日が落ち始め、空が茜色に染まる頃、少年が一人、公園のベンチで缶コーヒーを飲んでいる。
「マジでどうしようかな……一歩間違えると人類滅ぶんだよな」
この少年…如月優こそ、よりにもよってシンフォギアの世界に転生してしまった者である。
技術チート持ちの転生者なのだが…この世界はそんな甘くない。
1期のラスボスは愛憎で月の破壊を試みる愛の重すぎる女、2期のラスボスは月を落とそうとする様子のおかしい変人、3期のラスボスは世界を滅ぼそうとするファザコン、4期のラスボスは神を越えることを企む人外、5期は神。
「どいつもこいつもやべぇ奴しかいねぇや」
どいつもこいつもヤバいのである。
ただ、この少年もチート系転生者。一応ラスボスを対処すること自体は可能だろう。対処だけなら問題ないのだが……
「下手な事してラスボス達が強化されてヤバい可能性が…てかギャラルホルンのせいで何が起こるか予測できん……」
ギャラルホルン…平行世界及び異世界と繋がる完全聖遺物。こいつが起動するだけで何が起こる分からない、多作品とコラボするためだけに産まれたと言っても過言じゃない聖遺物。
ちなみに特にヤバいのは特撮コラボである。流石の転生者でもキツい。いろいろと規模が大きすぎるのだ。
「技術チートで出来ること……スーパーロボットでも作るべきか」
しかし、作ったら作ったでコイツらが原因で滅ぶ可能性が……と優は頭を抱える。
優がここまで憂鬱になっている原因はラスボス共ではなく彼の幼馴染が原因である。
「そもそも響をライブに行かせるの本当に嫌だ。というか不幸な目に遭わずにいて欲しいんだよなぁ」
戦姫絶唱シンフォギアというアニメの主人公である立花響が原因であった。
最初は主人公の友達というネームドキャラになれば、モブを卒業して死ぬ可能性低くなるだろうという下心全開で近づいたのだが…優は立花響に情が移ってしまった。
幼稚園の頃からの付き合いというのもあるのだが…彼女は善人なのだ。それもとびきりの。
「響になんかあったら立ち直れない…確実に死ぬまで罪悪感に苛まれる。てか未来が怖い」
立花響と友達になるとオマケで友達になる小日向未来、そんな彼女は愛も重いため何してくるか予想がつかない。
どうあがいても絶望とはこの事である。せっかく転生したのにどうしてこんな目に…と嘆いているが2周目貰えただけマシだと思え。
「一人で考えててもしょうがないか…」
一人でどうにかすることを諦め、優は頼れる友人に連絡をすることした。
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「響、明日のライブ行くと死にかけ迫害され、様子のおかしい奴等に絡まれるという不幸な日々を過ごすことになるって言ったらどうする? 笑う?」
「どこに笑えるところがあったの!? ていうか何で前の日に!」
これである。
この男、響を呼び出して今後起きる事を吐いたのである。それもライブの前日に。
「いや、だってさ…無理じゃん。 最初は一人でどうにかしようとか考えたよ。 でもさ、無理じゃん? 笑うしかないじゃん」
ハハハと優は笑うが目は死んでいる。
「もうそれ笑って誤魔化してるだけだよね!? 目に光がないよ!?」
「本当にヤバかったら、こっそり作った人工島に逃げようぜ。自給自足も余裕よ」
「逃げる準備までしてある!?」
過去にこんな理由で主人公を巻き込む奴が存在しただろうか? しかも一人で抱え込めないという理由で。
「ちなみに未来に言うかどうか決めてないから、そこん所よろしくね」
「…どうして?」
「未来以外なら神だろうとどうにかする手段あるけど、乗っ取られてようと未来殴るのは嫌じゃん」
優という男は基本的には男女平等に拳を振るえるが、仲のいい女の子を殴るのは流石に嫌だった。
「まぁ、そういうわけなんで…どうするよ」
「どうするって言われても……」
「まぁ、別にライブには行かなくてもいいよ。 なんとかするから」
「もしも…私がガングニール?を使えるようになったら…助かる人って増える?」
「さぁ?」
「さぁ!? 未来分かるんじゃないの!?」
「ギャラルホルンってのが原因で確実じゃ無くなった」
今後現れるであろう敵は一筋縄ではいかない曲者揃い。 武力自体はあるため正面対決に持っていくことが出来れば勝利することが出来るが、優は一人だ。相手の動き方によっては犠牲者が増える可能性は高い。
その上、ギャラルホルンというとんでも聖遺物が存在するこの世界では何が起こるか予測が付かないため、優としても無責任なことは言えない。
「でもまぁ…どうにか響と未来は守るよ」
「優くん……」
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ライブ当日…優は何時でも動けるように準備をしていた。
「まぁ、やることはやったかな」
結局、響はライブに行くという決断をした。 立花響という存在はどこまでいっても善人なのだ。
「…とにかく響が死なないようにしないと…現状イレギュラーはない。 このまま事が進んでくれ」
ここまで来たら祈ることしか出来ない。
死なないように近づいた存在の為にわざわざ危険な目に突っ込んで行くなんてな……優はため息をつく。
「始まったか……」
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結論から言うとことは予定通りにすすんだ。違いがあるとすれば天羽奏が生存したこと、死者がかなり減ったことだ。
技術チートで作られたメカ達による仕事である。
しかし、迫害は起きた。原因はマスコミなり遺族の逆恨みだったりだ。生存した天羽奏が表だって対処しようとしたが…それでも止められなかったのである。
響のことを守りつつ、今後の対策を考えてた優に想定外の自体が起こる。未来の引っ越しが決まったのだ。
優は頭を抱える。確認した限り本編に近い時空だったはずだ。少なくとも司令は最強格だったはずだ。
「最後のプランだ……」
優は携帯を取り出し幼馴染み二人のグループチャットに大事なもの持って家に来てくれと書き込んだ。
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「というわけで、人工島に逃げるんだけど未来も来る?」
「待って、本当に待って!? 時間が欲しい!?」
「優くん、ギリギリで全部言っちゃうの辞めた方がいいと思うよ」
「響の時よりは早いから許して……」
この男、またもや全て吐いたのである。
「もう二人が無事ならどうでもいいかなって、最悪ギャラルホルンパクって安全な世界探そうかなって」
「優の目が死んだ魚みたいになってる……」
この男、もう世界平和とかどうでもよくなっている。滅ぶなら勝手に滅べばいい。
「だってもう無理だよ。悪意しかねーよこの世界。なんも信じらんねーもん。国守ろうとしてるだけ風鳴訃堂のがマシってどういうことだよクソが」
「やさぐれてる!?」
基本的には現代社会と変わらないが、所々腐敗してたり殺伐としてるのがこのシンフォギア世界である。今後の展開を知ってると余計にどうでもよくなったのだろう。
「あーあ、響はロクな目に合わないし、未来は洗脳されたり乗っ取られるし、世の中クソゲーだろマジで」
「的確に貧乏クジ引いてるよね響」
「未来も大概だと思うなー」
一部を除いて死なないだけで酷い目に合うのが確定してるのがこの世界である。一人でイキイキしてた白髪がいたが…
「で、どうするの未来? 急なこと言って悪いけどさ」
「ちょっと手紙書いて荷物取ってくるから待ってて」
「決断早くね」
この決断の数時間後に三人の逃避行が始まった。
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数ヶ月後
「ステイ! 二人ともステイ!?」
「ちょ待って!?!?」
何があったかはご想像に任せる。