デュエルマスターズ darkness   作:deta豆

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第12話 あの日のアイツ

これは、僕が10歳で地元のラテン語学校に通っていた頃の体験だ。

 

僕が日本に来たのはつい最近の事なんだ。

 

僕は海外の、のどかな地で生まれた。

母はいつも体調が悪く、僕が生まれてすぐに死んだらしい。

父はいつも仕事で居なかった。

そのため邸宅には僕と何人かのメイドや執事だけだった。

 

 

ある日、父が女の人を連れて来た。

その人はひどくやつれていたが、直ぐに日本人だと分かった。

父は言った。

 

「彼女を嫁に迎え入れる。」

 

そう言って父は女の人を自分の部屋へ連れて行った。

 

 

 

僕はラテン語学校に通っていた。

 

市長と営林署長の息子が居て、時折僕の家に遊びに来た。

 

乱暴な二人だったが、しっかりと言い聞かせながらよく遊んでいた。

 

だが僕は、僕が軽蔑している同じクラスの悪ガキ達とも仲良くしていた。

 

特に変わり映えのしない、生きているのかも分からない人生だったな。

 

 

そんなある日、ラテン語学校に新しい生徒がやって来た。

 

彼は僕達の街に引っ越して来た裕福な夫人の息子で、白い髪に赤と青の目を持っていた。

 

彼は僕より幾分が年上で僕達より一つ上の学園に入ったが、まもなく僕だけでは無く、皆んなの注目を浴びた。

 

この風変わりな生徒は、見た目より遥かに年上らしく。誰にも少年と言う印象を与えなかった。

 

僕達幼稚な男の子の間で、彼はよそよそしく、一人前の大人の様に。いや…もしろ親の様に振る舞っていた。

 

彼は好かれてはいなかった。ゲームはしなかったし、遊びにも加わらなかったし…ましてや取っ組み合いにすら加わらなかった。

ただ…先生に対する自信に満ちた…キッパリとした態度だけが皆んなに喜ばれた。

 

彼の名はゼロ

ゼロ・イクリプス。

 

僕達の学校では時々ある事だったが、僕達の大変大きなクラスにもう一つのクラスが入れられた。

 

それは零のクラスだった。

 

僕達下級生は聖書の物語の時間で上級生は作文を書いていた。

僕達がカインとアベルの話を叩き込まれている間、僕は頻繁にゼロの方を見た。

 

その顔が妙に僕を魅了した。

 

この賢そうな、明るい。並はずれてしっかりとした顔が。注意深く、精神を集中させ仕事に向かっているのを見た。

彼は全く課題をやっている生徒の様には見えず、自分の問題を追求している研究者の様に見えた

実のところ彼は僕にとって感じが良い者では無かった。

その反対だった。

 

僕は何かしら彼に反感を覚えた。

彼は僕にとってあまりに偉そうで、冷たく見えた。

彼の態度は僕にとって大柄すぎるほど確信に見えた。

そして彼の眼差しは…子供には決して好かれない大人の様な表情を持っていた。

 

少しばかり悲しげに、嘲りのひらめきを宿していた。

 

しかし僕は彼が僕にとって好ましかろうと、厭わしいものであろうと、彼を見ずにはいられなかった。

 

だが彼がちょっとでも僕を見ると、僕はびっくりして目を逸らさずには居られなかった。

 

…あの零が当時どんな風に見えたかを今考えると…こう考える事が出来る。

 

彼はどんな点でも皆んなとは違っていた個性的な特徴があり、それで人目についた。

しかし同時に彼は、目立たない様にと…出来る限りの事をした。

それはまるで変装した王子が百姓の子供達の中に居て。その子達と同じ様に見える様、あらゆる努力をしている様だった。

 

 

学校からの帰り道、僕と零は二人きりになった。

 

零は生徒の口調を真似して挨拶したが、それがまた大人の様で丁寧だった。

ゼロ「少し一緒に歩こうか。」

彼は親しげに言った。

僕は気をよくして頷いた。

 

それから僕が住んでいる場所を説明した。

ゼロ「あぁ、あそこ?」

彼は微笑した。

ゼロ「あの家ならもう知ってるよ。君達の家の玄関のドアの上には…奇妙な物が取り付けてあるね?直ぐに興味を惹かれたよ。」

彼が何を言っているのか、直ぐには分からなかった。

そして彼が僕達の家の事を僕よりも良く知っている様なので驚いた。

確かに要石として、門のアーチの上に紋章が付いていた。

だがそれは時が経つにうち平らになり、何度も色が塗られた。

 

僕が知る限り、僕の家族とはなんの関係も無いものだった。

ボウイ「僕はアレについて何も知らないよ。」

ゼロ「アレは鳥か何かだ。きっとすごい古い物だね。あの家は昔は修道院のものだったんだってさ。」

と言うと、彼は笑った。

ゼロ「よく見て見てよ。こう言ったものはとても面白い事が多いよ、僕が見る限りだと…アレはハイタカだね。」

 

ゼロ「…そうだ!僕は君達の授業に一緒に出たんだね!額に印のあるカインの話だったろ?気に入ったかい?」

いや。

何にせよ学校で習わなければならないもので。

好きなものなどほとんど無かった。

だが思い切ってそう言う事は出来なかった。

大人と話しているみたいだったから。

ボウイ「…あの話はとても面白かった!」

と言った。

零は僕の肩を叩いた。

ゼロ「ねぇ…僕に嘘をつかなくても良いんだよ?」

ゼロ「…でも実際…あの話はとても注目に値いするよ。その話は授業に出て来る他の話よりも、遥かに注目に値すると思うよ!」

ゼロ「先生はあまりそれについて説明せずに、ありきたりな事を言っただけだったけどね。」

 

ゼロ「だけど僕は思うね…」

彼は話を中断して微笑み、僕に尋ねた。

ゼロ「でも…この話面白いかい?」

 

ゼロ「…僕は思うんだが…カインの物語は全く違う様に解釈出来るのさ。」

ゼロ「僕達が教わる事は大抵…確かに本当で正しい。だが先生とは違った方法でモノを見る事が出来るのさ。」

ゼロ「そうすると大抵…遥かに深い意味を持つ様になる。」

 

 

ゼロ「例えばこのカインと額の印についても…僕達が聞いている説明では本当に満足する事は出来ない…」

 

 

ゼロ「君も…そう思わないか?」

 

ゼロ「喧嘩をして弟を殺してしまうと言うのは…実際起こりうる事だし…その後で不安になり、弱気になると言う事もまた…ありうる事だ。」

 

ゼロ「だが彼が臆病さ故に、自分を守り。他の全ての人達に恐怖心を起こさせると言う勲章を特別に授けられると言うのは…実に奇妙な話じゃないか。」

 

ボウイ「その通りだ。」

 

僕はこの話に興味を持ち始めた。

ボウイ「だけどこの物語はどうやって説明するんだ?」

彼は僕の肩を叩いた。

 

ゼロ「フッフッフッ…簡単な事さ。まず最初にあって…この話のきっかけになったのは…印だったんだ。」

 

ゼロ「一人の男が居て、他人に恐怖心を起こさせる何かが顔に付いていた…他の人々は彼にあえて触れなかった。彼は皆んなを威圧していたんだ。」

 

ゼロ「この男は力を持ち、恐れられていた。彼は印を持っていたんだ。」

 

ゼロ「人々は彼と彼の子孫を恐れた」

 

ゼロ「だが、少し立ち止まって考えてみると…ひょっとすると、いや確かに、実は額に怪物の様な印なんか付いていなかったんだ。」

 

ゼロ「もしろほとんどそれと分からない不気味なモノ…人々が見慣れていたより少しばかり多くの精神力と大胆さ…つまり勇気が、彼の目つきの中に現れていたんだろう。」

 

ボウイ「うん…つまり…それじゃあカインは悪者じゃなかったんだね?そして聖書に書いてある話は皆んな…実は本当じゃ無いんだね?」

 

ゼロ「そうとも言えるし、そうでもないとも言える。」

 

ゼロ「古い…大昔の話は…大体本当何なんだ…けれどいつも正しく記録され、説明されているとも限らない…」

ゼロ「つまりカインは良い奴だったんだが…ただ皆んなが彼を恐れたので…こんな話をでっち上げたんだと思うんだよ。」

 

ゼロ「この話は人々がペチャクチャペチャクチャ喋る近所のおばさん達が話している様なくっだらない噂の様なものだったんだよ。だが…カインとその子孫が印を持っていて…普通の人とは違っていたと言う話は、本当の事だったんだ。」

僕は非常に驚いた。

ボウイ「それじゃあ…殴り殺したと言うのも本当じゃないと思っているの?」

僕はショックを受けながら尋ねた。

ゼロ「いや…いやいやいやいや…そんな事は無いよ。」

ゼロ「つまり、強者が弱者を殺したんだ。それはひょっとすると英雄的な行為だったかもしれないし…残虐な一方的な殺害だったかも?…いずれにせよ他の弱者達はいまや恐怖に慄いていた。」

 

ゼロ「彼らは大いに泣き言を言った。そして…「何故奴を殺さないのか。」と尋ねられると…「俺たちは臆病だから。」とは答えず、「そんな事は出来ない、奴は印を持っている。」と言った…まあ大体こんな感じであのペテンも出来上がったんじゃない?」

ゼロ「いや…すっかり引き止めちゃったね。じゃ!またね!」

 

気がつくと、僕は一人になっていた。

話が終わった後、はじめは馬鹿げた話に思えた。

カインが気高くて…アベルが臆病者?

馬鹿げている。神に対する冒涜だと。

 

だが、思い返してみると…彼はなんて不思議な解釈をしたのだろう。

と、僕の思考が塗り変わって行っている様な感覚があった。

 

次の日。休み時間、彼が僕の席の前に歩いてきた。

そして彼は話し始めた。

ゼロ「夢を見たんだ、僕はとても大きな梯子を登っていて…下には日本やアメリカ…他の国々の他にも、別の世界が見えた、何から何までね。空には土星に木星、金星に水星…そして月が、一つの眩い星の灯火を讃えるかの様にぐるぐると回り続けているんだ。」

ゼロ「でも、ある時突然、地上にある全ての光が消えたんだ、まるで終わりがやってきたかの様に、それは多分、終わりなんだ全ての終着点…」

ボウイ「ゼロ…それは…どう言う事なんだ?」

ゼロ「ボウイ、死は人々が思っているよりも怖くは無いモノなんだ…この前の印の話の様にね。」

ボウイ「じゃあ、人が死ぬことは悪くないと思ってるの?」

ゼロ「そうとも言えるし、そうでないとも言える…そう、皆は自分の道を自分で決めることができるのさ。」

ゼロ「それ『生』であっても、『死』であってもね。」

 

 

それから何日か後、転校が決まった。

転校の前日、彼と少し話をした。

ゼロ「残念だね、君とはまだ話したい事が山の様にあるのに。」

ボウイ「うん、僕もそう思う。」

ゼロ「じゃあ、君に一つ言葉を送る事にするよ…」

そう言うと、彼は立ち上がってこう言った。

ゼロ「もしこれから、恐怖で何も出来なくなったり、迷ったりした時…世界の見方を180℃変えてみることをお勧めするよ。」

ゼロ「そうすれば、君の行くべき道はきっと見つかるはずだ。」

 

 

 

日本に来て、父の再婚相手の子供であるノゾミに出会った。

 

僕は度々ノゾミとよく遊んでいたが、些細な理由で良く喧嘩を巻き起こしていた。

ノゾミはとても育ちが良く。乱雑だったり行儀が悪いところもあったが、尊敬に値した

ノゾミと喧嘩した後で、父に照らして思い返してみると、いつだって先に手を出したのは僕の方で、いつも悪いのは僕の方であり許しを請わなければならないのも僕の方であった。

 

だが、一つ彼女には不審な点があった。

彼女の部屋にあるあの薄気味悪い壺が、毎晩毎晩ケタケタと笑っているんだ。

そして、日に日に父を含めた邸宅の僕以外の人間は、皆彼女のためのお人形なのでは無いかと錯覚するぐらいには僕は相手にされなかった。

怖かった

前居た場所では、よくいじめっ子たちにいじめられている事もあったが

それとは全く別の恐怖…

得体の知れないモノだった。

 

そうして、それから何年か後…僕は舞浜学園の入学試験。

デュエルの実技試験で…彼とまた会ったんだ。

 

ボウイ「対戦よろしくお願いしま…え?」

零「対戦よろしくお願いしまーす。」

彼の雰囲気は正直全て健在だった。

 

そして入学した後、僕は彼を虐げてしまった。

 

怖かったんだ、僕の事を全く知らない事も…彼があの人は違う人の様だったのも…あの風紀委員長も…

 

ある日、ノゾミに声をかけられた。

ノゾミ「お兄ちゃん、零くんって…知ってる?」

僕は正直に答えた。

ノゾミ「私と零の仲を取り持ってくれない?」

ボウイ「分かった。」

 

これが良くなかった。

彼女はよほど零の事が好きなのか、上手くいかない度に、僕を痛めつける様になった

怖かった。だがリリス風紀委員長やゼロの助言のおかげで僕は今、こうして校門の前に立っている。

 

ボウイ「見方を変える…か」

そうして僕は学校の中へ入って行った。

 

 

 

 

 

 

─体育館─

 

零「…イッサ遅く無いか?」

 

リリス「うん、流石に心配だね…」

 

ファルゴ「俺達で行っちまおうぜ?ファーッ!」

 

竜吾「賛成だぜ!」

 

零「…どうするリリス?」

 

リリス「まあ良いんじゃ無い?」

 

零「良し、じゃあ見に行くか!」

 

俺達はイッサを追いに裏へと向かった。

 

 

零「おーいイッサー」

 

イッサ「ハッ…どうせこうなる…」

 

零「あ、おーい!どうしたイッサー?」

 

イッサ「お前は良いよなぁ…俺なんて割り切る事しか…」

 

水華「…どうして…なんで…?」

 

リリス「イッサと水華生徒…様子おかしくない?」

 

零「あぁ…まさか昨日のアレか…?」

 

ファルゴ「ファ?アレって何だよ。」

 

竜吾「そ、そうだぞ!」

 

零「アレって言うのはその…あれだよ。」

 

リリス「この前この学校の生徒全員が不自然にネガティブな感じになってたの。」

 

竜吾「へー」

 

ジャブラッド「もう隠す必要は無いだろ。」

 

そう言ってジャブラッドが突然出てきた。

 

リリス「え!?どうして!?」

 

ファルゴ「ファ!?何だこいつ!?」

 

竜吾「ッ!?」

 

竜吾が反応すると同時に、竜吾のポケットからクリーチャーが現れた。

 

カイザー「竜吾!どいてろ!ここは俺が…」

 

リリス「え!?まさか竜吾くんも!?」

 

カイザー「七罪!邪龍ジャブラッド!」

 

ジャブラッド「カイザー、久しぶりの殺し合いと行きたいところだが…今回はそうも行かなさそうだぞ?」

 

カイザー「どう言う事だ?」

 

ジャブラッド「今回のは世界滅亡案件だ。」

 

カイザー「何だと!?」

 

ジャブラッド「そう驚くなよ、お前の前の契約者も…」

 

ファルゴ「ファーッ!ちょっと待てーッ!」

 

ファルゴが話を遮る様に入ってきた。

 

ジャブラッド「何だお前!?」

 

ファルゴ「全く何が起こってるのか分からないぜ!意味不明意味不明意味不明!ファーッ!」

 

零&リリス「実はかくかくしかじかで…」

 

ファルゴ「なるほど、完全に理解した。」

 

ジャブラッド「飲み込み早いな。」

 

竜吾「零、お前とイッサって契約者だったのか!?」

 

零「まぁな、俺からはバルバレだったけど。」

 

竜吾「何だと!?」

 

零「…で、ジャブラッド、世界滅亡案件ってどう言う事だ?」

 

ジャブラッド「俺の昔の同僚の一人の世界を闇で覆えるやばい奴が、覚知山ノゾミの契約クリーチャーだ。」

 

カイザー「何だと、そいつは何者だ。」

 

ジャブラッド「その名は禁忌の壺…」

 

???「dark material…COMPLEX」

 

一同「!?」

 

暗い隅の方から聞いた事のある声が聞こえた。

 

恐る恐る声のする方を見ると

 

覚知山家の使用人「観客の皆様、まもなく劇はクライマックスを迎えます。」

 

覚知山家の使用人さんが居た。

 

覚知山家の使用人「観客の皆様、席に御着席ください。」

 

そうして使用人さんの体が崩壊し、中身が露わになった。

 

それはまるで機械仕掛けの怪物の様であり。ガチャガチャと音を立てながら蠢いていた。

 

COMPLEX「そしてDM零様。これからは我が契約者ノゾミと、決して離れぬ様に。」

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