夕方、堤防で釣りをしている男女がいる。優と優に寄り添う未来である。甘酸っぱい景色に見えるが……優の目が死んでいるため何ともいえない事になっている。
「これもしかして魔法少女の連中も来れるか!?」
「急にどうしたの!?」
未来は突然大声を上げたバカに驚く。でも許してやって欲しい。彼は寝不足なのである。コスモな奴らがクロスオーバーしてるゲームの存在を思い出し、少年誌のレジェンド達が現れる可能性が頭に過った結果である。来る可能性は限りなく低いのだが……。
「普通に次元を渡れるやつが多い……次元艦しかり魔法しかり」
「なんの話?」
優はこの世界で起きる事はほぼ全て響と未来には話しているが、コラボといった起こるかどうか不明な事は話していない。
「来ないでくれって話」
魔砲の方は世界を滅ぼしかねない物があるためNG。運命の方は…可能性があるのは魔法少女経由からのアプリ勢である……魔法少女の時点でマズイのにアプリは更なる厄ネタ持ち込みそうだから来ないでくれ切実に。焼却と白紙化の概念を持ち込まないでくれ。
「本当に困ったら観測出来た比較的安全な世界に逃げよう」
「観測できた比較的安全な世界!?」
因みに本当に無関係な世界だ。向こうは来ないでくれと思ってるだろう。
「しかし、そろそろ始まりそうな時期なんだよな」
「確か響のガングニールが目覚めてって感じだったっけ?」
「だいたいそんな感じ」
本来、響と未来は私立の音楽学校に入学し、友達が出来てるころであるのが、この世界では優の作った人工島でぐだぐだしているため入学はしてない。
「まぁ、もう目覚めてるし安定化に成功してるけど」
技術チート様々である。
「話に聞いてた内容と完全に違うことになってない?」
「俺らが逃げた時点でどうしようもないから……。今日は魚釣れないな」
「いつもは結構釣れてるのにね」
優と未来は釣りをしていた。基本的に大体の事は技術チートにより作られた機械がオートでやってくれるのだが……いかんせん暇なのである。急ぎで作らないといけない物から、くだらない物まで作ってしまった為、これを作らなければといった物がない。
「そういや釣れる時は響がいたな。もしかして響が居ないからっていう可能性ある?」
「流石にそんなこと……ないよね?」
響のホワホワとした雰囲気に魚が引っ張られた可能性があるかもしれない。こんなしょうもないことを考えるのは暇だからであろう。……こんな事考える余裕があるせいで、気にしなくてもいい存在まで気にしてしまうのだ。
「しゃーない、そろそろ帰って夕飯の支度するか……。てか、響はどうしたの? 見ないけど」
いや、そういえば出かけるとか言ってた気がする。と頭をひねる。
優は基本的にメンタルに余裕がないため、人の話を聞き逃したり、意識がどっかに飛んでいったりする。気にする必要が無いのにも拘わらず、常に気にしてしまうのは良くない事ではあるのだろう。しかし、想像出来る事は起きる可能性があるというし勘弁してやって欲しい。
「ツヴァイウィングのCD買いに行くって言ってたよ。そろそろ帰ってくると思うけど?」
「認識阻害のメガネを忘れてなきゃいいんだが……。てか、なんでライブで酷い目に合ってるのにツヴァイウィングのファンやってんだろうな」
初めて行ったライブであんな目に合っているのにもかかわらず恨まずファンしてるのは不思議だ。
「奏さん達は色々動いてくれたし、単純に曲が好きって言ってたよね」
「俺も曲は聞くけどCD買う程では……ん?」
「どうしたの」
この時、優の脳内に一つの式が出来上がる。
ツヴァイウィングのCD発売×買いに行く立花響×時期=原作
「これ始まり今日か?」
「へ?」
「響出掛けたのいつ!?」
「他にも買い物あるからって! 確か……2時間ぐらい前!」
「いま何時!?」
「6時過ぎ!」
「……マズイかもしんない!?」
「う、うそ!?」
優は大慌てで響の安否を確認するためドローンを送ったのだが……
『はぁ!」』
『お姉ちゃんカッコいい!』
すでに戦闘中であった……。特典付きCDを買い終えルンルン気分で帰ろうとした所でノイズと遭遇、即座にガングニールを纏い。女の子を発見して救助といった所だろう。
「まずいな、と、取り敢えず付近のカメラ止めて全部データ改竄して……後処理の時間は無さそうだな」
「響を助けに行かないと!?」
てんやわんやだ。未来にいたってはあーでもないこーでもないと慌ててる。
「いや……ここまで来たら全部片付いてから回収でいい筈だ」
自分より慌ててる未来を見て落ち着いた優は、響の回収はノイズを処理しきってからでいいと判断した。ここで無理に回収して女の子を死なせてもしたら、それこそ響のメンタルに傷が入るという考えからだ。
「なにより、響だって力を使いこなす為に頑張って来たんだ。今回は響を信じてサポートに徹しよう」
「……ノイズ倒したらすぐに響を連れ帰って」
「了解」
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「ふい~」
「お姉ちゃん凄い!」
特に苦戦する事もなく響はノイズを殲滅するのであった。
さて、急に終わったと感じただろうがそんな事もない。理由はノイズという存在にある。
ノイズとは人間に纏わりついて炭化させる特異災害、対一般人に於いては文字通り災害なのだが……。相手が装者だと基本一撃で葬られるため、ただの雑魚敵に早変わりである。結果、秒で戦闘が終わった為、特に描写もされず初戦闘はカットされたのである。
「流石に早すぎじゃない」
「優くん!」
「俺がする事無かったな」
慌てて色々と準備した俺は何だったんだと優は頭をかく。
「えーっと、何かゴメン?」
「いや、響が無事ならいいさ。帰ろう。未来も心配してる」
「うん! あっ、でもこの子」
忘れてはならない女の子。モブなのか準レギュラーなのか微妙な娘
「風鳴翼が来てるから大丈夫じゃないか? ていうか、面倒な事に成る前に逃げるぞ」
「……あの、ちょーっと翼さんの顔を「はーい帰ろう。すぐ帰ろう。撤収!!」ちょ」
優は無理やり響と共に拠点に転移したのであった。
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優と響が帰った後の現場にはツヴァイウィング、そして特異災害対策機動部の面々が揃っていた。
「一応聞くけど、翼が片付けたわけじゃないんだな」
「来たときには処理された後だったわ」
これに関しては翼が遅かったわけではなく響の位置が近かった事が原因でもある。
「一瞬だけガングニールの反応もあったらしいけど……」
「知っての通り。あたしは生存者の会の仕事もあったからなぁ」
現在、天羽奏はライブのケジメとして、芸能活動は控え、ライブ生存者達を保護する活動をしている。効果はあるようで表向きは迫害も息を潜めている。犯罪にはならない小さな虐めは続いてたりはするが、それでも、かなりマシになっている。
「なにより行方不明者達を見つけないと……」
奏は取り出したポスターを見る。そこには元気に笑う特徴的な癖毛の少女が写っている。
保護活動の際に少女の両親から受け取ったポスターを見た時、奏は驚き目を見開いてしまった。ポスターに写っていたのは、LIVEの時に助けた少女だったからだ。
「生き残っててくれよ……」
ポスターを握る力が強くなる。どんな理由があろうとライブに来てくれたファンを死なせてしまった事には変わりない。だからせめて、生きてる人や生きてる可能性がある人は守らなければと奏は決意したのだ。
「お姉ちゃん何見てるの?」
「ん?」
視線を声がした方に向ける。そこには幼い少女がいた。
「この子は?」
奏が翼に訪ねる。
「さっき私が保護した子よ」
怪我も特になく健康そのものである。ノイズに襲われていたとは思えない程だ。
「えーっとな、お姉ちゃんなーこの写真の人を探してるんだ」
隠す様な事でもないので、膝をつき少女に見せる。この子を見かけたら連絡してくれ、そう言おうとした時……
「あっ! さっきのお姉ちゃんだ!」
「……は?」
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そんな光景を特殊なドローン越しから見ていた者がいる。
「ねぇ、響……認識阻害メガネ着けて出掛けた?」
「つ、着けるの忘れちゃってた…。ちょっと出かけるくらいだったから」
そんな会話を聞いた優は……
「」
白目を向いて気絶していた。許容オーバーだったのだ。