健全な男子には厳しい姿勢で行きたい白猫の話   作:変身スキー

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感想、高評価、お気に入りありがとうございます。
久しぶりに書くということもあり、至らぬところもあるとは思いますが、
拙作を楽しんで読んでいただければ幸いです。

また、今回は三人称視点のお話となります。
通常回は一人称、閑話は三人称で進めていきます。




閑話:月光猫

  ●

 

名前すらついていない辺境惑星。

海よりも赤茶けた大地のほうが大きく広がる未開拓地。

 

昼は日差しが強く、ミミズ型の巨大生物が発する金属音にも近い叫び声が定期的に響くその地だが、夜は打って変わって気温は下がり、ミミズ型の巨大生物が休眠状態へ移行することで星の有様が大きく変わる。

 

ミミズ達が掘り進めることのできない、特殊金属性のシェルターから出てきた人間たちがようやく人らしい姿を見せ始めるようになるのだ。

 

テントのような簡易店舗を用意して大きな声を張り上げる、地球尺で三メートルほどもありそうな大男はよくわからない肉を売っているし、その奥ではござの上に座った老人が荒く研いだ刃物を売っている。

 

流通自体はかなり盛んなことが確認できる。

未開拓地にしては活気もあるだろう。

 

そんな中でひと際目立つ人物がいた。

といっても容姿が特徴的なわけではない。

彼の見た目はこの星では平均的な、脚部が逆関節になっている鳥頭である。

鳥の種類で例えるとカラスが一番近い見た目になるだろうか。

 

そんな彼は、羽が退化して三本の指となった手に宝石のついた指輪をつけていた。

服装も最低限の清潔さを保っており、生活に余裕があるのを見て取ることができる。

 

彼は声を張り上げない。

それは雇っている従業員が代わりに声を上げてくれるからだ。

 

彼自身の仕事は奥に引っ込んで金の勘定をすることと、取り扱っている多様な商品の管理・売買を行うことだった。

 

生物以外ならなんでも買い取り、なんでも売るのが彼の店の特徴である。

少ないながらもこの星では見ることのない物品が並んでいるところを見ると、売買のために外と交流もあるらしい。

 

この星で店を構え、たった20年程度でこの星のだれよりも余裕のある生活を得た彼は、いつもどおり接客を行う。

いくら店を大きくしようとも、直接お客様と商品の取引を行っているのは彼自身がそう決めたことだからである。

 

食用植物の種。不時着した宇宙船の素材。掘り起こした誰のものとも知らぬ壊れた武器。

機械的に商品の在庫確認をしていく彼だったが、小さな影が店の入り口から入り込んできたのを見て手を止める。

そして、カウンターに大きな音を鳴らして置かれたものを確認して動きが固まった。

 

目を奪われるような宝石?

 

いやいや。この星ではそんなものよりも即物的なものの方が価値は高い。

この星には生活に余裕のない者の方が多いのだから。

 

カウンターに置かれたのは水、水、水である。

5Lほどもありそうなタンクがずらりと並んでいる。

 

この星では水を生成できるような高級な機械は買えない。

だからこそ、原始的な方法。水を探して汲むしかなく。

価値は最も高い。

 

「これをどこで?」

 

帳簿から顔をあげ、客に視線を向ける。

フード型の黒衣に阻まれ、身体的特徴を図ることは難しいが、その顔は毛ではおおわれておらず、その目は貴重なタンクの中の水よりも立派な青色をしていた。

 

見たことのない服、特徴。

こんな星へ旅行者はありえない。ならばお客の素性を確かめるのは当然のことである。

 

「んー、追いかけてた賞金首の船からかっぱらったの。最低限の食料と水だけくすねようと思ってたんだけどさぁ。水は高く売れるって途中の村で聞いたんだよね。他の星でも使える通貨で買い取れないんだったら別にいいけど……あ、嘘はついたらだめだからね」

 

分かるから、と言外に言う客。

 

声は高く未成熟。女性である。

 

外の世界にはそれほど詳しくないとはいえ、これほど小さな体躯の人物が賞金稼ぎとはにわかに信じられず。

それゆえにあまりに異常な存在だったからこそ、彼は彼女のその言葉を信じた。

 

「ええ、可能ですよ。現金ではご用意できかねますが……」

 

「ん、いーよ。どうぞ」

 

ばらばらと雑多に数枚のカードを取り出す。

この星で取引可能なものも無事にあったようだ。鳥頭の男が一つのカードを手に取った。

 

「多少安くてもいいよ。その代わりに人探しをしててね。この人最近見た?」

 

少女が手に持つ謎の機械から小さなホログラムが飛びだす。

店主はその姿を確認したが、この星では見たことのない姿だった。

星の外の事情には詳しくない店主にはそれが誰かは思い至らず。

 

その反応を見た彼女は店主の反応を見て思わず溜息を吐く。

ホログラムの男は賞金首なのだろうか。

 

「もういいや。真面目に買い取りしてもらってありがとね」

 

きちんと相場よりやや安めの買い取りを行った店主からカードを受け取った彼女は、その姿を消した。

 

思わず固まる店主、なんとか顔だけ左右に動かして彼女の姿を探すと、彼女は体を低くして先ほど彼女がいた位置から大きく離れたところに移動していた。

店主には彼女の動きは見えなかったが、彼女は横っ飛びに大きく飛んだのだ。

 

なぜそんな行動をとったのかは、布地の天蓋ごと地面を貫いた鋭い刃物が説明してくれていた。

しかし妙なのは、刃物にしては異常に長い。

天蓋から地面は数メートルほど離れているのに、武器の全容が見えないのである。

 

「じゃあね。もう来ないから安心してねー!」

 

無邪気な声と共に、今度こそ店主の目の前からわずかに凹んだ地面のみを残して彼女は消えた。

彼女が消えると同時に、天蓋から伸びた凶器もその姿を消す。

 

男はしばらく動けなかったが、やがて商品には一つも傷がついていないことを確認すると、帳簿の在庫に水を書き加えたのであった。

 

もうお分かりの通り、客として水を売り払ったお客とは百目音子の中身である、未だ地球には来ていないころの彼女である。

まだ地球には向かっていないし、ハーレム主人公に注意を払っているわけでもない。

 

素の見た目だけは変わらず、12,3歳程度なのだが。

 

彼女は、土を焼いて作った建物の間を飛んで、飛んで、飛ぶ。

走るのではなく、ぴょんぴょんとウサギのように。

 

砂の多いこの星で早く移動するためにはそうするしかなく。

そして高い建物のないこの場所では、そうすることで下手人の姿を認識することも容易かった。

 

金髪に黒いバトルスーツ。

初撃を躱され、今まさにその髪を変形させて生成した凶器をターゲットの体に伸ばす彼女の正体が『金色の闇』という殺し屋だということを。

 

未来に音子とよばれる彼女は気づいている。

そのはずなのに白猫はフード越しに彼女に向かって笑みを浮かべた。

 

初撃よりも鋭さの増した金色の闇を白猫が躱す。

その動きを読んで繰り出した二撃目も躱し。

別方向からの同時攻撃さえも身を捻って器用に躱した。

 

――余裕の表れ、か?

 

必死の状況なのであれば、自分に笑みを浮かべることはないだろう。

舐められている、と。

思わずむっとした気分になりつつ。

だからこそ確実に仕留めるべく、未だに空中に身を躍らせたままの白猫に向かって彼女は凶刃を振るう。

背から心臓を貫く絶対必中の一撃。だからこそその獣は避ける素振りを毛ほども見せなかった。

 

武器()を抜く。

金色の闇もそれに気づいた。――宇宙銃(スペース・ガン)だ。

 

そのまま、照準先を見ずに背面撃ち。

神業を持ち前の勘のみで(うるせえ知ったことかと)行った彼女が放つ質量を持った弾丸は。

金色の闇の凶刃へと吸い込まれるように接触。そして炸裂した。

強い衝撃が彼女の凶器を押し返す。

 

「炸裂、弾……!」

 

もちろんその程度で彼女の武器が砕けたりはしない。

だけど衝撃はわずかに彼女の体を揺らし、

白猫も無理な体勢から五点着地を行う。

 

結果として、両者とも一時的に攻撃の手をとめて向かい合う。

 

「なーんとなく、この星に着いた時からずっとぞわぞわした感覚がしてたんだよねえ。あ、別にキミの腕が悪いって言ってるわけじゃないよ」

 

第六感、だいろっかーん、と。

にゃははと笑う、マイペースな彼女に金色の闇は静かに次の手のための準備を進める。

 

「で、暗殺のご依頼はどなたから?」

 

「私が口を滑らせるとでも?」

 

「だよねー。ま、これでも誰がそんな依頼を出したか突き止める伝手は持ってるんでね」

 

「『殺人猫(ヴォーパル・キャット)』のあなたを恨むものなどたくさんいると思いますが」

 

「もうっ恥ずかしいなあ!その名前!賞金稼ぎになってからの異名で呼ぶ人なんか誰もいないでやんの。……ねね、例えばだけどさぁ。依頼主がボクへの暗殺依頼を取りやめたらどうする?ボクのこと殺さない?」

 

「いえ、殺します」

 

「えー!それってザンギョウだよ!まじめすぎ!」

 

ゲー!と、舌を出して大仰にリアクションを取る彼女だったが、やがてフン、とおおきく鼻を鳴らした。

 

「まあ。そういう事ならボクはこうしなきゃいけないわけだけど……」

 

がちゃり、と音を鳴らして、白猫は銃を構える。

 

「炸裂弾を食らいつづけたらきれいな髪がいたんじまうぜ?なんてね」

 

「ええ。あまり喰らいたくはありませんね」

 

「おろ?」

 

軽口には暴力で答えるだろうと思っていたのか、白猫は目を丸くする。

 

「だからこうします」

 

ザブりと、足元の砂場から五つの龍の首が現れ、白猫に襲い掛かった。

その小さな体を食いちぎらんと、大きな顎が迫りくる。

 

「だから、まじめなんだってば」

 

今まさに自らの体に牙を突き立てようとするその脅威にも慌てふためくことはなく、彼女は一発の銃弾を放った。

炸裂弾一発程度では金色の闇は殺せない。

そんなことをしても龍が彼女を食い散らかす方が先なのだから。

それは()()()()()()()()()()()()、必ず訪れる確定した未来である。

 

撃った弾が目標にたどり着く前に膨張し、金色の闇の視界を灼く閃光へと変わる。

 

「なっ……!」

 

「『変幻自在(ヴァリアブル・ショット)』ってね。炸裂弾のことを知ってたあたり、ボクがいろいろな銃弾を使うのは知ってたのかもしれないけど。マガジンを変えなくても銃弾の種類を変えれるのは知らなかったみたいだね」

 

――この武器使い始めてまだ間もないから、できるようになったの最近だし。

 

と、大口を開けたまま固まっていた龍がしゅるしゅると小さくなっていくのを見て彼女はひとりごちる。

このあたりは本体と意識が連動してるが故の弱点である。

 

「待ちなさい!」

 

「待ちません。じゃ、またね」

 

去ろうとする白猫を呼び止めるその言葉ににべもない様子で返す白猫。

金色の闇が視力を取り戻したころにはすでに白猫の姿はすでになかった。

周りに人はおらず、顔を出しているのは大きな満月だけ。

 

殺し屋はターゲットを取り逃がしたのだ。

 

(そんな事を思い出したのは、結城リトのせいでしょうか)

 

かつてのことを、今はヤミと呼ばれる殺し屋は思う。想いをはせる。

 

地球に来て、殺すことのできなかった男。

彼の存在があの白い猫のことを思い出すきっかけになったのだろうか。

 

(いや、違う。あの時。結城リトを襲撃した際に確かに感じた)

 

あの時(月光の下)、銃を向けられた時と同じ敵意を。

殺気のこもっていない生温い敵意。だけれども覚えている。

 

白猫を殺すために依頼を行った依頼主はすでに依頼を取り下げている。

というよりもその血縁者が、か。

 

暗殺に失敗したあと、それほど日にちは経たずに依頼主の体が縦4つに分けられて殺されているのを部下が発見したらしい。

つまり彼女を倒してもただ働きとなるのだが。

 

それでもあなたを殺すと、すでに彼女は白猫にそう伝えている。

 

(この星にいるのなら、今度は逃がしません)

 

今度はあんなものでは逃がさない。もっとちゃんとした殺し合いができるはずだ、と。

殺し屋がそう思ったのと同時に。どこかで白猫がくちゅん、と鳴いた。




中身超きめえ!ではないですけれど。
なんとなくモブ宇宙人として出すのなら鳥系かなと思い浮かんだので出しました。
まあフレーバーとして楽しんでいただけたらと思います。

あと、なんかヤミちゃんがしっとりしちゃった。かわいいね。白猫のせいです。あーあ。

次回はまた通常回。
ガンブレ4にうつつを抜かさなければまた投稿します。

大きい方が好き?小さい方が好き?

  • 小さい方(ロリは正義)
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