「オレの今まではなんだったんだ……」
「というわけでキャロル戦終わりました」
「「まってまってまってまって」」
未来とクリスがツッコむ。朝起きたらリビングに項垂れる金髪の幼児と、それを慰める幼児がいたのだ。
「一晩の間に何が起きたんだよ」
「秒殺だったからシャトー崩壊としか言いようがないんだ」
「なんとか詳しく教えてよ」
「うーん。じゃあ簡単にまとめるとだな」
エルフナインを拾う→2課に連絡→技術屋組でエルフナインを色々してシャトーの場所を把握
「場所が分かったから俺、弦十郎さん、訃堂さん、緒川さんでパワードスーツを装着して突撃した」
ただそれだけ、と優は言う
「ステルス特化の緒川さんがキャロルちゃんを初手の不意打ちで気絶させて、残り3人で全部壊してたよ」
「ひ、ひでぇ」
響が優の発言に捕捉すると、クリスは項垂れてるキャロルに同情する。
「キャロルがここに居る理由は監視出来るのが俺しか居ないからだよ。フィーネというか2課はシャトーの調査に駆り出されてる」
「あー、そういう」
国と人類の平和のために2課は今日もブラックであった。
「優君、そろそろ慰めてあげなよ。なんか子供泣かせてるみたいで……」
「ふむ……」
響に言われ、しぶしぶとキャロルに近づく。
「……なんの用だ」
「スーパーシャーク&改造忍者【変形ロボット現れる】を見ない?」
「見るわけ無いだろそんなもん」
「そっか」
会話を終えると優は響達の元に戻る。
「俺には無理だった。君たちに託す」
「「いや何でそれでどうにか出来ると思ったの!?」」
響と未来がツッコむ。当たり前の反応だろう。
「流石にスーパーシャークと改造忍者でもダメか……」
「クリスちゃん。今度、一緒にジ○リ見よ?」
クリスの情緒を育てるため、響は色々な映画を見せる事に決めた。
「いや、そもそもアイツ復讐者の類いだし、どうしようも無くない?」
「止まる理由も無いからね」
キャロルは止まる理由が無いのである。現に仇であろう者達は既にこの世に居ないのにもかかわらず、キャロルは止まらなかった。
「復讐の対象が人ならいいんだけどなぁ」
「世界だもんね」
せめて人ならばと優はため息を吐く。
「とりあえず美味しいご飯とかはどうかなーって」
「自棄食いでどうにかなるレベルじゃなくない?」
「なら猫とかと戯れさせるとかどうだ?」
「アニマルセラピーってやつか」
いろいろと案がでるが、これといった案が出ない。
「あの……僕たちの事はお気にならさず……」
優達がやんのやんの言っていると、エルフナインが話に入ってくる。
「いや、ここでずっと落ち込まれてても困るしなぁ」
家に連れて来てからずっとこの調子である。キャロルの見た目が幼いため、無視するのも罪悪感があるのだ。
「エルフナインちゃん、キャロルちゃんってなんか趣味とかはない?」
「錬金術以外の事は特に……」
キャロルは錬金術に人生を捧げているため、これといった趣味が無いのであった。
「てか、何で俺たちは面倒なババアのために、こんな真剣に悩まなくちゃならんのだ」
「「気を遣って誰も言わなかった事を!?」」
優は誰もが思ったが口にはしなかった事をとうとう言った。
「つか、フィーネ含めて面倒なババアが多すぎるだろ。しかも喪女とファザコンだぞ。このババアども救いようがねーよ」
「あ、これ少し怒ってるやつだ」
「ラーメンとパフェ食って最高の気分だったのにこれだからな」
気分よく寝れると思ったら徹夜になったのだ。機嫌も悪くはなるだろう。
「場合によっては、別のジジババ共とも戦わないとダメだしよー」
「考えてみればお爺ちゃんお婆ちゃんばっかだね」
シンフォギアの敵は2期を除いて大体年寄りである。
「むしろ俺が癒しが欲しい……。動物と戯れたい……。犬ならコーギーがいい」
「私シバがいい!」
「私はゴールデンレトリバーかなー」
「どっちかっと言われたらアタシは猫だな」
「ボクはそういうのは詳しくなくて……」
この後、一時間ほど動物談義を楽しむのであった。
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「動物談義が楽し過ぎてババアの事忘れてたわ」
「どっちかといったら現実逃避じゃない?」
「それはそう」
そんな話題のババアは隅っこで体育座りして優達を見ている。
「隅っこババアは何の動物好きなん?」
「ババア呼びをやめろ貴様」
キャロルの顔には青筋が立っている。流石にキレている様だ。
「怒る元気はあるようでなにより」
「ふん……」
絶望して自害、というのが(メンタル的に)最悪のパターンのため、優はそこを警戒していた。
「そんで、こっちとしては復讐なら勝手にしてろってスタンスなんだけど?」
「違う! 私の目的は!」
「こっちから見たら盛大な復讐とか自爆の類いなんだよ。なんで世界を知れで世界ごと分解するにまで話がでかくなるんだよ。お父さん絶対あの世で驚いてるよ」
自分の最期の一言で娘がとんでもない事になったイザーク・マールス・ディーンハイムの心情が気になる今日この頃である。
「てか復讐はいいのよマジで、絶望するのも勝手にすりゃいいんだよ、でもさ、こっちに被害出すのは違うじゃん? 俺たち何もしてないし」
正直な所、復讐なんて勝手にやっててくれというのが優の本音だ。悲しい事に範囲が大きすぎるから対応しているが。
「なんで、どいつもこいつも規模がおかしいんだよ!? 告白するために月を壊しますってなんだよ!?」
「知るか!? オレにキレるな!?」
「オマエも似たようなもんだろうが!?」
被害が全世界というのは間違いなく共通しているだろう。
「貴様にオレの何が分かる!?」
「知るか!? こっちは子供の頃からいつ滅ぶか分からない世界のせいで精神的にヤバかったんだぞ!? オマエの心情なんて考える余裕なんかねーわ!? オマエも俺のストレスの原因の一つだからな!? なんだよ奇跡を殺すって、ふざけやがって!? もうちょい分かりやすく言語化しろ!?」
優は切れた。マジで切れた。比較的理由の分かるフィーネについては多少は納得していた。……しかしキャロルはいろいろと理解が出来ないのだ。復讐するにしても規模がでかいし、世界を知れと言われて世界を分解して解析しようという発想だったり。挙げ句の果てに奇跡を殺すである。
「はぁ…はぁ……。どいつもこいつも世界敵に回しやがって……」
「…………なんかスマン」
まさかのキャロルが謝るという珍事が発生した。目の前で発狂されてキャロルは精神的に落ち着いてしまったのだ。
「世界を知れって言われたら普通は世界回って歴史を記録しようとかになるじゃん……。どういう思考回路してたら世界規模の分解と解析になるんだよ……」
「もう、憶えてない……」
「力のリソースを記憶にするからだ……。どうせここまで休まずに生きて来たんだろ。もう復讐相手も死んでるだろうから休めよ……そこにクッションあるからぐでってろ」
優は疲れたから休むといって部屋に戻った。
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数時間が経過し、優がリビングに行くと、
「…………」
クッションに埋もれて虚無顔になっているキャロルがいた。何がなんだか分からない優は映画を見ている未来に話しかける。
「未来……キャロルに何があった?」
「それが、あのクッションに座ったら……あんなことに」
ものは試しと、買っておいたポテチを開封し、キャロルに渡す。
「……ぽりぽり」
「これなんか燃え尽きてるというか……ダメになってないか?」
キャロルが埋もれているクッション……。実は優の発明品であった。その名も【人をダメにするがメンタルは回復させるクッション】である。寝転んだ人物に対して最適な柔らかさと温度になり包み込むように埋まれるのだ。数百年間休まなかったキャロルにはどうやら劇薬だった様だ。
「何か害も無さそうだな……。俺も映画見るか」
優はポップコーンを取り出し、響達と映画を見るのだった。
何かキャロルって虚無顔でクッションに埋もれてるの似合いそうじゃないですか?