テラフォーマーズ Beast of destroyer 作:ダイダゼノンド
一応解釈違いにご注意を。
「・・・・・・」
その日、火星に一人の男が降り立った。
巨大な身体。
両肩と胸にある竜の頭。
全身に見られる力強い爪。
左腕についた有機的が過ぎる盾。
右腕に握られた歪な刃をした剣。
そして、頭部から生えるまるで冠のような竜の翼。
およそ人間ではない、異形の姿。
「・・・・・・」
大地に立つも微動だにせず、ひたすらに地平の彼方を睨む。
「・・・・・・マグマロケット!」
突如右腕の剣を射出すると、遠くに見える三角形の建造物を爆破した。
「・・・・・・いるのだろう?出てこい!このデストロン破壊大帝、マグマトロンが相手をしてくれる!」
名乗りを上げると同時に、高速で飛来する影。
「・・・・・・!」
この影を視認した瞬間、待ってましたと言わんばかりに顔が歪む。
上がった口角が戻らない。
「ギガミサイル!」
射出され、刃無き柄から無数のミサイルが放たれる。
ミサイルは影の主に直撃し、何百体の死骸が大地を埋める。
「じょうじ!」
「・・・・・・小手調べは済んだ。というところか」
「じょうじ!」「じょうじ!」「じょうじ!」「じょうじ!」「じょうじ!」「じょうじ!」「じょうじ!」「じょうじ!」「じょうじ!」「じょうじ!」「じょうじ!」「じょうじ!」「じょうじ!」「じょうじ!」「じょうじ!」「じょうじ!」「じょうじ!」「じょうじ!」「じょうじ!」「じょうじ!」「じょうじ!」「じょうじ!」「じょうじ!」「じょうじ!」「じょうじ!」「じょうじ!」「じょうじ!」「じょうじ!」「じょうじ!」「じょうじ!」「じょうじ!」「じょうじ!」「じょうじ!」「じょうじ!」「じょうじ!」「じょうじ!」「じょうじ!」「じょうじ!」「じょうじ!」「じょうじ!」「じょうじ!」「じょうじ!」「じょうじ!」「じょうじ!」「じょうじ!」「じょうじ!」「じょうじ!」「じょうじ!」「じょうじ!」「じょうじ!」「じょうじ!」「じょうじ!」「じょうじ!」「じょうじ!」「じょうじ!」「じょうじ!」「じょうじ!」「じょうじ!」「じょうじ!」「じょうじ!」「じょうじ!」「じょうじ!」「じょうじ!」「じょうじ!」「じじょうじ!」
気づけば、自らを取り囲むように、黒い者達が群がっている。
「じじょうじょじ、じじじょう。じょうじ!」
一際長い鳴き声を合図にしてか、一斉に石が投げられる。
無数の礫が襲いかかる。並の生命体では一瞬で肉塊と化すだろう。
並の生命体では。
「フンッ!」
跳躍。
一飛びで礫の雨を越え、意味なく投げられた石が山を築き上げる。
「ウィングミサイル!」
頭部から放たれたミサイルが石山に撃ち込まれ、再び礫となって地上の生命体に襲いかかる。
断末魔すら上げられず死に絶えていく。
これで、およそ戦力の十分の一は潰えただろう。
「この程度・・・・・・いや、そんなはずはないであろう?先遣隊はもう十分だ」
余裕綽々。
一切の疲弊無く。また一切の負傷無く、歩みを進める。
「ぬぅっ!」
大地を踏みしめ歩き出してすぐ、足に掴みかかる者がいた。
「じょうじ!」
「なるほどな・・・・・・」
それは、全生命体の中でもトップクラスの力を持つ昆虫。
別称を弾丸蟻、パラポネラである。
本来は人間に潰され殺されるであろう蟻でも、人間のサイズになれば、強大な力を持つ脅威と化すだろう。
現に、この個体はたった一匹でマグマトロンに食らいついてる。
が、しかし。
人間大になった生命体は、確かに人間にとって脅威と呼べる。
だがそれは相手が人間であった場合に限る。
そう、相手が悪すぎた。
「フン」
掴まれている足から振り落とし、そのまま踏み潰す。
「・・・・・・粘るな」
自慢の怪力を駆使し、なんとか耐える。
そこでマグマトロンは一度足を上げた。
「フン!」
そして、勢いよく。
確実に、力を抜いたであろう刹那。
全体重をかけ、潰された。
「・・・・・・やはり、ままならんものだな。自分より小さいものとの戦いは」
じっと、遠くを見つめる。
黒い死骸の山。
その先に見える、蠢く黒。
「・・・・・・来るか」
刹那、天を覆う黒。
背を開き、翅を動かし飛ぶ姿。
そして、大地を駆け抜くその姿。
それは、正しくゴキブリを象徴しているかの如く。
害虫の王は、火星において正統統治者。
そう言わんばかりに、自らに向けられる敵意。そして害意。
それがあまりに心地良く、久しいものであることは、言うまでも無い。
自分目掛けて迫りくる、有象無象。
かつて宿敵と繰り広げた戦いの日々。
それを想起させるには十分過ぎる光景。
すでに歪んだ顔、上がり続けていた口角が戻る。
感情の無い顔にて、歩く。
その顔は、紛れもなく戦乱の時代、戦いに慣れた王の顔。
自らに襲い来る水。
超高圧力にて噴射される、テッポウウオの特性。
それは、この大帝の身体を濡らすには十分。
しかし、この大帝の身体を貫くには、不足が過ぎる。
続いて降りかかるは、高熱、炎。
高威力の化学物質を吹きかける、ミイデラゴミムシの特性。
それは、この大帝の身体に届かせるには十分。
しかし、この大帝の身体を焼くには、あまりにも無力。
ゴキブリにとって、これは、未知。
曲がりなりにも自分達と同じ、人間とは違うなにか。
大帝は、静かに。しかして威風堂々と進む。
未知のもの。
それも、自分達を滅ぼすには十分過ぎる力を持つ者へ、一切の躊躇なく挑む。
これは蛮勇か。それとも、ただ命令を遂行するだけの単純思考か。
いずれにせよ、破壊大帝は歩みを止めない。
そして、害虫の王達もまた、進み続ける。
距離という均衡は、今、破綻した。
「シールドクラッシャー!」
左腕の盾から放たれる衝撃。
杭打機の如く突き刺さり、辺りの大地を破壊する。
崩れ、巻き込まれ、数え切れない程の命が散る。
平地であるにもかかわらず、土砂崩れのように土塊が巻き上がり、降りかかる。
「ウィングミサイル!」
空から来る者達に襲いかかる爆弾。
無論誘爆性も何も無い生命体への攻撃。一度着弾すれば更にが無い代物。
しかし、生命体への攻撃であることが功を奏する。
生命体は、そのほとんどが燃焼可能。
ミサイルの破片、弾けた死骸の欠片が他の個体に傷をつけ、すぐ後に来る爆炎が傷の中にある脂肪及び体液に引火。
高熱に耐性を得てもなお、変わらない生命体の性。
あいにくこの炎はすぐに消えるが、焼かれ飛翔を維持できなくなった者が地面に落ち、大地を走る同族を潰していく。
その間も大帝は歩み、王達は走る。
なぜ、殺され続けてなお、走るのか。
それは、成功体験があるから。
かつて火星に飛来した人類を追い返した経験があるから。
どれだけ大きかろうと関係ない。奇想天外な行動をする人間は、いた。
今回も同じ。
大きいだけの、今までと大差ない人間。
そう、判断していた。
決めつけていた。
「ビーストモード!」
大帝の声が木霊する。
瞬間。身体が崩れ、三つに分かれる。
空を飛び、大地を揺らし、雄叫びを上げる。
切り裂き昇る、スカイサウルス。
薙ぎ払い佇む、シーサウルス。
歩み踏み潰す、ランドサウルス。
それは、紛れもなく、捕食者の姿。
500年の間、天敵のいない星で進化した彼らにとって、不要だった本能を呼び起こす引き金。
自分達は決して覇者などではなく、より強い者に食べれる被捕食者。
そしてなにより、進化し獲得した知能が告げる、絶対的恐怖。
「キイィィィーーー!」
甲高い声。
恐怖に耐えきれないゴキブリが出す、悲鳴。
思わず逃げる。しかし、前にも後ろにも同族。
大地は壊され足場が悪い。
空はすでに翼竜が覇権を握る。
思考を巡らせる。
しかし無意味。
油断すれば、首長竜の餌食になる。
行動に移せば、同族が邪魔になり、恐竜に潰される。
逃げ場はない。あるはずがない。あってもそれは使えない。
階級とはなんとも不便なものか。
こうしている間にも、命の危機が迫りくる。
もはや、未来は無い。
思考とは、知能とは、とっさの判断を鈍らせる。
自分より巨大な者は強い。
一度の攻撃で仕留められないなら、次は自分が襲われる。
どれも自然界の常識。
しかし、火星には虫と苔、菌しかない。
食物連鎖など、生み、食べ、分解。この三すくみしか無いようなもの。
そんな場所で力を得た者達の前に降り立った、食物連鎖の頂点。
火星のゴキブリが知能を獲得してから、あまりにも遅い、絶望の理解。
「じょうじ!じょう!」
叫べば、喰われる。
当然だ。
自然界では、目立ったものから喰われ死ぬ。
だからこそ寄生虫が通用するのだ。
喰われ死ぬ。
潰され死ぬ。
翼に叩き落とされ死ぬ。
死ぬ。
死ぬ。
死ぬ。
今この場を遠目に見れば、恐竜達の捕食シーンという、浪漫溢れる光景が広がっているだろう。
しかし、それを観測する者はいない。
覚え伝える者などいるはずがない。
ここは、火星。
文明無き場所、未開の地なのだから。
「じょう、じょう、じょう・・・・・・」
惨状から逃れられる者がいるとすれば、それは階級の高い者。
いわゆる幹部、指導者といった存在だろう。
他の個体と違い、スキンヘッドの個体。
首に毛皮を纏うこの個体は、涙を流している。
心が、恐怖に覆われたのだ。
心という曖昧模糊なもので表さずとも、脳が処理できる状況を、現実が超過したと言い表せる。
とにかく逃げる。
死にたくない。
自分には他の個体とは違い価値がある。
生き残る必要がある。
そう、確信しているかのように。
「じょ・・・・・・」
火星のゴキブリは、蟻や蜂等のようなものと言える。
一匹、または少数の絶対的王者の下に無数の兵士が存在する。
どれだけ兵隊が減ったとしても、王だけでも生き残ればいくらでも群れを、巣を再建できる。
が、しかし。
どれだけ特異な性質を、能力を持っていたとしても、虫は虫。
捕食者に、そんなものは関係ない。
目前に降り立った空の覇者。
瞳に己が映る。
たじろぐ体。末路を悟り、言うことを聞かない。
「じょ・・・・・・キイィィィーーー!!!」
振り向き、飛ぶ。
己の限界を越えて翅を動かす。
翼竜の間合いを越え、下級個体の骸を越え、遂に離脱する
───はずだった。
「じょう・・・・・・じ・・・・・・!」
下半身に噛みつく首長竜。
翅は動く。だが進めない。
徐々に強くなる力。
ヒビが走る外骨格。軋む筋肉。
脂肪が漏れ出し、神経が露出する。
肉の筋の一本一本を、強引に噛みちぎる。
それでも、王は翅を動かし続ける。
全ては、生きるために。
刹那、訪れる浮遊感。
飛べている感覚。
下半身を失ってなお、生にしがみつく姿。それは、知的生命体という存在の縮図と言える。
この王が虫でなかったとしたら、奇跡が起きてたとしてもなんらおかしくなかっただろう。
しかし、肉体の半分を失った虫など、格好の餌にすぎない。
飛来する翼竜。
肉体のバランスが崩れ、片方に傾く重心。
その姿を形容するならば、死にかけのクマバチと言えるだろうか。
自身よりも上から狙う捕食者。
この個体の末路は、最早言うまでも無い。
「変身!」
三体の竜が合わさり、再び人型になる。
「・・・・・・偶然来た星だったが、なかなか良いものだった」
火星を蹂躙し、再生不可能な程までに命を狩った大帝は、満足気に呟いた。
「・・・・・・まだいるか」
背後に感じる気配。
しかし、振り向いたときにはもういない。
この星のゴキブリ達に、もう進化の余地は無いだろう。
自分達よりも強い者を知ってしまったから。
どれだけの研鑽を積んでなお、届かないモノを知ってしまったから。
自分達の都合、命なんて関係無く破壊する、嵐を知ってしまったから。
眠っていた本能を、かつての先祖が置かれていた立場を、思い出してしまったから。
「うむ・・・・・・この星を、新たなデストロンの戦艦に作り替えるのも、良いかもしれん。どうやらこの星の住人たちは、別の惑星でも問題ないようだからな・・・・・・だが、やめておこう。今また戦艦なんぞ作れば、面倒な問題に発展しかねん」
ふと足元を見ると、破壊された機械を発見した。
「トランスワープ・・・・・・なんと因果なものか。よもや、こんな時代に飛ばされるとはな」
破壊された機械の内部。一部革のような素材が使われている。まだ劣化しきっていない。
「地球、か・・・・・・」
脳裏によぎる、トランスフォーマーの歴史。
このとき、地球は戦場となっているが、今のマグマトロンにそれを知る術は無い。
「・・・・・・申し訳無さまでも湧いて出る。我々トランスフォーマーと関わりの深い星を、ワシの手で戦場に変えるとは」
その呟きを最後に、破壊大帝は火星を飛び去った。
生命の星、地球を目指して。
オリキャラは2話から出そうと思っています。