みなさんのおかげで日間ランキングにも載っているようです。
リト側の三人称も書きたいけど、もうちょっと主人公側のお話を書いてからのほうが面白くなりそうですね。
なので、リトが主人公のことをどう考えているのかについては少しの間主人公の視点からご推察ください。
●
新学期、である。
ぽかぽか陽気に乗り遅れることなく、桜前線がこの地球の日本にもやってきた。
これでボクも二年生。先輩も後輩もできる、都合のいい学年になったというわけだ。
とはいえ、ボクの読んだ原作ではリトよりも年下のキャラクターはあまり出てこなかった気がするけど。
この前、ヤミちゃんが倒れてから起こった特筆すべき出来事はというと、ララ様たちのお父さんがこの星に来たくらい。
いや、来たくらいというか。ビッグイベントではあるんだけどねぇ……。
この時ばかりは、リト達と出くわさないように本気で逃げていたので、ボクから語れることは少ないのだ。
まったく、地球が震え始めたときはさすがに肝が冷えたよ。
圧倒的な力で大気や地面が震えるとか、インフレありありのバトル漫画くらいでしか許されないからね?普通は。
いや、ほんとデビルーク王まじ勘弁って感じ。
「きゃああああっ!」
さて、そんなことを考えていると。
最近ちょっと聞きなれてきた気がする女の子の悲鳴が学校の昇降口から聞こえてきた。
女の子の悲鳴を聞きなれてきたというと、ボクのことをとんでもない外道だと思ってしまうかもしれないけれど、この場合ボクは聞かされてる側なので勘違いしないでよね。
時間が遅いということもあって生徒の数がまばらだったおかげで、悲鳴のもとにいた裸のララ様とリトの姿は容易に確認することができた。
あと、学校の奥へ走って逃げていく
廊下は危ないので、走ってはいけません。
「元気だね、君たち」
「ね、音子……」
早朝(始業前)だというのに、元気いっぱいのリト達に声をかける。
ボクは寝起きが悪い方だから、うらやましい限りだね。
「あ、おはよー音子」
「うん、おはよ……ララさん。できれば体は隠してもらってもいいかな……」
ララ様にも声をかけるが、けっして直接体は見ることのないように努める。
僕自身たまに忘れてしまうが、この学校ではボクは男性なのである。
そーいうこと、彼女はあまり気にしないかもしれないけどボクは気にする。
誰に見られてるかも分からんのだし。
彼らが全裸になっている理由はあれだ。ララ様の手についてる『ぴょんぴょんワープくん・改』。
指定位置にワープできる優れもの……なんだけど、その代わりにすべての衣服をワープ元に置いてきてしまうという多大なデメリットを持つ、ララ様が自分で作った便利アイテムだ。
そして、ボクがひっかかれば一発アウトな代物の一つである。
何かの間違いで、これを着けたリトに引っ付いた状態でこれが起動すれば、ワープ先に全裸であるボクとリトというシチュエーションの完成である。
あとワープ元には何かに吸収されてしまった後みたいな、一般生徒の皮だけが残ってしまう。
発見者に色気のない悲鳴をあげさせてしまうことになること待ったなしである。
女の子であることがバレたうえ、そのままえっちな展開に移行する可能性があるという、ボクにとっては悪魔のアイテムをちらりと見て、再び視線をララ様から逸らす。
敵意をもってリトが突っ込んできてくれるなら簡単に避けれるんだけどね。
偶発的なトラブルにはボクの第六感も働きにくい。もちろんある程度なら反応で避けられるんだけど。
「うん、じゃああと頑張ってね」
「音子ぉ……」
そんなすがるような目で見られてもボクにできることはない。
恋する女の子にビンタされて傷心中だとしても、全裸のキミを助けるような手段をボクは持っていないのである。
なにせ、なんの変哲もないキミの同級生なので。
補足しておくと、そのあとクラスで顔を合わせたときにはすでに彼は制服を着ていた。
ララ様がなんとかしてくれたのかもしれないが、正直ボクはそんな些事を気にしている余裕はなかったのである。
なんせ二年連続でリトと同じクラスなのだから。
しかも、席は隣だしね!
なんか物理的に距離も縮まってるんだけど!?
……これはボクの運が悪いのではなく、リトの運命力にボクの運命力が負けているのでは?
一応白猫なんだから幸運判定にはボーナスをもらいたいんだけどなあ……。
あとは単純に学校の怠慢という可能性もある。
びっくりするくらいに去年と代わり映えのないメンツだったからね。
完全にボクの憶測だけど、なんだかありそうな話だ。
おかげで、朝の件で彼の恨みがましい目を至近距離で浴びることになってしまったので、ボクの昼ご飯を少し分けてやった。
女の子のお弁当だぞ。尤もキミはそれには気づかないだろうし、手料理ではないけどね。
まあ、一年一緒のクラスで過ごした友達なんだ。
リトと同じクラスになったのが嫌ってわけじゃないけど。
ああ、そうそう。
そういえば新学期初日ということもあり、クラス委員を決めないといけないってことで、クラス内で簡単な選出が行われた。
一年の時は、西連寺さんがやってくれていたが、彼女は部活もあり今年は立候補する気がないみたい。
言わずもがなボクもやりたくはない。
ということで、クラス委員にはまじめそうな長髪の女の子である
……顛末としては結局西連寺さんがクラス委員をすることになったんだけどね。
ちなみにボクは律儀に古手川さんに票を入れておいた。
特に理由はないがなんとなく直感で。
●
「ねぇねぇ。聞いた?最近のウワサ話」
クラスの片隅から姦しい声が聞こえてくる。
茶髪のちょっとウェーブかかった女の子が
この二人はよく西連寺さんと一緒に話してるところをよく見かけるし、なんなら今も一緒に旧校舎の怪談についてしゃべっている。
傍から見てもかなり盛り上がっているみたい。
ボクもこっそり手元の文庫本の文字を追いながら、話を盗み聞く。
曰く、旧校舎の方から不審な声や物音が聞こえる。
曰く、じゃあ確かめに行こうと。
そういうことらしい。
「じゃあ……、俺と音子も行く!」
で、曰くボクとリトも行くことになった。
――――?
なぜ、そこでボクの名前が出てきた?
途中まで、キミは西連寺さんの事を慮っている優しい男子だったはずでは?
「いや、ボクはちょっと……」
「なにぃ?怖いの?音子」
は?怖くないが?
……しょうがない。正直、やれやれ系の立ち位置を狙ってなくもないこのボクもついていってやろうではないか。
なので、籾岡さんの挑発にはあえて乗った。……あえてだからね?
件の旧校舎自体は今僕たちが通っている校舎から離れた場所にあるわけではない。
そのかわり、立ち入り禁止の看板が普通に立っているのだが。
どうやらこんな立て札程度では現役高校生の好奇心には勝てないらしい。
元気だけは有り余っている高校生達はなにするものぞ、と旧校舎に入り込んだのだった。
用務員室からこっそり失敬してきた懐中電灯を使い、ボクは旧校舎の廊下を照らす。
木片やかつて窓だったものが転がっていて、数年以上使われていない感じだ。うう……ほこりっぽい。
スーツを着ててよかった。尻尾とかにほこりが絡まりそう……。
取り壊しとかは……なにかの不幸があってできなかった、とかなんだろうか。
しかし、なんだろうやたらぞくぞくと来る。
危険を感じているときとはまた違う感じだ。何かを感じ取ってるけど何を感じ取っているのかがわからないのがもどかしい。
「でもさぁ、別に大したこと起きないよね」
「やっぱただのウワサかもねー幽霊なんて」
ごとり、と。
のんきなにしゃべっていた籾岡さんと沢田さんの言葉を否定するかのように大きな音が鳴った。
そしてみし、みし、とぼろぼろになった扉の奥から、腐りかけた床の上を何かが歩く音が。
息をのむみんなに合わせて、ボクも何も言わずに音のなる方へ懐中電灯を向けた。
空気が冷え込む。
そして、ボク達の見つめる先にあった扉が独りでに開いていく。
「うおおお!」
各々の恐怖で凍った場の空気を溶かしたのは、リトの叫びだった。
彼はなけなしの勇気を出して、扉の奥に出てきた何かに向かってとびかかる。
扉の奥から出てきた、金髪の少女に向かって。
「あ」
思わず声が出た。
恐怖心や勇気が悪い方に作用でもしたのだろうか。
それとも、ヤミちゃんがリトの突進にある程度耐えることのできる膂力があったのが悪かったのだろうか。
結果として、リトは彼女のやわらかい胸を戦闘服ごしにしっかりと揉むことになったのであった。
あ、リトが吹っ飛んだ。
南無。ケガなどがないことを一応願っておこう。
「……」
「あ、ども」
ヤミちゃんと目が合う。
あちらはちゃんとボクのことを覚えていたらしく、ぺこりと頭を下げられた。
まあでも、まだ警戒している感じ。
そりゃあ彼女の視点から見ればボクは謎の宇宙人だ。
経歴その他一切不明。
衰弱している彼女を御門先生のところに運んだとはいえ、ボクが何を思って彼女を助けたなんて知る由もないのである。誰にも教える気はさらさらないけれど。
トランスで変化した武器でスーツの皮も破られてちゃったから容姿をごまかしてるのもバレているだろうし。
それでも今日にいたるまで彼女が接触を図ってこなかったのは、御門先生がうまくボクの事を説明してくれたのかな?
「あなた達!ここは校則で立ち入り禁止のはずでしょう!」
籾岡さんと沢田さんにもみくちゃにされていた彼女を後目に、8人目の声がボクたちを咎める。
入ったときは、ボク、リト、ララ様、西連寺さん、籾岡さん、沢田さん。
で、すでに中にいた、ヤミさん。
7人しかいなかった。
じゃあ8人目は誰なのかというと、それは古手川さんだった。
途中まで着いてきているなとは思っていたんだけど、気配が消えたから諦めたもんだと勝手に思っていた。
どうやら僕たちが入ってきた入口とは別の場所から入って来たらしい。
彼女は集団の中にボクがいるのを確認すると、ボクの事を軽く睨みつけてきた。
「あなたもいるのね……!」
「いるよ。いつもお世話になっております」
元々、よく授業をサボったりしていたボクだけれども、
どうやら彼女はそれを許容することはできない性格らしく、よくボクを注意してくるようになったわけだ。
彼女からすると問題児二人が隣の席で座っていることになるわけだね。
特に彼女にとっては分かりやすい問題児であるボクは目の上のたんこぶのような存在なのだろう。
彼女がボクを警戒しているおかげでこのところ保健室にサボりに行く機会は少なくなってしまった。
……まあ、その代わりに教室でぐーすか寝てるときもあるんだけど。
ともかく、お化けだと思ったら友人だった。
そんなことが2度も続けば緊張感もへったくれもあったもんじゃないわけで、みんなの表情もなんだか明るい。
だけど、火のないところに煙は立たず。
なにも怪しいところがなければこの旧校舎に変な噂が流れることもないのだ。
瞬間。
重く響くようなナニカが響いた。
ひび割れているが、それは確かに『声』でまちがいない。
〈〈デテイケ……デテイケ……〉〉
ひどく響いているせいで、どこからボクたちの耳に届いているのかは分からない。
両手を耳の後ろに持ってきて、声の元を判別しようとしたけどやっぱり駄目だった。
声のように感じているだけで、テレパシーのように直接声を送り込んできているのかもしれない。
その場合、この反響音は錯覚か何かの演出になるけど……。
んー。ボクの直感の反応元はこの声の主なのかなあ。
確かここには宇宙から来た流れ者が住み着いているんだったはず。
とはいえ、正体がわかれども居場所は分からないまま。
コミックをよく見れば居場所につながる伏線なんかが転がってるのかもしれないけど、そんな細かいところまで覚えているわけがない。
〈〈サモナクバ……〉〉
びしり、びしり、と床にひびが広がる。
それはあっという間に全体に広がり、ボクたちを飲み込むように大口を開けた。
「うわああああっ!」
リトの悲鳴が耳を突き刺す。
この体の脚力では、落ちる破片を足場に跳躍して二階に戻るのは不可能である。
庇うことのできる人はいないかと確認するが、一番近い古手川さんさえ体2つ分は離れている。
着地は各々の幸運に期待するしかないかな、これは。
諦めて、着地の体勢を取ろうとしたその時、ぐいっと腕をつかまれた。
空中で急停止したまま顔を上にあげると、ヤミちゃんがボクの手首をしっかりとつかんでいた。
この場合は警戒されていたのが
変身で伸ばした彼女の髪の補助もあって、なんとかボクは落ちた階に戻ってくることができた。
掴まれた腕を含め、体に違和感は感じない。
スーツのどこかがおかしくなった様子も……うん、ないね。
「みんな落ちちゃった……おーい!ララちぃ、春奈!」
沢田さんの声に、ボクも自身が落ちかけた大穴をのぞき込む。
穴の奥は暗く、様相を伺うことができない。
沢田さんの呼びかけに誰かが応じる様子もない。
もしかしたらさらに下の床も突き破ってしまっているのかもしれない。
「とにかく下の階にいってみよ!百目たちも早く!」
その言葉に異を唱える理由もない。
ボクたちは一刻もはやく、下に落ちたリトたちと合流するために動き出したのであった。
●
図らずとも、男二人(この場合ボクの中身は考えないものとする)が上と下に分かれる形となったわけだが、だからといってボクが頼りになるわけではない。
できることと言えば、せめて一般人の女子たち二人の前で懐中電灯で回りを照らすくらいしかできないのだ。
もちろんこの中の誰かに命の危機が迫るのであれば、ボクも奥の手を出さざるを得ないけど……。
「少し軽かったですね」
そんなことを考えていると、ヤミちゃんに後ろから話しかけられた。
軽かった。ボクを持ち上げたときの話だ。
ボクのこの体の身長は165cm。
実際の身長は150cmくらい。
もちろんスーツには体重調節機能があるけれど、それにしたって限界というものがある。
恐らく、高校生にしては少々痩せ気味くらいの体重しかないだろう。
ボクの見た目は中肉中背。
地球人程度ならあまり違和感を持たないだろうけど、ヤミちゃんにとっては違和感を抱くものだったわけだ。
「うん、スーツの中身はもうちょっと小さいからね」
だからこそ、僕の方からカードを切った。
下手にじたばたして、墓穴を掘りたくはなかったからね。
自慢じゃないが、ボクは口が上手いほうじゃない。
怒りを収めるどころか、油を注いでしまう程度の話術しか持っていないのである。
だからこそ、ある程度情報を渡して、勝手に推理してもらう方がいろいろと都合がいい。
名付けて、『勝手に納得してもらおう作戦』。
この作戦のいいところは、ボクの説明の手間が省けるということ。
うん、一番のメリットだね!
「助けていただいた時に、気づいてはいましたが……」
「そんなに不思議?ララさんといい、結構この町、宇宙人が多いみたいだけど」
「ん?ララちぃが宇宙人だってこと百目は知ってたっけ?」
「……この人もそうだということです」
沢田さんの疑問にヤミちゃんが答える。
沢田さんと籾岡さんの二人は少し目を丸くしたが、そこまで驚いた様子はない。
ララ様のことを知っていることもあるだろうけど、やっぱりこの街の人たちはなんだか懐が深いよね。
以前御門先生にも言ったが、僕自身が宇宙人だとバレるのは構わない。
それはあくまでも最初の防波堤なのだ。
むしろバレた後の方がボクも動ける幅が増えるというものである。
いつまでも無力な地球人のままじゃあ、息が詰まる。
「へぇー。でも見た目は私たちと全然変わらないのね」
ぐにぐに、とボクの手をもんでくる籾岡さん。
うーん、やっぱりこの二人、好奇心が強い。
未知なるものに興味津々といった様子だ。
「ボクは擬態用のスーツを着てるからね。普通人間と見た目が違う宇宙人はこういうのを使うんだよ。だから、もしかしたらボクもクラゲ型の宇宙人かもしれない」
「ひえっ」
ボクの頬を無遠慮に引っ張っていた沢田さんが慌てて手を引っ込める。
同時にヤミちゃんも少しだけ後ずさったのが見えた。
……ちょっと傷つく。
「まあ、これは冗談だけど。そういう風に地球に溶け込もうとする宇宙人もいるってこと」
「ふーん、でも宇宙人らしくなくてあんまり面白くないわね」
「あはは」
面白く思われないためにこういうことやってんだけどね、ボクたちは。
こういう会話を彼女達としたくらいで、あとは特にボクに不都合なことは起きぬまま、事は進んだ。
透明人間の宇宙人は無事に撃退されたし、タコ型宇宙人に捕まった時も、西連寺さんが宇宙人を全員倒してくれた。
や、さらっと流したけど。凄いことをやってのけるものだ。
恐怖で全身のリミッターが一時的に外れたのかもしれないけど。
やっぱりボクが前世にいた地球とは人間のポテンシャルが何段階か違うのかもしれない。
あんま、地球人相手に油断しすぎないようにしたいと思う。
んで、ボクの第六感がバカになってた原因はというと、この旧校舎にいた人間の精神生命体が原因だった。
いわゆる「おばけ」というやつで、お静さんというらしい。
その精神生命体である彼女のエネルギーにボクの直感が強く反応したのがどうやら原因みたい。
つまりこの『肝試し』も無事に決着。
めでたしめでたし、というワケである。
次回、オキワナ編。
そろそろ主人公には白猫の姿で動いてもらいたいところ。
今回は必要でしたが、次回はあまり原作をなぞらないようにする予定。
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