デュエルマスターズ darkness   作:deta豆

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第14話 恐怖と勇気

気がつくと、僕は見知らぬ場所に居た。

手には…血。

 

ボウイ「あ…あ…」

そう、血だ。

それを見て僕は思い出した。

 

あの風景を…

目の前で…僕の目の前で…死んだ…零を…

 

ゼロ「いいや、彼は生きているよ。」

僕は思わず声のする方向に振り向いた。

そこには彼が居た。

あの日のままの彼が…

ボウイ「そ、それじゃあ零は生きてるって事!?本当に!?」

そう慌てふためいた様子の僕に、彼は大人の様に落ち着いて答えた。

ゼロ「あぁ、僕がここに居ると言う事は多分生きていると言う事なんだろう。」

ゼロ「それより、僕は君にどうしても聞きたい事があるんだ。」

彼は僕の目をまっすぐ見て言った。

ゼロ「君はあの劇場に行きたいのかい?」

ボウイ「え…」

劇場

その言葉を聞いた時、僕の中に一つの言葉が思い浮かんだ。

怖い

自分の平穏が

自分の安全が完全に消え去るのが怖い

痛めつけられるのは死ぬよりも…殺されるよりもずっとマシだ。

でも僕は彼を助けたい、自分らしく生きていたい。

その為に…自分からここに来たのに…なのに何でこんなにも怖いんだ…?

そう怖気付く僕を見て、彼は優しい声で話し始めた。

ゼロ「"劇場"、僕がそう言った時…君は少し驚いたね?驚いたと言う事は…君は驚きやすいと言う事になる…つまり、君が恐れている物や人があると言う訳だ。」

僕は少し戸惑った。

 

彼は優しく、それでもって言い聞かせる様に言った。

ゼロ「どこにその原因があるのか…僕達は誰に対しても恐怖を抱く必要は無いんだよ。」

 

ゼロ「誰かを恐れているとするなら…それは…その誰かに自分を支配する力を握られているからだ。」

 

ゼロ「例えば何か暴力を振るわれたり痛めつけられ…いつでも君を殺せる人間が居るとする…そうするとその人間は君に対して支配する力を得るんだ。」

僕は途方に暮れて彼の顔を見た。

その顔は最後に会った時の様に真面目で賢そうだった。

慈悲深くはあったが、甘やかす様な所は一つも無く、もしろ厳しかった。

僕は自分がどう言う事になっているのか分からなかった。

彼は魔法使いの様に僕の前に立った。

ゼロ「分かったかい?」

 

と、彼はもう一度尋ねた。

 

僕は頷いた。

 

何も言う事が出来なかった。

 

ゼロ「真実は奇妙に見えると君に言った…だけれど、ごく自然に行われるんだよ。」

ゼロ「例えば…僕が君に初めてカインとアベルについて話をした時、君は僕の事をどう思ったか…言おうと思えばかなり詳しく言えるよ?…だけどここでは言う必要の無い事だ。」

ゼロ「君が僕の事を夢に見た事だってある…だけどその話はよそう。君は賢い…大抵の奴らは馬鹿だ。」

ゼロ「僕は時々…信頼できる賢い友達と話すのが好きなんだ。」

ボウイ「君だって嫌じゃ無いだろ?もちろん僕も君と話すのが好きだよ!」

ゼロ「フフ…もう少しこの面白い実験を続けよう…少年Bは驚きやすい…彼は誰かを恐れている…彼は恐らくその相手に対して命の危険を感じている…大体こんな風じゃないかい?」

僕は彼の声、彼の威力に圧倒された

僕はただ頷くだけしか出来なかった

 

彼は力強く僕の肩を叩いた。

ゼロ「図星だね、そうだろうと思ったよ。」

ゼロ「最後にもう一つだけ聞いて良いかい?君の義理の妹はなんて言う名前か教えてくれるかい?」

僕は酷く驚いた。

僕の秘密は突然触れられて、心の中で苦しげに響き渡った。

秘密が明るみに出るのを拒絶しようとしていた。

ボウイ「義理の妹?ぎ、義理の妹なんて居ないよ!?」

ボウイ「一人っ子だ!僕だけだ!」

彼は笑った。

ゼロ「言ってごらんよ。彼女はなんて言う名だい?」

ボウイ「…ノゾミ」

僕は小声で言った

満足げに彼は私に向かって頷いた。

ゼロ「ブラボー!相変わらず君はやっぱり頭の回転が速い奴だ。これから面白くなりそうだね。」

ゼロ「…だがここで言っとかなきゃいけない事がある…あのノゾミとか何とか言う奴は悪い奴だ、彼女の顔がそうだと言っているよ。」

 

ゼロ「…君はどう思う?」

ボウイ「分からない…」

僕はため息をついた

ボウイ「君はあの子を知ってるの?あの子は君を知ってるの?」

ゼロ「心配しなくて良いよ。彼女は逃げてしまったし…僕の事など知りはしない。」

ゼロ「…今のところはね。」

僕は地面に膝をついた

 

ゼロ「…残念だよ、彼女についてもう少し聞きたかった…実験をもう少し続ける事も出来たんだけど…君はもう彼に会わなきゃいけないみたいだから。」

ゼロ「最後に言いたい事は、彼女を怖がるのは間違っていると言う事は分かるね?そんな恐怖心は僕達をすっかりダメにしてしまうんだ…君が真の意味で彼らの仲間になりたいのなら…そんな物はさっさと捨ててしまわなくてはならない」

ゼロ「分かるかい?」

ボウイ「その通りさ…!」

僕がそう言うと彼はニッコリとこちらを向いて言った。

ゼロ「…それじゃ、また会おうね」

彼がそう言うと、周りはすっかり真っ暗になってしまった。

 

その中で、彼の顔があったであろう場所から、一瞬だけ微かな光がこぼれた気がした。

 

 

そして、暗がりの中から誰かが僕に問いかけて来た。

???「汝が我が契約者か?」

僕は頷いた。

???「そうか…ではお前の願いは何だ。」

僕の答えは決まっていた。

それは悪に打ち勝つ力でも無く、莫大な富でも無い。

ボウイ「僕は…勇気が欲しい。」

そう言うと、暗闇の中から見た事も無い様な手が伸びてきた。

???「ならば、握手を」

僕はその手を握った。

???「我が契約者、お前の願いをしかと受け取った」

気づいた時には、僕はあの体育館に戻っていた。

そして目の前には、見た事も無い様な生き物

そう、それはクリーチャーだ。

そのクリーチャーは僕に向かって名乗りを上げた。

ドラン「我が名はゴルドラン・ゴルギーニ、契約者…お前の事をずっと見守っていたぞ。」

ゴルドランと言う名のクリーチャーは僕に向かってそう言った

ボウイ「え、な、何だ!?」

ドラン「…いきなりで驚いたか?私はずっとお前の側に見守って居たのに」

ボウイ「まさか…ドラン・ゴルギーニ!?」

クリーチャーは頷いた。

ドラン「前までの私とでは正式な契約を交わす事は出来なかった…だが突然、この姿になったのだ。」

その時、何処かから扉が開く音が聞こえた。

ふと脇の方に目をやると、体育館裏からリリスさんがイッサさんを担いで出て来た。

その体はとてもボロボロであり、今にも倒れてしまいそうだった。

そうしてイッサさんを地面に置くと、リリスさんは出口の方へ歩いて行った。

 

ドランは周りを見渡して居た。

ドラン「…なるほど、彼らが契約者の仲間か?」

僕は頷いた

ドラン「良かろう、ならば彼らを治して見せよう!」

そう言うとドランの体が輝き出し、光が彼らを包み込んだ。

すると、みんなの体がみるみる内に治って行った。

そして、皆んなが目を開けた。

ファルゴ「んぐ…くそぉ…何が起こって─ファッ!?」

竜吾「ま、マジ!?ボウイ!それお前の契約クリーチャーか!?」

カイザー「ん、りゅ、竜吾…これはいったい…」

そう言って奥の方からカイザーが出て来た。

竜吾「カイザー!お前も治ったのか!」

ドラン「か、カイザー!?」

ドランはカイザーに駆け寄った。

カイザー「ドラン!?」

竜吾「知り合いか?」

カイザー「あぁ、クリーチャーワールドで仲の良かった幼馴染だ。」

ドランは静かに頷いた

竜吾「へぇ〜こんな偶然もあるもんだな。」

ファルゴ「ファッファッファ〜!何か分からんがそいつが俺達を治してくれたみたいだな。」

竜吾とファルゴさんは嬉しそうにしていたがイッサさんは厳しい表情で僕に詰め寄って来た。

イッサ「ボウイ…クリーチャーと契約する事がどう言う事か分かってるのか?命をかけて戦ったりデュエルをしたりしなきゃいけないんだぞ。」

僕はそれに対して、しっかりと…そして力強く答えた。

ボウイ「部長が、零が妹に連れ去られました…周りの被害も。全て妹のものです。」

イッサ「何だと…?」

ボウイ「この契約が…僕が彼を助ける為の…そして妹を倒す為の…僕の覚悟です。」

イッサ「…そうか。」

イッサさんは驚いた様な顔と同時に、何かを思い出したかの様に周りを見渡した。

イッサ「…リリスは何処だ?」

竜吾「リリスならさっき廊下の方に…」

僕達はドアが全開になっている体育館の出口の方に目を向けた

そこには血を吐きながらよれよれと歩く傷の治ったリリスさんの姿があった

何よりおかしいのが…その血が真っ黒だと言う事だ。

ファルゴ「お、おい!?大丈夫か!?」

ファルゴさんが急いで駆け寄っり手を掴んだが、リリスさんはその手を振り払い一心不乱に歩いていた。

リリス「零…私一人でも…」[ボソボソ]

竜吾と僕は、直ぐに彼女に向かって走り出し、ファルゴさんと一緒にリリスさんを押さえた。

リリス「離して!!私は零を助けに行かなきゃ行けないの!!退いてよ!!早く!!ねぇ!!あ"あ"あ"あ"あ"!!」

僕達は必死に彼女を押さえつけたが、彼女はまるで獣の様に強い力で僕らを振り解こうとした。

その時、廊下の向こう側から誰かがとんでもない速度で現れ、リリス風紀委員長に一撃を加え眠らせた。

それは矢奈先生だった。

ファルゴ「や、矢奈先!?」

矢奈「ふー!危ない危ない!発作が起きてたねリリスちゃん。」

矢奈先生がそう言うと、リリスさんは直ぐに目を覚まし立ち上がった。

リリス「や、矢奈先生…零が…零が連れ去られちゃった…す、直ぐにでも行かないと…」

そう言う混乱状態のリリスさんに。矢奈先生は優しく微笑みかけた後に優しく言った。

矢奈「リリスちゃん、落ち着いて〜零くんがそう簡単に死ぬ訳無いでしょ?」

リリス「そ、そうですけど…」

矢奈「それにね〜?発作もある訳だし…あ!発作と言えば…はいこれ!」

そう言うと矢奈先生は真っ黒い粉状の物を取り出しリリスさんに飲ませた。

そうすると、リリスさんは黒い血を吐くのをやめ、みるみる内に元気になって行った。

リリス「ありがとうございます矢奈先生!それじゃあ直ぐに零を助けに…」

矢奈「ちょっと待って〜」

リリス「何ですか?私早く行かないと…」

矢奈先生は僕達の方を指差して言った。

矢奈「ついて行きたいみたいだけど?」

ボウイ「は、はい!リリスさん!僕らも連れて行ってください!」

竜吾「そうだ!俺達は足手纏いなんかじゃ無いぞ!」

ファルゴ「部員同士なんだから助け合わないとな!ファーッ!」

イッサ「…」

矢奈「こう言ってるけど?」

リリスさんはしばらく黙って僕らに言った。

リリス「ついて来たいなら来れば良いよ?」

ボウイ「やった!!!」

竜吾「良し!早速行くぞ!」

矢奈「じゃ、私が車で連れてってあげる。」

リリス「あ、ありがとうございます!」

 

ボウイ「良し、それじゃあ行くぞ!」

 

そうして僕達は、劇場へと向かった。

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