健全な男子には厳しい姿勢で行きたい白猫の話   作:変身スキー

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古戦場本戦前に更新――!
流石に本線中は更新スピードが落ちるので、その前に間に合ってよかった――。


第九話:白猫と冒険の始まり②

  ●

 

ヤミちゃんのパワープレイに頼った二人での冒険はあまりにも味気ない物となっていた。

 

殲滅、殲滅、殲滅!さあ進もう!

みたいな?

大体そんな感じである。

 

その甲斐あって旅は順調に進んだんだけど、この森自体がとんだ食わせ物だった。

僕たちがひたすら歩けども歩けども一向に終わる気配がなく、この森はボク達の時間を着実に奪っていった。

 

ちょくちょく感覚がかき乱されるような違和感を感じたから、地続きのようでいて複数のマップを行き来していたのかもしれない。

違和感の正体は多分あれだ。マップとマップのつなぎ目に行くとロード時間が挟まるやつ。

 

そんなわけで、結局ボクとヤミちゃんが森を抜けたのは日が沈んで少し経った頃だった。

森の中で野宿しなくてよさそうなのはラッキーだったけど、それでもかなりの時間を使っちゃった。

 

「あれもクリアに必要な要素なのでしょうか」

 

ヤミちゃんが言っているのは、今まさに目的地の街を襲っているモンスターのこと。

全く。やっと森を抜けたって言うのに忙しいな。

かなりでかい。遠くからでも目視で確認できるくらいにはね。

 

「さあ?でも放っておく理由もないんじゃないかな。……よし、行けヤミちゃん!」

 

ヤミちゃんはボクに白い目を向けるが、今のボクは役に立たないので指示と応援しかできないのである。むふー。

 

あ、モンスターがバラバラになった。

さすがヤミちゃん。流石の手際に心の中で平伏しながら、崩れ落ちたボスの元へ注意して近づいていく。

 

「おーい」

 

えっちらおっちら、とヤミちゃんの元に近づいていく。

 

お、リトに古手川さん。西連寺さんに……リトの妹の美柑ちゃんもいる。

 

「音子!お前もこっちの世界に来てたのか!」

 

「うん。ヤミちゃんと一緒にねー」

 

思えばこのメンツはほとんどボクの正体を知ってるメンバーだね。

美柑ちゃんはこの姿で会うのは初めてだけど。

 

「音子さんって――え?」

 

「そう。リトの友達の音子さんです」

 

「美柑、彼女も宇宙人です」

 

「そ、そうだったんだ……」

 

「えへ♡」

 

何回かリトの家に遊びに行ったときに話をしたこともあるから、彼女も地球人の時と宇宙人の時の僕の姿をどっちも知っている一人になったわけである。

 

「音子君、それ言ってもいいの?」

 

「うん、実は数日前にリトとヤミちゃんにはバレちゃって……大っぴらに言えないのは違いないけど、彼女はリトの妹だしべつにいいかな」

 

西連寺さんにはご心配かけて申し訳ない。

 

「あなた……」

 

「ち、ちがうちがう!変なことはしてねーって!」

 

「いや、変な事はしただろ」

 

「――っ!ハレンチだわッ!」

 

「わざとじゃないんだって――!」

 

それで許されてるのはボクが優しいからだということを是が非でも忘れてほしくないので、リトにはこってりと古手川さんに絞られてもらうことにしよう。

助け船はださないよ。

 

あと、一瞬ヤミさんに同情の目を向けられた気がする。

彼女の方を見たときにはすでに美柑ちゃんの方を向いていたから、はっきりとしたことは分かんないけど。

 

とりあえず、この日はそれぞれで休息をとる流れになった。

この宿にはシャワーも備え付けなようで、ぜひともボクも入りたい……だけど、ここでボクの呪われた装備が足を引っ張った。

 

どう頑張っても両の腕から外れないせいで、服すら満足に脱ぐことができないのである。

 

ああ、これじゃあ今日はお風呂はおあずけか、と泣く泣く諦めようとしたのだが。

 

「私も入りたいですし、手伝いましょうか?」

 

「え?」

 

「何か問題でも?」

 

「い、いや。助かるよ」

 

意外にもヤミちゃんが手伝いに名乗りを上げてくれた。

なお、ぬいぐるみは濡れても次の瞬間には乾いていた。

ゲームならではの不思議素材である。考えたらダメなタイプのやつだね。

 

「服は変身で切りますね」

 

「う、うん」

 

じょきじょき、と鋏で裁断されていくボクのメイド服。

これが切れるのならば人形はどうなんだろうと思ったけど、鋏が人形をすり抜けてしまった。

どうやらそううまくは行かないらしい。

 

どうやら後で服は変身で縫ってくれるらしい。

 

シャワールームは非常に簡素なものだった。

人二人が入ればぎりぎり。市営プールのシャワー室を想像してもらうと非常にわかりやすい。大体あのまんま。

ぬいぐるみが邪魔にならないように壁に両腕を着くような形なので、余計にせまい。

 

少しボクが身じろぎすると僕の背中がヤミちゃんの身体に当たってしまう。

 

しかし、他人に洗ってもらうというのはくすぐったいものである。

五歳まで父さんと一緒に入っていたことを思い出す。

あの時は風呂が嫌いだったから、首を掴まれて無理やりお風呂に入れられた思い出。

――――――。

 

「今日、あなたが言っていた停戦協定ですが」

 

「ん!?は、はい」

 

丁寧にボクの身体を洗いながらヤミちゃんが口を開く。

耳元でささやかれたような感じだから、思わず体が震えてしまった。

し、心臓に悪い。

そういや、女の子と一緒にお風呂に入る経験なんて前世通してなかったなぁ。

 

「私はお受けしません」

 

「あ……そ、そっか」

 

少し悩んでいる様子だったし、呑んでくれるかなと思ったんだけど。

そりゃあちょっと一回話しただけじゃだめだよねぇ。

 

しょぼん、と泡が入らないように伏せてた耳をさらに伏せる。

 

「ですが、あなたの暗殺の件は一度考えさせてもらいます。あなたも言ったように私にも優先順位というものがありますので」

 

ぴこ、とその言葉に思わず耳をたてる。

すぐに泡が入り込みそうになり、ふたたび伏せるけど……つまりボクを殺さないってこと?

一旦は、という言葉が最初につくけれど。

 

「うん、ありがとヤミちゃん」

 

「あなたの事をあきらめたわけじゃないですからね」

 

「わかってるよぅ」

 

今はだめかもしれないけど、今日のようなことがなんでもない事になれば、ボクも彼女も何か変わるのかもしれない。

それができるようになるきっかけはまだわからないけれど……。

 

「尻尾はどうしたらいいですか」

 

「やさしく洗ってくれたらいいよ。強く握ったりすると単純に痛いだけー」

 

  ●

 

翌朝。

部屋を変わり、ボク、西連寺さん、古手川さん。

そしてヤミちゃん、美柑ちゃん。

そしてリトは部屋の外のソファ、という風にそれぞれの場所で夜を明かしたボクたちはひとつの部屋に集まっていた。

 

今までの情報共有である。

 

実はリトは昨日の晩、ボクたちが来るまでに大魔王マジカルキョーコの襲撃を受けていたらしい。

マジカルキョーコというのは朝やってる特撮キャラの名前であり、何も本人が襲撃を行ったというわけではない。

あくまでも彼女は現実の人間を元にした、ゲームのキャラクターである。

 

彼女がリトに伝えたのは、ララ様と別れて彼女と付き合う事。

そうすればここから返してくれると言う。

 

もちろん、ボクたちとしては彼女のいう事を素直に聞く気はない。

断固としてララ様を助けに行くつもりだ。

 

「これが、さっきのボスからでたドロップ品だね」

 

ヤミちゃんが倒した昨日の敵は宝箱を落としており、倒した彼女自身がそれを回収していた。

その中身はというと、太陽のマークをかたどったペンダント。

太陽の真ん中に顔があり、非常に趣味が悪い。

 

「『キョーコの導き』……そういえばキョーコは昨日レアドロップって……」

 

リトがそれを手に取り、矯めつ眇めつしているとペンダントが急に光を放つ。

手紙によってこの世界に来た僕たちには見覚えのある光だ。

 

次の瞬間にはこの世界に来た時と同じく空に放り出されていた。

まあまあの高さから放り出されたけど、みんなそれぞれゲームシステムが身を守ってくれたらしい。

 

リトは西連寺さんのお尻の下敷きになっているけどね……。

古手川さんに蹴り飛ばされるリトを後目に目の前にそびえたつ城を見上げる。

 

「ここが大魔王の城……」

 

少しおびえた様子で美柑ちゃんが言葉を漏らす。

空には謎に蝙蝠が舞っているし、空はさっきまで朝だったにもかかわらず薄暗い。

確かに最終ステージって感じ。薄気味悪ーい。

 

「みなさーん!」

 

「ぺケ!」

 

そんなボクらの元に少し体が汚れたペケが飛んでくる。

ララ様が作った万能コスチュームロボットであるところの彼……彼女?はどうやら黒幕の目を逃れてボク達のところまでたどり着いたらしい。

 

つまりはララ様の居場所を知っているという事だ。

 

道中のモンスターは、ヤミちゃんが変身によって片づけてくれたし、なぜか敵陣営として出てきた天上院先輩たちは、彩先輩の魔法によって自爆したから、最終ダンジョンにしてはあまり苦労せずにボクたちは大魔王キョーコの元にたどり着くことができた。

 

これならば時間がかかった分、最初の森の方が大変だったかもね。

 

「キョーコ!ララを返してもらう!」

 

玉座の奥に座るキョーコはリトのその言葉に対して不敵に笑った。

ちなみに、彼女の姿は布面積の低い下着姿だが、本物のキョーコちゃんはあんな格好はしていない。

 

「じゃあ、ララちゃんの事……あなたは好きなの?」

 

「……そ、それは」

 

「ちゃんと答えてくれたら……ラスボス特権であなた達を元の場所に帰してあげる――かも?」

 

「ッ……!」

 

キョーコちゃんの後ろにはララ様の姿が。

リトはキョーコちゃんによって無理やり自分の気持ちと向き合わされている。

おそらく彼自身もまだ自分の気持ちを把握しきれていないというのに。

 

……それでも、彼は今の自分の気持ちを素直に伝えることを選んだ。

 

好きという気持ちであるかは分からないが、ララ様がいないと何か落ち着かない自分がいるという事。

はっきりとした言葉ではないが、彼自身何とか言葉を振り絞ってララ様へと伝える。

その言葉を聞いたララ様は嬉しそうに、リトの今の気持ちを聞けたことで十分だとそう言った。

 

しかし、よくもまあリトに思いを寄せる人物が多い中で彼にこんなことを言わせるものだ。

 

「も~、煮え切らないその態度……気に入らないなあ」

 

だが、大魔王にとって期待した言葉ではなかったらしい。

彼女は指先に炎をともし、ボク達に向けてその指先を向けた。

 

「みんな、ゲームオーバーになっちゃえ!」

 

ボク達を囲む炎はその面積を徐々に減らし、ボク達の身体を舐める。

体感ゲーム故か、熱さは感じないけれど、ボクたちの体力はどんどんと減ってしまう。

 

「男の子がせっかく勇気を出したのに、この所業はなんだよ!」

 

「あなた達の都合は知りません~。ゲームオーバーになってスタート地点からやり直し!次はアイテムもないしぃ、三年くらいかかるかな」

 

「さ、三年!?」

 

ボクの追求を飄々とかわして告げる彼女の言葉に思わずリトが叫ぶ。

それがほんとでも嘘でも彼女に付き合わない方法を考えなくてはいけない。

 

「リト!……ひゃっ!?」

 

助けに来ようとしたララさんがそばにいた付き人によって尻尾を掴まれ抑え込まれる。

 

「く、くそっ万事休すか……」

 

「ゆ、結城くん!それ!」

 

「え?」

 

諦めかけたリトが持つ『花屋』の専用武器、じょうろが黄金色に光ったのを西連寺さんは見逃さなかった。

 

リトが西連寺さんの言葉を受けて大きくじょうろを掲げるとその光はさらに強くなる。

 

『花屋の究極技:ライトニングシャワー!』

 

「あ~れ~」

 

「火が……」

 

火と共に、キョーコちゃんの姿がどんどんと薄くなり、消えていく。

そして最後に笑顔を浮かべて、大魔王キョーコはその姿を消したのであった……。

 

――しかし、ボクの装備って本当にただの呪いのアイテムだったんだね。

てっきり僕のもキーアイテムと思ってた。

 

  ●

 

今回の事件に関するすべての原因。

それは、ララ様の妹。

第二皇女、『ナナ・アスタ・デビルーク』。

第三皇女、『モモ・べリア・デビルーク』の二人の仕業によるものだった。

 

彼女たちが説明するところによると、姉であるララ様の周りにいる人物のことを知りたかったとのこと。

ボクは普段地球人として活動しているからともかく、ヤミちゃんにまで手紙が来ていたのはナナ様が適当に招待状を配っていたのが原因らしい。

 

その後はゲーム世界のバグにより、ゲーム世界が崩壊しかけるも、ララ様のおかげでみんな無事に脱出することができた。

 

リトの下半身が露出するという逆ハプニングはあったけど、まあこれはボクにとってはダメージが少ない部類だからまだましだった。

 

そして、この騒動を起こした二人の姉妹はデビルーク星に帰っていった。

ボクも二人に手を振って送り返したが、やけにナナ様がボクに興味を持っていたのが気になる。動物っぽい要素は多いけど、ボクは人間だよ?

 

まあ、あの二人とは近いうちにまた会うだろう。

 

……ああ、そうそう。

今回のことで、ララ様にもボクの事は簡単に話しておいた。

皆には内緒にしておくって約束してくれたけれど、ちょっと不安はある。

 

……でも、彼女も約束をしておけばなんやかんやで秘密は守ってくれるほう、だと思うので……彼女を信じよう。

 

 

さて。夏と言えばお祭りだよね!




お気に入り、感想ありがとうございます。
続きをもうしばしお待ちください。

大きい方が好き?小さい方が好き?

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