機甲猟兵エルフリーデの屈折した恋愛事情~最強ロボパイロットの英雄譚~   作:灰鉄蝸

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英雄哀歌

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ズァレン人武装勢力とマリヴォーネ駐屯軍の戦闘開始から一二〇分後。

 

 

 

 おおむね戦況は英雄カガン率いるゲリラ側にとって優位に推移していた。四脚歩行で山地を駆け回り、自在に陣地転換して狙撃を行うバレットナイト――〈ルーポ・カンノーネ〉型による強力な射撃と、多連装ロケット砲を装備した〈ルーポ・フィアンマ〉型による砲撃が、無防備な駐屯軍に降り注いだからである。

 

 待ち伏せ攻撃であった。マリヴォーネ自治区に移住したズァレン人の子孫から構成される〈ズァレンの怒り〉にとって、この地での戦闘は慣れ親しんだものだった。

 これに対して、練度と装備で劣るマリヴォーネ駐留軍の側は、攻撃への対処が遅れた。本来、指揮官が指示を出して立て直すべき局面だったが、カガンの大型バレットナイト〈ルー・ガルー〉の奇襲により、真っ先に指揮官機を潰されたバレットナイト部隊は蹂躙された。

 

 それは正しく、騎兵突撃を浴びせられた歩兵部隊が辿る運命そのものだった。第三世代に相当するバレットナイトと、第二世代機の中でも近代化改修が遅れている〈アイゼンリッター〉C型の噛み合わせゆえに起きた惨劇である。

 

 あるいはこの時期の帝国製バレットナイトは、他国製バレットナイトの進歩によって、それまで一方的に保持していた優位を失ってきていたと言えよう。

 マリヴォーネ駐屯軍が練度・装備の面で二線級の部隊だったこと、カガン率いるゲリラ側の待ち伏せ戦術と突撃の巧みさ、そして〈ルー・ガルー〉の圧倒的な強襲戦闘における打撃力――様々な要因が絡み合い、戦闘開始から二時間近くが経ってなお、戦況はカガンの側に有利であった。

 

 とはいえ一方的な蹂躙は最初だけだった。

 国際空港の警備に当たっていた戦車部隊の到着によって、マリヴォーネ駐屯軍が体勢を立て直したからである。

 すでに〈ルーポ・フィアンマ〉や〈ルーポ・カンノーネ〉――量産型の動物型バレットナイトが展開していたあたりは、度重なる砲撃を浴びてはげ山のようになっていた。

 こうなっては戦えるものではない。カガンの指示によって部下たちは退却を始めていた。レーザー通信でモンテ・エリゼオ山頂から無線が届く。

 

『団長も撤退してください!』

 

「否。ここで私が引けば総崩れになる。あとから追い付く、お前たちは国境まで逃げろ」

 

 ズァレン人の部下から撤退を進言されてなお、カガンは頑なであった。彼の融合している巨大な狼――ズァレン人の神話において建国の祖とされる大狼アレナスの化身――たる〈ルー・ガルー〉は、その機体サイズゆえに通常のバレットナイトよりも目立っていた。

 

 友軍の戦意を奮い立たせるための橙色の塗装は存外、マリヴォーネの大地と溶け込んでいたけれど。全長七メートルにも達しようかという巨獣は、今や戦車部隊から断続的に砲撃を浴びる側だった。

 

 一三両の軽戦車――ベガニシュ帝国陸軍の戦闘車両が、一〇五ミリライフル砲を叩き込んでくる。〈ルー・ガルー〉はランダム回避運動を行い、ジグザクになるよう地面を蹴りながら猛烈なスピードで機動した。

 

 単発の砲撃など回避運動をしていれば、そう当たるものではない。周囲の〈アイゼンリッター〉の生き残りが撃ち込んでくる二〇ミリ機関砲を、光波シールドジェネレータで受け止めながら、刃の生えた巨獣は時速二〇〇キロメートル以上の高速で地面を駆け抜けた。

 

 目にも止まらぬ疾走だった。また一機の〈アイゼンリッター〉が、カガンの間合いに入った。死神の大鎌が生えた一対二本の副腕〈フォシーユ・ドゥ・ラ・モール〉が振るわれ、回避運動を取って飛び退った巨人を両断する。

 

『――ぐがっ』

 

「死ぬがいい」

 

 カガンは静かに帝国の尖兵を殺した。彼の心にあるのは憎しみではなかった。マリヴォーネを戦火に巻き込むと決めたのは、もっと冷酷な判断――発掘した先史文明種の遺産を輸送する時間稼ぎ――でしかない。

 

 あるいはずっと前、ズァレン王国が滅んだばかりの頃だったなら、彼の戦いには憎悪があったことだろう。しかしカガンは老いた。一度は死んだはずの肉体が蘇り、不死の道行きに目覚めたあと、ズァレン人の英雄を待っていたのはあてどない流浪の旅路であった。

 

 多くのものが死んだ。王族も貴族も騎士もベガニシュと戦って死に絶えた。強大なる侵略者の群れは、まるで飢えた獣のようにズァレン人からすべてを奪い尽くしていった。あとに残されたのは財産も尊厳も奪われて、ただ呆然と立ち尽くすばかりの人々であった。

 

 勇者カガンが生きた時代、確かにそこにあった故郷は滅んでいた。そこに住まう人々の営為も、文化も、何もかもが踏みにじられた。

 飢餓と疫病と貧困だけが、ズァレン人に残された生になった。

 

 あれから長い月日が経った。大陸全土に散っていったズァレン人は、今やベガニシュ帝国の支配構造に組み込まれ、その下層民として生きることを余儀なくされている。

 例外はなかった。異国であるバナヴィアに渡ったものたちも、ベガニシュ帝国がこれを滅ぼしたことで安住の地を失った。勇者カガンはすべてを見届けた――つまるところベガニシュ帝国という邪悪を滅ぼさぬ限り、ズァレン人が安心して生きていける世界などやってこないのだ。

 ゆえにカガンは殺す。憎しみではなく、使命としてベガニシュ兵を一人でも多く殺すのだ。

 

「侵略者よ。お前たちは死ぬことで我らの礎になるのだ」

 

『クソッ、クソッ、テロリストのクズがっ!』

 

 〈ルー・ガルー〉が地面を蹴った。その異常な機動力に怯えて、戦車部隊が後退を始めていた。狂ったように機関砲を浴びせてくる〈アイゼンリッター〉をまた一機、切り捨ててカガンは次の敵を探した。

 

 彼はあらゆる生命と尊厳を、ズァレン人の怒りのために捧げた戦士だった。祖国を滅ぼされ、何世代ものズァレン人が苦しみ抜いた。報われない人生を呪って、貧しさの中で数多の同胞が死んでいった。

 

 すべてベガニシュ帝国が、彼らに与えた不幸である。戦う力すら奪われ、家畜のように酷使される人々の抱いた怒りを、誰かが代弁しなければいけなかった。

 それがマリヴォーネに戦火をもたらす結果になろうと、カガンはそれを意に介さない。

 不意にカガンは気づいた。戦車部隊の撤退のペースが速すぎる。これは彼と〈ルー・ガルー〉を恐れているというよりも、もっと別の何かを――

 

 

――地平線の彼方に光が見えた。

 

 

 不味い。光波シールドジェネレータの出力を最大限に引き上げて、分厚いエネルギーバリアの盾を展開した瞬間、凄まじい熱と光が大地を包み込んだ。

 それは物質と相互作用する状態に励起され、高エネルギーを帯びたエーテル粒子の濁流だった。直径五メートルはあろうかという粒子ビームの束が、超高速で大地を薙ぎ払ったのである。

 

 〈ルー・ガルー〉にその粒子ビームが直撃しなかったのは、純粋にカガンの幸運だった。直前で彼が取ったランダム回避運動が、超大型熱線砲の直撃を辛うじて防いだといってもいい。

 だが、浴びせられた超高エネルギーの洪水は、その余波だけで〈ルー・ガルー〉を大きく傷つけていた。

 閃光。

 吹き荒れたエーテル粒子の飛沫が、アルケー樹脂装甲を穴だらけにした。テロス合金製の刃を備えた副腕が、その間接機構が、人工筋肉が断裂して千切れ飛んだ。

 熱波と暴風が、閃光と共に吹き荒れる。大地が飴のように溶けた。高エネルギー粒子の直撃した地面では、瞬時に気化した土砂が爆発的に膨張し、熱せられた大気が巨大な爆発を生んでいた。

 

 重戦車ほどもある〈ルー・ガルー〉の巨体が、まるで嵐にさらされた子犬のように吹き飛んだ。爆風の壁によって大地が薙ぎ払われ、その余波だけで大型バレットナイトが地面に叩きつけられる。

 融合者であるカガンは、機体のあちこちが上げる悲鳴を聞いていた。電脳棺の機体管理パラメータに次々と危険域を示す警告がポップする。背部ガンターレットに装備していた機関砲は破損して使用不能になっていた。

 

 尋常ならざる破壊規模であった。辛うじて生きている頭部センサーで周囲を確認する。

 はるか彼方から投射された光――超高出力のエーテル粒子ビーム砲の被害は甚大だった。半径数百メートル圏内が爆風によって蹂躙され、着弾点には高熱でガラス化したクレーターが穿たれていた。

 

 〈ルー・ガルー〉の周囲にいた、マリヴォーネ駐屯軍側のバレットナイト部隊は爆風に吹き飛ばされ、そのほとんどが動かなくなっていた。仮に機体中枢である電脳棺は無事だったとしても、駆動フレームに深刻な損傷を負ってしまったのだろう。

 カガンが戦場に選んだのは、マリヴォーネ市の中心市街地から十数キロ離れた郊外の野原だったが――今では地表の土砂がめくれ上がり、生い茂っていた雑草は跡形もなく灰に還っていた。

 高温の熱風によって灰が舞い上がり、炭になった小木が地面に倒れ伏していた。

 

 

――ベガニシュの熱線砲か?

 

 

 だが、それはカガンの知る熱線砲の破壊力をはるかに超えていた。一撃で大地をえぐり取り、草木を燃やし尽くしたために火災すら起きない爆発的な破壊力。

 彼のバレットナイトがまだ歩けるのが奇跡のようだった。ゆっくりと立ち上がり、勇者カガンは撤退しようとした。自分が引き際を見誤ったことを悟り、のろのろと歩き始めた彼は――大きな足音を聞いた。

 文字通り、大地を揺るがすような死の足音だ。

 地面が揺れる。振動がどんどん近づいてくる。最初、遠近感が狂っていると思うほどの大きさ――城塞を思わせる馬鹿でかい何か――六本の足で地面を踏みしめる途方もない巨躯。

 

 カガンはそれを見た。

 古代の神殿にそそり立つ柱を思わせる歩行脚、大蛇と見まごうほど長い首と尾、全体的に長すぎる胴体。文字通り歩く城塞と呼ぶに相応しい駆体に、軍艦の艦橋を思わせるレーダーユニットを乗せた馬鹿でかい竜。

 そう、それは陸上歩行要塞であり、駆動フレームと装甲と人工筋肉で構築された竜であった。

 

 六本の足で歩く竜など神話でもお目にかかれないが、カガンの知識に照らし合わせるなら、その巨体を形容するのに最も相応しいのは邪悪な竜だった。

 そう、あるいはマリヴォーネの神話に語られる邪悪なもの、無数の怪物たちの母となった巨竜のように。

 

 

――あるいはクロガネ・シヴ・シノムラがその巨竜を目にしたなら、竜脚類のようだと漏らしたかもしれない。

 

 

 たった十数万年の歴史しかないこの世界には存在しない古生物、恐竜と呼ばれた存在に酷似した異形のもの。

 それは悠々と大地を歩いて、必死に逃げ延びようとするカガンに追いすがってきた。遠目にはゆっくりに見える動きだが、巨竜はその歩幅が大きすぎて実際の移動速度は速いのだ。

 

 どごぉん、どごぉん、と馬鹿げた足音。冗談みたいに巨大な、全長五〇メートルを超える長い首と尾を持つ化け物が、半死半生の手負いとなった〈ルー・ガルー〉の目の前にまでやって来た。

 

 巨体が日光を遮り、〈ルー・ガルー〉を見下ろしていた。

 何故撃ってこないのか、カガンには理解できなかった。あれほど強力な熱線砲を持つ兵器が、何もしてこないなど戦術的にはありえなかった。

 そんな彼の戦士としての合理性を嘲笑うように、巨竜が喋り始めた。機体に据え付けられた拡声器が、電脳棺に融合している人間の声を再生しているのだ。

 

 

『はははは、素晴らしいな! これが私の力だ、見たか! 我が〈シュタルクドラッヘ〉のベガニシュ・カノーネを持ってすれば、貴様らのような不穏分子など取るに足らぬゴミクズなのだ!』

 

 

 軽薄な男の声。ベガニシュ語であった。カガンはそれだけで眼前の歩行城塞の主の本性を見抜いた。肥大化したエゴ、虚栄心の塊のような腐りきったベガニシュ貴族の姿が目に浮かぶようだった。味方を全滅させたことなど何とも思っていない、堕落しきった自我の腐敗臭がした。

 

 勇者カガンが何かを言うよりも早く、その前脚が〈ルー・ガルー〉の身体を掠めた。文字通り骨格が軋むような衝撃と共に、カガンは数メートル蹴り飛ばされた。

 人狼が大地の上を転がる。

 

「……ぐ、あぁあ……!」

 

『おっと、楽には殺さぬぞ賊めが! 死んでいった部下たちの仇だ――』

 

 ついさっき、自分の砲撃がその部下とやらを殺し尽くしたことも忘れて、城塞と見まごうばかりの巨竜が邪悪な笑い声を上げる。

 カガンは歯噛みした。自分は老いたことを痛感する。よもや引き際を見誤り、このような愚物に弄ばれる醜態をさらすとは。だが、まだ機体の負ったダメージは許容範囲内である。戦闘出力での駆動は不可能だが、低負荷モードでの走行ならできよう。

 どうにか逃亡できる隙ができないかと、必死に起き上がるカガンを見て、長い首を持つ城塞竜――〈シュタルクドラッヘ〉が笑う。

 

 

『おお、逃げるか! それもいい、余興である!』

 

 

 のろのろと地面を逃げ回る狼を追いかけて、全長五五メートル、胴体長二五メートル、肩高一二メートルにも及ぶ巨竜が地面を踏みしめる。それはベガニシュ帝国が誇る戦闘車両の設計・開発・生産の本場、ラドムンク兵器工廠の作りあげた超大型熱線砲――複数の電脳棺と人型駆動フレームを組み込み、巨大な砲身に見立てた自走多脚対空砲であった。

 

 地面が砕け散る。抗重力場機関による自重軽減があってなお、重すぎて地面を踏みしめる度に陥没させる巨体だった。もちろん如何にバレットナイトといえど、あんなものに踏み潰されれば大破するだろう。

 

 カガンは今や騎兵でも狩りを行う側でもなかった。わざと手負いの状態で離され、その死に向かう様子を楽しまれるだけの獲物の側だった。

 歯を食いしばって、〈ルー・ガルー〉は逃げ続ける。足を止めれば自分を踏み殺されることを知っているから、どんなに惨めでも必死で逃げるしかなかった。

 

 

『さぁ、さぁ、さぁ! もっと私を楽しませろ――むっ?』

 

 

 〈シュタルクドラッヘ〉が足を止めた。

 その頭部――ほぼ粒子ビームを吐き出すだけの射出口に過ぎない砲身が、ゆっくりと空の彼方を見つめた。人工筋肉で支えられた長い首が、ぴんと張り詰めていく。背中に背負った巨大な三次元レーダーユニットが、強烈なレーダー波を放って索敵を行う。

 巨竜の身体を支える六本の足が姿勢制御を行い、〈シュタルクドラッヘ〉の粒子ビームのジェネレータと粒子加速器を兼ねた砲身の角度を調整。

 

 その骨格に組み込まれた無数の電脳棺が、莫大な量のエネルギーを生み出していき、高エネルギー粒子となったエーテルを集束させていく。淡い燐光が射出口から漏れた次の瞬間――閃光が弾けた。

 

 超大型熱線砲、ベガニシュ・カノーネとも呼ばれる粒子ビーム砲である。大気が高エネルギー放射によって引き裂かれ、音速の二〇倍以上の速さで吐き出された光の濁流は、寸分違わぬ精密射撃で時速六八〇キロメートルで飛行する輸送機を打ち砕いた。

 数十キロ先に存在した何か――ヴガレムル伯領から飛来した高速輸送機から、何かが投下されていたことに気づいていながら、〈シュタルクドラッヘ〉の指揮を執る男はそれを気に留めなかった。

 

 

『……なんだ?』

 

 

 それが自身の破滅を決定づけるものだと知らぬまま、〈シュタルクドラッヘ〉を統括する融合者――パウル・シェスカ大佐は首を傾げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 















・〈シュタルクドラッヘ〉
城塞雷竜。
全長55メートル、胴体長25メートル、肩高12メートル。
最大時速130キロメートル、巡航速度60キロメートル。
竜脚類を思わせる巨大・長大な竜の首/竜の尾を持った陸上歩行式自走対空砲。文字通りの怪物的巨砲である。
これはバレットナイトの人型駆動フレームを転用したジェネレータ・ブロックを6個ずつ連結させたもので、機体全体が人工筋肉に支持された粒子ビーム加速器である。
大陸間戦争=ガルテグ連邦との全面戦争で、航空機からの爆撃の威力を認識したベガニシュ帝国陸軍は、これに対する強力な防空システムを求めた。
既存の地対空ミサイル、地対空レールガンの射程延長と並行して進められたのが、粒子ビーム兵器――熱線砲搭載型の対空自走砲の開発であった。
ラドムンク兵器工廠とベガニシュ帝国先進技術研究所が共同で設計・開発したのが〈シュタルクドラッヘ〉である。

戦闘車両の設計・開発を行ってきたラドムンク兵器工廠と、バレットナイトを生み出したベガニシュ帝国先進技術研究所のノウハウが融合した本機は、極めて高度な防空能力を獲得した。
しかし大陸間戦争の終戦を受けて、前線への配備はキャンセルされた。

事情が変わったのはフィルニカ王国に出現した巨大ロボット兵器〈イノーマス・マローダー〉の存在と推定スペックが判明した時期である。
この超巨大兵器の存在を受けて、急遽、試作車両の製造が行われたのが本機である。
50メートル級の巨体と1200ミリレールキャノンという規格外の巨大砲を持った〈イノーマス・マローダー〉が仮想敵であり、〈シュタルクドラッヘ〉に期待されたのは、極超音速・大質量の1200ミリ砲に対する迎撃手段である。

15トンの質量体を超高速で射出する1200ミリ砲に対して、既存の地対空ミサイルでは対応できないのは明白だった。
そこでベガニシュ帝国陸軍では、高出力エネルギー兵器で弾頭を破砕するというアプローチを模索した。

その原理は単純で、高出力・高速・長射程のエーテル粒子砲――熱線砲を用いるというものだった。
本来、バレットナイト(アイゼンリッター型に使われているものを転用)の骨格となる駆動フレームを連結させ、人工筋肉で動かして粒子砲の仰角を調整する。
熱線砲の砲身となる粒子加速器はチューブ状構造体となっており、長大な首と尾全体を使ってエーテル粒子を充填・集束・加速させる。
尾の先端から首の先端まで粒子加速チューブを通って充填された膨大な流量のエーテル粒子は、チューブの循環構造によって尾の先端に再び送り込まれる。
そして50メートル以上もの長さを誇る加速器によって、すべてのエーテル粒子は高速・高エネルギー体となって放出――目標を粉々に打ち砕く。
このとき放出される超高インパルス粒子ビームは、広範囲に散布される上、コンマ数秒の接触でさえ物理的実体にとって致命的なダメージをもたらす。

装甲にはアルケー樹脂が採用されており、城塞じみた巨大な見た目に反して重量は比較的軽い。
本機は上空から飛来する砲撃およびミサイル攻撃の迎撃が主任務である。
しかしベガニシュ帝国独自の用兵思想により、直接照準による長距離射撃も視野に入れて設計されていた。
〈シュタルクドラッヘ〉による対地攻撃の威力は凄まじく、熱線砲の着弾地点を中心に生じた火球と熱波によって、都市に壊滅的な被害をもたらすとされる。
搭乗員は15名。15人分の電脳棺を利用しており、このうち3名が制御する巨大人型フレーム3体を使った6足歩行を行う。

つまり東洋の伝統芸能――獅子舞のように複数人が並んで多脚歩行システムの制御を行っている。
また抗重力場機関を搭載することで擬似的浮力を得、水上航行が可能である。
オプション装備として脚部にスクリューユニットを搭載する。

武装
・頭部主砲:超大型集束熱線砲〈ベガニシュ・カノーネ〉…通称ベガニシュ砲。超高出力・超高速のエーテル粒子ビーム砲。
・首部/尾部:対地対空熱線砲×10…BKが運用する通常サイズのビーム砲。
・胴部:三次元レーダー×1
・背部:複合センサーユニット…背びれのようなユニット。
・背部:多目的ミサイル発射管×40
・抗重力場機関×1













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