古戦場が終了したので投稿させていただきます。
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うだるような暑さの続く夏。いかがお過ごしでしょうか。
ボク?ボクは自宅のアパートでぐうたら過ごしている最中でございますよ。
平日、うだるような暑さを必死こいて登校しているから、冷房の効いた部屋で食べるアイスが染みるのなんの。
あ、そうそう。そういえば。
先日の仮想空間での体感型ゲームの一件を起こしたララ様の姉妹。
学校でララ様の口から説明してもらったんだけど、彼女達はしばらく地球に滞在するらしい。
あの後、一度星に帰ってはいたらしいのだが、勉強が嫌で逃げ出したのだとか。
うーん。王族ともなれば色々としがらみがあるんだねえ。
そんな事を思いながら、ソーダ味のアイスを食む。うん、おいしい。
こんな感じで休日を謳歌していたんだけど。
アイスの棒を咥えながらのんべんだらりと過ごすボクを戒めるかのように、部屋に電話の着信音が鳴り響いた。
「お?古手川さん」
机の上に放り出してあった携帯電話を手に取ると、着信画面には古手川さんの文字が。
こんな休日に、ボクに一体何の用事なのだろう。
「もしもし?」
「あ、音子君。突然なんだけど……今日予定は空いてるかしら」
「今日?うん。特に何も用事はないけど」
「よければ、今日のお祭り私と行かない?」
「え、ボクと?別にいいけど……リトを誘った方がいいんじゃないの?」
「ど、どうして結城君がでてくるのよ!」
いや、どうしても何も。
キミがリトの事をなんとなく気になっているのは傍から見てたらなんとなく分かるって。
「ボクを誘うくらいなら、リトと一緒にデートした方がいいんじゃないの?」
「余計なお世話よ!……それじゃあ、場所は教えるからすぐ来てね!」
がちゃり、と電話が切られる。
うーん。少々からかい過ぎただろうか。
それはそれとして。
「え?今から?」
部屋の中にある時計は只今二時を回ったあたり。
古手川さんの家に行くまでの時間を踏まえても、少し早いと思うんだけどな。
「まあからかった手前、できるだけ急ごうかなっと」
外出の準備をしよう……といっても。
部屋着から簡単な服装に着替えて、あとは皮のようになっているスーツの背中から足を突っ込んで着込むだけ。
こんなでも、少し前に比べるとボクの身支度はマシになったほうである。
その理由があんま健全じゃないんだけどね。
そんなわけで、えっちらおっちらと彼女の家まで来たんだけど……。
「なに?その恰好」
「え?どこか変かな」
古手川さんの言葉に思わず体を確認するが、スーツの上にはどこにでもあるようなシャツとズボン。
変なところなんてないはずだけど、一体彼女は何が疑問なのだろう。
「その姿じゃ、同級生の男の子と遊びに行くみたいじゃない」
「え、ああ……。そういう事」
どうやら彼女は中の女の子の姿のボクと一緒に遊びに行くつもりだったらしい。
なるほど。確かにハレンチ潔癖症の彼女がボクの事を誘う時点で少し気に留めておくべきだったかもしれない。
でもいちおう訂正すると、この姿のボクはキミの同級生の男の子である。
正体が宇宙人の女の子としてもね?
「いやあ、でもさ。この姿の方がいろいろと便利かもよ。ほらナンパとかさ」
「バカなこと言ってないで脱ぎなさい!」
「いてて、外の皮引っ張っても脱げないよぅ!」
……あと、これを彼女に言うと余計怒るだろうから言わないけどさ。
今のこの状況。誰かが見てたら絶対勘違いすると思うんだよね。
「もう、しょうがないにゃあ」
彼女の剣幕に押され、スーツを脱ぐ。
さらば男のボクよ。今日の出番は短かったね。
「……改めて知り合いの男の子の中から、容姿の全然違う女の子が出てくるのは変な感じね」
「脱がせといて、そんなこと言わないでよね……。それと、なんでこんなに早く呼び出したの?」
花火大会まではまだまだ時間があると思うのだけど。
こんな早くにボクを呼び出すのは何故なのでしょうか。
「なんでって……着付けの時間も必要でしょ?」
「えー。キミが浴衣の着付けをしている間、ボクは部屋で待ってろって?」
「貴女の分もあるでしょ」
「はい……?」
ボクの浴衣?
ハハハ。ナニヲイッテイルンデショウカ。
……本気?
「いやいや、ボクはそもそもそんなもの持ってないし。いくら地球が長いからって言ってもさぁ」
「私が小学生の時に使ってたものがまだ残ってたの」
「……なるほど?」
……確かに、ボクは現役小学生の美柑ちゃんと背丈はそう変わらないし……入るのかもしれないけど。
「……まさかその浴衣を着せるために、ボクを誘ったんじゃないよね?」
「……」
何か言ってほしい。笑顔のまま固まられるとボクも困るのである。
●
古手川さんの家で浴衣の着付けを終えるまで数時間ほど。
彼女のおめかしに付き合う形でいろいろとボクも格好を整えられ、ボクたちは花火大会に着いた。
浴衣を着るのを断らなかったのかって?
わざわざボクのために小学校のころの浴衣を用意してくれたのだ。
それを断るというのは……彼女に悪いでしょ。
まあ、この薄桃色の浴衣の着心地は悪くない。
似合っていると言ってくれた時は嬉しかったし、古手川さんに文句はないよ。
同級生の女の子にいろいろと世話をされるのは気恥ずかしかったけどね。
ボクがこれを着るのを楽しみにしていてくれたのなら、その期待をうらぎるわけにゃあいかないでしょうよ。
「もう花火が始まっちゃったわね」
その声に空を見上げてみれば、大小さまざまな色の花火が空をきらびやかに彩っている。
これぞ夏の風物詩だねえ。
「もぐもぐ。でも、まだ始まったばかりみたいだよ」
「何食べてるの?」
「ベビーカステラ。食べる?」
もしゃもしゃと口に運ぶ傍ら、出店で買ったベビーカステラを古手川さんに差し出す。
「しかし、去年よりもなんだか人が多い気がするね」
「去年も来たの?」
「うん。リトと猿山と男だけでね」
「男だけって……」
「そのあたり突っ込むときりないから。……もしかしたら宇宙人が大量に紛れ込んでるのかもね」
「あなたやララさんを知っていると案外ありえるかもね……」
すこしげんなりとした様子で古手川さんがそう言う。
まあまあそんな事言わずに。
もう一つベビーカステラを与えてしんぜよう。
しかしせっかくの花火大会なのだから、せっかくなら眺めのいいところに行きたいところだ。
最悪、適当なビルの屋上に古手川さんを抱きかかえて移動もできるけど……あんまり乱暴はよくないからなぁ。
「ん?あなたは確か……」
「あら、確かララさんの……」
うんうん、と頭を悩ませていたボクを後目に、誰かが古手川さんに声をかけてきていたようだ。
宙に彷徨わせていた目を向けてみれば、話しかけてきたのはララ様の妹のモモ様だった。
その後ろにはナナ様もいる。
「音子に'コケ川'!」
「古手川!」
名前をお間違えになるナナ様に古手川さんが勢いよく訂正を行う。
彼女たちは地球観光の一環だろう。
「二人とも、先日はご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした」
「いえ、モモ様やナナ様の気持ちも重々承知しております」
ぺこり、と頭を下げるモモ様に合わせてボクも頭を下げる。
なんか古手川さんの視線を感じるが、しょうがないじゃーん相手は王族なんだから。
ララ様は同級生だから、普段はため口だけどさ。
「ぜひ私たちに話す時は敬語を外してお話ください。お姉様たちと話している時と同じようにしていただいて構いませんので」
「……うん、分かった。じゃあお言葉に甘えさせてもらうよ、モモ様」
「私たち、これからお姉さま達のところに行くつもりなんです。古手川さんたちもいかがですか?」
「だってさ、どうする?」
「ええ。だったら一緒に行きましょう」
「へへ。多分、リトもいるだろうしねぇ」
「ゆ、結城君は関係ないでしょ!」
動揺する古手川の追求を飄々と躱し、彼女に向けてほほ笑む。
そんなバカなことをやっていると、ナナ様がボクの方をじっと見つめてきた。
な、なんですか……?
「今日は耳、ないんだな」
「ああ、うん。このカチューシャのおかげかな。これを着けてる間は耳と尻尾は見えないんだ」
「それ今、取れるのか?」
「ええっと……」
周りの人たちは空の花火に気を取られているから、少しくらいなら大騒ぎにはならないだろう。
そう考え、一瞬だけカチューシャを外して耳と尻尾を出す。
ボクの耳をみるとナナ様が目を輝かせる。
え、何その反応……ボ、ボクは飼い猫になる予定はまだないんですけど?
「なあなあ!音子ってデビルーク星に来たことある?」
「ええっと、ちょっとした仕事で何回か行ったことはあるけど……お二人には会ってないんじゃない?」
「やっぱそうか!覚えてないのも当然だよ。こっちが一方的に見てただけなんだから……」
どうやら父さんと一緒に仕事でデビルーク星に行ったときに、どこかで見られていたらしい。
ま、二人の性格上勉強を抜けだしたりとか、してただろうから不思議ではない。
今まさに脱走中だもんね?
「珍しい姿だったからよく覚えてたんだ。背丈もそう変わってないし……雰囲気は少し違うけど」
「多分、そのころはもう少し尖ってた時期だろうから……」
「ふーん」
デビルーク星に行った記憶は数回だが、そのどれもまだ幼いころの記憶だ。
そのころというと、ボクも組織にいたころの思考に囚われて父さんにも懐いてなかった時だろうから……。
「うおおお!みんなどいてくれぇ!」
「な、なんだ!?」
ナナ様と談笑していると、遠くからリトの声が。
声の方に目を凝らすと、遠くからヤミちゃんと一緒にこっちに近づいてくる。
だけど随分と必死そうな声だ。
どうやら楽しいことをやってるわけじゃないみたいだね。
「っ……」
「危ない!」
背後に三人をかばう様にして、リト達から距離をとる。
きらり、と空中で何かが鈍く光り、ヤミちゃんが振り向きざまに虚空へ向かって刃を振るう。
何もない空間に振るった刃は、しかし甲高い音をあげて何かをはじき飛ばした。
わずかな風圧と共にボクの足元に何かがぱらぱらと落ちてくる。
――これは、糸?
そしてそのまま二人は人気のない森の方へと二人で駆けて行った。
……よくよく感覚を鋭敏にしてみれば、何かの気配も一緒に遠のいていく。
おそらくこの気配が襲撃者の気配なのであろう。
「二人とも、何かに襲われているようでしたが……」
「……そうだね。古手川さん達はララ様のところに先に合流してこの事を知らせてきて。ボクが様子を見てくるよ」
ヤミちゃんに限って不覚を取るなんてことはないと思うけどね。
あっちにはリトがいるからやはり少しだけ心配だ。
「一人で大丈夫なのか?」
少しナナ様は心配気な様子で声をかけてくる。
だけど、ボクだってこの星在住の宇宙人の中では結構な武闘派なのだ。
努めて明るく、彼女に向かって笑顔を浮かべる。
「大丈夫、大丈夫。ゲームの中じゃあ大暴れはできなかったけど、ボクだって強いんだから」
「……わかりました。そちらはお願いいたします」
「い、急いでララさん達を呼んでくるから」
「うん。あんまり急いで転ばないようにねー」
ララ様のところに向かっていく皆に背を向けて、ヤミちゃんとリトのところに走り出す。
今はあまり聞こえなくなっているけど、さっきまで戦闘音が聞こえてきたからね。
大体どこにいるかはなんとなく予想できちゃうよ。
「お、いたいた」
視線の先に彼らをとらえるのにそう時間はかからなかった。
やっぱり、追い詰められているってわけじゃあないみたいだね。
ヤミちゃんとリトには碌な傷がないけど、相手は結構なダメージを受けてるし。
つーか、なんだよあのたこ焼きでも焼いてそうな姿は。出店のおじさんにでも化けてたの?
「助け船はいらないかもだけど、リトもいるし穏便に、かな」
血生臭い展開にリトを突き合わせるわけにもいかないでしょう。
『マグヌス』を引っ張り出して、設定を捕縛に適した物に変更する。
「そら、いけ!」
マグヌスの引き金を引く。
銃口から飛び出した銃弾は、空中で膨張し、白い塊となってボクらの敵に向かって飛んでいく。
「モ、モグぅ~……」
二度、三度と引き金を引けば殺し屋はその体のあちこちにへばりついた『とりもち弾』のせいで身動きが取れなくなった。
電撃とかでしびれさせてもよかったけど、薄暗いここでは目に悪いからね。
ボクなりのやさしさである。
「リト、無事ー?」
「あ、ああ」
「救援はやっぱりいらなかったかな」
「いえ、助かりました。私では穏便にことは済ませられませんでしたから」
「そう?」
地べたでぴくぴくと動く襲撃者を見てヤミちゃんはそう言った。
そういえば、こいつの名前わかんなかったな。
戦うところなんてボク、ほとんど見てないし……後で引き渡す時に困るからあとでヤミちゃんに聞いとかないと。
もちろん、ヤミちゃんがほとんど倒したようなもんだし……報酬のお金はほとんど渡すけどね。
いらないって言ったらボクが全部もらうけど。
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あの後の事?
もちろん無事にボク達はララ様たちと合流することができた。
リト達を襲ったのは、『ラコスポ』の仕業だった。
カエルに乗ってたララ様の元婚約者である。
この説明でわからなければ、ヤミちゃんをリトに差し向けた男と言えば分かるだろう。
もっともあちらにはララ様、ナナ様にモモ様までいたのだ。
戦闘に秀でているわけでもない彼にできることはほとんどなかったらしい。
後からナナ様に聞いたところ、花火といっしょに空の元、お仕置きされてしまったらしい。
なお、ちゃっかり彼の飼っていたカエルはナナ様が回収していた。
話によると、ナナ様は動物と。モモ様は植物と話すことができるらしく、それぞれの収集を行っているらしい。
ラコスポに飼われていたカエルも大事にお世話をされることだろう。
しかし古手川さんに浴衣を無事に返すことができて本当によかった。
もし傷なんかつけてたらと思うと冷や冷やもんだよ。
今回のようなことがあるかもしれないし……不承不承ながらボクも自前の浴衣を用意するべきかもしれない。
ちょっとばかり臨時収入も入ったから、女の子用の物をいろいろと揃えておいた方がいいのかも。
選ぶときには、古手川さんにでも付き合ってもらおうかなぁ……。
感想、お気に入り登録ありがとうございます。
次回、鋭意制作中ですので少々お待ちください。
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