そしてこの巻が8巻で、無印最終巻も18巻なので夏。
ループしてるとはいえ、この世界夏が長すぎる!
●
「むぅ……」
お金が足りない。
自宅のベッドに寝転がりながら、手元の端末内の残額を確認する。
拠点の近くで賞金首を探せなくなった影響はかなり大きかったようだ。
自分としては、ある程度節制してるつもりだったんだけど……。
ま、散財癖のあるやつの節制なんて高が知れてるってことだね。
一週間、二週間程度なら普通に過ごしていける額は残っているけど、そろそろここらでがつん!と稼いでおかないと、ボクの精神上の安定によくない。
「宇宙に行くべきかなあ……いや、ボク個人で地球の出入りなんかして悪目立ちするのも……」
逆に外国にいくのもありかもしれない。
最近映画でも見たけど、米国は宇宙人のメッカらしいし。
それを素直に信じた賞金首もいるかも……。
「はぁ。リトっていい撒き餌だったんだなあ」
入金履歴を遡ると、ララ様が来た後からヤミちゃんが来るまでの短い期間が一番稼ぎが良かったことになる。
でも、あの頃もっと稼いでおけばよかった、なんて後悔はボクにはあわないからやめやめ。
とりあえず、ご飯でも食べようと手に持った端末を放り出したところで、アパートに用意しているちょっと古ぼけた電話が自己主張するように着信音を発し始めた。
ちなみに。ボクは宇宙船で生活しているわけではなく、ちゃんと現地の住居を利用している。
地球の文明をろくに使わないのなら宇宙船生活でもいいかもしれないけど、住所を持っていた方が都合がいいもん。
住居なくても編入できるうちの高校が頭おかしいだけだかんね。
それはともかく。
電話の送り主は御門先生のようだ。
いったい何の用だろう。彼女の診察を受ける予定は今週ないんだけど。
ともかく、受話器をあげることにする。
「もしもし、御門先生?どしたの、ボクの家にまで電話をかけてくるなんて珍しいじゃん?」
「少しあなたに頼みたいことがあってね……あなたアルバイトに興味はない?」
「アルバイトぉ?」
「ええ。うちの診療所の薬草が切れちゃってね。いつも取りに行ってる星に着いてきてほしいの」
「いつも取りに行ってるなら、一人で取りに行ってもいいんじゃないの?」
「今回は少し多めに取りに行こうと思ってね。あなたに作ってあげているおクスリの事もあって消費量が多いから……」
「それで、診療所の薬草不足の原因を作ってるボクの手を借りたいってわけね……」
正直、金欠のボクにはありがたい話だ。
これを受ければ少なくともこの夏は食いつなげるようになるかもしれない。
でも、それは
「うーん。依頼を受けるのはボクのポリシーに反するから……『お手伝い』でいいのならやってあげるよ」
今のところ飼い猫になる予定はないので、そのあたりが落としどころだろう。
とても細かいことを言えば、これも信用を売っている訳だが。
この場合は勝手にボクが売っているだけだから問題なし。
「ふぅん。で?どこの星なの?」
「オキワナ星よ。地球からは二百万光年程というところね」
「ふーん、なんかパチモノ感がある名前だね」
沖縄にそっくり。
……そういえば、今頃リト達は沖縄についたころだろうか。
確か同級生の猿山と西連寺さんを含め何人かで旅行の計画を建てていたような。
ボクも誘われたけど、お金の工面のこともあって断っちゃったんだよね。
……ということはあっちは水着回か。本編中に何個も水着回があるせいで今回はどんな話だったかあんま覚えてないんだけどさ。
そんなこんなで、電話があったその日の内にボクは御門先生の宇宙船でどんぶらこどんぶらこと揺られて、オキワナ星まではるばるたどり着いたのだった。
もちろん原始惑星ってことだったから地球人スーツのままじゃ心もとない。
しっかりと戦闘服を着込んだ、ボク自身の姿で今回の旅に臨んでいる。
んー。原始惑星と聞いて、なんとなく熱帯雨林のようなものを想像していたわけだけど、なんだか意外とからっとしている。
「じゃあ、ここで分かれて材料を収集しましょう。材料の見た目は分かっているわね?」
「もちろん!さっきこの機械に登録したもの」
何を隠そう今ボクの手にある機械は、植物収集用の優れもの。
ぱっと見バーコードリーダーにしか見えないけど、植生から構成元素までなんでも読み取ってくれる優れものだ。……まあその分値は張る代物なんけどね。
だからすぐにお金がなくなるのね……なんて、宇宙船では御門先生に言われてしまったけど、そんなに悪い物じゃないんだよ?
…………これを使うのは今日が初めてだけど。
「海もあるけど、ネコは泳いだりしないの?時間ならたくさんあるけど」
「うーん、水着は持ってきてないしねえ。それに海水はちょっと……尻尾と耳がすぐごわごわしちゃうし」
今日持ってきている服は、軽装用の
これの上にフードつきの外套をつけるのがいつものボクのスタイルだけど、今日は顔を隠すような予定はないのでこれでいいのだ。
それにこんなものつけてたら、この暑さにやられちゃうしね。
軽装用なら、風通しもいいし丈夫だし。超好都合ってわけ。
ちょい露出は多いけど。
「んじゃあ、また後でね。集合はこの場所で」
ボクも御門先生もこの星のマッピングデータを持っている。
普通にしていれば迷うことはないだろう。
そうしてボクは御門先生に背を向けて森の中に入り込んだ。
うん。やっぱりシダ系植物は多いけど、地球のスギに似た木がたくさん生えている。
意外と地球に似てる環境だね。どおりで過ごしやすいと感じたわけだ。
しかし植物がやっぱり多い。
これはボクの銃も設定を変えるべきかも。
腰のホルダーに入れている銃を抜き、設定を調整する。
かちかちっとね。
ボクの愛銃である『マグヌス』は、設定を変えるだけでどのタイプの銃弾を放つか決めることができる。
銃内で、銃弾の調合からなにまでやってしまう優れものだ。
流石に材料用のカートリッジを入れなきゃ動かないけど。
高機能だけど繊細だから、これを使って攻撃をやたら受けたりできないのはたまに瑕だけど、取り回しには優れているってわけ。
そんな愛銃の設定を『スタン弾』に変更しておく。
むやみやたらに原生生物を殺して、生態系に影響を与えるわけにもいかないし、この設定が一番いいだろう。
『パラライズ弾』でもいいけど、何かの間違いで引火したらこまるからね。
「おお。これこれ」
もう少し奥に進んでいくと、目的の種類の薬草があったのであらかじめ決めていた重量まで、四次元空間に詰め込むことにする。
確かに御門先生が言っていたとおりこの惑星は薬の材料が豊富にとれるみたい。
なにせ、素人のボクでも彼女が欲しい物を次から次へ見つけられるんだ。
ここまで大量にとれると欲が出てしまうというものだが、おとなしく彼女の指定した重量までにとどめておく。
ボクは植物学者じゃないからどこまで取ったらいいか自分で判断なんかできないもんね。
知識はなくても良識はあるということでここはひとつ。
「む」
顔を上に向けるとバタバタと鳥が飛んでいくのが見えた。
それと共にがさがさという異音が耳に届く。
ずいぶんと大きな鳥だな。さすが原始惑星。
――そして、さっき鳴った音は羽音じゃない。葉が何かに触れて擦れる音だ。
銃を抜き、音が鳴った木とは別の方向へ銃弾を放つ。
撃った銃弾が飛んで木の幹に当たり、
対象の細かい位置がわからなかったため、脅しになればいいなという程度で放ったのだけど、相手にとっては運の悪いことにしっかりと着弾したようだ。
ギィッ!と苦悶の声を上げて木の上から地面へと小さな影が落ちる。
近くに寄って確認すれば、地球の猿によく似た原生生物が横たわっていた。
かすかに敵意を感じたから発砲したのはいいが、この様子では彼らにできるのはせいぜいいたずらをする程度で、大したことはできないだろう。
頭上からキィキィと慌てるような声が聞こえ、いくつかの影が木々の奥へと消えていった。
「ごめんね。すぐ目覚めるだろうから許してね」
気絶していた猿を近くの木を背にするように座らせる。
正当防衛だったけど、気を失った小動物を見ているとなんとなく罪悪感が。
……もう薬草は取り終えちゃったし、そろそろ宇宙船のところに戻ろうかな。
ちょっと早めに終わったから御門先生より早いかもだけど。その場合は木陰で昼寝でもーー。
「おいおい、嘘だろ」
ピクリ、と。ボクのご自慢の耳がその声を聴く。
いや、本当に最近はよく聞くなあ!
近くの木を蹴りあがり、木々の間を飛び気分はニンジャ……って言ってる場合じゃないかも!
銃の設定を切り替えながら、木々があまり生えていない少し開けた場所に飛び出す。
そこにはリトと西連寺さんが大口を開けた木によって、今にも食べられそうになっているところだった。
設定は『重力弾』に変更。
「なんで、いるんだよ」
少しの恨みを込め、そのまま巨大な木の化け物に向かって銃弾を撃ちだす。
その銃弾は化け物に食い込むように突き刺さり、そして数瞬後めきょり。と音を立てて木が押しつぶされた――とは言っても、ペッちゃんこにするわけじゃなく、大きく体が折れ曲がった感じ。
なんかぴくぴくしてるし、生きてるんじゃない?
そのまま、勢いを殺すようにして着地を行う。
――言いたいことはいろいろあるんだけどさ。
「二人とも無事かな?」
リトと西連寺さんにはせいぜい虚勢を張っておこう。
●
「じゃあ、御門先生の友達なんですね」
「うん。まあそうなるね」
二人にケガがないことを確認して、とりあえずは現状確認だ。
どうやら、彼ら二人はララさんの発明品で沖縄に行くはずがオキワナ星に来たらしい。
あの『ぴょんぴょんワープくん』の改良型で。
にしてもくそぅ。完全に地球にいるもんだと思ってたから全然気にしてなかった。
みんなが沖縄にいるってことを知ってなかったら、原作の事を思い返してたかも……。
って思うのは、今だからこそ言えることだよね。
ことの顛末を聞いた今でも、そんなことあったなあくらいの感じだし。
正直、記憶はだいぶおぼろげだ。
「じゃあ、離れずついてきてね。あ、茶髪のキミは別ね。3メートル以内には近づかないで」
「ええ!?俺何かした!?」
何かするかもしれないから言ってんだよ。
この言葉が功を奏したのか、移動中リトに何かをされるようなことはなかった。
宇宙船の前で少し待っていると、すぐに御門先生がリト達以外の皆をつれてこちらにやってきた。
どうやらあちらも無事だったらしい。
ララ様、古手川さん、ルンさん*1、猿山くんが一緒だった。
どうやらあちらのみんなは御門先生が回収してきてくれたらしい。
よし、じゃあみんな揃ったね。宇宙船で地球に帰れるね!
ナンテ、そうは問屋が卸さなかった。
ボクの姿を見たララ様の頭の上にいたペケがボクに反応したのだ。
『あなた、『シロ』さんですね。デビルークの要人データベースに残っております』
「げ」
まじ?そりゃあデビルーク星に行ったことはある。
でも自分で行ったわけじゃなく、連れてこられただけだし……それも昔の仕事の請負のためにという話だった。
デビルークでの処理は、当時はボクも仕事に慣れていなかったから同僚にまかせきりだったんだよね。
そんなものに登録されているなんて知らなかったなあ。
『大戦後、お仕事を何度かデビルークから受けている記録がございました。今は賞金稼ぎをやっているとか』
「へー、ペケ詳しいんだ」
「逆にお前はなんで知らないんだって感じだけどな。王女様だろ?」
まあそれは、その仕事が自国の王女には知られたくないようなものだからだよ。なんて言えるはずもなく。
『そんなそんな。ボクはそんな大したことないですよ。無害な存在ですよ。』
そんな感じを精一杯出しておく。
適当に古手川さんの後ろにでも隠れて大人しくしているとしよう。
『ネコフーリ星人にしてはかなり小柄ですから、見た目の照合のみですぐに該当しました』
くそぅ。衝撃ですぐにララ様の体から外れるくせにこういう時はしっかりとしてるなあ!
タスケテ、御門せんせー!
「お話はいいけど、続きは宇宙船の中でもできるでしょう?私の宇宙船なら三時間程度で地球に到着できるわ」
「わーい!」
そんなボクを見かねて御門先生はちゃんと助け船を出してくれた。
やっぱり頼りになる人だぜ。
とりあえず大きなハプニングはあれど、リトからの直接的なえっちなことは一度も受けなかったので、セーフということで。
正体バレしたわけではないが、ボクのことを知ることで今後どのような影響があるのかは分からない。
だから一抹の不安は残っちゃうけど……多分今気にしてもしょうがないことだ。
あ。あと補足。
古手川さんのなでなではとても心地が良かった。
しょーじき、これからずっとやってくれるならお金を払ってもいいくらいだった……。
ネコフーリという名前は、某RPGのトラフーリから取らせていただきました。
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