次回のお話は少しお待たせする形になると思います。
すごく大事な回になるかもしれませんので。
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商店街をぶらりぶらり、と歩く。
今日は、スーツの調整のため少女姿のまま街に出ているが、実は最近はスーツに特に問題がないときにもこの姿で街を歩いてるんだよね。
おかげでなんだか商店街の皆様にも顔を覚えられちゃって、お安く物をいただいたりすることも増えてきてしまった。
そういうことがあるのなら、この姿でいたほうが得なのかも……。
……って、そんなわけないない。
こういうふうに油断していると先日のセリーヌちゃんの惚れ花粉みたいなことに巻き込まれるかもしれないから、気を付けないと。
同じ轍は踏まないようにしないとね。
……とは言っても。
それくらいで回避できるようなら、苦労しないんだよねぇ……。
「うわわわぁ!」
「ん?」
内心ゆーうつな気分になっていると、突如、空から絹を裂くような悲鳴が聞こえてきた。
なんぞやと出所に目を向けてみるとそこには空中でバランスを崩したまま真っ逆さまに落ちているヤミちゃんの姿が。
「空から女の子ってのも、使い古されたネタだとおもうけど、ね!」
なんで落ちているのか。
その理由は分からないけど、ほっとくワケにもいかない。
ぴょん、と飛びあがって、そこらの住宅の二階の壁を蹴って三角飛び。
足場にしてしまった家の住人には大変申し訳ないが、許してほしい。美少女を助けるためである。
そのまま空中でヤミちゃんを下から掬うように抱きかかえ、彼女を救い出す。
お姫様抱っこができればかっこよかったんだけど、身長の関係上どうしても彼女の下にボクが滑りこむような形での救出になってしまった。
もっとも着地の時に無事踏ん張りがきいたおかげか、バランスを崩しはしなかった。
尻餅をついてヤミちゃんを巻き込む。
古手川さんに選んでもらった服を破く。
……なんてことはなかったから、まあ及第点かな。
「あ、ありがとう音子さん……」
「へ?」
抱きかかえられたまま、ヤミちゃんが笑顔でボクにお礼を言う。
それが随分と意外で、随分お間抜けな声を上げてしまった。
誤解のないように言うと、ヤミちゃんもお礼くらい普通に言う。
だけど、なんだか今日の彼女はいつもと比べて言動の印象が違う気がする。
「は!?ご、ごほん!」
思わず固まってしまっていたボクだったけど、ヤミちゃんが咳払いと共に立ち上がったおかげでボクも正気に戻った。
「まったく。どうしたのさ、ヤミちゃんらしくもない」
「あはは……えっとぉ」
腰に手をあててヤミちゃんの顔を見上げる。
やっぱりいつもより様子が変である。ボクの直感もそうだそうだと声を上げている。
ボクの追求に、なんだか言葉に困った様子だった彼女だったが、急にきょとん、と不思議そうにボクを見るとやおらに近づいてきた。
な、なにさ。
なんだかこう近づかれると、身長の差が露わに……。
その時、何を思ったのだろう。
ぽす、とヤミちゃんの手が頭に添えられる。
「えへへ、いいこいいこ」
「……」
なでなで、とヤミちゃんの手がボクの頭をなでる。
んなー……。
「……ってこらぁ、子供扱いすんなぁ!」
彼女の手を首を振って振り払い、両腕を上げて猛抗議する。
「ご、ごめんなさーい!」
急に大声を上げたボクの声にびっくりしてしまったのか、彼女はボクを置いて尻尾を巻いて逃げていく。
アハハ、尻尾が生えているのはボクなのにオカシイネ……って。
「ぜ、ぜったいおかしい!」
ヤミちゃんはボクの頭なんか撫でたりしないし、そもそも音子って呼んでたし!
ど、どこ行った!?
電柱のてっぺんに上って、高い所からヤミちゃんの姿を探す。
空を飛んだらすぐに確認できるし、いつもよりもフラフラと不安定な動きをしていたからそんなすぐに遠くまではいけないはずだ。
だからこうして高い所から探していれば、いずれ……。
「いた!」
目を凝らすと、少し遠い場所にヤミちゃんがいた。
近くの家の屋根を蹴り、直線距離で彼女の元に向かう。
「って何やってんだ?」
「むひょ~、ヤミちゃーん!」
「な、なんなのぉ!」
彼女がいる現場に着いてみれば、そこには校長に追いかけられているヤミちゃんの姿が。
ヘンタイから逃げ回る、『金色の闇』。
うーん。なんか解釈違いで頭がバグってきた。なんじゃこりゃ。
「ていっ」
「ぽぎゅぁッ!?」
何だか知らんが、すでに頭に包帯を巻いていた校長の顔に飛び蹴りをかます。
蹴りのせいで顔が凹んでる気がするが、ぴくぴくと動いているので息はあるだろう。
商店街で過ごしてるとこのおっさんともエンカウントするんだけど……、この人に対する力加減が身についてきた気がする。
……いやな経験値もあったものだ。
「た、助かったぁ」
「……」
ヘンタイの魔の手から逃げ延びて、ほっと一息を着く彼女の近くによって、そのまま彼女に抱き着く。
と言っても、別に下心があるわけじゃない。
「むー……」
「音子さん?」
目を閉じる。
ボクの直感が受け取った彼女から感じる何かを頭の中で精査していく。
彼女のまとう雰囲気にはどこか既視感がある。
ヤミちゃんではなく、ボクの知り合いで似たような雰囲気の人…………。
「美柑ちゃん?」
「ええ!?」
頭の中に浮かんだ名前を呼ぶ。
どうやら彼女の反応を見ると大当たりのご様子だ。
うーん。こういうの意識的にやったの初めてだったんだけど。意外と上手くいくもんだねえ。
いつもはなにかしらの五感と併用しているから、正直ダメ元だったんだけど。
「すごーい!分かるんだ!」
「えへへ」
どーだ。もっと褒めるがいい。
って、違う違う。
いくら見た目がヤミちゃんでも中身は美柑ちゃんなのである。
年下の女の子相手に自己肯定感をあげるのは、ここら辺にしておかなくちゃ。
「で。なんで美柑ちゃんはヤミちゃんの体に入ってるの?」
「えーっと、ララさんの発明品を使って、ヤミさんの体と少しだけ入れ替えてもらったの」
「あー、なるほど?」
人同士の精神を入れ替える道具というのを、ララ様はすでに開発していたらしい。
宇宙基準で見ても、とんでもアイテムを続々と作るよな、あの人は。
なるほど。それでヤミちゃんの体に入っていたから少しはしゃぎ気味だったんだ。
ボクの記憶の中の美柑ちゃんは、随分大人びていたような印象だったけど……。
彼女も未だ小学生、というわけか。
「でもヤミさんもすごいけど、音子さんもすごいんだね」
「ん?あー。そういえば美柑ちゃんの前であんまり力を出したことなかったね」
彼女は鉄火場からは遠い人間。
そもそも彼女に危険がせまれば、ヤミちゃんが黙ってないだろうし。
ボクが本気を出すような場面なんて、そもそも鉢合わせないほうがいいんだろうけど……。
「な、なんかヤミちゃんの姿でそんなキラキラした目を向けられると、すごい照れる……」
「そう?」
そうなのである。
これが、あれか。ギャップ萌えというやつなのか?
にやつきそうになる口を両手で抑え込んで、必死に耐えておこう。
「音子さんは宇宙にいたときから、ヤミさんと知り合いなんだよね?」
「知り合い……って言うには、物騒だけどね。顔を突き合わせて話をするときはたいてい武器を握り合ってたし……」
おっと、これ以上この話を続けても彼女を怖がらせるだけだろう。
「こほん。まあ、そんな間柄だったけど、今では少し話ができる仲になれたからね。キミのお兄さんのおかげだよ」
「うん。その時の話は少しだけヤミさんから聞いたよ。ちょっとだけ謝られちゃった」
えへへ、と屈託なく笑う美柑ちゃん(見た目はヤミちゃん)。
ヤミちゃんを変えた大きな要因の一つは、間違いなくこの子なんだよね。
ボクじゃあ絶対にできないことを、やってのける人間である。
「ボクもヤミちゃんと仲良くなれるよう頑張ってるんだけどねえ、道は長いよ……とほほ」
「でも、ヤミさん。私といるときは音子さんの事もよく話してますよ」
「え、ほんと?」
最初は愚痴が多かったけど、と付け加える彼女の言葉に思わず顔をほころばす。
美柑ちゃんの口から聞くのはちょっとズルっ子のような気もするけど……やっぱり少しずつ仲良くなれてんだ……。
「へへ。ありがとう、教えてくれて」
「あ、ヤミさんにはこの事は内緒にしてくださいね」
「うん!分かってるよ。捕まえて悪かったね。ヤミちゃんの体楽しんできなよ」
「はい!それではまた!」
ヤミちゃんの体で変身を使い、羽を出した彼女は大きく手を振りながら、満面の笑みを浮かべて空を飛んでいった。
さて、と。
一応、何もないとは思うけど。
彼女の後をこっそりと付けていこう。
ヤミちゃんを狙う何某がいたら、ボクがお掃除しないといけないかもだし。
ヤミちゃんも自分が理由で美柑ちゃんを危険な目に合わせるのは、避けたいだろうからね。
感想、お気に入り登録、評価ありがとうございます。
作品には全然関係ないんですけど、昔は頼りになっていたお姉ちゃんがダメダメになってHする漫画あるじゃないですか、あんな感じの小説、誰か書いてくれませんか?
お待ちしてます。
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可変式(男なら夢をみる)