妖巫女と半端者   作:虚憂

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一日目:数奇な出会いと自己紹介

「ここは……」

 

「起きたか、巫女さん」

 

「……人間……!」

 

「川の底にあんたがいた時は流石に驚いたけど。よく生きてたな」

 

「……そう」

 

 淡白。生に執着とかない人なのかな、分かり合え無さそう。

 

「ここで……会ったが、運の尽きだったね。死ん     ゲホッ!?」

 

「……あんま、無茶しない方が良いよ」

 

「川の水と砂……あとは小さなゴミとか。相当吸い込んでたみたい」

 

「医学の先生ってわけじゃないが……相当傷付いてるんじゃない?」

 

 吸い込んだ先に何があるかとか知ったこっちゃないんだけど、想像はできるよね。

 

「あんたの臓物(ナカ)

 

「っ……!」

 

 声を荒げただけで血反吐を吐いてる、弱っちい人だ。

 

「……てか、あんた何があってあんなことになってたのさ」

 

「重罪人か何かか? 川の底に沈められるなんて、余程なんだろ」

 

「……」

 

「無視に嫌悪か、正直だね」

 

「でも、助けたんだし理由くらい教えたって問題ないよな」

 

「……人柱」

 

「……なるほど、鎮める為だったか。難儀だな」

 

 そんなに質の良い生贄(ニエ)には思えないけど。

 

「見えちゃいけないモノでも見えたのか?」

 

「……」

 

「まただんまり、人がそんなに嫌いか」

 

「……当たり前、でしょ」

 

「……ふむ」

 

 この感じ、一夕一朝の思いでもないのか、重症だな。

 

「なら良かったな、俺が相手で」

 

「……は?」

 

「とても幸運だと言ったんだ、今度は難聴か」

 

「ふざけないでよ……!」

 

 静かに、怒りを露わにする巫女。……ああ、オレの見た目で勘違いしているのか。

 

「ふざけてない。オレは人ではないから」

 

「……え?」

 

「……やはり難聴なのか?」

 

 口からだけではなく、耳にも水が入り込んでいたのか。この巫女も不憫だな。

 

「でも、あなた人間の……」

 

「ん?」

 

 ……ああ、そっちか。()()()()()()()()()

 

「……これでわかるか」

 

「っ!? これって……」

 

「言い方も悪かったか。オレは真っ当な人ではない」

 

 俺の気配に困惑を隠せていない。漸く、その無愛想な面を変化させたか。

 

「俺は……人と、妖と、変なモノ……それらの混ざり者だ」

 

「……半端者、と言った方がわかりやすいか。巫女さん」

 

 

 


 

 

 

「ゲホッ! ゴホッ!」

 

 古びた小屋に響く、痛ましい咳の音。

 

「すまないが、これ以上オレにできることはないぞ」

 

「……十分、ありがとう」

 

 オレが真っ当な人ではないと理解してから、この巫女は、露骨に態度が軟化した。余程人が憎いらしい。

 

「……力のほとんどが、使え無くなってる……?」

 

「何の話だ」

 

「……なんでもない」

 

「そうか」

 

 この巫女の過去は知らない、聞いても人柱だとしか答えないからな。しかし聞く必要もないのも事実だ。

 

「替えの服はそこに置いておく、オレがいない時にでも使うと良い」

 

「あ、うん」

 

「巫女さんの服ほど上等なものは用意できん、我慢してくれ」

 

「……こっちこそ、色々とごめんね」

 

「あんたが気にすることじゃない」

 

 これは、オレという存在の名残に近い行為なだけだからな。人間()という奴は余程馬鹿だったらしい。

 

「……ただ、あっちの部屋にある酒は呑まない方が良い、とだけ言っておく」

 

「え?」

 

「忠告はした」

 

「あ、うん」

 

 暫くはまともに動けないのだろうが。オレもほとほと面倒だ。

 

「あんた、名前は?」

 

「……今聞くの?」

 

「タイミングなんぞどうでも良い。呼ぶに困るから今聞いた」

 

「そっか」

 

「……んー……」

 

 複雑な顔をして唸っている。……元の名が嫌いなのか?

 

「……本名でなくとも、呼ぶに困らないものがあればそれで良いが」

 

「……うーん……」

 

「……」

 

 そこまで悩むものなのか、呼ばれ方とは。

 

「ならば、今じゃなくて良い」

 

「……ぁ、ごめんね」

 

「謝られることでもない。無理に聞いたのはオレだ」

 

「オレは……そうだな、童子(ドウジ)だ。真っ当な名はどれも忘れた。これで良い」

 

「……そんな適当に……?」

 

「あんたがいる間だけ、使えるのならそれで良い」

 

 

 

 

 

 ……今、この時のオレを振り返っても、未来は変わらないしオレは変えないのだなと強く思う。

 

 妖巫女、そう呼ばれるあいつはあの場所で死んだからこそ、今は笑って暮らせている、となればオレも(ワシ)も、人間()であってもおそらく否定はしない。

 

 ただまあ、今となってあの時の情景に名を付けてみるのならば。

 

 

 

      妖巫女と半端者。その始まりの物語、とでも言うべきか?




あやかしトライアングル二次創作少ないので自給自足します。
完全に趣味作なので拙い部分には目を瞑ってください。
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