健全な男子には厳しい姿勢で行きたい白猫の話   作:変身スキー

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古戦場の合間に投稿します。
次もまた少し遅くなるかも。


第七話:対話する白猫

  ●

 

百目音子宇宙人バレ事件は終幕した。

ボクの秘密を守ることはできなかったけれど、その顛末として。

 

ボクはこうしていつも通り彩南高校に通うことができるようになった。

 

……そうそう。結局ボクの姿はリトにバレたわけだけど、学校に通う時はいつも通り地球人用スーツを着ている。

 

この地球で過ごしてきた百目音子の生活を完全に捨てて、シロとしてまた再スタートという選択肢もあったかもしれない。

でも、ボクはそれを選ばなかった。

これでも宇宙の事をなにも知らない一般人とのつながりもあるのだ。

その生活を捨てたくはない、といまは思う。

 

ふんぎりが付かないと笑うなら笑え。

実際その通りだし。

 

正直、リトのこともあるし……。

この姿だとリトからのラッキースケベはほとんど起こらないのはこの約一年半の生活がほぼ証明しているからね。

――さすがに貫通してくることはない、と思う。

スーツの外装を無理やりちぎるほどの腕力は彼にはない。来るとしたら絡め手だろう。

ララ様のアイテムとか。

 

でもこれからは普通の姿で出かけることもあるかもしれないね。

 

 

というわけでここからが少し長めの後日談。

 

すっかりいつものように学校に通うことができるようになったこの夏。

一度も紅葉はしていない木々を見やる。

うん、ずっと夏。ついこの前夏服に変わったばかりという感じである。

 

「おはよーっす」

 

「おーっす」

 

登校していつものようにリトや猿山に挨拶する。

一時期、元のボクの姿がちらつくのか動きが急に固まることがあるリトだったが、ちょっとだけ時間が経つと、ある程度慣れたらしい。

 

流石、デビルークの第一王女と同棲してるだけのことはあるね。

その適応力はさすがだ。

それに反して、女性耐性はあまり上がらないみたいだけどね。

 

「ん?」

 

机の中に持ってきた教科書をいれたところで、何かが指に触れた。

それを引っ張り出して、あーそうそう。こんなものもあったよね、と記憶がよみがえる。

 

さすがにこれは割と覚えている。

何せ、ララ様の妹たちが地球にやってくるお話。

たしかこの手紙を開けてしまうとゲームの世界に閉じ込められるというやつだ。

 

「お?なんだよ音子それ手紙?」

 

「さー、そうかもね」

 

「くっそラブレターかよぉ。うらやましいぜ、俺の机の中にも……」

 

自分の机の中身をひっくり返して、そして床に四つん這いになるほどひどく落ち込む猿山に思わず苦笑いを浮かべる。

相変わらず喜怒哀楽の激しい奴である。

 

「まさか……」

 

「ん?リト?」

 

「い、いやなんでも!ちょっと用事思い出した」

 

「お、おい……!もう授業始まるぞ!」

 

机の中から、何かをひっつかんでリトは教室を急いで出ていった。

ボクとおんなじ手紙が入っていたのを、彼もまた猿山と同じくラブレターと勘違いしたのだろう。

 

……もう今日の間は帰ってこれないだろうなあ。

そう考えてスッと手紙をカバンの中に戻す。

 

ボクの分までせいぜい頑張ってくれ。

今日はせめてキミの分までまじめに授業を受けておくからさ。

 

いやあ。最近は分かってても巻き込まれたり、そもそもイベントを覚えてないせいで巻き込まれたりが多かったから、ちょっといい気分。

 

でもあの手紙からはまだなにか嫌な予感を感じるんだよね。

もしかしたらまだ何か仕掛けられてるのかも……。

 

さて、どう処分したもんかな、昼休み。

窓から階下をぼーっと眺める。

なぁんかトイレに流したり破いて捨てようとした瞬間に手紙の機能が作動するような気がするんだよなあ。

 

「お?」

 

そんな感じで手紙の処理に困っていたところで、視線の先にヤミちゃん発見。

そういえば、彼女とはあれから数日経つけれど、まだ一度もしゃべってない。

 

手を振るが、それに気づいた彼女はぷいっと顔を背けて校舎の傍にあるベンチにその腰を落とした。

……もしかしたら、これは彼女と話すいいチャンスかも。

 

急いで、階段を下りて彼女の元に向かう。

 

人の目線を感じないところで、地球人スーツをぽん、と脱いで亜空間収納にしまう。

……一応、スーツの中にはシャツとホットパンツを着ている。

一時期はほぼ部屋着みたいな服装だったけど、あのモドリスカンクの一件からちゃんとスーツの下に私服を着るようにしたのだ。

もう何がきっかけでどうなるか正直分からなくなってきたし。

 

「こんちはお姉さん。ちょっとお話に付き合って♪」

 

「シロ、学校ではいつものスーツを着てるんじゃないんですか」

 

「君とは地球人じゃなくて、シロとして話さなきゃ」

 

見知らぬ人が気になるのか、幾人かの生徒がこちらを見つめてくるのを、笑顔で手を振ることで返してベンチに背中を預ける。

 

「私としては――」

 

「うん?」

 

「結城リトもいないこの状況で、あなたがそこまで警戒を解いているのが疑問です」

 

 彼女に殺気は感じない。

 この場合は、まだ感じないというべきか。

 

「んあー……でも、ボクに手を出すともう一人のターゲットの不興を買って今までのようなことはできなくなる。それがわかってるなら今は殺せないでしょう?」

 

「あなたにしては理性的な判断の元、行動しているというわけですね」

 

そんな頭バーサーカーみたいなこと言わないでほしい。

理性的な判断だってするさ。今ここだって君の胸先三寸次第の死線上なんだから。

 

「まあただの話し合いだと君にとってもメリットがないから――ボクの質問や会話一つに対してキミの質問に一つ答えるよ」

 

「本当に?」

 

「もちろん。ターゲットの情報だって多い方がいいだろ?それに嘘はつかないよ」

 

「……わかりました」

 

これでやっとスタートラインかな。いろいろと。

 

 

「じゃあ最初に一つ。キミがボクと最初に会ったのはいつ?」

 

「――。未開の開拓惑星であなたを襲撃した時です」

 

「ふん。なるほど?」

 

「あなたが依頼対象を殺して逃げたときです。覚えていませんか?」

 

「いや。大丈夫、ちゃんと覚えてるよ」

 

「では、私の番ですね」

 

「どーぞ?なんでも答えるよ」

 

笑顔で頷く。

なんでもどんとこい、だ。

 

「それでは……なぜ私を殺そうとしないんですか?一度たりとも」

 

「それはこの地球に来るまでの話ってことでいいね?」

 

その言葉に彼女は頷く。

そりゃそうか、この前の戦闘でも似たようなこと聞いてたよね。

 

「昔の知り合いの頼みでね。キミをいつか手伝ってやれって言われたんだ……どう?つまらない答えだった?」

 

「それはだ……」

 

「駄目。ボクの言葉一つで君の質問一つだから」

 

言ったことはきちんと守らないとね。

じゃないとボクとヤミちゃんの互いの言葉が軽くなっちゃう。

 

「じゃあ次。好きな食べ物は?」

 

「そんなこと聞いても……」

 

「いいじゃん。それに、答えてくれないとボクに質問できないよ?」

 

ヤミちゃんの口から彼女の事を聞かないと意味ないんだよね。

知った気になってるだけじゃダメ。

 

「たいやきです」

 

「ほんと?宇宙で美味しいものは他になかったの?」

 

「……あなたの質問に対する答えは一つだけでしょう?」

 

「ありゃ。ボクが言ったのをそのまま返されちゃった。じゃあ、キミの番ね」

 

「あなたはなぜ地球に来たのですか?来たのはずっと前なんでしょう?」

 

「あー。うーんとね」

 

その件も確かに気になるか。

うーん。どこから言ったもんか……というよりもどう言ったもんかって感じ。

 

「えっと……ボクって種族はちょっと特殊でして。その所為で体の調子を御門先生に診てもらってるというか」

 

「え?」

 

「あっ!べつに命にかかわるってもんじゃないよ。体質がちょっと暴走してる程度の事だからさ」

 

実際ボク自身はこれに対して何も思ってないし。

二重の意味で大丈夫、大丈夫。

 

「ていうか、昔の知り合いについて聞かなくてよかったの?」

 

「いいんですか?それも一つに加えますよ」

 

「いいよいいよ」

 

「あの姿が変わる希少生物の時にクロに化けた姿を見ていましたから。知り合いというのは彼の事でしょう。――あなたとクロのことについては裏稼業に多少詳しければみんな知っていますから」

 

「そう?へへ」

 

「風のウワサでは捨てられたことになってますが」

 

彼女のその言葉に思わずベンチからずり落ちそうになった。

なんだって?

 

「ちがう!円満解決なんだから!」

 

「ふん。まあそういうことにしておきますか」

 

今、鼻で嗤ったかこいつ……!

くそぅ。所詮人のうわさでしょうが。

 

「あなたは……この星についてどう思いますか」

 

「もちろん。悪い星じゃないと思ってるよ。ボクにとってはここが第二の故郷だ」

 

「そう、ですか」

 

「じゃあ、キミはどう?ここ、いい星じゃない?」

 

「――ええ」

 

そう言う彼女の顔は少し笑っていた。

誰の事を思い浮かべて笑っているのかは、彼女自身しかわからないことである。

予想はついても、想像するのは無粋である。

 

「で、さ。ここで提案だけど」

 

「なんですか?」

 

「いや。はっきりと停戦協定を結んでおこうかなと思って――」

 

「停戦協定?」

 

「ぶっちゃけ、ボクが地球を捨ててなりふり構わず逃げたら、キミ困るでしょ?」

 

「いえ、殺せますが」

 

む、と一瞬空気が凍る。

こんにゃろう。そんな簡単な女じゃないぞボクは。

 

「……。でも苦戦するでしょ?君にとってもターゲットを目の届くところにおいておけるいい機会じゃない?」

 

「期限は?」

 

「この夏が終わるまでってことでどう?8月31日。その日まではお互いへの暴力行為は禁止ってことで」

 

「そうですね……」

 

ヤミちゃんとしてはまだ少し悩んでいる様子。

まあすぐに決めることでもないし。

 

「ん?」

 

「どうしました?」

 

「いや、なんか……」

 

いま、背筋がビリッとなった気がする。

 

「うひょ~ヤミちゃ~ん!」

 

「……げっ」

 

遠くからこの学園に住む妖怪……違った。うちの校長がこちらに駆けてくる。

というかすでにほぼ何もはいてない。

これが教育者の姿か?

 

「お?見知らぬ女の子も!」

 

どうやらこっちも捕捉された様子。

だからと言って、ボクがベンチから腰を上げることはない。

 

なにせヤミちゃんがもう変身でできた拳でぼこぼこにしているからね。後、することと言えば校長の無事を祈ることくらいだ。

……本音を言えば、出来れば全治一か月くらい……いや、この夏はもう出歩けないくらいには負傷してほしいけど。

 

そして、ヤミちゃんが変身で元々髪でできた拳を振るったその時。

ヤミちゃんの横に積んでいた本の方向から光が放たれる。

それにボクとヤミちゃんが気づいたときには時すでに遅く、あっという間に光がボクたちの視界を覆いつくす。

そして、その場には(おそらく)瀕死の校長だけを残し、ボクたちは見渡す限りの草原が広がる仮想空間へと飛ばされたのであった。

 

いや、嘘。ボクは光から逃げようとしたけどヤミちゃんに腕を掴まれて止められた。

こんなひどい話ある?




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