健全な男子には厳しい姿勢で行きたい白猫の話   作:変身スキー

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海回です……が、白猫の水着姿はお預けです。
今回は今、白猫がどんな状態なのかの再確認……無印編を終えるための準備回になります。


第十一話:海へ行く白猫

  ●

 

天上院先輩の誘いの元、ボク達は彼女の所有するシークレットビーチに来ていた。

場所は日本ね。決して外国に行っているわけではないよ。

 

天上院さんの誘いという事もあって、ボクたちの知り合いほとんどが来ている。

もちろん同じ学校ではない、ヤミちゃんや美柑ちゃんたちも一緒に来てくれている。

この辺りはリトが誘ってくれたのかな。

 

「ララさん達の妹たちも地球の海を楽しんでくれてるみたいだね」

 

「ああ、そうだな……」

 

ナナ様やモモ様も初めての地球の海ですっかりはしゃいでいるようだ。

ララ様と楽しそうに海の中で遊んでいる。

 

「そういやさ、祭りの時とかははララのこと様付けで呼んでたよな」

 

リトが不思議そうに問いかけてくる。

ああ。そういや学生をやってるときは、『ララさん』って呼んでるっけ。

 

「デビルーク星でお仕事をやった時に失礼のないようにって偉い人に刷り込まれたから、様づけはそのクセかなぁ。地球に来てからは……ホラ、最初は宇宙人だってこと隠してたし」

 

「そっか……様付けでなんて呼んでたらすぐにバレるからな」

 

そういう事である。

最も宇宙人であることは割とすぐにばらしたけど……急に呼び方を変えるのも不自然でしょう?

 

「つーか、その姿で海に来て楽しいのか?」

 

「なんだよ、あの姿の水着姿でも見たいの?」

 

「そうじゃねえって!今の姿ってスーツなんだろ?水とかに入っても気持ちよくないんじゃねえの?」

 

「大丈夫大丈夫。スーツにはちゃんと感覚通ってるからさ。だから水の冷たさとかもちゃんと感じるんだ」

 

スーツによってはそのあたりいい加減だったり、ちょっと誰かに引っ張られるだけですぐに脱げる粗悪品だってあるけどね。

ボクの使っているところはそのあたりは対策済みの高級品である。

その代わり、外のスーツが傷つくと痛いってデメリットもある。

流石に直に喰らうよりはマシだけどさ。

 

「へぇ……」

 

「だから君が無理やりこのスーツを破こうとしてもできないからね」

 

「しねーよ!」

 

叫ぶリトにケラケラと笑って返す。

そりゃそうだ。

少なくとも彼が自分の意志でそういうことをするわけない。

 

「ちょっとネコ!オイル塗ってくれない?」

 

「ん、御門先生?」

 

声がかけられてきた方を見ると御門先生がパラソルの下で手招きしていた。

別にいいけど……ボクでいいの?

 

「……ってことらしい。先に向こうで遊んでてよ。後で合流するね」

 

「おう!猿山達にもそう言っとく」

 

そういうとリトは向こうへ駆けていった。

どうやら彼もこの海を大いに楽しみにしていたらしい。

……それとも、かわいい女の子がいっぱいいるから案外浮かれているのかな?

本人の女性耐性は段々と上がっているから、それもあり得る。

 

「うーん、恋多き男ってのはちょっと違うよなぁ」

 

自分の恋に対してはかなり真摯だし。

だらしない恋をするようなやつじゃないもんね。

 

「ネコ?」

 

「はいはい。今いくよ~」

 

御門先生のとこに行くと、彼女はビキニの上を解いてうつ伏せに寝転がってくれた。

彼女の私物の日焼け止めクリームを掌で伸ばし、彼女の肌に塗る。

 

……うーん。

普通男の子だったらこういうので興奮するんだけど、正直気恥ずかしいだけであんまり興奮しない。

だからって、男の子の身体に興奮するという事もない。

 

正直ボク自身自分の身体の事理解できてるわけじゃないけど。

これ、どういう事なんだろうね。

『ネコフーリ族』に男はいないらしいけど……。

ボクの性自認ってどっちなんだろう。

 

「リトくんにやってもらってもよかったんだけどね」

 

「もう、彼をあんまいじめてあげないでよ。そもそも、リトが先生の裸に触れると思う?」

 

「いろいろ方法はあるわよ?お静ちゃんの念力を使うとかね」

 

「やめてあげなよ……」

 

「うふふ」

 

ちらり、とスク水を着てみんなと遊んでいるお静ちゃんを見る。

彼女は以前ボク達が探索を行った廃校舎にいた幽霊で、いまの身体は御門先生の作ったバイオロイドに憑依する形で体を動かしている。

御門先生のところで看護婦としても働いており、元幽霊ということで色々と不思議なことができるのだが……。

 

「薬の量を減らし始めて少し経ったけど、体の調子はどう?」

 

「定期健診の時にも言ったけど、少なくとも情緒不安定になったりとかはないね」

 

「変化はなし、ね」

 

彼女のくれるおクスリに頼ることもだいぶ少なくなってきている。

快方に向かっている……というのは、少し前に健診をしてくれた彼女の弁である。

 

キャーキャーと姦しい声に目を向けると、またリトが天上院さんの胸を(事故だと思うけど)揉んでいる。

あはは、どっちも顔真っ赤。

 

「結城君と仲がいいみたいだけど、彼の事はどう思ってるの」

 

「え、何急に。恋バナ?ボクが彼のこと気になってるって?」

 

結構彼とは距離が近いけど、少なくとも今ここに至るまでそういう感情になったことはない。

というか、彼に限らずそういう感情になった人間はまだいないかな。

 

「うーん。あんま昔からそういうのに疎くてさぁ……。そういうのはまだないかなぁ」

 

「それはあなたの身体や心がまだ成長してないからよ」

 

「体はともかく心も?これでも地球換算で十七年程度生きてるんだけど……」

 

「ホルモンなどの因子が正常に生成されないと、いくら長く生きてても情操は正しく育たないわ」

 

む。

確かにボクってちょっと子供っぽい?

自分では言われてみれば、って感じだけど。

 

「あなたの本能を抑え込むための薬の投与量が減り、あなたの身体はやっとこれから心体共に成長していくの。特殊な宇宙人でもそれは変わらないわ」

 

「なるほど、ね」

 

「それがどんなスピードで通常のように戻るかは私でもすべては把握できないけど……」

 

なるほど……でも。

 

「リトは友達だよ。もちろんここにいるみんなもね」

 

成長して正常に戻ることになったとしても。

彼との関係が壊れるのは怖い。

 

それは彼に限らず。

この地球で育んだ物。築いたものが何かの拍子で崩れるのは怖いって。

 

うぅ。想像でもこんなこと考えてると鳥肌立ってきた。

 

「なら、あとはきっかけなのかも」

 

「きっかけ?」

 

「ええ。もしかしたらちょっとしたことで、あなたのソレは治るのかもしれないわね」

 

「そういうもの?」

 

「ココロの病気だもの。私たちは最善を尽くすけど……最後に一歩を踏み出すのは患者だもの」

 

「そう、だね」

 

きっかけ。

そのイベントに心当たりはある。

原作知識だからちょっとズルだけど……もともと地球にきた目的の一つでもあるんだから。

 

――時期的にも、もうすぐだよね。

 

 

「有難う御門先生。あなたの患者でよかったよ。……はい、終わり!」

 

日焼け止めを塗り終えて、彼女に日焼け止めの容器を渡す。

さて、と。みんなのところに戻らないと。

なんだか向こうも騒がしくなってきたし。

 

  ●

 

「おお、でっかいスイカ」

 

「ヤミさんが割ってくれたんですよ」

 

「割った、ね」

 

美柑ちゃんがそう教えてくれるけど……これはどちらかというと『切った』だろう。

スイカも舌とか口がある宇宙スイカだし……。

もっと言えば『討伐した』が近いんじゃない、コレ?

 

「あなたもどうぞ」

 

「お、ありがとう」

 

ヤミちゃんから切り分けられたスイカをいただく。

……うん。図体がでかいから味はどうかと思ったけどかなり甘い。

だけどもそんなにくどくない。うーん、繊細なお味。

 

「シロ、あなたその姿のままなんですか?」

 

「ヤミちゃんもそういうこと言う?」

 

そんなにみんなボクの水着姿が見たい?

なんて。冗談は心の内だけでしまっておいて。

 

「海水はちょっとね。耳とか尻尾がべたつくから正直かなーり苦手」

 

「そうだったんですか」

 

「淡水なら別に大丈夫なんだけど――でも、このままでも楽しいよ?」

 

この姿なら海でも気にせず泳げるし……窮屈ってわけでもない。

そりゃまあ普段の身体の方が楽に決まってるけどね。

 

「みんなで遊びに行くのだって今日だけじゃないでしょ。もしかしたらプールなんかにも行くかもしれないし」

 

「そう、ですね」

 

そう言って、彼女が顔をほころばす。

 

「……」

 

「どうしました?」

 

「い、いやぁ。ヤミちゃんのそういう顔。ボク初めて見たかもって」

 

思えば、優先ターゲットから外れてからというもの、何かしらの事件の最中だったりで彼女と平和な時間を過ごすなんてなかったもん。

 

だからそんな彼女の顔に思わずぼうっ、とあっけに取られてしまった。

 

ひゅん、と風を切るような音がして、目の前に刃が落ちる。

目の前には少し顔を赤くしたヤミちゃんがいた。

でも、ボクの第六感は何も知らせなかった。

つまりもともと当てるつもりはなく……ただの照れ隠しである。

 

「あまり調子に乗っていると、その体を引っ張り出しますよ」

 

「はいはい。じゃあ、次プールに行く機会があったらスーツは着ていかないよ」

 

「そんな機会があればですが」

 

「あるよ。キミとボクが地球(ここ)にいればね」

 

彼女の前に小指を差し出す。

というか、『指きり』だ。

 

「これは?」

 

「地球の約束の方法」

 

おずおずと小指を出した彼女と指きりをする。

 

「約束だよ。今度プールに行くときはスーツ無しでね」

 

「……はい」

 

彼女と約束したので、これは絶対に破ってはいけない。

 

こういう事をしても決してバチは当たらないと思うのだ。

幸せになる資格のない人なんていないんだから。

もちろんボクも。

 

そうであって欲しいと思う。

 




感想、お気に入り登録ありがとうございます。
無印編も予定ではあと四、五話の予定です。
もう少しお付き合いください。

次回はまたリトにスポットを当てたお話。
でも白猫視点のご予定です。ここらで少し休憩の回が必要ですよね!

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