やっぱりとらぶるくえすと編は1話では収まりませんでした。
次回との2話構成になります。
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「おおっと……」
光が収まった後、ボクたちは空中に投げ出されていた。
とは言っても、そこはボクとヤミちゃんである。
急に空中に投げ出されたとしてもケガをするようなみっともない真似はおこさない。
特にボクはね。分類上はネコに近いだろうし。
……しかしあの手紙。やっぱり開けなくても自動で転移されるようになってるんだな。
考えてみれば、原作では結構な数がこの空間に転移していた。
あの人たち全員が手紙を開けたとは考えにくいもんね。
だから今回のように時間で起動するように設定していたんだろう。
処分した場合も同じように転移が起きるのかも……。
とはいえ、今分かったところで意味はないか。
結局ヤミちゃんが持っていたであろう手紙の餌食になったわけだから。
着地したボクたちを追うようにして、ボクたちの頭上からおそらく転移の原因になったであろう手紙がひらりひらりと落ちてくる。
この世界は体験型RPGである。
この世界はクリアしないと出ることはできない。
と、ヤミちゃんが手に取った手紙に書いてあった情報としてはこれくらい。
チュートリアルとは言い難いけど、ボクらがどういう状況にあるかはこれだけで把握はできるよね。
「つまり、このゲームをクリアしないとボクらはここから出られないってわけね。どうしよっか?」
「地面を掘り進めたり、この世界の壁を壊してはいけないのでしょうか」
「んー。これが『RPG』なんだったら無駄なんじゃない?開発者が予測できるような抜け道はつぶされてると思うなぁ……。ヤミちゃんってゲームの類は……経験なさそうだね」
「あなたは?」
「地球のゲームなら、多少はやったことあるよ」
ボクの家には最新ハードこそないけれど、名作RPGと呼ばれる類のソフトは何個かそろっている。
この世界でもRPGと呼ばれるものが前世のソレと同じものだと理解できる程度には嗜んでいるつもりだ。
――反対に、宇宙で流行ってるゲームには明るくないんだけど。
「クリアを目指すなら――。あの町に行くのがいいんじゃない?」
目の前にこれ見よがしに存在する町を指さす。
「とりあえず開発者の意図に従ってみないとダメかもね。ゲームクリア条件も分かんないしさ」
「あの街を無視して私が空を飛んでいくのはどうでしょう?」
「試してみる?」
ボクの言葉に頷いたヤミちゃんが変身で翼を展開し、遠くの空に向かって飛んでいく。
みるみる小さくなる彼女は、街を通り過ぎてさらに向こうへ進んでいこうとするが……。
その姿は急に掻き消える。
「お帰り」
「……なるほど」
姿の消えた彼女は、再びスタート地点と同じ位置に戻されていた。
多分、開発者の意図に沿わないことをしたらこういう形で初期位置にリスポーンするのだろう。
どうやらこの世界は自由度低めなRPGみたいだね。
やたらめったら広いわりに、それぞれのプレイヤーごとに決められた一本道を守らなきゃいけないらしい。
「そこらにぴょこぴょこ跳ねてるのはどうします?」
ヤミちゃんが顎で示す方にはぴょんぴょこ跳ねてる丸形のモンスターが。
こっちに敵意を示す様子はないけど……。
「とりあえず無視でいいと思う。襲ってきたら適当に迎撃って感じで」
今回の目的は楽しむことじゃなくて、クリアが目的だからレベリングは必須ではない。
そもそもボクらの素のステータスが高いのだから、積極的に敵を倒す必要は今回はないだろう。
そういうわけで、街へ向かう途中の迎撃を何度かヤミちゃんに任せたんだけど……変身での攻撃ではやっぱりレベルが上がらないみたいだね。
攻撃面は心配なさそうだから、あとは防御面かな。
HPがちゃんと設定されているってことは、素の耐久力とは別にこのHPがなくなるとゲームオーバーなのだろう。
「やあ、スタットの街へようこそ!」
「ああ、すいません。何か困ってはいませんか?」
「やあ、スタットの街へようこそ!」
「駄目か」
「この人は?」
「その人はこの街がどこかを説明する……まあロボットみたいなもの?実際に人が動かしてるわけじゃ多分ない」
「ふむ。つまりこの人は決められたことしかしゃべることができないという事ですね」
「そうそう。飲み込み早いじゃん」
ともかく、ここがRPGというのなら、かたっぱしから話しかけるか特定の場所を通ればNPCが次の道を示してくれるだろう。
日はまだ高いけど、クリアを目指すなら急いでも損はない。
ここがRPGなら夜になるとモンスターが強くなったりするかもしれないし。
「あんた達!」
「む?」
街を探索していると、ヤミちゃんに太っちょのおばちゃんが声をかけてきていた。
どうやら無事にイベントを踏んだらしい。
「旅をするなら、職業を設定しないと戦いには勝てないよ!街外れに転職屋があるから行っておいで!」
『この先ストーリーを進めたければ転職をしろ』
ゲーム的に考えるとこう言われていることになる。
おそらくこれを無視して街を出ようとしても適当な衛兵たちに止められてしまうのだろう。
「ようこそ!転職屋へ♡」
転職屋には、幾人ものバニーガール型NPCがいたが、そのどれもが同じ顔、同じ体型をしていた。
こういうのをグラフィックの使いまわしと言う。
メモリの削減目的だね。宇宙産のゲームとはいえ容量には限界があるらしい。
「ここではプレイヤーそれぞれに適した職業を設定できます♡転職しますか?」
「いいえ」
「そんなこと言わずに♡転職しますか?」
「いいえ」
「そんなこと言わずに――」
ボクの横ではヤミちゃんが無限ループにハマっていた。
こういうのお約束だけど、天然でハマる人は初めて見た。
「ヤミちゃん。多分これ、はいって言わないと永遠に進まないパターンの奴だから」
「……はい」
「それでは転職ON!」
不承不承ながらヤミちゃんが首を縦に振ると、バニーガールの一人が、と壁に備え付けられたレバーを引くと、ボクたちの体が光に包まれる。
ボクたちがこの世界に来た時のものと非常に似ていたけれど、今回はボクたちが別の場所に転移させるためのものではない。
光が収まると、ボクたちの服装は大きく変わっていた。
彼女たちの言葉を信じるのなら、おそらくその職業に適した服装に変化したのだろう。
『ーーヤミ:遊び人』
ヤミちゃんの目の前に大きな黒いウィンドウが現れて、彼女がなんの職業に転職したのかが映し出される。
彼女の肢体は周りにいるNPCと同じような黒色のエナメル質の布。
つまりはバニースーツに包まれていた。
元々あった服はこの仮想空間のどこかに収納されてしまったのか、欠片も見当たらない。
できれば彼女に何かを言ってあげたいところだったけれど、正直そんな余裕などなかったりする。
というか、彼女はそんなに動じていない。
ーー音子:メイド
ああ。音子表記なんだ。スーツを着た状態で受け取ったからかな?なんて。
……現実逃避はやめておこう。
ボクの姿は、職業欄にある通りのメイド服になっていた。
いやさ。確かにヤミちゃんに比べたら露出はましだけど、こんなに女の子っぽさに振った服装は実をいうと今世初めてである。
しかもゴシック系じゃなく、甘ロリ寄り。
ピンクと白色のフリルいっぱいのメイド服に加え、白猫の人形に髪型はツインテールである。
見た目も相まって、ヤミちゃんよりも明らかに年下にしか見えない――かも。
この姿じゃあいよいよ高校生と言い張るのは無理じゃないだろうか。
つーか、メイドといい、リトがおそらくなっているであろう花屋といい、RPGには存在しない職業を実装しすぎである。
「さあ、これで冒険の準備は完了です!北の大地にいる魔王目指して、頑張ってください!」
そんなありがたいお言葉をいただいて、ボク達は次の村のある場所へ強制的に向かわされたのであった。
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「そうして、ぬいぐるみを抱いていると、結城リトと同年代にはとても見えませんね」
「自覚してんだから言わないでよー。それにボクは今が成長期だからね」
少なくともキミと同じ身長くらいにはなりたいところだ。
数日で5センチ、10センチ伸びることがないのはさすがに分かってるけどさ。
『――てきがあらわれた!』
「お?」
どうやら、モンスターに一体も会わない……なんて甘い話はないようだ。
次の街に向かう途中でボクらの前にモンスターが現れた。
『ぺロモン』という名前の、やたら舌の長いモンスターが三体。
……うーん。レベルアップを考えるなら、道中エンカウントしたモンスターは最低限狩りたいところだけど――。
「ヤミちゃん。転職して得たスキルってどんな感じ?」
「『くちぶえ』、『ぱふぱふ』……」
んんぅ。使っても意味ないし、あんま使いたくなさそうなスキルだ。
ボクだったら使いたくないもん。
「うーん。このあたりでレベルアップしないと相手の攻撃を全部回避しないといけなくなるんじゃないかな……」
「あなたと私なら可能では?」
かもしれないけど、全画面攻撃とかやられるとどうしようもなくなるのがデメリット。
上げられるならHPは上げたい。
――それに。
「えーっと、大変言いにくいんだけど」
ぐぐぐ、っと胸前に抱いたぬいぐるみを外そうとする。
『――このそうびは呪われている。』
でれでれでれでれでれでれでーっでー。
「えへ。両手使えなくなっちゃった」
「……」
うわ、ヤミちゃんがすごい冷たい目で見てくる。
しょうがないじゃん。呪いの装備のせいなんだから!
ともかく、腕が自由に使えないので基本的には足技しか使えないし、受け身がほとんどとれないからあまり自由に動くことはできない。
「ちなみにあなたのスキルは?」
「『清掃』――。それに……『萌え萌えビーム』」
安直な名前に思わずボクは石のように固まる。
いや、使わないよ。
「ビームの方は使えるんじゃないですか?」
「使わないよ!」
どんな感じのものなのか、容易に想像がつく。
本当にビームが出るようなものではないはずだ。
「ゴアアアア!」
そんな痴話喧嘩を演じていると、ぺロモンが大きな叫び後を上げて襲い掛かってきた。
でもこのくらいのレベルのモンスターなら今のボクでも危なげなく避けることができるみたい。
「しょうがないですね。私にいい作戦があります」
「え?ホント?」
予想だにしていなかったヤミちゃんの提案に思わず目を丸くする。
いいよいいよ。どんどんやっちゃって!
「はい。では……覚悟しておいてくださいね」
と、彼女はボクに向かってそう言い、むんずと、変身で変化させた大きな手でボクの両足をひっつかんだ。
「はぇ?」
体が反応する間もなく、間抜けな声を上げる。
そんなボクに配慮する姿すら見せず、ぺロモン三体に向かってボクの身体を振り抜く。
「「「グオオオオ」」」
「ぎにゃあああ!?」
頭に走る衝撃と共に、思わずつぶれた猫みたいな悲鳴をあげるボク。ぺロモンの絶叫。そして鈍い音が三連森の中に響く。
どさっ、と地面に放り投げられたボクの耳にシステム音声が響いた。
『モンスターを倒した。
――冒険者たちのレベルが上がった。』
『――ヤミ:Lv1→2
――音子:Lv1→2』
「な、なにするかぁ!」
「でもレベルは上がりましたよ?」
「ボクのHPは減ってるけどね!」
『――音子:HP3/22』
HPを確認すると、すでにボクの体力は瀕死状態。
どうやらレベルアップするとHPがアップする親切設計じゃあないらしい。
「こ、この作戦はもう使わないようにしよう」
「ではあなたのスキルを使いますか?」
「――。よし、じゃあ当初の予定通り。ヤミちゃんの変身に任せます」
……ここは申し訳ないが、彼女に頼ることにしよう。
ゲームだからあんまり痛くないけど、これは心臓に悪いし、なによりボクのHPが持たない。
ともかく変身で敵を倒す方針にするのなら、もうここからはゴール地点まで飛ばせるだけ飛ばすことにしよう。
「よし。じゃあヤミちゃんは先行して露払いをお願い。ボクはキミになんとか着いていくからさ」
「その様で私に追いつけますか?」
「君がちゃんと敵を殲滅してくれたらね」
方針は決まった。
ここからボクたちが可能な限り急げば、すでにこの世界に囚われているリト達にも追いつけるだろう。
しかし、リト達にこの姿が見つかった場合、どんな反応をされるかちょっと不安だ。
リト達には戦闘服の姿は見せたことあってもこんな女の子っぽい姿は見せたことないしね。
感想、お気に入り登録ありがとうございます。
古戦場のインターバルに入りますので、もしかするともう一話更新できるかもしれません。
保証はできないので、あまり期待せずにお待ちください。
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