健全な男子には厳しい姿勢で行きたい白猫の話   作:変身スキー

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今回でシリアスは終わり!
あと作者古戦場につき、少し更新が遅れるやもしれません。


第六話:少年と白猫。そして罪の清算

  ●

 

「はあ……」

 

彩南高校教室にて。

結城リトは大きくため息をついて自らの机に突っ伏した。

 

早朝だというのに妙に彼が疲れている原因は、リトがつけている眼鏡に原因があった。

その眼鏡は『すけすけゴーグルくん』という。

彼の家に居候をしているララの発明品の一つである。

 

自宅に転がっていたこの眼鏡をなんとはなしに付けてしまったのが彼にとっての不幸の始まりであった。

 

この『すけすけゴーグルくん』は、元々機械のメンテナンス用にと開発されたものだったのだが、その機能の副産物として、人が着ている服が透けて見えてしまうという欠点があった。

 

「うう……くそ、なんとかしねえと……!」

 

茹った頭を何とか動かして、体を起こす。

確かにララの所持品を勝手に使ってしまったことは責められるべきことかもしれないが、このままでは自分の身が持たない。

 

そう考えてなんどもこの眼鏡を取ろうとしてはいるのだが、頭の後ろで固定されていて外すことができない。

こうなると完全に八方ふさがりである。

こんな時に限って今日はララの姿を見かけないし。

 

「おはよ……」

 

「おう、音子おはよう!……どうした?今日なんか元気ねえぞ?」

 

「そう?いつも通りだよ」

 

この厄介な眼鏡に四苦八苦していると、登校してきた音子と猿山が話している声が聞こえてきたので、思わずそちらを向く。

 

(げ、なんだこれ。)

 

思わずリトは顔をしかめる。

視線の先にいる二人のうち、猿山はトランクス一丁の半裸になっていた。

だが別に男の半裸を見て顔をしかめたわけではない。

 

顔をしかめたのは、猿山と話している音子の姿にひどいノイズが走っていたからだ。

その所為で、顔どころか体の全体像すらとらえることができない。

 

「おはよ」

 

「お、おう」

 

音子はこちらを一瞥することなくそっけなく挨拶をする。

 

――確かになんだかいつもより元気がない気がする。

姿をはっきりと疑うことはできないが、音子は分かりやすい性格である。

ましてや親しい友人からすれば、いつもと様子が違うことくらいは勘づくくらいはできた。

 

そういえば。

と、リトは音子の姿がはっきりと見えない理由に思い至る。

 

少し前、音子は宇宙人用のスーツを着ることで地球人に擬態しているのだということを彼から聞いていた。

そのスーツがかろうじて音子の姿を『すけすけゴーグルくん』から守っているということなのだろう。

 

(でも、音子の正体ってやつもちょっと気になるけど)

 

音子の体に入るノイズがうまい具合に自分の視界を遮ってくれるおかげで、周りの学生の裸があまり気にならなくなってきたリトはそんなことを考える。

 

考えてみれば、音子とは彩南高校に入ってからのつきあいだ。

男友達の中では猿山と並んで、会話をする仲である。

特に二年生になってから、隣の席になったおかげで余計話をする機会が多かった。

 

でも話すことと言えば、普段の授業とか遊ぶ約束とか、日常生活のことばかりで彼自身の口から宇宙人らしい話は何も聞いたことがない。

 

もちろん話したくないこともいろいろとあるのだろうと思う。

昨日起きた、『モシャ・クラゲ』の一件以降音子の元気がない理由にはおそらく彼の抱える何かがあるのだ。

 

「リトくん♡」

 

「ん、ルン……って、うお!」

 

唐突にルンに声をかけられて、思わずそちらを向くと下着姿のルンがそこにいて思わず声を大きくあげてしまう。

 

「?どうしたの。今日は眼鏡なんかかけて」

 

「あ、ああ!これはララの眼鏡で……」

 

音子の体から出るノイズのおかげで体が少し見えづらいとはいえ、下着姿が見えているというのは、なんだか悪いことをしているきぶんになってしまう。

 

そんな気持ちをごまかそうと、自分のかけている眼鏡を軽く触りながらルンに向かって弁解するが、その眼鏡がわずかに『カチッ』と音を立てる。

 

「――――!」

 

「へー、リトくんにはあまり似合わないと思うけど……どうしたの?」

 

急に固まったリトを見て、思わずルンは心配気な声をかけるが彼はすでにそれどころではなかった。

 

何せ、視界に走るノイズが消え、くっきりとした視界にルンの真っ白な裸体が視界の中央に急に表れたからである。

 

最近少しずつ慣れてきたとはいえ、もともとリトは女子耐性がない男である。

唐突に表れた女性の裸を処理しきれず、元々茹っていた頭は沸騰し、顔はゆでだこのように赤くなりオーバーヒートしてしまったのである。

 

(な、なんで急に)

 

おもわず、音子の方に視界を逃がすが、そこで思わず彼はハッとした。

そういえば、あれほど出ていたノイズがきれいに消え去っていることに。

 

「え」

 

思わず、声を漏らす。

なにせそこにいたのは、リトが知っている音子とは似ても似つかぬ姿だったからである。

 

まず背丈が違う。

中学生と言われればそのまま信じてしまいそうなほどその姿は幼い。

 

それに、銀色の髪にへたりと伏せた耳を乗せ、憂鬱そうに机に頬杖をつくその姿は明らかに少女のものだった。

 

そんな猫耳の女の子はリトがこちらを見ているのに反応すると、わずかに体をこちらに向ける。

それはつまり、彼女の髪で隠れている部分もリトの視界に入るという事であり…………。

 

ボンッ。

 

自分の見たもの。

友人として認識していた姿とあまりにも違うその姿と、目に焼き付いてしまった下着を一切まとっていないその姿に、もともと悲鳴を上げていた脳みそが限界を迎え、爆発した。

 

悲鳴を上げて自分に声をかけてくるルンを後目に、彼は気絶したのであった。

 

  ●

 

「んぐぐ……はっ!」

 

がばり、と気絶から立ち直ったリトは体を起こす。

どうやら気絶した自分を誰かが保健室まで運んできてくれたらしい。

 

「目が覚めた?」

 

「うわわ!」

 

声をかけられて、保健室のカーテンがばっと開かれる。

このままでは御門先生の裸さえも見てしまうのではないか、とあわてて顔に手を当てようとしたが、すでにその顔には眼鏡はなくなっていた。

 

実際、カーテンを開けて自分の様子を見に来た御門先生の姿は裸ではない。

 

「ああ、よかった……」

 

「ララさんがあなたを連れてきてくれたのよ。症状としてはただの貧血ね」

 

「そうなんですね……」

 

あとでちゃんと謝っとかないとな、とララに心の中で感謝する。

――。冷静になると思い出す。

隣に座っていた友人の真の姿を。

 

危うく裸まで思い出しそうになったので危うかったが。

 

そして、少し前オキワナ星で助けてもらった少女の姿と重ね合わせる。

あの星でシロと名乗っていた彼女。

それはつまり自分の友人と同一人物だったのだ。

 

「あの、先生。音子のことで……シロの事を聞かせてくれませんか」

 

「……それは彼女自身が明かすべきことよ」

 

「でも、あいつ……最近ちょっと様子が変で……心配なんです」

 

あの眼鏡でその姿を見たとき、余計に落ち込んでいるように見えた。

もしかしたら、それはいつもの姿よりも幼い姿だったが故の錯覚かもしれなかったが、だからといってそれで無理やり納得できるほど、リトは愚図な男ではなかった。

どんな姿であっても同級生で友人であるということは揺らがないという事を彼自身理解しているのである。

 

「本当にあの子のことを知りたいのなら、思い切って懐に飛び込んでみたらどう?」

 

「それは本人に直接聞けってことですか?」

 

「彼女の事を知りたいのなら。……助けたいと思うのなら。ちゃんと向き合わないと」

 

「……ハイ!」

 

御門先生から友人のことを聞くことはできなかったが、ヒントをもらってリトも覚悟を決めた。

彼、ないし彼女にとっては余計なお世話でも。

まずは御門先生に言う通り、向き合わなくては。そして向き合ってもらわなくてはならない。

 

保健室から戻った時、まだ終業ではなかったがすでに音子の姿はなかった。

どうやら勝手にフケてしまったらしい。

 

それならば放課後に聞けばいい。

以前音子と遊びに行った帰りに、彼の住んでいるアパートまで一緒に帰ったことがある。

 

そうと決まれば、即実行。

終業の鐘が鳴った後、すぐに学校を飛び出してリトは彼の家に向かう。

 

けれど。どれだけインターホンを鳴らしても彼が家から出てくることはなかった。

そもそも家の中に電気がついている様子はなく、人気を感じない。

 

「家に帰ってないのか……?」

 

もしくは一度帰って家に出たのか。

 

「ん?」

 

リトの携帯が震える。

着信を見ると、家から掛かってきている電話のようだ。

 

「はい、もしもし?」

 

『リト!』

 

「美柑?どうしたんだ?」

 

電話をかけてきたのは自分の妹の美柑だった。

だが、いつもより遅い兄を心配して……というには少し切羽詰まっている様子だ。

 

『さっき、家にヤミさんが来たの』

 

「そうなのか?」

 

自分のいない間に自分の命を狙う暗殺者が来たことに対して、彼はそれほど取り乱す様子はない。

慣れたわけではないが、彼女が悪い人間でないことを彼も感じている。

それでも、気の置けない間柄とは決して言えないのだが……。

 

ともかく自分のことは棚において、妹とヤミは仲がいい。

そんな妹がヤミのことで電話をしたという事は何かがあったのだ。

 

『それで、もしかしたらお別れかもしれないって言うから……ヤミさんなんだか様子も――』

 

美柑が言葉をつづけようとしたその時、わずかに地面が震え、形状しがたい異音が住宅街に響き渡る。

リトはこの時知る由がなかったが、ヤミの放った攻撃の音がこちらに届いてきたのだ。

 

「分かった、美柑。こっちで俺がなんとかする!」

 

どうせ手掛かりはないのだ。

ならば自分が怪しいと思ったものを信じて動くしかないのである。

そう信じて、リトは音の方へ向かったのであった。

 

  ●

 

「はぁ……はぁ。やめろ!」

 

「バッ……何して……!」

 

こいつは何を考えて間に割り込もうとしているのか。

ヤミちゃんの攻撃なんか食らえば、地球人なんか簡単に死んでしまうのに。

 

「どきなさい。結城リト」

 

「いいや。ダメだ!俺は音子と話さなきゃいけないことがある」

 

「ハ――」

 

思わずビクン、と体が跳ねた。

いや、いつ?いつボクの正体がバレたんだ?

 

少なくとも、昨日までそんな素振りはなかったと思うんだけど……いや、それはともかく。

普通にボクのことバレちゃった。

今自分は上手く息を吸う事ができているのだろうか。

そんなことも分からないくらい動揺している。

 

「あなたの後ろにいる彼女もあなたと同じ私のターゲットです。彼女は――」

 

「ストップ!」

 

ヤミちゃんの言葉を遮るリトに思わず目を丸くする。

それはどうやらヤミちゃんも同じようだ。

 

「音子のことは本人から聞きたい!――それに、こうして戦わないと本当にダメなのか」

 

リトは問いかける。

本当に、ヤミちゃんはボクを殺したいのか、と。

ボクと同じ彼女に殺されるかもしれない立場かもしれないというのに、懸命に言葉を重ねる。

 

「例外だって、あるんじゃないのか?」

 

「何か勘違いしているようですが。あなたも狙われている立場なのですよ」

 

ヤミちゃんが空から降りてくる。

まだわずかに体がぐらぐらとするが、それでもいつでもリトを庇うことができるように足に力を籠める。

 

そして、ヤミちゃんは変身によって変化させた髪をリトに向ける。

多少の殺気を込めて。

 

それでも、リトは手を大きく広げたままボクの前から動かない。

目はつぶっているけど。

 

「う……」

 

一秒経って、二秒経って。

そこでやっとリトはおそるおそる目を開けた。

 

変身でできた刃物はリトの眼前でピタリと止まっていた。

 

「――今日はあなたに免じて、シロの命は取りません」

 

彼女の選択はあくまでも優先度の問題だと思う。

ボクを殺すことをやめたわけではないが、リトの命を取ってまですることではないという事だと。

勝手にこちらでそう思うことにする。……うん、そうした。

 

「ねえ」

 

そのまま去ろうとする彼女に声をかける。

どうしてもこれだけは言っておかなければならない。

 

「もし、キミが良ければだけど。ちゃんと二人でお話したいな……」

 

「……」

 

「殺し合いは禁止の場で……学校とかでさ」

 

ちゃんと二人で話して、ボクもちゃんと彼女と向き合わなければならない。

分かったつもりじゃなく、ちゃんと顔を突き合わせないと。

リトを見て、こうして彼女の殺意をちゃんと受け止めて。そう思った。

 

その言葉に返事はなかった。

否定の言葉もなかったので、しつこく絡むことにする。

 

「はぁ……」

 

ヤミちゃんは最後にこちらを一瞥して、去っていった。

それを見届けて緊張が解けたらしく、リトはへなへなと尻もちをつく。

 

純然たる事実として。

彼のおかげでボクが死ぬか、ヤミちゃんがこの星をでるか、という選択は持ち越しになった。

ボクは彼に助けられたのだ。

 

……。

 

「ねえ、いつ気づいたの?」

 

「え?」

 

「いやいやさっき言ってたじゃん?音子って」

 

「ああ。そのことか……」

 

そう言って彼はそっぽを向く……。

いや、見逃さないから。ボクの動体視力なめんな。

ちょっと顔赤かったぞ。

 

「えっちな事考えてたでしょ」

 

「なっ!考えてねーって!」

 

「いーや。今のは確実にそういう顔だった!」

 

くそ。なんかボクのあずかり知らぬところでえっちな事をされた気がするぞぅ。

 

「はぁ。まあいいや。どうする?場所変える?……聞きたいんでしょ、ボクのこと」

 

  ●

 

そのあと。二人で土手に座り込みながら、ボクはボクの事をすべて話した。

前世のこととか、原作については話さなかったけどね。

所詮そのあたりのことはただの記録である。今世のボクとは関係がない。

 

リトに話したのは、ボクがこの世界に生まれてどのように生きてきたのかについて。

どのように、何をして生きていたのかについて。

 

リトにえっちな事されたくないから男の子の姿をしていましたってのはなんだかおかしな話になっちゃうから、正体がばれないようにするためって説明したけど……。

これに関しては嘘じゃない。

 

それでも、ボクの精一杯を彼に明かした。

あーあ。古手川さんや西連寺さんにも言ってないことを言っちゃった……。

 

「それで、実際聞いてみてどうだった?」

 

どてっぱらに寝転がりながらリトにそう聞く。

ほのかに香る雑草の青臭さにちょっと青春を感じる。

 

「どうだろう。正直飲み込み切れてはないってのはある……けど、この二年で俺もいろいろあったからなあ……」

 

あはは、と遠い目をする彼。

まあ確かに。普通の高校生なら絶対にしないであろう経験は積んでるよ、キミ。

 

「びっくりしたけど、それが音子なら……ってシロだっけ」

 

「音子でいいよ。どっちでもいいのさ。どっちの名前も同じくらい大切だもん」

 

「そ、そっか」

 

結局こうして彼にはばれてしまった訳だけど。

秘密にしていたことがバレたから、なんだか気分は楽だ。

彼が心底嫌な奴なら、こんな気分にはならなかっただろう。

 

「ねね。どっか遊びに行く?この姿でさ」

 

「え?」

 

「こうなったら本当の姿でちゃんと遊びに行こうかなって……もちろん今日じゃなくてもいいからさ」

 

「お、おう!行く……」

 

そこで、慌てて体を起こしたせいなのか。

それとも手の置いていたところが雑草で生い茂っていたからそのまま手が滑ったのだろうか。

 

「うわっ!」

 

そのまま彼はバランスを崩して、彼の顔をボクの膨らみかけの胸で受け止めることになった。

――いや、まあそれはギリ……セーフなんだけど。

 

「あの……右手」

 

右手でがっつりボクの胸を揉むのはどうなのさ。

――しかも信じられないことにボクの本能は警告を一切鳴らさなかったわけで、正真正銘彼が偶然今の出来事を引き起こしたことを証明している。

 

というかキミのスケベに反応しないんだ、僕の直感。

正直、この第六感みたいなのがキミのラッキースケベへの最後の防波堤だと思ってたんだけど。

 

「うわ、ご。ごめん!」

 

「んぅっ……。――じゃあ先にボクの胸から手をどけてよね」

 

自分の口からちょっと甘い声が出てびっくりした。

おクスリの数減らしたのが裏目にでた……。顔に熱が集まる。

ああ。彼の毒牙に掛かってきた今世の人々よ。ずるをしてごめんなさい。ボクは今罪の清算をしています。

 

「なし」

 

「え?」

 

「やっぱ素のままで遊びに行くの無し!」

 

「ええ!?」

 

「なにがええ!?だよぅ!何されるかやっぱ分かったもんじゃないよ!」

 

このスケベ!

 




ほっほっほ。
無印編はもう少し続くんじゃ。

次回はとらぶる⭐︎クエスト?
やるかはちょっと考えさせてください。
ヤミちゃんとちゃんと話をする回を作りたいのですが、とらぶる⭐︎クエストが一話に収まるかがわからない…。

大きい方が好き?小さい方が好き?

  • 小さい方(ロリは正義)
  • 大きい方(浪漫)
  • 可変式(男なら夢をみる)
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