健全な男子には厳しい姿勢で行きたい白猫の話   作:変身スキー

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というわけで幕門です。
前回から少しお先の話です。

いつもより短めのお話ですが、楽しんでいただければ幸いです。


幕間:白猫の尾を踏む

  ●

 

「そうか……ケイズは失敗したか」

 

「どうやらデビルーク星に捕まった様子、救助は必要ですか?」

 

「必要ない。もしデビルークが奴を解放するようなことがあれば、始末しておけ」

 

「はっ!」

 

宇宙に浮かぶ宇宙船。宇宙犯罪組織「ソルゲム」の首領は部屋から出ていく側近を後目に、報告にあった部下の失態に溜息をついた。

つい先日。地球にいる御門を仲間に引き入れ、生態兵器によって宇宙すべてを戦乱に陥れるという彼らの目論見はデビルーク星による妨害で失敗した。

と、彼らの組織は認識している。

 

「フフフ。だが、あきらめるものか……」

 

デビルークに彼女を狙っているのがバレてしまったせいですぐに二の矢をつがえることはできないだろうが、彼女の知識。それさえあれば……。

 

そんなことを考え、一人笑う彼の後ろで再び音を立てて扉が開いた。

 

「どうした。まだ何か報告が?」

 

「いやあー。随分と悪だくみがお好きなご様子ですにゃあ」

 

その姿を確認し、ソルゲムの首領は目を見開いた。

 

「犯罪組織のボスってのは、どいつもこいつも椅子の上でふんぞり返ってにやにやするのが仕事なのかな。ハハ、笑える」

 

「き、貴様……賞金稼ぎか……どうやってここまで入り込んだ!」

 

「……」

 

彼の質問に目の前の賞金稼ぎ、『シロ』は返答を返さない。

ここにいたるまで数多のセキュリティや護衛がいたはずだ。

そのどれもが彼女に気づかないなどありえない。

 

そんな彼の疑問の答えは彼女の手に身に着けている鉤爪が物語っていた。

妙に長い刃渡りは、てらてらと血と油に光っており、わずかに地面へ血溜まりを作っていた。

 

つまり彼女は、ここにいたるまでシステムを鳴らすことなく、構成員を幾人も殺しここまでたどり着いたということだ。

その恐るべき事実に彼はたどり着き、にわかに顔には脂汗がにじみ始めた。

 

「随分と腕に自信があるようだが、構成員を幾人か殺した程度で図に乗らないことだ」

 

机の上のコンソールを操作し、彼はとあるキーコードを入力する。

すると、彼のいた部屋の床がスライドし、巨大な影が姿を現した。

 

その姿を形容するなら、蜘蛛が近いか。

巨大な円盤を八つの巨大な脚で支えたその巨大ドローンは、体の下から幾門ものガトリングを取り出した。

 

「やれ」

 

彼の短い声と共にドローンは耳障りな機械音を奏でながら、触れるものを焼き焦がすレーザー弾をいくつも彼女の元に殺到させる。

音速を超える銃弾は、彼女に回避を許すことなくその体を蒸発させるだろう。

 

そんな男が思い描いた結果は。

自らの体を叩く、爆風によって否定された。

 

「は?」

 

なにが起きたのか彼には理解ができなかった。

白猫は、ドローンが彼の行動を忠実に実行しようとしたその瞬間に、そのかぎ爪でドローンを切り刻んだのだ。

 

ドローンが爆発した痕跡と、壁に刻まれた幾重もの斬撃に思わず大口をあけた彼だったが、それを起こした犯人がいつの間にかこちらに向かって歩いていることに気づくと常備していた護身用の銃を引っ張り出した。

 

「う、動くな!」

 

彼には理解ができなかった。

自慢の兵器が壊れて動かなくなったことも。

今自分が向き合っている脅威のことも。

 

賞金稼ぎ『シロ』。

ウワサはもちろん知っている。『ネコフーリ族の生き残り』。『殺人猫(マーダー・キャット)』。

かつては、賞金稼ぎではなく殺し屋であったことも。すでに殺し屋は廃業したということも知っている。

 

「なぜ貴様が我らを狙う!」

 

「犯罪組織『ソルゲム』、首領から末端にいたるまでデッドオアアラーイブ」

 

彼が構えた銃などどこ行く風という風体で、無遠慮に彼女は歩みを進める。

歩みの止まらない彼女に対して、男は思わず後ずさる。

 

「賞金稼ぎだぜ?お前の首で金を稼ぎに来たんだよ」

 

「ならば私が金を出そう!私の首に掛かっている賞金程度払ってやる」

 

「んふふ」

 

目を細めて彼女が笑った瞬間。

心臓を直につかまれたのではないかと錯覚するほどの寒気が彼を襲った。

自らの血が凍ってしまったのではないかと錯覚するソレに、彼の脚はバカになり、プライドも決壊した。

 

そして、ぞぶり、と。

 

目の前から彼女の姿が消えたと思った次の瞬間。

腹を突き破って、血の滴る刃物が彼の視界に容赦なく割り込んできた。

 

「お……があっ!」

 

「生かすかもしれないなら、銃をもちだしてるっつーの」

 

そのまま突き刺した刃で、白猫は彼の体を幾重にも引き裂いた。

苦しむ暇もなく、べちゃべちゃと滑稽な音を立てて彼の死体は地面に落ちる。

 

かつてこの犯罪組織の首領としてふんぞり返っていた彼。

その最期にしてはみじめなものだった。

 

「最初から殺すと決めてる相手にしか(これ)は使わないの。おわかり?……って」

 

どろどろ、と血を噴き出しながらすでに死んでいる相手に話しかけてしまったことに気づく。

 

「死体に講釈垂れちゃった」

 

ガシャン、と爪を手に付けたグローブに格納し、ポリポリと頬を掻きながら気恥ずかしそうに彼女は笑う。

 

この日、犯罪組織『ソルゲム』は壊滅した。

彼らが壊滅した理由はただ一つ。

身の程知らずな大望を抱いたことでも、この宇宙で許されざる行動を起こそうとしたことでもない。

 

ただ一人の少女の虎の尾をふんだということだ。




次回、戻りスカンク回の予定。場合によっては変更あり、です。

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