劇が終わった後、零達は劇場の外へ出た。
「凄く良かったな…本来は違う人物のはずなのに…まるでそのキャラクターになっているかの様だった…主人公とヒロインの物語も良かったしな…。
『お姫様のキャラがどことなく風紀委員長に似てたな』と思いながら、零はそう言った。
「そうか?ただのご都合ENDに見えるが…。」
そう言うイッサをリリスは見て言う。
「何言ってるの?」
それを聞いたイッサは一瞬目が揺らいだが答えた。
「いや…あの吸血鬼をそのまま放っておいて大丈夫なのか…?」
そう言うイッサに対し、ファルゴは笑いながら言う。
「まあ良いんじゃねーか?お互いを心の底から思ってくれる相手がいる事ほど幸せなもんはねーだろ。ファーッ!」
「まあ…俺は良かったと思うぜ!」
竜吾もニカッと笑いながらそう言った。
そうして皆が感想を語る中、一人だけ浮かない表情をして黙っているのが目に止まった。
ボウイが、冷や汗をかきながら何かにおびえるように周りをキョロキョロ見ていた。
「どうする?声かけた方が良いよね?」
そう、リリスが小声でボウイを見ながら言う。
「いや…こう言う時はそっとしてやった方が良いって聞いた事が...」
零はそう言って、少し心配ながらも温かい目で見守ることにした。
その時、入り口の方から駆け足でこちらに向かって来る人影が見えた。
「あ、矢奈先生。」
イッサがそう言うのと同じぐらいに、矢奈は近づいて来ていた。
「いたいたー」
そう言って矢奈は零達の近くで言った。
「いや〜サボってる時のチキンは格別だったよ〜。」
「…で、劇はどうだった?」
「凄く良かった!本来は違う人物のはずなのに…まるでそのキャラクターになっているかの様だったし!主人公とヒロインの物語も最高だった!」
そうリリスは言った。
「ボウイくんは…黙ってるねぇ?」
そう言うと矢奈先生はボウイに近づいて行った。
「あ、え?」
そして困惑するボウイを尻目に、矢奈先生は零達全員に話し始めた。
「それじゃあ皆さん。サプラーイズ!」
「なんとー?姫役の子のところに行けちゃいまーす!」
そう楽しげに言った。
こうして零達は舞台裏へと向かった。
「なんか皆んな盛り上がってなくなーい?」
「ファ、ファー…。」
「物語は物語のまま終わるべきだしちょっとな…でもあの子気になりはするし…」
とは言った物の、内心零はウキウキだった。
あの子に会えるかもしれない…そう考えてもいた。
ふと、零は落ち着く為に周りを見渡した。
舞台裏は薄暗く、床は軋んでおり、水気の強い感じがした。
そしてその水気は楽屋に近づくにつれてより鮮明になって行く
とても嫌な感じだ。
「(何で皆んなこの湿気に気づかないんだ…?)」
そうして、嫌な雰囲気を漂わせる扉の前に着いた。
「さ、着いたわよ。」
そう言って矢奈先生が扉を叩くと、中の少女が声を上げる。
「はーい」
その声を聴いたボウイは、思わす「ヒッ」という悲鳴を漏らした。
その様子を、零は黙って見ていた。
「ノゾミちゃん、私よ。」
矢奈先生がそう言うと、中にいるノゾミは明るく言う。
「矢奈先生!良いよ。」
そうしてそれも聞いた矢奈先生が扉を開けた。
扉を開けると同時に、零達は息を呑んだ。
だが
目の前の光景はいたってシンプル、煌びやかな部屋にたくさんのドレスに荷物。
そしてライトが付いたガラスの前に、白髪の少女が一人。
似ている、あの子にとても
だが
「違う」
違う
あの子じゃ無い
それが分かった時、涅槃の様に零の中で喪失感が広がって行った。
だが、零はリリスに肩を叩かれ我に返った
「大丈夫?」
そう言って、リリスは零の顔を覗き込んで言う。
「昨日会った子と違った?」
リリスの問いに対し、零はただ頷いた。
ふと零が周りを見渡すと、ノゾミと言う少女の周りに俺とリリス以外が集まっていた。
「あれ…何してるんだ…?」
そう言う零に対し、リリスは少し考えた後言う。
「多分話聞いてるんじゃないかな?」
「あー…」
零はそう言うと、リリスと2人で、直ぐに集まっている方に向かった。
「零」
「イッサ、どうした?」
「のぞみさんってボウイの妹らしいぞ。」
そう言ってイッサに対して零は「まあそうだろうな。」と軽く言った。
「何だその反応?」
そうイッサが言ったその時、
「ねぇ、何?」
リリスがそう言って一瞬で俺とイッサの会話に割り込んだ。
「ッ!?り、リリス!?」
そう言うイッサを、リリスは一瞬冷たい眼差しで見つめた後に零の方を向き言った。
「…まあいいか!零!一緒に行こう!」
「え…お、おう。」
零はそう言ってノゾミに近寄った。
「風紀委員長、俺から先いいか?」
「いいよ〜零!」
「じゃあお先に失礼するぜ。」
零はノゾミと言う少女の前に立った。
「こんにちは!今日はデュエマ部を裏に入れてくれてあざす!」
そう言う零に対し、ノゾミはフフッと笑いながら言う。
「あ…全然大丈夫だよ!もしろ大歓迎だし!もしろお兄ちゃん迷惑かけてない?」
ノゾミの言葉に、零は首を振った後答える。
「ボウイはめっちゃ良い奴ッスよ!ちょっと…面倒くさいとこはあるけど。」
「な、何だよ!?」
零の言葉に、ボウイはそう言った。
「事実俺にダル絡みしてただろ?」
そう言う零に対し、ボウイはモゴモゴ言いながら言う。
「あ…あの時の事は悪かったけどさぁ…」
その時、ノゾミが不機嫌そうな声で会話に割り込む。
「お兄ちゃんうるさい。」
「黙って。」
それを見た矢奈先生は、手をパンと1回大きく叩きながら言う。
「さあさあ!もう時間よ!みんな外で待っててね〜!」
「え、でも矢奈先生…」
零はまだ終わってないと言いたげだが、それに対して矢奈先生はニコッと笑っていう。
「大!丈!夫!私が部屋のそばで待っとくから!」
「先生!私も待たせてください!」
そう言うリリスに対し、矢奈先生は手でグッドを作り部屋を出た。
続いて、イッサ、ファルゴ、竜吾、そしてボウイの順番で部屋を出た。
そうして、部屋には零とノゾミの二人だけになった。
「えっと…それじゃあ演劇のモデルとかって─」
そう言う零に対し、その言葉を遮るようにノゾミは言う。
「もう大丈夫だよ。」
「ずっとずっと待ってたんだよ…?」
「久しぶり。」
部屋には水気が充満し、零の身を包んでゆく
あまりにも黒い蒸気…飲み込まれる。
その時、扉が開き、リリスが入ってきた、
「零!」
「うわっ!?びっくりした!?どうした急に?」
そう言う零に対し、リリスは言う。
「いや…なんか…すごい嫌な感じがしたから…」
その時、リリスの後ろから矢奈先生が入ってきて言った。
「リリスちゃん!?どうしたの急に!?ごめんねーノゾミちゃん!」
それに対して、ノゾミはニコニコと笑って答えた。
「いえ先生、大丈夫です丁度今終わったとこですから」
それを聞いた零は言う。
「えっと…じゃあな…。」
リリスも続けて言う。
「ありがとうございました〜。」
そうして矢奈先生に連れられて去っていくリリスと零、特に零を見ながら、ノゾミは笑みを浮かべていた。