優がリビングに行くとテーブルの上には白飯、焼き魚、漬物、味噌汁。ご機嫌な朝食だ。疲れ気味の優にはありがたい。
「クリス、箸の持ち方はこうだよ」
「フォークかスプーンでいいだろこれ」
「クリスちゃん、こういうのは早いうちに覚えないと大変だから」
とりあえず、普通に雪音クリスが居る事を説明しよう。
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「それで、クリスちゃんはどうするの?」
「1度フィーネの所に「悪い事言わないからやめとけ」……なんでだよ」
フィーネと話をしたいというクリスの話を遮り、優は止める様に言う。
フィーネという存在を客観的に見れた優からすれば、恋に狂い、長い時を生きた化物でしかない。そんな化物の元にたった数時間の付き合いとはいえ、真面目な彼女を送る気には慣れなかった。
「たった数時間の付き合いだが、君がどんな人物かは多少は分かった。……フィーネの目的が分かってるからこそ言うが、君は都合のいい駒でしかない」
「……んだよそれ」
「想い人に想いを告げる為に月を破壊しようとしてる化物がいる」
「急になんだよ。月を破壊? バカだろそいつ?」
「そのバカがフィーネだ。簡潔に言えばデュランダルの力で破壊することが狙いだな」
「……!?」
クリスはスケールの大きい話に驚きを隠せずにいる。
「じゃあなんだよ。お前らの目的は月の破壊を食い止める事か?」
「……いや、デュランダルの一撃をずらして少しだけ月を破壊させるのが目的だ」
「はぁ!? 止めんじゃないのかよ!?」
「止めると別の問題がなぁ」
2期は月の落下が原因で起こる為、防いでしまっては起こらない可能性が高くなる。何より、近しい事が起こらなければF.I.S.組含めた他勢力がどのような動きをしてるか予想不可能な為、近しいことは起きないとマズイ。
「行くなつっても、それじゃ、あたしはどうしろと? 行く所なんてないぞ」
「……それもそうだな」
確かに考えて無かった。と優は頭を抱える。
「優くん、クリスちゃんが良ければだけど、取り敢えず、ここでいいんじゃない?」
「はぁ?」
「あー、そうくるか」
優は困った様に頭をポリポリと掻く。しかし、状況は既に追い出された後だ。ぶっちゃけラストまでクリスが必須な場面は無いだろう。
「まぁ、別にいいか。死なない事分かってても爆破したし、罪滅ぼしになるかは分からないが、空き部屋があるから、そこで生活してくれ」
「ダメだろ。赤の他人だぞ、あたしは」
「家なしの未成年を追い出すのも大概ダメだろうよ。ひとまず、君が住める家を作るから待っとけ」
こうして、割りと強制的に外堀を埋められ、雪音クリスは優達の家に住むことになったのだった。
「それはそれとして世話は2人でしなさいよ。お母さんはしませんからね(裏声)」
「「はーい!」」
「あたしゃペットか!?」
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「世話されてる辺りペットではあるよな」
「あ゛?」
「ごめんて」
即座に謝る。だって相手はシンフォギア装者だから。
「話は変わるけど、この後時間ある? あるね。行こう」
「あるね。じゃねぇよ!? あるけど!?」
彼女のやることはせいぜい簡単な手伝いだけの居候。時間は無限にあるのだ。
「島の案内がまだだから。この後、家の周辺を回るぞ」
「私も行く!」
響も行きたがるが……
「響は勉強あるでしょ?」
「うゔぉあ」
優は響と未来に、ある程度の勉強はさせてます。
「まぁ、頑張ってくれ。そういう訳だから、飯食って片したら行くぞ」
「はぁ、分かったよ」
こうして、2人で周辺を歩くことにした。
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「ここが研究所兼倉庫。俺が作った物はここにある。危険な物は地下にあるから、ここら辺は自由にしてもいい」
「ほーん。このぬいぐるみはなんだ?」
クリスが持ったのは黒猫のぬいぐるみだ。
「あー、作って置いたままにしてたな。それ、ガングニール用の補助アイテムの予定だったんだよ」
「予定だった?」
「響のことを色々弄ったら普通にガングニールが安定しちゃって」
「どういうことだよ……」
弄ってたら安定したし性能が上がった。ただ、それだけである。
クリスはぬいぐるみをじっと見つめ続けている。
「欲しいならあげるけど?」
「……欲しい」
「素直でよろしい。セッティング出来たら渡そう」
「ありがと」
なんだかんだ、素直な雪音クリスであった。
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「♪♪♪」
「鼻歌だけで才能があることが分かるな」
クリスは気分がいいのか鼻歌を口ずんでいる。彼女の歌を聴いて気分が良くなる者が存在しても、気分を悪くする者なんて存在しないだろう。
「褒めたって何も無いぞ」
「元宿無しの居候にそんなもの求めてない」
「ぐぬ」
状況でいえば一番どうしようもないのは間違いなく彼女であろう。両親が殺され、捕虜にされ、挙げ句の果てに化物に唆される。文字にすればするほど悲惨である。
「君の境遇は知ってるが……よく世界を滅ぼそうとはしなかったな。俺ならネフシュタンを手に入れた段階で滅ぼそうとするだろうよ」
「……その発想はねぇな」
「聖人が過ぎるだろ。そんな良い娘をフィーネは唆したのか」
いや、そんな善人だから狙われたのか? 優はこめかみを押さえながら考える。
「……フィーネの件は色々と聞いた」
クリスには既にフィーネの件は話している。納得はしていない様だが理解はしている。
「まだ話して無い事もあるだろ。教えろ」
「やめといた方がいい。どうなっても知らんぞ」
「どうなるってんだよ」
優は数歩歩き、クリスの前で振り向き言う。
「俺がゲロを吐く」
「お前がかよ!?」
「君も吐く」
「あたしもか!? いやそれは前言ってたな!?」
本当にきつい世界なのである。アプリの時空という訳ではないので問題の方々が来る可能性なんて限りなく0に近いが。
「はっ! 今さら怖いもの何てあるかよ!」
クリスは自身を鼓舞する。いうて多少の恐怖はあるのだ。
「……響にも未来にも言ってないから話さない様に」
優は静かに語りだした。
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「「オロロロロロロロロ」」
2人揃って吐いてた。
「だからオロロロロロ言っただロロロロ」
「オロロロロロここまでとは思わないだロロロロロロロ」
オロロロロロ言い過ぎて他の作品の笑い方みたいになってるが吐いてるだけである。
数分経ち、ようやく吐き気も落ち着いた頃。
「優……あたしはお前の味方だからな……」
「うん……何かあったら任せる」
何か仲良くなっていた。共に吐いた仲だからだろうか?
「帰ろう響と未来が待っている」
「おう……」
2人は家に帰る。その姿は、まるで長年連れ添った相棒の様だった
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「「がらがらがらがら」」
「メチャクチャうがいするじゃん」
皆もしよう手洗いうがい。感染症対策の為にも吐いてスッキリした後も……。