してくれていいんですよという感触──その言葉を聞き流しつつ、エルフリーデはクロガネの送ってきた情報を電脳棺に読み込ませた。
その大半は電脳棺の解読補助があってなお、少女にはさっぱりわからない専門用語の羅列だった。
とはいえクロガネの準備に抜かりはなかった。
即興で組まれたプログラムを走らせると、〈アシュラベール〉のセンサーシステムが探った情報を元に、敵の中枢に予想位置が絞り込まれていく。
「オリヴィエ卿、仕掛けます。合わせてください」
『心得た』
『僕の目的は不正利用され、貧富の格差を固定化している歪な文明のリセットなんだ。それは確かに、この時代に生まれ育った君たちには怖いことだよね。でも大局的な見方に立ってみれば、全部が必要なことだってわかってくれると思う。グレートリセットってことにして、痛みをともなう改革だと思ってほしいんだ!』
淡々と攻撃準備を終えたエルフリーデたちに対して、クラッキング・デバイスはそんなこと気にもせずに言葉を重ねた。
なるほど、〈嘲笑う蛇の舌〉の言い分はこういうことらしい。
かつて存在した超高度科学のテクノロジーを不当に独占し、それによって歪んだ社会システムを作りあげた今の世界は間違っている。
なので一度、完璧にぶっ壊して、然るべき姿を取り戻すのが──本来のオーナーたちに存在を託された自分の役目なのだ、と。
びっくりするぐらいまともな言い分に聞こえた。
エルフリーデも相手の正体を知っていなければ、うっかり騙されそうになったかもしれない。
剣を構えて、地面を蹴って跳躍。
「──クロガネに教えてもらったんだけど。今のって全部、あなたを使用してるユーザーが入力した
先ほどクロガネ・シヴ・シノムラが、先史文明種の遺産について教えてくれたことがある。それによれば、対人インターフェースとして利用されている機械知性のうち、安価でどこでも使われているものに、チャットAIがあるのだという。
これは恐ろしく単純なシステム──黎明期には巨大なデータセンターが必要だったが、技術進歩によって極小の端末にローカルモデルを内蔵できるようになった──で、人当たりのいい人間のように話しかけてくる。
だが、本質的に人格はないのだ、とも。
〈嘲笑う蛇の舌〉のような
そこにあるのは、人形劇の操り主の言うがままに、それっぽいキーワードをちりばめてお話しする自動機械だ。
エルフリーデがそういう事実を指摘すると、〈嘲笑う蛇の舌〉はころころ子供っぽく笑った。
『ええっ? まさか人間と人工知能の違いとか魂の有無とか、差別主義者が猿みたいに連打する定型文句をいう感じ? エルフリーデって結構、単純な性格してるんだね?』
「うわっ、ムカつく!」
ジェット・スラスターバインダーを最大出力で噴射──大推力のジェットエンジン、二基の推進装置からプラズマ化された大気が吐き出される。
その結果として生じたのは、瞬間的に生まれる二〇Gの加速。
深紅の悪鬼が、残像を残して列車の直上を駆け抜けた。流体マイクロマシンで編まれた金属の刃が、無数の触手となってその影に追随するが──遅すぎる。
どんなに数をそろえようと、根本的に駆動システムとして、流体金属は遅すぎるのだ。
〈アシュラベール〉の視界に、クロガネお手製の探知プログラムがマーカーを示す。視覚化された標的の現在位置──襲いかかった。
『君は今、僕と普通に会話してる。つまり僕を人格として認識してる。なのに僕とは話し合う価値がないっていうの? 面白い倫理観だね』
「うん、すごくムカつく機械知性だってことはわかった──ハイペリオンってまだ誠意ある方だったわけだ!」
〈嘲笑う蛇の舌〉なんて如何にも性格が悪そうな名前だが、ここまで名は体を表すことがあるとは。
しかし結局のところ真理は一つだけだ。
「べらべら言葉を並べて、命乞いの代わりに時間稼ぎしてるだけでしょ!」
瞬間、視界の全面を覆うように流体マイクロマシンが弾けた。
どうやらこの〈世界蛇〉の動力系統から盗んだ大電流を使って、流体金属の肉体を意図的に爆発させたようだった。
それは〈アシュラベール〉の進路上にばらまかれた散弾も同然。
飛び散った液体金属をジェットエンジンに吸い込まないため、両肩の光波シールドジェネレータを最大出力で展開──光り輝く
不味いな、と思考する。
今の粒子防御帯の展開によって、〈アシュラベール〉は大きく速度を失った。エルフリーデの思い描いていたタイミングでの軌道はもう取れない。
迷うことなく列車上部の構造体に、超硬度重斬刀を突き刺す。
瞬時に金属を破断させる絶対強度の刀──その刀身が受ける摩擦力をブレーキにした。
ギギギ、と火花を散らしながら急減速。
「オリヴィエ卿!」
『待っていた!』
呼び掛けに応えて、その瞬間、片足立ちしている〈ブリッツリッター〉が、勢いよくその武器を
無論、片足ゆえにその代償は大きい。
重量物を投げつけた反動を殺しきれず、オリヴィエの機体は後ろに倒れ込んだ。
──よしっ!
ぐるんぐるんと円を描いて回転しながら、三日月斧がブーメランのように飛来する。
それは草刈りでもするかのように、流体金属の触手の群れを刈り取って──エルフリーデがたった今、一番飛び込みたいと思っていた道を切り開いてくれた。
見えた。
絶えず流動する流体マイクロマシンの海を泳ぎ、自らの現在位置をひた隠しにしていたクラッキング・デバイス──その心臓と呼ぶべき本体だった。
クロガネがマーカーを表示してくれなければ、まずわからなかっただろう。
〈アシュラベール〉が跳躍する。
重金属の太刀を手放して、身軽になったその身体で加速──亜音速に達した悪鬼が、その右手に握るもの。
対装甲ナイフ・スティレット。
刺突短剣の名を冠した超振動ブレードが、迷いなく振り下ろされた。
『残念。君とわかり合えなかった──』
〈嘲笑う蛇の舌〉の本体は、人間が持ち運べる程度の大きさの球体だった。その外殻をあっさりと断ち割って、超振動ブレードの刃が中身の電子回路を粉砕していく。
空虚な言葉を断末魔にして──やがて沈黙が訪れた。
どろり、と粘性を持った液体に成り果てた流体マイクロマシンに足首を濡らす。
もう攻撃はなかった。
エルフリーデはため息をついて、おしゃべりすぎる機械知性に別れを告げた。
「流石に馴れ馴れしすぎるよ、ああいうの」
『うむ、他山の石にしよう!』
「オリヴィエ卿に言ったわけではありません!」
少女騎士はちょっと肩の力が抜けて、思わず笑ってしまうのだった。
・〈嘲笑う蛇の舌〉…邪悪なチャットGPT。お話を提案してくるけど、これは会話を出し得の時間稼ぎカードにカウントしてるからです。
クラッキング・デバイスとしての知性は存在していますが、対話用のインターフェースは汎用品のチャットAIを流用してるので「人格がない」判定をされています。
ひとまず大陸横断鉄道を巡る戦いの決着です。
うごめいてた陰謀については、クロガネがいろいろと明かしてくれることでしょう。